2011年12月31日土曜日

英語で「良いお年を!」

一昨日(12月29日)、リチャードのオフィスで立ち話していたところへ、日系アメリカ人の同僚ジャックがひょこり現れました。彼は健康優良後期高齢者。顔のつやが良く、声にも張りがあり、82歳ながら現役でバリバリ仕事していて、「かくしゃくたる」という表現さえ失礼に当たるほど若々しい人物です。私を発見するなりニコニコ笑いながら部屋へ入ってきて、握手を求めました。そしてこう言ったのです。

“Happy New Year!”

へ?

一瞬戸惑いました。遂にジャックもボケちゃったか?まだ年が明けてないのに新年の挨拶をされたぞ!?…いやいやそんなはずは無い。これはきっと、「良いお年を」っていう意味なんだろう…。

翌日ダウンタウンのオフィスで働いた後、帰り際に同僚ステヴに対してこれを恐る恐る使ってみたところ、すんなり受け入れられました。駐車場へ向かう際、他の同僚ジョンとすれ違った時にも使ってみたら、やっぱり「ハッピー・ニュー・イヤー!」と返して来ました。そうか、やっぱりこれは「良いお年を」にも「明けましておめでとう」にも使えるフレーズだったのね。

昨夜、友人一家のお宅に招かれたのですが、ディナーの最中にこの話題を出しました。ご主人のマイクさんが、こう解説してくれました。
「それはHave a happy new year! の頭を省いたんだね。年が明けたらもう Have をつけない。それだけだよ。」

な~るほど!それなら納得。ジャックはまだまだ大丈夫だ。

さて、これから大掃除です。Have a Happy New Year!

2011年12月29日木曜日

Make a move (異性に)モーションをかける

クリスマス、そして年末年始と続くこの時期は、同僚に会うと大抵、決まり文句のようにこんな挨拶を交わします。

“Are you planning any fun party?”
「何か楽しいパーティでも企画してる?」

実際、オフィスは半分以上からっぽ。静かなもんです。私は長いこと後回しにしていた不急の仕事を片付けようと意気込んでいたのですが、意外にも「大至急の」業務がポンポン飛び込んできて、なかなかの忙しさ。

独身の同僚リチャードと年末年始の過ごし方について立ち話していた時、アメリカ映画によく出てくる大晦日&ニューイヤー・パーティーの話題になりました。
「カウントダウンが始まると、そのへんにいる人をつかまえて、ぶちゅーっとキスする場面があるでしょ。実際、そんなことって本当にあるの?」
すると、事も無げに彼が答えます。
「うん、普通にあるよ。」
「今さっき初めて会ったような人とキス?信じられないよ。」
「ああ、若い時は何度も行ったよ、そういうパーティー。」
「ええ~?でもさ、その時隣に立ってた人が好みのタイプとは限らないでしょ。」
「もちろんそれまでに目星はつけとくんだよ。で、11時半を過ぎた頃、オモムロに行動を開始する。」

この時リチャードが使ったのが、次のフレーズ。

“You have to make a move.”

ムーブ(動き)をメイク(作る)わけだから、「行動に出る」ということですね。将棋やチェスで言えば、「駒を動かす」。今回の話題では、異性との関係を進展させるための「モーションをかける」という意味になりますね。

「で、そういうパーティに今年も行くわけ?」
と羨望の眼差しを向ける私に対して、リチャードが静かに答えます。

“I’ll just stay home and spend a mellow night.”
「家でただゆったりくつろぐよ。」

ま、そうか。40オーバーのおっさんが目をギラつかせてキスの相手を物色してる図は、ちょっと気色悪いもんな。

2011年12月28日水曜日

I had an epiphany! ひらめいたぞ!

オレンジ支社の同僚アンが、長い産休を終えて職場に戻って来ました。昨日から今日にかけて質問メールが立て続けに何通も届き、張り切ってる様子がビンビン伝わってきます。

2月にスタートしたプロジェクトに関するメールでは、
「ついさっき気付いたんだけど、あの時さんざん話し合って決めたことが、データに反映されてないみたいなの。」
と言った後、こう続きます。

“or if we had an epiphany and decided to go with another way of setting this up?”
「もしかしたら私たち、突然ひらめいて違う方法でセッティングすることに決めたんだっけ?」

この Epiphany (エピファニー)ですが、そのうち使ってみたい単語のひとつ。一般には「突然のひらめき」とか「啓示」などと訳されるようですが、「キリスト教の祭日」でもある、と辞書に出ています。

ここでちょっと悩ましくなります。

もしも宗教的な意味合いの強い言葉であれば、気軽に使えないのです。クリスチャンに対して「たった今、神のお告げがあったよ」などと言うと、「なんだこいつ、信仰も無いくせに神の話を持ち出しやがって」と、気分を害する可能性もあるので。

さっそく、敬虔なクリスチャンで元ボスのエドに尋ねます。
「う~ん、宗教的な意味は特に無いと思うよ。ただ単に、A light bulb goes off. (電球がパッと点く)って感じで使ってるなあ。」
と、頭の上で掌を開いてみせました。

次に、同僚リチャードのオフィスへ。
「宗教的な文脈で使われるのを聞いたことは無いな。普通に使っていいんじゃない?I had a goddamn epiphany! っなんてこと言わない限り大丈夫だよ(笑)。」

良かった。このフレーズ、もう安心して「普段使い」が出来ます。

“I had an epiphany!”
「ひらめいたぞ!」

2011年12月26日月曜日

サンタとトナカイ

昨日はクリスマスパーティのはしごでした。午後一番で同僚ベスのアパートへ。そして4時からは息子の友達のお宅へ。

ベスの次女カイラ(14歳)が折り紙好きだと聞いていたので、前夜2時間(!)かけてサンタとトナカイを折りました。ベスの両親もベスも喜んでくれたんだけど、遅れてやってきた同僚パトリシアが、長女アンドレア(20歳)にもカイラにも、リボンをかけて綺麗に包装されたプレゼントを持参。中身は知らないけど、一瞬で折り紙の存在が霞んでしまったのは明らかでした。

次のパーティへ向かうため、キッチンでベスとさよならのハグを交わした時、冷蔵庫の上に寂しく佇むサンタとトナカイを発見。そりゃそうか。電子機器が横溢する今の時代に、折り紙なんてなあ…。

{追記}
本日職場でベスに会ったら、カイラよりもむしろアンドレアが折り紙に興奮してたとのこと。よく考えてみたら、ちょっと大人向けだったかも。

2011年12月20日火曜日

Save the day 窮地を救う

私の仕事は財務部門とオペレーション部門との繋ぎ役みたいなところがあり、それぞれがなかなか単独で出来ない任務を課せられることがほとんどです。なかでも、
「締め切りは2時間後。このレポートを作って両部門の幹部三人から決裁を貰わないと今季の実績に大きな穴を開けてしまうことになる!」
などというピンチに起用されることが多く、先日もそんな大役を無事切り抜けました。早速アーバイン支社のリサからメールが届き、感謝の言葉が連ねられています。最初の一言が、これ。

“Thanks Shinsuke for saving the day again!”
「シンスケ、またしても Save the day してくれて有難う!」

ん?なんだそれ?

似たフレーズに、 “Make my day” というのがあります。映画「ダーティ・ハリー」で主人公のキャラハン刑事が、凶悪犯に対してこう凄むのです。

“Go ahead, make my day.”

「良い一日にする」とか「喜ばせる」、というのが元の意味ですが、この作品では、
「動いてみな、(貴様を撃ち殺すのに格好の言い訳が出来て)気分の良い一日になるから。」
って感じで使われて一躍有名になりました。

もうひとつ、これに似たフレーズに “Save the date” というのがあります。例えば半年先に大きなパーティを予定してる場合、

“Details will follow. Save the date!”
「詳しいことは追って連絡するけど、取り合えずその日は空けといてね。」

などと書きます。これは納得です。しかし、 “Save the day” となると話は別。

The day (その日)を Save (救う)?

なんとなく分かるような気がするのですが、どうもすっきりしない。今日の午後、英語の達人テリースのオフィスを訪ねました。

「そうね、確かに不思議な言い回しね。本当のところは私にも分からないけど、すんでのところでひどい一日になりそうだったところを、あなたが良い一日に変えてくれた、そういう意味だと思うわよ。」

なるほどね。それなら分かる。

“Thanks Shinsuke for saving the day again!”
「シンスケ、またしても窮地を救ってくれて有難う!」

キャラハン刑事はクールに “Make my day”と笑った後、“Save the day” したわけですね。

2011年12月15日木曜日

Death by a thousand cuts じわじわと破滅に向かう

今朝はどかっと仕事を片付けようと勇んで6時に出勤したのですが、経済通の同僚アーニーにつかまってしまいました。
「今日のニュースを見たか?Census Data (国勢調査のデータ)が発表されて、アメリカ人の二人に一人が低所得層か貧困層だっていうんだ。信じられるか?二人に一人だぞ。」

朝一番でショックを与えてすまん、と謝りながら、さらに続けます。
「この先、どんな事態が待ってると思う?端的に言って、ヨーロッパの二の舞だろうな。ここまで貧困化が進んだら、政府が救済に乗り出さないわけにはいかない。生活保護漬けの人間が増える。そして一旦それが普通になると、もうそのサービスを切れなくなる。どんどん公的保護に依存する人間が増えて、景気は停滞を続けるんだ。」
「う~ん、こうなったら新たなニューディール政策を打ち出すしか無いね。」
と私。
「うん、本気で思い切ったことをやらないと、この国には先が無いよ。」
彼の案は、職にあぶれてる人をカンザス州あたりに集めて、巨大な太陽電池プラントか何かを作ってガンガン働いてもらう。そしてOPECに中指立てられるくらいのエネルギーを生み出して外国に売り込む、というもの。
「でも、そんなことはまず出来ないだろうな。今のアメリカじゃ、ニューディールは不可能だよ。」
と、あくまでも悲観的なアーニー。政策に関する情報がネットやメディアを通じて一瞬にして広まる今の時代、政府が思い切った手を打てなくなった、と彼は言います。
「それに、何か対策を講じた結果、ちょっとだけ状況が改善するけど暫くすると元通り、ってのを繰り返すだろ。これが良くないんだよ。失業率が25%くらいになるまで放っておいて、強力なリーダーシップを持つ大統領に登場してもらい、究極の選択を国民に迫った上で断行する、ってな具合に運ばないとどうにもならない。今はさ、失業率が6%から9%に上がると中途半端な景気対策を打つ、で7%くらいまで下がる、で、三ヶ月もするとまた9%まで上がるって具合だろ。何もしないよりずっとたちが悪いよ。」

そこで彼が苦々しげに吐き捨てたのが、このフレーズ。

“That’s death by a thousand cuts.”

文字通り訳せば、「千の切り傷による死」ですね。つまり、ひとつひとつの傷は致命的じゃないけど、千箇所も切られればそのうち死ぬ、ということ。私の訳はこれ。

“That’s death by a thousand cuts.”
「じわじわと破滅に向かってるんだよ。」

もともとは清の時代まで中国で採用されていた処刑法「凌遅刑(りょうちけい)」から来ている言い回しだそうです。グーグルしたら、恐ろしい写真がざくざく出て来ました。朝からちょっと気分が悪くなりました。

2011年12月14日水曜日

SNAFU おなじみのドタバタ

二週間ほど前、旅費の精算の承認をボスのリックにお願いしたのですが、待てども待てどもなしのつぶて。そのうち時間切れになったようで、決裁は彼のボスのクリスへ自動的に転送されていたことが分かりました。

クリスからリックへのメールがこれ。

“Aren’t you signing Shinsuke’s expense reports?”
「シンスケの旅費精算書には君がサインするんじゃなかったのか?」

それに対するリックの返信に、手が止まりました。

“Yes, it was a SNAFU.”
「そうなんだ。SNAFUだよ。」

SNAFU?なんじゃそりゃ。彼が更に続けます。

“They came to me last week and I opened them on my Blackberry and then failed to follow up when I got to my computer.”
「先週受け取ってブラックベリーで一旦開いたんだけど、コンピュータで処理しようと思ってるうちに忘れちゃったんだよ。」

う~ん、この手がかりだけじゃ、SNAFU が何だかちっとも分からん。さっそく同僚マリアに質問。まず、なんて発音するの?
「スナフー(ふーの部分を強調)よ。しっちゃかめっちゃかな状態で何かをしくじった時に使うの。」
「あのさ、さっきネットで調べたら、これは “Situation Normal All Fucked Up” の略だって出てたんだ。最後の三つは分かるけど、シチュエーション・ノーマルが何のことか分からないんだ。教えてくれる?」
「え?そうだったの?分かんない。全然意味通じないわよねえ。」

そんなわけで、物知りのディックに聞いてみました。
「All fucked up は分かるよね。何もかも滅茶苦茶になってるって意味。シチュエーション・ノーマルは、いつもと変わらないってことだね。つまり、別に意外でも何でもなく、いつもの通り、しっちゃかめっちゃかになってる状況を指してるわけ。もともと軍隊で使われてたフレーズだよ。」

なるほどね。私の和訳です。

“Yes, it was a SNAFU.”
「そうなんだ。おなじみのドタバタだよ。」

どうでしょう?

