2011年6月30日木曜日

Nomenclature 専門用語

数週間前から、会議中に何度も「ノーマンクレイチャー」という言葉を耳にするようになりました。
「ノーマンクレイチャーを知らない人にも分かるように書いておかないといけない。」
とか何とか。

え?誰?

咄嗟に、男性の名前(姓はクレイチャー、名はノーマン)だと思いました(ノーマン・ロックウェルみたいに)。でも、議論の文脈を辿ってみると、どうも意味が通らない。

そのうち出席者が口々にこの単語を発するようになったため、今更「それ何?」とは聞けなくなり、会議後にネットで調べることにしました。ところが、スペルが分からない~っ!綴りを何パターンも試したんだけど、まるでひっかかりません。

仕方ないのでその日は諦め、先日オレンジ支社に行った際、今やすっかり私の英語の先生となっている若き同僚、スティーヴンに聞いてみました。
「綴りはNomenclature、専門用語って意味だよ。例えばさ、僕がFSって言ったら、周りの連中はフィージビリティ・スタディのことだってすぐ分かるけど、社外の友達を相手にそんな言葉を使ってもちんぷんかんぷんでしょ。ぼくらの専門分野のノーマンクレイチャーに含まれる単語だから、専門外の人には使わない方がいいって話。」
「それって集合名詞なの?」
「そうだよ。FSひとつをとってノーマンクレイチャーだ、という人もいるけど、本来はおかしいと思う。」
「ふ~ん。この単語、一般的に使われてるの?僕は最近まで一度も聞いたことなかったんだよね。学校でも習わなかったし。この支社の社員全員が知ってると思う?」
「うん、皆知ってると思うよ。」
「じゃ僕だけじゃん、知らないの。」
「もう知ったからこれで全員だよ。」
スティーブンが微笑みます。

席に戻り、再度ネットで確認します。語源はラテン語。nomen がname, clare がto call。合わせると「名前をつける」という意味なるのだと。学術的な用