2011年12月11日日曜日

We’re all revolving around it. 俺たちみんな、それ中心に生きてるよな。

5年ほど前、カナダのエドモントン支社からサンディエゴに移って来た同僚ジェフは、ウィニペグという町で育ったそうです。金曜の午後、職場で立ち話してたら、
「若い頃は店で肉を買ったことがなかった。」
という、耳を疑うような発言が飛び出しました(別に菜食主義者というわけではない)。それは一体どういうこと?と聞き直したところ、彼は毎年、野生動物の繁殖期(9月から11月頃)になると山へ出かけ、鹿やムース、バッファローなどを狩っていたそうです。ライフルか何か?と聞くと、弓矢(アーチェリー)を使ったと言います。
「昔はアルミだったんだけど、最近はカーボン製の矢でね。スピードがすごいんだよ。銃と違って音がしないこともそうだけど、アーチェリーの本当の長所は、獲物の身体にほとんど傷が残らないことなんだ。」

息絶えた動物のところへ行ってみると、急所にほんの小さな穴(puncture point)が開いていて、その周りに矢尻のブレードが残した放射状の薄い傷が認められるのみ。で、矢そのものは数メートル先の地面に突き刺さっているのだそうです。ムースやバッファローみたいに厚みのある身体を貫通してしまうなんて、すごい威力。

それからの手順はこう。現場で腹を割き、素早く内臓を搔き出してしまう。このタイミングを逃すと、肉がまずくなってしまうのだそうです。で、獲物を引きずって町に戻り、肉屋へ持っていくと廉価で綺麗に捌いてくれる。ステーキ肉をごっそり持ち帰り、自宅の冷凍庫に入るだけ貯蔵したら、残りはホームレスの施設に寄付する。

40代半ばのジェフは、今でも週末はアイスホッケーのチームに入ってプレイしているほど屈強な男で、狩猟の話は意外でも何でもないのですが、ふと気になって聞いてみました。
「あのさ、こういう質問もどうかと思うんだけどさ、動物を殺した時、良心の呵責を感じたことって無いの?可愛そうなことをしたなあ、とかさ。」
すると彼が急に表情を変え、

“It’s between you and me.”
「ここだけの話だけど、」

と声を落とし、過去に一度、倒れた鹿のそばへ行った時、突然嵐のような自責の念に襲われたことがある、と告白してくれました。そしてその場で泣き崩れた、というのです。

“What have I done? What am I, playing god?”
「俺は何てことをしてしまったんだ?何様だっていうんだ?」

そして翌年は狩りに出なかったそうです(翌年は、というところがミソですが)。

さて、なぜ繁殖期が狩猟に最適かと言うと、メスの奪い合いでオスの気が高ぶり、ガードが下がるのだそうです。バッファローのオスは硬い前頭部を、ムースは大樹のような角を激しくぶつけ合い、ライバルを退けようと連日闘う。ここに隙が出来るのですね。ジェフお得意の鹿狩り法は、まず獲物が良く通るルートを丹念に調べておき、そこを見下ろせる木の上に登って、葉陰に身を隠し辛抱強く待つ。目当てのオスが近くに来たら、予め用意しておいた二本の棒を打ち合わせて音を出す。それを聞いたオスはいきり立ち、
「喧嘩だ喧嘩だ!いい女を奪い合ってやがるな。どこだどこだ?俺も参戦するぞ!」
と駆けつけるのだそうです。そこでジェフの鋭い矢が一閃!哀れなオスは、急所を射抜かれてステーキ肉の元とあい果てるのです。

「結局、オスってのはオンナが絡むと我を忘れちゃうわけね。その習性を良く分かってる人間のオスに殺されちゃうなんて、ちょっと悲しいよね。」
と私。そんな風に考えたことは一度も無かったよ、と大笑いした後、ジェフが一言。

“We’re all revolving around it!”
「俺たちみんな、その周りをリボルブしてるんだよな!」

Revolve (リボルブ)は「(何かを中心に」回転する、旋回する、周回する」という意味。ジェフが言いたかったのは、こういうことでしょう。

「俺たちみんな、それ中心に生きてるんだよな!」

2011年12月8日木曜日

A-OK 万事オッケー

今朝のウォールストリートジャーナルに、イリノイ州の前知事が懲役14年の判決を受けたという記事が載っていました。「入廷前は余裕たっぷりだったのに、さすがにショックを隠しきれない面持ちで退廷した。」写真には、彼が右手でOKサインを作って記者団をかきわけて進む様子が。

記事の見出しに “A-OK” という言葉が使われていたのを見て、おやっと思いました。これ、「エイ・オーケイ」と発音するのですが、この “A” はそもそも何だっけ?

映画「マルホランド・ドライブ」でナオミ・ワッツ演ずるベティが、友達になったばかりのリタに、

“Everything is A-Okay.”

と言って励ます場面があります。どうしてわざわざAを付けるのか分からなかったので、以前同僚エリカに聞いたところ、
「Aクラス、つまり最高にオーケーだってことじゃないかしら?」
と答えてくれたのですが、真偽のほどを確認するには至りませんでした。

で、今回あらためて調査してびっくり。私はずっと、親指と人差し指でマルを作るジェスチャーが「OK」だと思っていたのですが、実はこれこそが「A-OK」だったのですね。もともとは、NASAの広報官だったジョン・パワーズが、フリーダム・セブン号の打ち上げが計画通りに進んでいた時、「万事順調」という意味で使って流行らせたのが始まりのようです。これに関して作家トム・ウルフは、小説「ライト・スタッフ」の中で、「NASAの技術者が無線交信のテスト中、Aの音の方がOよりも通りが良いことに気付いてA-OKと言うようになった。これをパワーズが頂いたのだ。」と書いているそうです(ここ全部、ウィキペディアから)。

じゃ、そもそもOKって何なんだ?調べてみたら、こっちの語源は34種類も説があることを知り、直ちに追求を断念しました。

2011年12月7日水曜日

That’s our ethos! それがうちの社風なのよ!

昨日、ダウンタウン・サンディエゴ支社の食堂でシャノンと一緒に弁当を食べていたら、環境部門のトップ、テリーがやって来ました。
「我らが誇るプロジェクト・コントロール・チームと、同席させてもらえたら光栄なんだけど?」

ランチを楽しみつつ、ひとしきり三人で仕事の話をしたのですが、そのうち最終コスト予測レポートの話題になりました。私が一言。
「これまで色々な部門のプロジェクトに関わって来ましたけど、ここの部門は本当にきっちりレポート出させてますよ。他の部門じゃ、過去一年も提出していないPMなんかざらにいますからね。」
するとテリーがきっぱりした口調で、
「うちはね、他がどうあれ、やるべきことは完璧にやるの。」
そしてこう続けました。

“That’s our ethos!”
「それが私たちのイーソスなのよ!」

イーソスだって?思わずシャノンと顔を見合わせる私。彼女も目を丸くしています。相変わらずすごいなあ…。テリーと話すたび、その圧倒的な語彙力に驚嘆させられます。

「分かってるわよ。メモ取るんでしょ。」
と顔を赤らめるテリー。
「ハイもちろん。いただきましたよ。」
と、ジェスチャーで左の掌に右手でメモする私。テリーはシャノンの方を向くと、
「もうシンスケったら、いつも私の使う言葉を面白がってメモするのよ。」
そう困り顔で訴えながらも、まんざらでもない様子。
「でもイーソスなんて単語、普通は思いもつかないよね。」
と私。
「私もそう思う。」
と、感心するシャノン。

実のところ、この時点ではイーソスが何なのか、よく分かっていませんでした。席に戻ってあらためて調べたところ、「倫理観」とか「気風」とか「精神」という意味でした。日本語では「エトス」とか「エートス」と発音されているようですが、ウィキペディアによれば「習慣・特性などを意味する古代ギリシャ語」。道徳を表すethics の語源だそうで、社会学者のマックス・ウェーバーは、「生活態度、心的態度、倫理的態度という三つの性向を併せ持つ」と説いたとのこと。

テリーを頂点のひとつとするこの組織は、今の会社に買収されるまで、環境・建築・デザイン分野の大学生たちが “dream job” と呼んで憧れる、宝石のような優良企業でした。今でこそ「巨大企業の一部門」に成り下がっているけど、社員ひとりひとりは、今でもそんなプライドを胸に秘めて仕事しています。テリーの発言は、そういう気持ちの発露と受け止めるべきでしょう。

“That’s our ethos!”
「それがうちの社風なのよ!」

2011年12月4日日曜日

Moot point 無意味な議論

火曜日の電話会議で、ジュリーがこんな発言をしました。

“Well, that’s a moot point.”
「じゃあそれはムート・ポイントね。」

ムート・ポイント…。議論の最中によく聞くフレーズです。文脈からは、「あまり重要ではない」という意味に受け取れます。全体の雰囲気が、「その話をしてもしょうがないよね」という流れになっていたのは確かですが、いまいち意味がつかめない。さっそく、ネットで英辞郎をチェックします。

「未解決の問題、問題点、論点、論争点、議論の余地がある点」

え?これは意外。まるでしっかりスポットライトが当たっているテーマみたいな扱いじゃないか。思ってたのと完全に逆だ…。午後遅く、同僚リチャードを訪ねて質問してみました。
「話す価値の無いような話題のことだね。」
と、やはり真逆の解説。木曜日にアーバイン支社で会ったリサとマックスにもそれぞれ聞いてみましたが、やはりリチャードと同じ説明をしてくれました。
「辞書には正反対の訳が載ってたんだけど…。」
と言うと、みな戸惑いの表情を見せます。
「いや、そんなポジティブな意味で使った例は聞いたことがないな。」

金曜日にオレンジ支社へ出張した際、言葉博士の(と私が勝手に呼んでいる)トムを発見したので、彼のキュービクルへ行ってダメ押しの質問をしました。トムは椅子をくるりと回転させて振り返り、あごひげをこすりながら張りのある声で解説します。
「議論の余地がある(debatable)というのは正しい訳だと思うな。でもそれは、議論の余地はあるがしてもしょうがない、というネガティブな意味なんだよ。」
そして通路を隔てて隣のキュービクルでコンピュータに向かっていた若い社員に、
「はいデイヴィッド君、例を挙げて下さい。」
と呼びかけます。大喜利じゃないんだからそんな唐突に振られても、と気の毒に思ってたら、当のデイヴィッドはさっきから我々の話を聞いていたのか、こちらを向いてさらりと答えました。
「僕は不治の病で余命半年と宣告されました。でも一方で、明日で世界が終わり、全人類が滅亡するということも知っています。この場合、僕の病気の話はムート・ポイントです。」
「Good job! (よくできました)。」
と、まるで学校の先生みたいなトム。

あとでネットを調べてみたら、これは誤解を経て意味が変容してしまった言い回しだということが分かりました。Moot はそもそもMeet (会う)と同じ語源から来ていて、「あらためて集まって議論しなければいけない話題」つまり「未解決の問題」というのがそもそもの意味だったそうです。法科の学生が訓練のために架空のケースを作って議論する際、これをmoot point と呼んだことから、「議論のための議論」つまり「結論に実務的な価値の無い議論」、「無意味な議論」という意味で使われるようになってしまったのだと。

なるほど。「情けは人のためならず」とか「やぶさかでない」などと同様、辞書に出ている訳と違う意味で使われているフレーズだったのですね。

2011年11月29日火曜日

Out of whack 具合が悪い

昨日の朝、経済通の同僚アーニーからメールが届きました。Seekingalpha.com という投資通が読むサイトの記事リンクが貼ってあります。タイトルは、

Japan’s Unsustainable Debt Burden: Playing With Fire
持続不能な日本の負債:危険な火遊び(拙訳ですが)

この記事は、「日本の経済は国民の貯蓄高が下支えしている」という通説を全くの幻想であるとし、このまま手をこまねいていると債務はコントロール不能な状態に突入しかねないと指摘しています。アーニーが、これにコメントを付け加えます。

Japan’s problems are high debt taken on during last 10 years to stimulate their stagnant, deflationary economy and their aging population (the ratio of retired to productive citizens is getting out of whack).

前半はともかく、この最後のカッコ内が引っかかりました。Out of whack (アウト・オブ・ワック)というフレーズは今まで何度も聞いてますが、一度もきちんと意味を確認したことが無かったのです。「既に引退した人の数と就業人口との比がOut of whack になりつつある」とアーニーは言っているのですが、それってどういうこと?

さっそくwhack の意味を調べたところ、「強く叩くこと、またその音(ぴしゃり)」と訳されています(ちなみに、もぐら叩きゲームは “Whack-A-Mole” と呼ぶそうです)。じゃ、Out of whack は?と続けて調査すると、「調子が狂って、具合が悪くて」となっています。

The copy machine is out of whack.
コピー機が故障してる。

My back is out of whack.
背中の調子が悪い。

なんでだ?「ワック(ぴしゃりと強打)」にアウト・オブを加えても、そんな意味にはならないでしょ。

で、いつものように同僚たちに聞いてみます。まずシャノン。
「知らないわ。なんでかしら。」
次に物知りのディック。
「分かんないな。クレイジーな英語表現のひとつだね。全く意味の繋がりが見えないよな。」
最後にステヴ。
「ただそう言うんだよ。意味?さあね。」

気持ち悪いので、仕事中に調査続行。10分後、ようやく語源を探し当てました。

Whack はもともと、物を叩く時に出る音から来た擬音語であろう、とのこと。18世紀に、盗賊どもが犯罪で得た報酬の分け前をwhack と呼んだことから、「Agreement(合意)」という意味でも使われるようになります。その後、 “In fine whack” という、合意にある、つまり「良い状態」を指すフレーズが生まれます。で、Out of whack が逆の意味で使われ始めた、とのこと。

ふ~ん、なるほどねえ。随分な紆余曲折を経ていたのね。アーニーのメールの最後の文章は、こうなると思います。

“The ratio of retired to productive citizens is getting out of whack.”
「既に引退した人の数と就業人口とのバランスが崩れつつある。」

毎度のことだけど、この言葉をしょっちゅう使っているアメリカ人たちが誰ひとりとしてまともに説明出来なかった事実の方が、語源そのものよりも面白かったです。

2011年11月27日日曜日

Plan for the worst, hope for the best 最悪に備え最善を望む

ここ最近、朝6時に出社して夕方6時前に会社を出る、というサイクルを繰り返しています。他の社員が現れて色々やり取りが始まる前に大量の仕事をやっつける。これは非常に効率が良い。それに、まだ月が出ている静寂の時間帯にガラガラのハイウェイを走るのは、何とも気分がいいのです。


先日の早朝、いつものようにバリバリ仕事を片付けていたところ、三つ隣のキュービクルで働く若い同僚のティファニーが、電話で会話を始めました。彼女も超朝方社員で、大抵二人同じ時間帯に出社するのですが、お互い勢いに乗って働いているため、これまでほとんど会話したことがありませんでした。仕切り壁をいくつか隔てているものの、彼女の口調が徐々に激して行くのが気になり始め、耳をそばだてていたところ、受話器を置くと同時にこう吐き捨てたのです。

“God damn it!”
「ガッデム!」

女性がこういう荒っぽい言葉を使う場面には滅多に出くわさないので、軽く驚くとともにちょっと笑ってしまいました。その数秒後、私の背後を通りかかったティファニーが申し訳なさそうな顔で、
「ごめんなさい。聞こえてた?」
私は好奇心に抗えず、一体何があったのか尋ねてみました。すると、現場に出ているオジサン社員にタイムシートの修正方法を丁寧に教えてあげたのに、その指示に従わずにまた同じミスをした、というのです。

ティファニーは考古学チームの一員で、しばしば発掘調査に出かけます。今回は現場に出ずに調査を仕切っているのですが、彼女は何をやるにも周到に準備して、きっちり仕事を片付けないと気がすまない、とのこと。だからケアレスミスを重ねる人は苦手なのだそうです。
「現場に行く時には、必ず余分な水と毛布、GPS装置、ナイフ、救急セット、その他色々持っていくわ。そのでかいバックパックには一体何が入ってるんだ?ってよくからかわれるけど、まさかのための手は完璧に打っておきたいの。チームで現場に行く際は、なるべくプロバイダーの違う携帯電話を皆で持っていくとかね。私のが圏外になっても他のメンバーの電話が通じるかもしれないでしょ。」

彼女の父さんは Navy SEALs(ネイビーシールズ、海軍特殊部隊)出身、お母さんは看護婦さんで、幼い頃から危機管理については徹底的に叩き込まれて来たそうです。家族でリスクマネジメントについて常に話し合い、何をするにも緻密に調査し、周到に計画を立て、きっちり遂行する。学生時代は大学近くのアパートは借りなかった、と言います。
「キャンパス周辺には必ず、若い女性を狙う変質者が住んでるの。そんなとこに若い女子学生が一人暮らしするなんて、バンビが狩猟地帯(Hunting Ground)に飛び込むみたいなものよ。」

いつからか、人相や仕草で他人の性格や心理が読めるようになったそうで、更には現在、働きながらForensic Science (犯罪科学)の修士号も取得中なのだと言います。
「何か質問されて、答える前にちょっと考えるでしょ。そこで右を向くか左を向くかで、その人が嘘をついているかどうかも大体分かるのよ。」
これについては同居中の彼氏が、たびたび不満を漏らすそうです。今こんなこと考えてるでしょ、などと突っ込まれ、「そりゃフェアじゃないよ!」と。
「じゃあ彼、浮気なんか出来ないね。」
と私が言うと、
「絶対不可能ね。」
と自信たっぷりに笑うティファニー。

畜生、もうちょっと気の利いたコメントが出ないもんかな、と己の凡庸さを呪い、急いでこう付け加えました。
「君は、リスクマネジメントの専門家としてプロジェクト・チームに必ず加えたい人材だよ。」
彼女はちょっと嬉しそうな顔をして、お父さんの座右の銘を紹介してくれました。

“He’s always said to me, plan for the worst, hope for the best.”
「父はいつも私に言うの。最悪に備え、最善を望めって。」

おお、これはなかなか良いフレーズだぞ、とその場で書き留めました。後になって、日本語で同じような慣用句はあるかな、と探したのですが、「人事を尽くして天命を待つ」も「備えあれば憂いなし」も、意味は近いけど微妙に違います。万全の準備をしたら後は静かに結果を受け止めよ、という無欲に近い境地を表現していて、「最善を望め」とするアメリカと較べると、いかにも日本的だな、と思うのでした。

帰宅して、妻にティファニーの話をしたところ、「仕草から心理が読める」というくだりですかさず、
「あら、じゃあ彼氏、浮気出来ないわね。」
と突っ込んで来ました。

夫婦で思考回路がまったく同じ。とほほです。

2011年11月25日金曜日

Oxymoron 矛盾語法

昨日の晩は、友人宅で感謝祭のディナーを愉しみました。家主のマイクさんは法廷弁護士で、仕事柄、言葉の使い方に人一倍敏感です。彼は「物語のパワー」というものに特に魅せられていて、人類学、脳神経学などを独学しながら、なぜシンプルなストーリーが聞く人の感情を揺さぶり、彼らの行動を変えるのかを研究し続けているのだそうです。毎週月曜の晩はあるクラブに通っていて、そこには多様なバックグラウンドの老若男女が集い、知的なゲームで脳を鍛えているのだとか。お題を与えられたらそれに関連する話を間髪入れずに作り出す大喜利みたいなのとか、「その言葉はBike と韻を踏んでいます。さて何でしょう。」と誰かが言うと他の参加者が次々とステージに出てこれと思う答えをジェスチャーだけで示し、皆がそれを当てる、とか。

「じゃ、ひとつやってみよう。」
とマイクさんが教えてくれたのが、Three-Headed Oracle (三つ首の賢人)というゲーム。三人が並んで座り、誰かの質問に答えるのですが、一回に口に出来るのは一人一単語まで。隣の人の発した単語に他の単語を続け、次の人がまた他の単語をくっつけ、意味が通る文章を協力して構築しつつ、聴衆を笑わせるような「ひねり」も入れる。たとえば「明日の天気はどうですか?」と聞かれたら、
「明日」
「お日様」
「は」
「東の」
「海岸」
「から」
「のぼる」
「ことは」
「ないでしょう」

みたいに。誰かが突然とんでもない方向に話題をぶれさせると、隣の人は動揺します。しかしそこを巧妙に修復すると、笑いが起こるのですね。これ、やってみると異常に難しいのです。マイクさんは、
「考えすぎて硬くなっちゃ駄目。リラックスすればするほど良いアイディアが浮かぶよ。」
と言うのですが、英語学習者にとっては最上級レベルの試練だと思います。

さて、話の流れから、Oxymoron (オクシモロン)について語ることになりました(「アクシマラン」と聞こえます)。これは日本語で矛盾語法とか撞着語法とか呼ばれていて、相反する二つの単語を組み合わせて作られた言葉を指します。詩的な文章などに多く使われる、洗練された言葉遊びです。古代ギリシャ起源のラテン語が語源だそうで、oxy は「鋭い」、moron は「鈍い」という意味。

たとえばさ、と私がいくつか例を挙げました。
Sweet pain (甘い痛み)
Slim fat (スリムな脂肪)

すると、すかさずマイクさんが事も無げに続々と例を繰り出しました。そのスピードに感心していたところ、最後にこんなのを付け足し、奥さんの顔を見て悪戯っぽく笑いました。

True love (真の愛)

これは断じてOxymoron じゃありません。彼一流の「ひねり」なのですね。脱帽です。

2011年11月23日水曜日

なぜ感謝祭に七面鳥を食べるのか?

明日はサンクスギヴィング・デー(感謝祭)。親戚一同が一年に一度大集合して食事する、アメリカ人にとっては非常に大事な祝日です。我が家はというと、今年は友人一家に招かれていて、ターキー(七面鳥)料理を頂きます。毎年誰かしらの家に招待され、ご馳走としてふるまわれるターキー。

昨日同僚エリカと電話で話した時、彼女は感謝祭にターキーは食べないと言ってました。
「好きじゃないのよ。味が。」
そう、ターキーって格別美味しいわけじゃないんです。これは私の好みだけの問題じゃないことが最近分かって来ました。何人ものアメリカ人に聞いてみたのですが、味が大好きという人に会ったことは皆無。肉はパサついてるし、皮にも全然旨みが無い。比内鶏や名古屋コーチンを横綱とすれば、序二段くらいかな。しかもこの鳥は見た目が滑稽なまでに醜く、

“That’s a real turkey!”
「そいつはひどい失敗作だな!」

“She acted like a complete turkey.”
「あの子、とんでもないバカみたいに振舞ってたわよ。」

などというネガティブな表現に使われるほどの鳥なのです。これを感謝祭のディナーの時だけ特別扱いする。なぜか?当然、感謝祭の由来や趣旨と関連があるはずです。二人の同僚に尋ねてみました。

まず、身近なところでシャノン。
「大家族で取り分けても余るほど大きいからじゃないかしら。」

次に、物知りのディック。
「ターキー業者のマーケティングの成果じゃないかな。」

埒が開かないので、ネットでリサーチ。結果、諸説紛々であることが分かりました。いくつか紹介します。

ピルグリム(清教徒)が東海岸に入植し、収穫を祝った際(これが感謝祭の起源説として有力)にターキーを食べたから、という説。しかしこれが書かれたのは最初の感謝祭から22年も後のこと。しかも、ピルグリムたちは様々な種類の鳥をまとめて「ターキー」と呼んでいた、とも言われている。

ベンジャミン・フランクリンが「ターキーは敬意を払われるべき鳥だ。」と唱えていて、ターキーをアメリカのシンボルにすべきだとまで訴えていた。だから、というのが二番目の説だが、感謝祭との繋がりは不明。

三番目の説はこれ。イギリスのエリザベス女王一世が、祝祭には決まってカモを食べていた。自国を攻撃しようと向かっていたスペインの船が謎の沈没を遂げた時も、これを祝ってカモを食べた。で、カモはイギリス人に愛される食べ物になり、収穫を祝う際に食されるようになった。ピルグリム達がアメリカに渡った際にこの伝統を継承しようとしたのだが、カモが見つからず、そこらに沢山いた七面鳥で代用した。

う~む。まったくもって釈然としない。大体、サンクスギヴィングの起こりからして統一見解が無いようなので、これ以上の詮索は無意味なのかもしれません。

今朝テレビをつけると、
「明日は一年で一番私の好きな日です。」
とホワイトハウス前でスピーチするオバマ大統領が映っていました。娘二人を脇に従え、リバティとピースと名づけられた二羽の七面鳥の救済を承認する旨を発表しているのです。(参照記事:CNN: Obama spares two turkeys, continuing White House tradition

大統領がターキーに恩赦を与えるというのは、この時期の恒例行事らしいです。毎年この日だけで、4500万羽も食卓に上ってるらしいですから、二羽だけ救ってもどうかと思うんだけど、それより何より、それだけ夥しい数の人が、ただ伝統だからというだけで、美味くもないターキーを食べている、という事実の方が驚きです。

{追記}
友人宅でご馳走になったターキーですが、これがかなり美味かった。料理の方法によるのかも…。

2011年11月20日日曜日

Awkward 気まずい

先日の昼前、同僚マリアのオフィスを訪ね、ランチへ行かないかと誘ったところ、
「クリスと一緒に Gastrotruck へ行ってみようって話してたの。興味ある?」
なに?ガストロトラック?なんじゃそりゃ。

マリアの説明によると、サンディエゴの各所を巡回するフードトラック(屋台みたいなもの)があり、彼らが提供するハンバーガーは絶品だとのこと。ガストロってのは胃のこと。普通ならフードトラックと称するところをわざわざガストロトラックと名乗るなんて、洒落てるじゃないか。
「いいね。乗った。でも、いつどこに来るかってどうやったら分かるの?」
「ネットで調べるのよ。ええと、今日は…。」
なんと、私の住むエリアに来ているとのこと。
「よし、じゃ、僕が運転するよ。」
さっそくマリアとクリスを乗せて出発。

車中、マリアから基礎的なレクチャーを受けました。このトラックはMIHOという名で、地元の新鮮な有機野菜を使ったメニューが売りだとのこと。キャッチコピーは「Farm to Street」、つまり農場からストリートへ直送、という意味ですね。

「ちょっと待って。ミホっていうの?それ日本人がやってんの?」
「え?ミホって日本語なの?」
「うん、その可能性は充分あるよ。」
「確かウェブサイトにアジア系の人が写ってたわ。そうかもね。」

10分ほど車を走らせた末、道端に停まっている白いトラックを発見。近くのオフィスビルから人がアリの大群のように続々と出てきて、長い列を作っています。10分ほど列に並んだ末、ようやく自分の順番が来たので、レジを打っていたラテン系の若者に、MIHOという名の由来を尋ねました。
「このビジネスを始めた人の名前から来てるんだよ。」
という回答。
「その人、今ここにいるの?」
と聞くと、さっと道端を指差します。その先に視線を移すと、若くて浅黒いメキシコ系男性が、強い日差しを浴びて佇んでいます。え?彼がMIHO?
「彼の父方の苗字からMIを取って、母方の苗字からHOを取ったそうだよ。」
とレジの若者が続けます。な~んだ。そういうことか。

クリスとマリアと一緒に注文を終え、くるりと振り返った時、二人連れの女性がオフィスビルを背に、列に加わろうとやって来るのに鉢合わせしました。胸元の大きく開いたオレンジ色のタンクトップを着た女性がさっと顔を輝かせ、
「あら、マリアじゃない!?」
と小さく叫びました。振り向いてマリアを見ると、ほんの刹那かすかな戸惑いが顔をよぎったものの、すぐに気を取り直したようで、明るく彼女の名を呼び返しました。
「ほんと久しぶり。元気だった?」
その女性は屈託無く再会の興奮を滲ませ、会わずにいた間の空白を埋めようと盛んに質問していました。マリアの飼っている犬のことやら今やっている仕事のことやら。そして全くの初対面である私の目をまっすぐに見詰めて、
「私たち、ご近所さんだったのよ。」
とにこやかに解説してくれました。注文した品を全員受け取ると、
「折角だから、皆で一緒に食べない?」
と彼女に誘われるまま、オフィスビルの谷間へと移動します。

パラソル付きの円卓に5人で陣取り、自然食ランチと会話を楽しみました。クリスが、
「僕のフレンチフライ、良かったら少し食べない?ひとりじゃ食べ切れそうもないから。」
と勧めると、二人の女性は遠慮なく手を伸ばします。マリアの友達は盛んに喋り、終始その場の雰囲気を支配していました。

帰りの道中、ふと気になってマリアに尋ねました。
「あのさ、以前 Elephant in the Room って話をしてくれたじゃない。もしかしたら彼女、あの時のカップルの片割れじゃない?」
するとマリアが、
「よく分かったわね。その通りよ。」
とため息をつきました。
「やっぱりそうか。何だか様子がおかしいな、と思ってたんだ。」
「まさかあんなとこで再会するとは思わなかったわ。どこに引っ越したかも知らなかったし。」
「それにしても彼女、全く平然としてたね。」
「そうなのよ。驚いたわ。私としては、色々言いたいことがあったんだけどね。彼がどんなに落ち込んでるか分かってるの?とかね。あの女が突然出て行ってから、彼はずっとヒゲを剃らずにいるのよ。」
「そんな話題には絶対触れさせないぞ、っていう凄みがあったよね。」
「圧倒されっ放しだったわ。」
「でも君、見事に平静だったね。偉いよ。」
「ありがと。」

そして彼女が言ったのが、これ。

“It was really awkward.”

Awkward (「アークワド」と発音)という単語は、一般に「ぎこちない」とか「不器用な」などと訳されているようですが、今回のケースを含め、大抵は「気まずい」という意味で使われているような気がします。

“It was really awkward.”
「滅茶苦茶気まずかったわ。」

Awkward を使うのに、これ以上ぴったりしたシチュエーションは無いなあ、と静かに振り返る午後でした。

2011年11月16日水曜日

Ramification と Repercussion

先週、無料英語教師(私が勝手にそう決めた)テリースのオフィスをふらりと訪ね、こんな質問をぶつけてみました。
「ラミフィケーション(Ramification)とリパーカッション(Repercussion)ってのがありますよね。意味の違いを教えてもらえますか?」
これは、長いこと引っかかっていた疑問。誰かの言動が元で何かが起こる。その結果を表現するのに両方の単語が使われるのは知ってるんだけど、どっちをどういう場面で使うべきなのかが分からないのです。

意外にも、ぐっと詰まるテリース。え~っ?こないだは何聞いても即答だったじゃん…。
「そうね、…基本的には同じよ。Consequence(結果)とかeffect (影響)ってことね。」
やっと搾り出した回答がこれ。うそでしょ。そんな答え許されるの?英語のプロとして。
「どっちも行為の結果のことですよね。リパーカッションには、大抵ネガティブな含みがあるような気がするんですが…。」
「そうね。私もそう理解してるわ。」
なんだか歯切れの悪いテリース。結局、色々説明を試みた挙句、
「やっぱり同じよ。」
という投げやりな結論。体調でも悪いのかな、と訝りながら彼女のオフィスを後にしました。

数日後、同僚ステヴに同じ質問をしたところ、見ていて申し訳なくなるほど深刻に考え込んでしまいました。
「う~ん。難しいなあ。ちゃんと考えたことなかったよ。」
そうか、アメリカ人がそんなに悩むほど違いが微妙なのか…。

二人で暫く話し合った結果、やはりどちらも「結果」「影響」という意味で使われる、という結論に落ち着きました。違いがあるとすれば、以下の点。

Ramification は、何かの結果が次の結果を生み、枝分かれして広がっていく。その過程で、ポジティブにもネガティブにもなり得る。Ramify が「分岐する、派生する」という意味なので、これは何となく視覚的にイメージ出来ます。

Repurcussion は、事件や言動に対して重大な結果が返って来ること。大抵は一回きりで、ネガティブな意味合い。「パーカッション(叩いて音を出す)」にRe がついていることから、パンと叩いた音が壁に当たって跳ね返ってくるイメージでしょうか。

後日、同僚リタと世間話をしていた際、彼女の娘さん(小学校高学年)の友達が、顔のはっきり写った水着姿の写真をネットにアップしたことに触れ、こうコメントしました。

“She doesn’t really think about the repercussions.”
「どんな結果が待ってるか、ちゃんと考えてないのよね。」

この場合、Ramification を使うのは無理があるでしょう。「女子小学生の水着写真ネット流出…。」直接的でネガティブな結果しか想像出来ないもんな。

ステヴとリタのお陰で、違いが明確に理解出来ました。

2011年11月14日月曜日

Hodgepodge ごちゃ混ぜ

5月から、週3、4日のペースでダウンタウン・サンディエゴ支社に詰めています。助っ人としてPMを任されているため、いわば傭兵。別の事務所に自分のメインオフィスがあるため、更にもうひとつオフィスを構えるということは許されません。あくまで暫定的に、空いたスペースを渡り歩く暮らし。

9月まで間借りしていた5階のキュービクルは、ジュリーという中堅PMの陣地。彼女が育児休暇から戻って来たと同時に、私は5階から6階へと押し出されました。これまでは生物環境系の専門家に囲まれていたのですが、6階の連中はちょっと毛色が違うことに気づきました。

ステヴ  人類学者
フェリース 経済効果分析の専門家
ジェシカ  住民説明の専門家
ジル   建築史の専門家
ジョーン  グラフィック・アーティスト

今日の午後、会議の切れ目で5分ほど時間が空いたので、ジルのオフィスに立ち寄って彼女の業務内容について質問してみました。
「多いのは高速道路の拡張事業がらみね。工事予定エリアに近接する建造物を調査して報告するのよ。自治体から、管轄内の歴史的建造物をくまなく調べてくれって依頼されることもあるわね。そういうのは、文句無しに最高の仕事よ。」

世の中には色んな仕事があるんだなあ、と感心することしきり。
「それにしても、このフロアって全く違う業種の人たちが寄り集まってるんだね。」
とコメントすると、ジルがニコッと微笑んでこう言いました。

“It’s really a hodgepodge.”
「ほんと、ホッジポッジよね。」

おお、この単語、過去に何度も聞いてるぞ。なんだっけ?帰宅後、さっそく調査。

hodgepodge (ホッジポッジ)は hotchpotch (ホッチポッチ)の変化形だそうで、そもそもは hochepot が語源。hoche(シェイクする)pot(ポット)、つまりスープのこと。日本語にすると「ごった煮」ですね。で、それが転じて「ごちゃ混ぜ」とか「混乱した状態」を指すようになったらしいです。ジルが言わんとしていたのは、こういうことですね。

“It’s really a hodgepodge.”
「ほんとにごちゃ混ぜよね。」

2011年11月12日土曜日

Nickel and diming ケチケチする

先月、こつこつとプロジェクトマネジメント・トレーニングの準備をしていた時、Change Management(変更管理)のところで悩んでしまいました。私が強調したかったのは、これ。

「追加予算を要求するまでもないほど些細な変更だと思って見過ごしたものが、みるみるうちに巨大事案に変貌していくことがある。気がついた時には、相当量の仕事を無料で終わらせてしまっている。その時点で変更要求をしても手遅れ、という例は無数にあります。で、醜い法廷闘争に発展する。こういうのは最初が肝心。どんな些細な変更でも、まあいいや、サービスだ、ちょっと残業してやっつけちゃうか、とやり過ごしてはいけない。必ず事前に文書化し、クライアントに変更確認すること。」

PM経験者ならずとも、大抵大きく頷いてくれるポイントです。しかしこれは、「言うは易し行うは難し」の代表例なんですね。分かっちゃいても、なかなか実行に移せない。それは何故か。ここんとこをスパッと説明する一言が欲しいな…。

その数日前、ダウンタウン・サンディエゴ支社の大御所であるレイに、私のプレゼンに挿入するケース・スタディ・セッション(実務経験を披露し、皆でそのことについて意見を交換する)を依頼しました。彼はこれを快諾し、自分のプレゼンのあらましをメールで送ってくれました。その中に、ハッと目を引く一文が…。

We tend to feel like nickel and diming.
我々はともすると、ニッケル・アンド・ダイムしてる気分になりがちです。

ニッケル・アンド・ダイム(nickel and dime)というのは、「ささいな」とか「小額の」という意味です。ニッケルが5セント硬貨、ダイムが10セント硬貨を意味しているので、直訳すれば「5円10円レベルの話」ですね。レイはこれに ing をくっつけて、「ケチケチと小銭をせびる」という動詞として使っていたのです。よっしゃ、こいつはいいぞ!さっそくこのフレーズを拝借し、スライドにおさめました。

Feeling like nickel and diming?
ケチケチ小銭をせびってる気分?

その下に、蔑むような表情を浮かべる女性(クライアント役)の写真がバーンと大映しになります。で、続けてこう書きます。

Actually, we are helping our client to avoid future disputes.
実のところ我々は、クライアントが将来揉め事に巻き込まれないよう手助けしてあげてるんですよ。

キマッタ。これは聴衆のハートにしっかり届いたようです。後日、レイにあらためてお礼を言いました。

2011年11月10日木曜日

Aptitude と Attitude

先日採用されたシャノンと私の名前が、「プロジェクト・パフォーマンス・チーム」として正式に組織図に載ることになりました。二人でPMたちをサポートし、組織全体の効率を底上げしようというのがマネジメント層の腹。

月曜の朝、チーム結成後初めての電話会議がありました。ロスからはエリックとマイラ、アーバインからリサ、そしてサンディエゴからはミケーラとシャノンと私が参加。まずは問題を抱えているプロジェクトのリストを点検しました。いわゆる「パレートの法則(2割の最重要課題を解決することで8割改善できる)」に基づいて優先順位を決めていこうという話です。

リストのチェックが終わった後、
「それじゃ、誰がどのPMをサポートするかここで決めようじゃないか。」
とエリック。彼がまず提起したのが、PMのタイプ分け。どんなタイプのPMかによってアプローチが変わってくる。従って誰が対応するべきかも変わってくる、というのが彼のロジック。

満を持して彼が提案したのが、三つのA。

Availability 時間に余裕があるかどうか
Aptitude   能力や適性があるかどうか
Attitude   学ぼうという姿勢があるかどうか

ううむ、これはカッコいいじゃないか、と感心しました。特にAptitude (アプティテュード)とAttitude (アティテュード)を続けて洒落るところなんざ、さすがエリック。何百人もの部下を抱える立場にあるからこそ出てくる発想だよなあ。

会議終了後、Aptitude の意味をあらためて調べたところ、「適性」とか「能力」という説明が多かった(Aptitude Test「適性試験」が一例)のですが、次にAttitude を調べ始めてびっくり。なんと、Attitude の語源はAptitude だというのです!ええ~?なんで?

14世紀に発生したと思われる、「フィットする、適応する」という意味の単語、アプト(Apt)がそもそもの大元。ここから16世紀に派生したのがアプティテュード(Aptitude)で、意味は「どれだけ的確に目的やポジションに自分を合わせられるか」。これが17世紀になって、「姿勢」という意味合いからアティチュード(Attitude)に転じたのですね。

ひとつ賢くなりました。

そういえば数年前、妻がアメリカ人の経営する小さな会計事務所にパートタイムで勤めたことがあるのですが、毎回ひどく邪険で横暴な扱いを受けたため、これはきちんと思うところを伝えておいた方がいいと判断し、とっさに

“I don’t like your attitude.”

と口にしてから、激しく後悔したそうです。彼は烈火の如く怒り、間もなくお払い箱になりました。Attitude という言葉は、日本では「態度」と訳していますが、実際はむしろ「マナー」の方が近いようです。

彼女のボスは、
「あんたのマナーはなってない。」
とバカにされたように受け止めたのかもしれません。私が当時に戻って彼女に助言できたとしたら、こんなセリフを提案したことでしょう。

“I feel being treated disrespectfully.”
「(ひとりの人間として)きちんと扱われていないように感じるんです。」

ま、そんなオヤジの下で長々働かなくて良かったけどね!

2011年11月4日金曜日

ハロウィンの怪談プレゼン

月曜日はハロウィンでした。今年は友人宅に招かれ、子供たちはコスチュームを纏って夕闇の中、近所の家々を回りました。

この日の昼、ダウンタウン・サンディエゴのオフィスでプレゼンがありました。同僚ステヴ(スティーヴンを縮めたニックネーム)が全米各地へ出張した際に経験した不思議な話を披露する、というのです。写真や地図がふんだんに使われたパワーポイントのスライドをめくりながら、彼は次のような怪談・奇談を語り始めました。

ネイティブ・アメリカン居住区に作られた巨大迷路
自分に憑いた悪い霊を振り払うために歩くのが目的だが、ゴールに着く前に死んだ人の名を口にしてはいけない。その霊がやってきて貴方にとり憑いてしまうだろう。

巨大ナマズの怪
ある沼に体長10mを超えるナマズが住んでいて、住民は主としてあがめている。ある子供が落ちて溺れた時、背中に乗せて岸まで届け、はっきりと、子供から目を離してはならない、と親をたしなめた。

幽霊ホテル
アラスカ沖に住民わずか90人の小さな島があり、一軒だけあるホテルは幽霊が出ることで有名。自分も半信半疑だったが、明け方までドアを叩く音が続いて眠れなかった。隣にある墓地から毎晩亡霊がやって来て悪さをすると信じられている。

プレゼン終了後、どうしてステヴがこんな珍しい体験を重ねているのか不思議になりました。早速、彼のオフィスを訪ねます。
「ステヴ、君は人類学者(Ahthropologist)だって言ってたよね。具体的にはどういう仕事をしてるの?」
「国立公園でインフォメーション・センターを作る際、上映するスライドやパンフレットが必要になるでしょ。そのためには地域の文化や歴史の調査をしなきゃならない。そういう仕事を請け負うことが多いね。」
「発掘調査もやるの?墓を掘り起こすとかさ。」
「うん、それもたまにあるね。」
「へえ、面白そうだな。でも出張が多そうだね。」
「一箇所に一ヶ月以上滞在して徹底的に調べる、というケースがほとんどだね。」
「なんだかインディ・ジョーンズみたいだなあ。」
彼はニッコリ笑って頷き、あたりをキョロキョロうかがってから声を落とし、いたずらっ子のような表情でこう言いました。
「あまり大きな声じゃ言えないけど、僕はうちの会社で一番楽しい仕事をしてると思うよ。」

彼のプレゼンの中に、人間の顔をした大鹿が森に住んでいて、これが守り神と信じられている地域がある、というエピソードが出て来ました。
「残念ながら、その守り神を実際に目撃したという人に会うことは出来ませんでしたが、ネットで探したところ、人間の顔をした羊を発見しました。」
そう言って不気味な写真を映した途端、背後から高い声。
“We know how THAT happened!”
「これは原因がはっきりしてるわよね!」

振り返ると、中年社員のメリーがにんまり笑っていました。一同爆笑。私はこのコメントがドカンとツボに入ってしまい、3分くらい笑いが止まりませんでした。

2011年10月29日土曜日

キャンプの達人

先週末は、サファリパーク内のキャンプ施設に家族三人で泊まりました。なんと一ヶ月の間に三回のキャンプ。どうしちゃったの?ってくらいの入れ込みよう。これは午後4時半にスタートして翌朝9時半までのプログラムで、夜の園内ツアーが見所です。闇の中で動き回るキリンやサイやライオンを見学する、というのはなかなか出来ない経験。寝袋と防寒具と懐中電灯だけ持参すればOKなので、初心者でも心配無用。晩飯も朝食も出るし、夜はキャンプファイヤー。マシュマロを串に指して炙り、チョコレートと一緒に食べる「スモア」まで用意されてる。至れり尽くせりです。
昨日の午前中、サンディエゴのオフィスで環境部門のオフィスマネジャーをやってるジムと話していたら、
「あ、そうだ、キャンプはどうだった?」
と思い出したように尋ねました。そういえば、先日彼にはこの話をしてあったのです。
「すごく楽しかったよ。夜中に目覚めてテントを出て、少し離れたところにあるトイレまで歩いた時、闇の中でたくさんの小動物が藪の中へ逃げていく音が聞こえて、ちょっと怖かったな。」
「そいつは珍しい体験だね。」
そこへ熟練PMのダグがやって来て、会話に加わりました。
「ダグも僕も、コロラドの山の中で育ったタイプで、子供の頃からキャンプばかりしてたんだ。今でも年に数回は狩りと釣りも兼ねたキャンプだね。」
そう言うジムに合いの手を入れるように、
「ああ、俺は年に一回だけどね。」
とダグ。
「狩りって何を?」
と私。
「ま、大抵は鹿だね。」
と二人。

それから彼らは、獲物を乾かすため、皮を剥いで岩の上に一昼夜置いておくこと、しかもそこからキャンプ地までは十分距離を取ること、などを教えてくれました。
「熊にやられるかもしれないからね。獲物を持っていかれることはしょっちゅうだけど、それでも巻き添え食らって殴り殺されるよりはましだろ。」
一口にキャンプといっても、レベルが色々あるんだな、と悟りました。この二人は文句無しに、筋金入りのキャンパーです。

その後、エド、リチャード、そしてマリアと一緒に地中海料理のお店でランチ。私は炒めたラム肉をナンみたいな生地で包んだ物を頼みました。ここへマリアの友人のジョナサンが合流し、何故かまたキャンプの話題になりました。ジョナサンは、近いうちにハンティングに行くと言います。
「ボア(イノシシ)を撃ちに行くんだ。もともと外国人が連れてきて野に放したのが繁殖し過ぎちゃって、在来種を駆逐してるんだな。だからボア狩りは奨励されてる。」
「しかもその肉がウマいと来てる。」
ニヤリと笑うエド。リチャードも、自分は一度アーチェリーを使ってみたい、なんて口を挟みます。

ええ~っ?みんな普通にハンティングしてんの?ちょっとショックでした。帰宅し、夕食時にこの話をしたところ、鹿を撃つ、というくだりで9歳の息子が泣き出しました。可愛い鹿を殺すなんてひどい、と訴えるのです。
「でもね、私たちは皆、殺された動物を食べてるのよ。」
となだめつつ教えを説く妻。
「でも鹿を食べなくたっていいじゃない!」
と抵抗する息子。その後、イノシシ狩りの話題を持ち出すと、急に目を輝かせて、
「僕もやってみたい!」
と俄然元気を見せる9歳児。おいおい、イノシシはいいのかよ?!

続いて今日私が食べたラム料理の話になり、
「僕もラム食べてみたい。」
と嬉しそうに言うので、
「ラムって子羊のことだよ。」
と説明すると、再びさめざめと泣き出す息子でした。

2011年10月28日金曜日

Homogenized 均質化された

昨夜は、同僚ジョシュを誘って「和ダイニングおかん」へ行きました。彼が貸してくれたDVDを返しがてら、うまい和食に舌鼓を打ちつつ映画談義を愉しもう、という企画。

借りたDVDというのが、黒澤映画「影武者」、それに三島由紀夫の生涯と作品を描いた「Mishima: A Life in Four Chapters」です。ジョシュは、日本の名画を何百も観てきたという日本映画通。黒澤、小津、伊丹、と映画監督の名を次々に挙げて彼らの作品について論じてくれました。ちょっと感心したのが、俳優や歴史上の人物の名を、日本式に苗字から先に言うこと。

タケダシンジェン(武田信玄)
ミシマユキコ(三島由紀夫)

と、ちょっとずつ間違っているのが可愛いんだけど。

私に貸したDVDについては、
「ミシマの作品を読んだことのない人にはちょっと厳しいかもね。」
なんてカッコいいコメントまで加えたりして。これで日本へ行ったことは無い、というのだからビックリ。

最近のハリウッド映画は最低だ、と日頃から毒づいていて、日本映画の優れたところは体制に迎合しないことだ、と持ち上げます。
「たとえばさ、ハリウッド映画でウェイトレスが主人公だった場合、決まってびっくりするほどの美人で、しかも生活レベルもそこそこだったりするでしょ。有り得ないよね。日本映画だと、現実の厳しさを正直に表現してくれるんだよ。後悔や挫折、日々の細かい気持ちの揺れさえも、観客に伝えようとする。ほんと最高だよ、日本映画は。」

なるほどね。そう言われてみれば確かにハリウッド映画は、全く現実味の無い話を臆面も無く延々と見せるよな。
「アメリカじゃ、マスマーケットにウケる映画しか作らなくなってるんだよ。資本主義の行き着く先は、結局そういうことなんだ。こないだカンザス州に行く用事があったんだけど、ショッピングモールに入ったら、ここはカリフォルアか?と見紛うほど店のラインナップが酷似してたんだ。何でも均質化しちゃってるんだよね。」
この時ジョシュが使った表現が、これ。

“They are all homogenized.”

ホモジナイズド。均質化。う~ん、クールな単語だねえ。

「日本だったら、北海道、本州、それに九州、と行く土地土地で景色が違うだろ。」
なんで日本に一度も行ったことがないのにそんなこと知ってんの?と不思議になって、彼の興味の源泉を尋ねてみました。
「それは自分でも分かんないよ。ただ日本が好きなんだ。」

この後、幕末から明治にかけての歴史談義になり、私がペリー来航の話題を持ち出したところ、さっと顔色を変えて苛立ちを露にしました。

“I hate that guy. He coined the term “Gunship Diplomacy” that makes me embarrassed as an American”.
「あいつなんか大嫌いだ。砲艦外交なんて言葉を作りやがって、同じアメリカ人として恥ずかしいよ。」

そして、吐き捨てるようにこう言いました。

“He’s such a fxxkin’ asshole!”
「あいつはホントに大馬鹿野郎だよ!」

まるでペリーと面識があるみたいな言い草。笑いました。

2011年10月26日水曜日

An endangered species 絶滅危惧種

今朝、環境保護の専門家であるジムに会った際、こんな質問をぶつけてみました。
「よくspecies(スピーシーズ)っていう言葉を聞くけど、これって単数なの?それとも複数なの?」
これは不意を衝かれた、という表情で暫くもごもご説明を試みた彼ですが、急に遠くを見るような目になってこう言いました。
“That’s a good question. I don’t know.”
「それは良い質問だね。僕には分からないよ。」
そして、Technical Editor と話すことを薦められました。

テクニカル・エディターというのは、プロジェクトの成果品であるレポートなどを検閲して言葉使いやスペルの間違いを正したり表記を統一したりする専門家。
「その人、どこにいるの?」
と尋ねると、彼が廊下の奥を指差しました。
「テリースって人だよ。彼女に聞くといい。」

何度か角を曲がったどん詰まりに、テリースのオフィスがありました。ノックして入ると、150センチあるかないかの小柄なおばさんが振り向きました。100パーセント白髪のショートヘア。60歳くらいかな。メガネの奥の穏やかな目。これまで何度かすれ違ったことがあったけど、一度もまともに会話したことのない、おとなしいタイプの女性です。図書館司書みたいな雰囲気。

「英語の質問したいんだけど、良いですか?」
「どうぞ。」

ふと彼女の書棚に目をやると、分厚い辞書がひしめき合っています。
「Endangered species (絶滅危惧種)って言葉がありますよね。Species って、単数ですか?それとも複数ですか?」
「どちらにも使うわよ。」
おおっ、即答!
「とすると、California Gnatcatcher is an endangered species. と単数扱いしたり、There are endangered species in this area. のように複数扱いしたり出来るということですか?」
「その通りよ。」

静かに微笑みながら事も無げに答えるテリース。あまりの即答に驚嘆し、お礼を言って部屋を出ました。しかしすぐに戻ってこう続けました。
「何度もごめんなさい。じゃ、headquarters はどうですか?」
「それは単数よ。」
げげっ!またしても超即答!
「じゃ、Our headquarters is in Los Angeles. と言えるわけですね。」
「そうよ。」
ニッコリ笑うテリース。
「本当にどうも有難う。」
「いつでもどうぞ。」

興奮して彼女のオフィスを後にしました。よ~し!無料の英語教師をゲットしたぜ!

2011年10月24日月曜日

英語を学ぶ動機

中学生の頃、雑誌の裏表紙の広告に写っていた金髪の若い女性に釘付けになりました。
「世の中にこんな綺麗な人が存在するんだ!仲良くなって話が出来たらどんなに楽しいだろう。」

これが英語学習の最初の動機でした。当時の日本は今みたいに国際化していなかったから、白人女性を目にすること自体、滅多にないことだったのです。その後も色々あったけど、あの写真ほど強烈な推進力を与えてくれる物は二度と現れませんでした。

今日、渡米後11年目にして、初めての部下が出来ました。金髪で青い目の、とても感じの良い女性です。16歳の息子さん、13歳の娘さんがいるとのこと。

タイムマシンに乗って中学生の自分にこの話をしたら、ぶったまげるだろうな。

2011年10月23日日曜日

Thought-provoking movies 色々考えさせられる映画

うちのアパートの管理棟の二階には、大型スクリーンを擁するミニシアターがあります。毎週水曜と金曜の晩には住民を集め、DVD発売されたばかりの映画を上映してくれるのですが、最近までそのサービスをほとんど利用していませんでした。それが何かの拍子に、数ヶ月前から突然家族でシアター通いをスタート。

先々週の金曜は、「トランスフォーマー」の最新作を鑑賞。9歳の息子は大いに楽しんでいましたが、我々夫婦は不思議な疲労感を共有していました。

一昨日(金曜日)、同僚リチャードとランチに行った際、「トランスフォーマー」の感想を語り合ったのですが、その時の私の主張はこれ。
「確かに面白いし、観ている間はドキドキしたりもするんだけど、エンドロールが始まると同時に虚しさに襲われるんだよね。途轍もなく無駄な時間を過ごしちゃったような気になってね。心に残るセリフはひとつも無いし、リアリティもゼロ。何か人生に役立つ教訓を学ぶ、なんてこともない。ま、そんな小うるさいことを言わず、頭を空っぽにして楽しめばいいじゃん、と思えば思えるんだけど、どうもこういうハリウッド気質丸出しの映画って苦手なんだ。人生ってフェアじゃないよな、とか、この人のセリフって深いなあ、とか考えさせられるタイプの映画が、やっぱり好きなんだよね。」

この時の、リチャードの合いの手がこれ。

“I know. You like thought-provoking movies.”
「そうだよね。Thought-provoking な映画が好きなんだもんね。」

それそれ!そのフレーズを探してたんだよ。直訳すれば「思考を挑発する」ですが、要するに「色々考えさせられる」という意味。昔から、私はそういう映画が好みなのです。

その晩、「パイレーツ・オブ・カリビアン」を家族で鑑賞しました。これが結構面白かった。特に人魚の出てくるシーンは抜群。裸の肩を水面上に覗かせた、若くて綺麗な人魚たちが大勢で船を取り囲み、船乗りたちを誘惑する。船員の一人が、その魅力に釣り込まれて顔を海面に近づけた途端、人魚のひとりが牙を剥いて恐ろしい表情に豹変。次々に男どもを海中に引きずり込んで行く。このシーンは圧巻でした。

でもね。

やっぱり映画が終わった後、なんて無駄な時間の使い方をしちゃったんだろうっていう虚しさが残るんですよね。教訓はと言えば、「綺麗なおねえちゃんが大勢で誘って来る時は絶対やばいぞ」くらいだし、それも大して目新しい話題じゃない。5秒でいいから、 Thought-provoking な場面を用意して欲しかった…。

2011年10月20日木曜日

That will raise hell! 大騒ぎになるぞ!

昨日はダウンタウン・サンディエゴのオフィスで、プロジェクトマネジメント・トレーニングの講師を務めました。終了後、同僚ディックから、
「俺が今まで受けた中で最高のトレーニングだったよ。」
と褒めてもらい、上機嫌。
「良かったら、一緒にまたバーガーラウンジへ行かない?」
と誘われたので、二人でお気に入りのハンバーガーを食べに行きました。

「能書きの羅列に終始せず、具体的な解決策をひとつひとつ紹介したのがすごく良かったね。しかも専門的な話に偏らなかったから、頭にすんなり入ったよ。」
とディック。
「どうもありがと。ところでさ、Headquarters (本部)って単数なの?それとも複数なの?ISOの本部がスイスにあるって話をする時、 “The ISO’s headquarters is in Switzerland.” って言って良いのかどうか迷ったんだよね。だってもしも複数なら is を使えないはずでしょ。かと言って are を持ってくるのも気持ち悪いし。どっちが正しいわけ?」
「う~ん。俺には分かんないな。」
「え?分かんないの?」

バリバリのアメリカ人で、とりわけ言葉を慎重に選びながら話すタイプの彼でさえ答えられないんだから、私が迷うのも当然でしょう。
「英語って本当に難しい言語だと俺は思うよ。」
とディック。

極上バーガーを頬張りながら、私が最近聞いた噂をディックに披露しました。
「来年の初めから、北米の全支社を対象に、会社が二日間に渡るプロジェクトマネジメント・トレーニングを始めようとしているらしいんだ。もちろんそれ自体は歓迎なんだけど、問題は、トレーニング後のテストに合格しない者はPMの座を下ろされるって話。いくら技術的能力に長けていても、プロジェクトマネジメントの知識がない奴は引っ込んでろっていうメッセージだよね。」
美味そうにもぐもぐ動かしていた口を開いて、ディックがこう言いました。

“That will raise hell.”
「そりゃ地獄を持ち上げるぞ。」

ええ?地獄?何のこと?

一瞬スルーしかけたのですが、思い直してこのフレーズの意味を聞いてみました。彼が言葉を尽くして説明してくれたのですが、どうも良く分かりません。総合すると、どうやら「大騒ぎになる」ということらしいのですが、「何でそういう表現をするのかは分からないよ」とのこと。

帰宅後あらためて調べてみたところ、

“Raise Cain”
「Cainを蘇らせる」

というのが元らしいです。Cainはアダムとイブの息子のひとりで、この世で最初の殺人者。「ケインとアベル」というお話でも知られています。このCain をこの世に呼び戻せば(raise)大変な騒ぎになる、ということで、「大騒ぎを起こす」という意味の慣用句になったわけ。これが後に “Raise devil” とか “Raise hell” などの変化形を生み出したのだそうです。ディックはそもそもの語源を知らなかったため、クリアな説明が出来なかったのですね。

ランチのシーンに戻ります。

私ももぐもぐしながら、
「ヘルには定冠詞の The が付かないんだね。世の中に地獄はひとつしか無いっていうのがその理由なの?」
と質問すると、
「ああそうだね。宗教によっては二つ三つあるかもしれないけど、キリスト教的にはひとつだよね。」
とディック。

そういえば、昔誰かに聞いた話で、死後地獄に行ったら三つ部屋があった、というジョークがありました。一つ目が火炎地獄で、人々が業火に焼かれて悶え苦しんでる。次が氷地獄で、恐ろしい寒さの中で人々が凍えている。三つ目が肥溜め地獄で、汚物のプール上で浮き袋につかまった人々がタバコを吸ってる。あ、ここにします、と案内人に告げて浮き袋を借りた時、監視員が笛を吹いてこう叫びます。
「はい、休憩終わり。全員潜れ!」

2011年10月18日火曜日

超ご機嫌キャンプ

週末、Lark Canyon という砂漠の渓谷へキャンプに行きました。今回は元プロ・オートバイレーサーYさんのご好意により、彼の所有するモトクロスバイクや四輪バギーに乗せてもらえることになり、子供も大人も期待に胸を大きく弾ませて参加。Yさんがバイク5台とバギー一台をトレーラーハウスに搭載し、これをトラックで牽引して豪快に登場します。我が家3人と友人一家5人がこれに合流。二日目にもう一家族がやって来て、最終的には12人という大所帯に膨らみました。

この歳でバイクデビューするとは思ってもみませんでしたが、やってみると意外に面白いのです。砂や石でタイヤが滑るのであまりスピードが出せない分、安心感があります。ポイントは、ビビッて腰が引けると手首が返ってしまい、自然とアクセルも開いてしまう、という点。しっかり肘を張って手首を固めておかないと、身体より先にバイクが突っ走って行っちゃうのです。まるで暴れ馬の背から放り出されるような格好。

家では読書ばかりしてなかなか外遊びをしたがらない9歳の息子ですが、意外にも今回の企画にはハマったようで、同じコースをスローペースながら何十周も走り続けていました。後で見たら、転んだ時に出来た擦り傷や内出血、それに熱したマフラーに触れて出来た火傷の後が、両足に何箇所も出来ていました。若い頃バイク乗りだった妻は、巨石やサボテンが散在する超難関の凸凹コースを果敢にアタック。遠目でも、ヘルメットの隙間から見える頬っぺたのふくらみ具合から、彼女がいかに興奮しているかが見て取れました。

成人後2度目のキャンプで、いきなり超ご機嫌なイベントを経験。鼻の穴まで砂だらけで帰宅した後、「楽しかったね」「また行きたいね」をいつまでも繰り返す私たちでした。

2011年10月14日金曜日

Pet Peeve 怒りのツボ

火曜日にロサンジェルス支社で、プロジェクトマネジメント・トレーニングのドサ回り第一弾を終えました。来週から第二弾の開始です。それが終わると、次はミケーラの「ファイナンス」、サラの「リスクマネジメント」と続きます。今朝ふと気になって、アーバイン支社のリサにこんなメールを送りました。
「サラの原稿作りは進んでるの?来月の本番に間に合うのかな?」

法務部のお偉方であるサラは、当初から「スライドは用意するけど実際に教える時間が割けるかどうかは不明」という中途半端な態度を表明していて、講師陣の最大の不安要素なのです。

これに対するリサの返信がこれ。
「粗い原稿はもうもらってるの。でも、社内規定の変更が進行中だから、その最終形を待たないとスライドを完成させられないって言うのよ。」
そしてこう続きます。

“I’m having a call with her again on Monday to draw a line in the sand and just go for it.”

Draw a line in the sand だって?砂に線を引く?う~ん、これは新しいフレーズだぞ。さっそく調査。意味は「譲れない一線を示す」で、有力な語源は二種類あるようです。

リサは週明けにサラに電話して、「私が譲歩できるのはここまでよ。」と詰め寄ってみる、と言いたかったのでしょうが、これを私は「意思決定の期限を決めて告知する」という風に解釈しました。で、同僚リチャードに確認すると、
「ここから先は譲らないぞ、覚悟しろよ、という対決姿勢で使うイディオムであって、仕事の締め切りみたいな話とは全然違うよ。」
という意見。ああそうなの?でもリサがサラに脅しをかけるとは思えないしなあ。

同僚マリア、そして品質部門の重鎮クリスとランチに出かけた際、この話をしてみました。するといつも穏やかなクリスがいきなり、

“That’s my pet peeve!”

とうんざりしたような顔で唸ったのです。なに?ペットピーヴ?

「仕事の場でイディオムを多用する奴に会うと、頭に来るんだよ。話の内容がぼかされてちゃって、結局正確に伝わらないケースが少なくないんだ。悪いことには、今回の例でも分かるように、本来の意味から微妙にずらしてイディオムを使う輩がいて、余計意思疎通の邪魔になるんだよな。」
「ふ~ん、そうなの。僕は嫌じゃないけどなあ。英語の勉強になるし。でも確かに、会議中に知らないイディオム使われると、そこで思考がぴたっと止まっちゃうこともあるね。」
「だろ。だから僕は、イディオムを不用意に使う奴に会う度、それは一体どういう意味だ?って挑みかかるようにしてるんだ。」
「それはちょっとやりすぎじゃないの?皆にうるさがられるかもよ。」
「いや、それでも僕はこの運動を続けるつもりだよ。」

クリスのこだわり方はちょっと理解に苦しむけど、私は彼の言った「ペットピーヴ」の意味が気になっていました。午後、同僚リチャードを再び訪ね、解説を依頼。
「ピーヴはイライラの元、とか人を怒らせるもの、とかいう意味だね。ペットはほら、お気に入りってことでしょ。だから、ペットピーヴはその人独自の怒りのツボみたいな意味だね。」

な~るほど。つまりこういうことかな。

“That’s my pet peeve!”
「それが僕の怒りのツボなんだよ!」

どうでもいいけど、あまりクリスに意地張られると、ブログのネタが減っちゃうんだよな…。

2011年10月12日水曜日

Yahoo 野蛮人

今朝の電話会議でお偉方の一人が、協力業者たちの杜撰な仕事ぶりにはつける薬も無いと言わんばかりにため息をつき、吐き捨てるようにこう言いました。

“I hope we won’t have to deal with those yahoos any more.”
「あのヤフーたちと係わり合いになるのはもう願い下げにしたいね。」

ヤフー???

この状況で、彼が検索エンジンの批判をしているのでないことは明らか。ヤフーってそもそも何なんだ?と疑問がむくむく湧いて来たので、さっそく調べました。

なんとこの言葉、「ガリバー旅行記」に出てくる獣人が語源だったのですね。ウィキペディアによると、第四篇に「ヤフーと呼ばれる邪悪で汚らしい毛深い生物」が登場するそうで、ここから「野蛮な人間、田舎者、無教養な人」という意味で使われるようになったみたいです。

総務のトレイシーにこの言葉使うことある?と尋ねると、
「嬉しくて叫ぶときにはヤフー!って言うけど…。そっちの悪い意味では使ったことないわ。使わない方がいいわよ。」
との返答。最近仲良くなった若い同僚フェリースに聞くと、
「ちっちゃい頃、戸棚にしまってあったお菓子を黙って食べちゃった時、おばあちゃんに、このヤフー!って叱られたことがあるわ。」
と、なんとも可愛らしいエピソードを教えてくれました。

ふ~ん。なるほどね。そうすると、和訳は「野蛮人」かな?

“I hope we won’t have to deal with those yahoos any more.”
「あの野蛮人どもと係わり合いになるのはもう願い下げにしたいね。」

よし、ぴったり!

2011年10月8日土曜日

He is a dog. ちゃっかり者

昨日の朝、ロングビーチ支社で品質管理を担当しているアサーフから、PMのマークと私に宛ててメールが届きました。
「マークのメキシコ・プロジェクトのファイルは全てネットワーク・フォルダーに保存してね。」

私はこのプロジェクトの予算策定を手伝ったので、その際に作ったエクセルファイルを持っています。
「了解。でも僕はロングビーチのサーバーにアクセス権が無いんだ。メールでファイルを送るから、代わりに保存しといてくれる?」
と返信します。マークにccを入れて。これに対しアサーフが、ネットワーク・フォルダーのアドレスをメール本文に貼りつけて、
「ここに飛んで保存してくれれば良いんだよ。」
と返して来ました。おっと、これは意図が伝わってないな。
「アサーフ、そのリンク開かないんだよ。僕は他の支社の人間だから、アクセス権が無いんだ。」

数秒後、IT部門のジェフからメールが飛び込みます。
「シンスケ、マークのプロジェクト・フォルダーにアクセス出来るようにしたよ。」
おお、速い!と思ってよくよくメールの下方を見ると、私の最初の返信に素早く反応したマークが、ジェフに問題解決を依頼していたのです。

その数分後、アサーフがジェフに、
「ジェフ、シンスケにアクセス権をあげてくれないか?」
とメールを送ります。関係者全員をccに入れて。
「アサーフ、既に処理済だよ。マークに依頼されたんだ。」
と答えるジェフ。暫くして、アサーフがこれに返信。

Mark is a dog.

ええっ?「マークは犬だ。」って?どゆこと?確か「裏切り者」っていう意味だよな。でもそうだとちょっとズレてる。誰かに聞かなきゃ。

あいにく、ラリーもリチャードもマリアも不在。金曜の午後って人をつかまえにくいんだよな…。オフィスの中を暫くうろついたところ、製図担当のジェフ(IT担当と同じ名だけど別人)がコンピュータに向かってガリガリ働いていたので、質問してみました。

「う~ん、それは状況によって色々変わる表現なんだよな。」
「ポジティブなの?ネガティブなの?」
「大抵はネガティブだけど、声のトーンとか顔の表情とかで微妙に意味が修正されるよ。」
「たとえば今回のようなケースではどういう意味になるの?」
「おそらく、裏切り者、と強く糾弾してるわけじゃないだろうね。ちゃっかり者って感じかな。俺がせっかくシンスケを助けようとしてたのに、それを横取りしやがって!みたいなね。」
「ふ~ん。他にどんな使い方がある?」

ジェフは暫く考えて、いくつか例を挙げました。
「たとえば行きつけのバーに入ったら、自分の友達がスーパーモデル級の美女と並んで座ってたとするよ。後で聞いてみると、ちょっと声をかけたら意気投合してそのまま話し込んじゃったんだ、と言う。こういう時、 “You are a dog!” (うまくやりやがったな!)って冷やかすね。」
「なるほど。他には?」
「そうだな。今日、俺が前から欲しかった商品が、ある店でセール対象になってるとするね。5点しかないから、急がなきゃならない。でも俺は昼休みまで仕事が入っていて行けないんだ。それを聞いたシンスケが、午前中に店へ走って最後の一点を買っちゃったとするだろ。で、もう売り切れたぜ、と言われた俺が、 “You are a dog!” って言う。こずるい野郎だな!って。」
「う~ん、微妙だね。どっちにしても狡猾な感じがするね。」
「あと、女性が自分の女友達に、 “He is a dog. Stay away with him.” と言うと、あいつはカラダ目当ての遊び人なんだから近づいちゃ駄目よ。という意味になる。」

まいりました。この単語は使いにくい!
「Stop dogging me. って言えば、俺のことを批判するのはもう止めてくれ、という意味になるよ。」
ああ、もう止めてくれ!

「そもそもさ、犬は人間の一番の友達 (Dogs are man’s best friends.) って言うじゃない。なのにどうしてそういうずる賢いイメージの表現に犬が使われるのかな。」
と私。
「さあ、それは俺にも分からないよ。言われてみれば確かに不思議だね。これまで考えたこともなかったな。」
「オッケー。じゃ、そのことは後々ゆっくり調べてみるよ。邪魔したね。」
そうして彼のオフィスを去りかけ、最後にこう言いました。

“It’s Friday. Don’t work like a dog!”

2011年10月6日木曜日

Break the ice 場を和ませる

昨日の11時、ダウンタウン・サンディエゴのオフィスで、プロジェクトマネジメント・トレーニングの講師を務めました。一ヶ月前にも同じ会場でソフトウェアの使い方を教えるトレーニングをやったのですが、その時は「聴衆に背を向けたまま話す」という厳しい条件を強いられたため、いまひとつ手ごたえがありませんでした。今回はその轍を踏まぬよう、事前に細かくセッティングを調整し、聴衆とアイコンタクトを取れる立ち位置で話すようにしました。今度は絶対しくじらないぞ、と気負っていたためか、珍しく緊張。こういう時って聴衆も固くなっちゃって、うまく行かないんだよな…。うう、まずい、このままではいかん!

さっそく冒頭、プロジェクト・マネジメント・インスティチュート(PMI)の組織について話しました。PMIは非営利の国際組織で、プロジェクトマネジャーの資格試験を実施しています。現在世界中に37万人ものPMP(Project Management Professional) がいることを紹介しました。

「実は私もその一員なんです。時に人は私を、 Certified PMP と呼びます。」
一同爆笑。つかみはオッケー、これで一気に緊張がほぐれます。この時私は、PMPのことを「ピンプ」と発音し、 “Pimp” (売春婦のヒモ、ポン引き)とかけて洒落たわけです。つまり、「公認のポン引き」とも取れるような言い方をしてふざけたのですね。

トレーニングはつつがなく終了し、アーバイン支社から駆けつけていたリサが、ニッコリ笑って祝福してくれました。
「すごく良かったわ。この後、予定が無かったら一緒にランチへ行きましょう。」
財務のミケーラ、それにウェンディと連れ立ってイタリアン・レストランへ。皆でトレーニングの成功要因を分析してくれました。

リサは私の「ピンプ発言」に触れ、

“That was a good joke to break the ice.”

と笑いました。 Break the ice というのは、初対面の人と話す時などに緊張をほぐす一言を指して使われる表現なのですが、この場合は「場を和ませる」という意味ですね。なんとなく「アイスピックで氷の塊を砕く」図を想像していたのですが、それがどうして「緊張をほぐす」意味になるんだろう、と不思議になったので、ちょっと語源を調べてみました。するとどうやら、もともとは船が海面の氷を砕きつつ進む様子から来ているらしいことが分かりました。航海を続けるには、邪魔な氷を砕かなければならない。納得です。

さて、私の目下の悩みは、全く同じ内容のトレーニングをあと二回(聴衆は別ですが)やらなければならなくて、その際に同じジョークを breaking the ice のために使い続けるかどうかです。なんだか気恥ずかしいんだよな。

2011年10月4日火曜日

There is good news and bad news 不可算名詞のナゾ

今朝、出社途上の車内でラジオを聴いていたら、景気の動向に関するインタビューに答えていた専門家が、こんなことを言いました。

“There is good news and bad news.”
「良い報せと悪い報せがあります。」

以前から、この News という不可算名詞には悩まされて来ました。

“There is good news.”

はまだ良いとして(単数じゃないから冠詞の a は付かないけど、be 動詞はis になる)、news を二つ合わせてもまだ “is” を使えるということが、どうも釈然としないのです。さっそく同僚リチャードのオフィスへ行って、この疑問をぶつけてみました。

「うーん、そうだね。There are good news and bad news. というのは文法的におかしいよね。複数扱いしてることになるからね。でも、だからと言ってそのケースで is を使うのもキモチワルイね。」
「でしょでしょ!分かってくれて嬉しいよ。」
と興奮する私。
「じゃリチャード、君だったらどっちを選ぶの?」
と挑みかかったところ、彼が事も無げに答えました。

「僕なら be 動詞使わないな。I have good news and bad news. って言いかえるよ。」

ええ~っ?そういうのあり?なんか納得いかない…。

2011年10月3日月曜日

Stern 厳しい

今日、最近親しくなった若い同僚レイと昼飯を食べながら話していたら、彼が学校を出た後6年もフィリピンで働いていたことを知りました。地場産業を使ってコミュニティを活性化する、いわゆる「まちおこし」に取り組んでいたとか。ずっと以前、フィリピン政府に招聘されてマニラの官僚相手に都市開発関連のプレゼンをした経験がある私は、この話題に飛びつきました。普通に電車が行き来する線路のすぐ脇に何百人もの人が住み着き、枕木の上で洗濯物を干している光景を見た話とか、交通信号を無視して大量の車が我先に交差点へと突入し、完全に膠着している図など、ショッキングな思い出を分かち合いました。

「そもそも人口が爆発的に増えていた70年代に、都市計画をきちんとしなかったツケが回ってるんだよね。」
とレイ。今から何か策を講じようにも、越えなければならない障害が多すぎます。貧富の差があそこまで拡大したら、打つ手はひどく限られてしまうのです。

この時私は、「貧富の差が大きすぎる」をどうやって英訳するのかな、と考えていました。

“The difference between the rich and poor is too big.”

というのがさっと頭に浮かんだのですが、レイが次に発した一言にハッとさせられました。

“The disparity between the rich and poor is so stern.”

まずDisparity (格差)という単語がたまらなくカッコイイ!そして Stern (厳しい、過酷な)にはシビレました。

スターン!

そんな言葉、使ったことなかったぞ。響き、意味、ともにグッと来る単語をひとついただきました。

2011年9月30日金曜日

You bet!

熟練PMのダグは、私がお礼を言う度に、十中八九こう答えます。

“You bet!”

この返事をする人は、ダグに限りません。これまでたくさんの人から聞いて来ました。辞書には「どういたしまして」という意味が出てるんだけど、bet は「賭ける」という意味だから、全然納得行きません。さっそく同僚リチャードの部屋を訪ね、この疑問をぶつけてみました。

「確かにわけの分かんない表現だね。こういうのって、どこかで誰かが思いつきで使い始めて、それを他の人が気に入って真似して、そうこうするうちに世間で通用するようになった、大方そんなとこじゃないかな。」
「僕が思うに、 “You can bet on me.!(俺に賭けてもいいぜ)が “You bet!” に縮まったんじゃないかな。つまり、何でもどんどん頼んでくれよ、俺はきっちり片付けるぜ。そういう意味で使われたんじゃないかな。俺にまかせろ!って感じで。」
と私。
「ああ、それは信憑性あるね。」
リチャードは感心したように頷いて、曖昧な同意を示しました。

先日オレンジ支社へ行った時、物知りの同僚グレンにも同じ質問をしたのですが、やっぱり彼も、何でそういう返事が許されているのか明確な説明が出来ないようでした。
「本来なら You’re welcome と言うべきところで、どうしてこんな表現が出てくるのか、僕には分からないんだよね。」
とつぶやいた私の一言がヒントになったみたいで、彼がこう言いました。
「他に同じ考えの人がいるかどうかは知らないけど、僕は何かやりたくないことを頼まれてしてあげた場合、 You’re welcome とは言いたくないんだよね。だってちっともウェルカムじゃないから。嘘はつきたくないでしょ。そんな時は大抵、You bet って吐き捨てるように言ってるな。」
おお、そういう使い方があったか。でもそうなると、「まかせろ!」は強すぎるな…。

リチャードにこの話をすると、彼はこれに同意も反論もせず、ただ頷いていました。
「あのさ、これってもしかしてクールな表現?それともアンクール?」
と話題を少しずらしたところ、
「ある意味クールだね。だって男っぽい表現だから。俺って男だぜ!(I’m one of those guys!)っていう気張った感じが伝わって来るもん。」
思わず吹き出してしまいました。それって全然クールじゃないじゃん!

2011年9月26日月曜日

「軍手」って英語で何?

週末、Cuyamaca Rancho State Park という州立公園へキャンプに行きました。9歳の息子は焚き火にハマり、大はしゃぎ。公然と何かを燃やすって、現代社会じゃ許されない行為だもんなあ。そりゃ楽しいわ。満天の星空の下、火の周りに座って話をする、という一点だけ取っても、キャンプに行く価値は充分あるな、と実感しました。

土曜の午後、日本人の三家族(大人6名子供6名)で出かけたのですが、我が家だけ素人集団。何を持っていけば良いのかすら見当が付かなかったので、リストを作ってもらいました。テントは貸してくれるし、薪などの大きな買出しもやってもらえるということで、結局うちが用意することになったのは次の数点。

我が家用の寝袋
缶切
軍手
ペットボトル水
サラダ

さっそく出発日の午前中、REI というアウトドア専門店へ出かけて寝袋を三つ購入。このお店、どの店員も「アウトドアが好きでたまらない」という表情で接客してくれるせいで、とても気持ちよくショッピングが出来ます。今回も、私一人に対してクレイグという名の店員が一時間以上もアテンドしてくれて、嫌な顔ひとつせずに十種類以上の寝袋を出したり引っ込めたり。とてもアメリカのお店とは思えない上質なサービスでした。

さて、100%満足の行く寝袋を調達した後、軍手のことを思い出しました。で、クレイグに手袋を探していると告げると、
「それならこっちだよ。」
と案内してくれたのですが、そこにはバイク乗りの好きそうな革手袋がずらり。
「違う違う。ほら、使ったら捨てるような奴。」
「え?使い捨ての手袋?」
当惑するクレイグ。きっとビニール手袋のこと想像してるな。う~ん、弱ったぞ。軍手って英語で何て言うんだ?実はこの店に来る前に、ウォルマートで散々探した挙句、店員に何て聞けば良いか分からなかったので、諦めたのでした。
「革じゃなくてさ、ほら、大工仕事とか畑仕事とかする際に使う奴だよ。」
暫く宙を見つめていたクレイグが、はっとして言いました。

“I got it. You meant workers gloves!”
「分かった。ワーカーズ・グローブのことでしょ!」

労働者用(ワーカーズ)手袋?そのまんまじゃん。ちょっと拍子抜けでした。

2011年9月21日水曜日

Work like a charm 魔法みたいにうまく行く

現場事務所にいるクリスから、今朝メールが届きました。コンピュータにインストールしてあるプロジェクトマネジメント・プログラムを使おうとしているのに、エラーメッセージが立て続けに出て仕事にならない、助けてくれ、という内容。

エラーの種類から考えられる解決策をいくつか提案したんだけど、
「全然直らないよ。どうしよう?」
と途方に暮れるクリス。仕方ないので、
「今デスクトップ上にあるアイコンをゴミ箱に入れた後、ここのリンクへ飛んでもう一度ソフトをダウンロードしてみて。」
と、抜本的解決案を提示しました。

数分後、彼から来たメールがこれ。

“Worked like a charm. Thanks so much!”
「チャームのようにワークしたよ。どうもありがと!」

え?どゆこと?

ワークする、が「うまく行く」という意味なのは分かるんだけど、「チャームのように」が理解出来ない。チャームって「魅力」じゃなかったっけ?

あらためて調べてみたところ、チャームには「魔力」とか「おまじない」という意味があることが分かりました。動詞として使うと「魔法をかける」「魅了する」となるのですね。つまり、クリスが言ったのは、こういうことです。

“(It) Worked like a charm. Thanks so much!”
「魔法(をかけた)みたいにうまく行ったよ。どうもありがと!」

ちなみに、短い自己紹介などで良く使われる「チャーム・ポイント」は、完全なる和製英語だったのですね。確かにアメリカじゃ聞かないよな、この言葉。日本人の造語能力って驚くべきレベルの高さだな、と感心しました。そういえば、(英語表記があるかどうかは怪しいけど)ライオンの大ヒット商品「チャーミーグリーン」のネーミングセンスに至っては、舌を巻くばかり。Charmy なんて英単語は無いけど、なんとなく魅力的な雰囲気、出てるもんな。

拍手!

2011年9月18日日曜日

Loose cannon 危険人物

コンサルティング・ファームの仕事のひとつに、クライアントのオフィスに派遣社員を出す、というものがあります。役所のような組織では、一旦雇った人を簡単には解雇出来ないため、一時的な需要の振れに対応しにくいのです。そこで、要らなくなったらさっさと人を切り捨てられる、このシステムが重宝されるというわけ。

先月後半、あるクライアントの現場事務所にパティという女性社員を送り出しました。ところがその契約条項に対し、我が社の上層部から物言いがつきます。
「契約書を良く読んでみろ。うちの社員の行動に起因する損害賠償に関して、彼らがものすごく理不尽な要求を出来ることになってるぞ。」
部門長であるテリーの反論がこれ。
「このクライアントの契約書は、それがスタンダードなの。大規模プロジェクトにも、今回のような小さな仕事についても、一様に適用されてるのよ。おかしいのは分かってる。これまで幾度と無く条項の修正をお願いしたんだけど、がんとして受け付けないのよね。」
確かに、あそこまで巨大な組織だと、
「気に入らないなら他の会社を探すまでだ。はい、ご苦労さん。」
とそっぽを向かれる可能性が充分あります。
「でも、これまで一度も面倒が起こった試しは無いのよ。極めて良好な関係を続けてるから。」

上層部の指示がこれ。
「それなら、パティに細かい日誌をつけさせろ。クライアントからどんな指示をいつ受けたかを記録し、定期的に彼らのサインをもらえ。それを具体的にどう実行するか、プランを作って提出せよ。」
そこでテリーと私は、プランの作成に取り掛かります。私のキュービクルで立ち話していた時、テリーがこう言いました。
「実は私、こうなって良かったと思ってるの。最近分かったんだけど、パティの直属の上司になる男というのが、やっかいなのよ。今年の初めに引退するはずだったのに、まだいるのよね。」
そして放ったのが次の一言。

“He’s a real loose cannon.”
「彼ってひどくユルい大砲なのよ。」

思わず「え?今、何て言ったの?」と聞き返す私。

テリーの説明によると、どうやらその男は予測不能の言動で有名らしく、クライアント内部でも問題視されているというのです。そういう人物の指示を日々受けて仕事してたら、何か重大事件があった時に、パティが責めを負う破目に陥る恐れがある。だから彼の指示をいちいち書き取っておくという習慣は、彼女のためにもなる、というのです。

私の頭は、「ルースキャノン」という言葉で一杯になっていました。大砲がゆるいというのはどういう状況なの?砲身の内径と砲弾の直径が違い過ぎて、弾道が計算通りにならないってこと?だとしたら、ただ単に、「仕事の精度が悪い」という話になっちゃうよな…。

で、さっそく語源を調べてみました。

Loose Cannon:これは、かつて木製の軍艦が使われていた頃、その甲板に据え付けられていた大砲の話だそうです。砲台がきちんと固定されていない、あるいは壊れて緩くなった状態だと、発射の反動で甲板上を滑って暴れ、大勢の死傷者を出した。これが後に、「予測不能な言動をする危険人物」という意味に転じたのだそうです。

なるほど。思い当たる人が、他に一人います。

2011年9月17日土曜日

Burn the candle at both ends 無理して体力を消耗する

ここ一週間以上、どうも体調が優れません。微弱な風邪が、喉と鼻腔にとりついて離れないのです。日常生活に支障はないんだけど、なんだかドヨ~ンと身体の芯が重い。

今週は水曜にニューポートビーチ、木曜にサンフランシスコ支社でトレーニングの講師をしてきました。こういう仕事は初めての人と知り合うチャンスなので大好きなんだけど、ふと意外な落とし穴に気付きました。それは、風邪に感染しやすいということ。

大抵、トレーニングはドアを閉めた会議室内で行われます。激しく鼻をかんだり咳き込んだりする人が一人でもいると、ヤバいのです。今回も、そんな参加者がサンフランシスコで一人。こんな環境に3時間も4時間も身を置けば、まず間違いなく終了後にダルくなる。ただの疲れだ、きっと気のせいだ、と自分に言い聞かせても、そのうち本当にじわじわ喉が痛くなって来る。

秋の訪れとともに、具合の悪そうな人が周りに増え始めました。先日オレンジ支社で同僚トムに会った時も、彼の声は見事にしわがれていて、目も赤くなっていました。
「う~ん。調子悪い。俺に近寄らない方がいいぞ。」
「ありゃりゃ。健康優良児の見本みたいな男が、体調崩すこともあるんだね。」
「ここんとこ滅茶苦茶忙しいんだ。早朝出勤した上さらに夜遅くまで残業する生活が続いていてね。」

ここでトムの使った表現が、これ。

“I’ve been burning the candle at both ends.”
「ろうそくを両側から燃やしてるんだ。」

え?何て言ったの?

気だるそうなトムに、申し訳なく思いながらも解説をお願いしたところ、「無理をして体力を消耗する」状況を指すイディオムだとのこと。早く起きて遅く寝るという行動を、ろうそくの両端に火を灯す行為に見立てて説明しているんだと彼に言われ、なるほどね、と一度は納得したんだけど、よくよく考えるとどうも腑に落ちない。

で、後で調べてみたところ、どうやら語源は次のようなことらしいということが分かりました。

「夫婦がそれぞれ思い思いに家計を浪費する姿を、かつて高価な日用品であったろうそくを両端から燃やす行為に置き換えた。それが後に、仕事や遊びのしすぎで体力を消耗する人間の姿を表すイディオムとして使われるようになった。」

金曜にダウンタウン・サンディエゴのオフィスで久しぶりにジムに会ったところ、いかにも病み上がりといった様子で、
「もうだいぶ回復したけど、僕に近づかない方がいいよ。今週はミシガンに飛んだりして、本当に忙しかったんだ。おかげで風邪がなかなか治らない。」
と力なく笑いました。さっそくここで、覚えたてのイディオムを試し撃ち。

“I guess you have been burning the candle at both ends.”
「無理して体力を消耗してるんじゃないの?」

するとジムが深く頷き、
「ああ、その通りだよ。節制しなきゃ。」
としきりに反省していました。

よっしゃ!新しいイディオムがひとつ、自分のモノになりました。

2011年9月9日金曜日

Bird dog とりいぬ?

火曜日の正午、アーバイン支社で打ち合わせがありました。時間通りに会議室に到着すると、座っていたのはリサだけ。
「エリックもミケーラも、突然来られなくなっちゃったのよ。今、電話会議をセットするわね。」
会議のテーマは、今月末にスタートするPMトレーニングの内容を詰めること。作業分担は次の通り。

People Management エリック
Risk Management サラ
Marketing マイク
Product Delivery 私
Finance ミケーラ

「マイクは今、超多忙だぞ。きちんと期限通りにスライドを仕上げてもらうのは至難の業だな。」
と、電話の向こうでエリックが困り顔。この時、彼がこう言いました。

“Who’s going to be the bird dog for him?”
「誰が彼のバードドッグをする?」

え?バードドッグ??とりいぬ?…うなぎ犬なら知ってるんだけど…。

この言葉が頭にずっとひっかかって、残りの議論にあまり集中出来なかった私。電話を切るや否や、リサに質問をぶつけました。
「う~ん。そうね。確かに不思議な言葉よね。」
なんだか自信なさそう。
「鳥みたいに空高く飛んで、犬みたいに追いかける、とか…。」
意外なことに、意味を知らないみたい。恥をかかせても悪いので、追究するのを止めました。

そして今日、オレンジ支社で物知りのトムと会ったので、彼に尋ねてみました。
「ああ、それは猟犬のことだよ。猟師が鳥を撃ったら、猛然と駆けて行って獲物をくわえて戻ってくる犬。つまり、誰かをしつこく追い回して仕事の成果をゲットして来る奴のことだね。ネガティブにもポジティブにも使われるよ。」

な~んだ、そうか。「上半身が鳥」という犬を勝手に想像してた。エリックの発言を思い切り意訳すると、こういうことでしょう。

“Who’s going to be the bird dog for him?”
「誰が彼の担当編集者になる?」

2011年9月5日月曜日

Brockton Villa

明日から4日間、六つの支社を巡るロード・トリップに行って来ます。ニューポートビーチ、アーバイン、ベイカーズフィールド、ヴェンチュラ、カマリロ、そしてオレンジ。そのうち三支社ではプロジェクト・マネジメントのトレーニング講師を務めます。長距離ドライブはイヤじゃないんだけど、こうした出張で悩むのは食事。最近は年のせいか、どうも和食回帰の傾向が強くなっていて、パンケーキとかソーセージとかいうアメリカ~ンな食事が続くと、とっても辛いんです。じわじわと体調が悪化するんだよなあ。特にお通じが…。

さきほどネットでざっと調べたところ、ベイカーズフィールドにもヴェンチュラにも、和食のお店ってあまりなさそうなんです。いや、そこまで贅沢を言わないから、やや健康的な食事が出来るお店があればいいんだけど、そういうの探すの、至難の業なんだよな…。

日本で地方出張をしてた頃は、何を食べるかがとっても楽しみでした。その土地土地に、必ずといって良い程、名店がある。福岡で食べたイカ刺しやふぐ、島根で食べたカニ、高知は四万十川で食べた岩海苔。ああ、思い出すだけでよだれが…。なんという素晴らしい国だろう!日本!チャチャチャ!

その点サンディエゴという街は、小さな名店がいくつかあります。様々な人種が混じり合って暮らしていることも、多様性の促進に繋がっているのかもしれません。和食以外で私がお奨めするお店のひとつが、Brockton Villa 。ここのフレンチトーストは名物で、フランスパンをオレンジジュースに浸して作るらしい。景色もグッド。こんなお店、出張先で発見出来るといいんだけど…。

それじゃ、行って来ます。

Articulate はっきり言葉で表現する

今年の6月、ドラマ「北の国から」全シリーズ(テレビドラマ時代も含めたもの)DVDセットを「大人買い」しました。なんと合計25枚!

夏休みに妻子が里帰りしている間、目に涙しながらチョコチョコ観続けていたのですが、最後の二枚を前にぴたりと止まってしまいました。まるでフルマラソンのゴール前5キロで、余力を残しながらリタイアしようかどうか迷っているような状態。

どうやら、倉本ワールドに食あたりしたというか、もうお腹一杯、という感覚なのですね。登場人物が、現代社会の許容範囲を遥かに超える「長い間」を置きながら、俯いて滑舌悪くボソボソ喋る。やたら昔の映像を引っ張り出して涙腺を攻撃する。「自然の厳しさ」と「貧乏暮らし」とがタッグを組んで、これでもかと攻めて来る。

幸運にも「毎日がパラダイス」なお気楽タウンに身を置いている立場で、こんなことを言うのは心苦しいのだけど、「そこまで暮らしが大変なら、どうしてその土地に固執するのか」が、私には理解出来ない。だって黒板五郎も純も雪子おばさんも、吹雪で死にかけてるんですよ!

吹雪と言えば、妻の実家があるミシガンを訪ねると、義父母やその隣人達は、長く寒い冬の大変さを指摘しながらも、土地に対する溢れんばかりの愛を語るのです。なんでぇ?逆に、カリフォルニアなんかに住んでて大丈夫か、頭がバカになりゃしないか、と心配する人までいる始末。寒い地方の出身者って、どうもカリフォルニアを見下す傾向があるみたいなんです。

さて先日、職場の同僚ディックと立ち話していた際、彼の実家がサウスダコタにあるという話題になりました。
「故郷に帰りたくなる時ってある?」
「ああ、あるよ。数年前、家を買うまでは、いずれはあっちに移ろうと思ってた。」
「サウスダコタって、冬寒いんでしょ。」
「そりゃ、とんでもなく寒いよ。冬だけじゃなく、気候の変動はすごく激しくて、厳しい土地だね。」
「聞いていい?ここまで快適な暮らしを捨ててまで戻りたくなる理由って、一体何なの?」

ディックがニヤリと笑って言いました。
「それはね、自然のエネルギーだよ。」
「エネルギー?」
「そう。俺はずっと、自分がどうして故郷を恋しく思うのか分からなかったんだ。それが最近、ようやくハッキリした。俺は、何日も街を機能停止させるほどの豪雪や、吹き荒れる風や、激しい雨や、でっかい雨雲や、そうした一切のものが懐かしいんだ。自然のエネルギーに触れていたいんだ。ここじゃ、一年中晴天だろ。快適過ぎて、エネルギーが感じられないんだよ。」

私はすっかり感心していました。なるほどね。それはとってもよく分かる。
「これまでモヤモヤしていた疑問が一気に晴れたよ。きっと、同じ気持ちの人って大勢いるんだろうね。」
「俺だってね、最近までずっと、はっきり言葉で表現出来なかったんだ。」
とディック。

この時彼が使った言い回しが、これ。

“It took me a long time to be able to articulate it.”

Articulate (アーティキュレイト)という動詞は、よく聞く割に、これまできちんと使えた試しがありませんでした。同じスペルで「アーティキュレト」と発音する形容詞は、

“He’s very articulate.”
「彼はとてもはきはきしてるね。」

って感じで良く使っていたのですが。今回ディックと話して、ようやく動詞としての使い方が理解出来ました。

さっそく翌日、カリフォルニア育ちの同僚リチャードと、この話をしました。
「その人、エンジニアじゃない?」
と、ロボット・ダンスみたいなジェスチャーでギクシャク行動する人の真似をするリチャード。
「いや、ディックはエンジニアじゃないよ。なんで?」
リチャードが笑って、
「それは教養ある人しか使わないような単語なんだよ。」
「へえ、そうなんだ。何か例文ある?」

彼の作ってくれた例文が、これ。

“Can you articulate our scope of work?”
「我々の仕事のスコープを明確に説明して頂けますか?」

リチャードにお礼を言って自分の部屋に戻った後、ふと彼の演じた物真似が蘇りました。エンジニアをそういう目で見てたのか、リチャード。

2011年9月2日金曜日

RSVP 出欠教えてね

5月にスタートした、私の担当プロジェクト。8月に最初のマイルストーン(中間ゴール)をクリアしたのを祝って、同僚セシリアとバーバラが、ちょっとしたパーティーを企画しました。ダウンタウンにある、ボーリング場とスポーツ・バーを合体させたカッコイイお店。ここに昨晩20人ほど集まって、飲み物を手にボーリングに興じました。

昨日の朝のこと。主催者のセシリアが、チームメンバー全員に宛てて一斉メールを流しました。
「前にお知らせした通り、今夜はボーリングでお祝いよ。忘れないでね。」
そしてこう続きます。

“If you haven’t RSVP’d, no worries… just bring yourself down to East Village Tavern and Bowl!”
「もしもまだRSVPしてなくても、気にしないで。ただイーストビレッジ・タバーン・アンド・ボウルに集合すればいいの!」

このメールを受け取った時、私はオレンジ支社にいました。たくさんの英語表現を知っているコンストラクション・マネジャーのトムを発見したので、さっそく質問。
「RSVPってさ、repondez s'il vous plait (英語でrespond if you please)っていうフランス語の略だっていうのは知ってたんだけど、これ、ビジネス・メールで使ってOKなの?」
「フランス語だったのか?知らなかった。その表現は最近じゃ頻繁に使われてるね。俺は使わないけど。パーティーの主催者が席の数や準備する飲み物の量を決めたいような場合、早めに頭数を知っておきたいだろ。俺だったらそれをそのまんまメールに書くけどさ、皆忙しいから字数を減らしたいんだよ。」
「 “RSVP Please.” って表現を良く見るんだけど、本当はおかしいよね。だってプリーズが既にRSVPの一部なんだから。」
「そんなの誰も気にしないよ。」
「 “RSVP ASAP Please.” も有り?」
「うん、有りだね。」
セシリアはRSVPの過去分詞(RSVP’d)を作ってメールに織り込んでたけど、トムはこれも有りだと言います。
「現代社会はスピード命だからな。何でもどんどん縮めちまうのさ。本当はどんな場面でもきちんとした言葉を使うべきだと、俺は思うけどね。」

うん、僕も賛成。

2011年8月30日火曜日

Tag, you’re it! はいタッチ。あんた鬼ね!

うちのオフィスビル(二階建て)はいくつかに仕切られていて、それぞれのエリアで警報システムが作動するようになっています。最後まで残っている人がアラームをセットしなければなりません。

先日、同僚マリアが夕方5時半頃私の部屋の前まで来て、こう言いました。

“Tag, you’re it!”

これには思わず吹き出しました。タグというのは「レッテルを貼る」という意味で、日本の鬼ごっこに相当する遊びの名前でもあります。鬼のことを “It” と呼び、鬼になっている子が “Tag!” と叫んで誰かにタッチすると、今度はその子が鬼になる、という仕組み。オフィスに最後まで残っていた私に、マリアはこう言いたかったわけです。

“Tag, you’re it!”
「はいタッチ。あなた鬼(アラームをセットする人)ね!」

さて、今朝のこと。経理のジョスリンに、担当プロジェクトの予算変更の電子書類を承認してもらうよう、メールで頼みました。
「金曜日に提出したんだけど、出来たら急いで承認してくれない?」
彼女が承認したらサンディエゴ支社のドンであるテリーが承認し、そのあとロスにいる財務のマイラへ。三人の承認を得て初めて、新予算が有効になるのです。決裁(会社ではこれをworkflow と呼んでいます)がすべてメールで済ませられるなんて、20年前には想像もしなかった技術革新。しかし逆にここまで便利になると、今度はスピードに対する期待値が高まります。金曜日に提出したっていうのに、火曜日まで放っておくなよな…。微妙にイラッとしていた私。そのピリピリ感を私のメールに感じ取ったのか、ジョスリンは即座に承認。そして私とテリー、そしてマイラに宛て、こんなメールを送って来ました。

“The workflow has gone to Teri. Tag, you’re it.”
「決裁はテリーに渡ったわよ。はいタッチ。あなた鬼ね。」

会計課の一社員が部長にこんなふざけたメール出すなんて、日本の会社じゃ有り得ないよなあ。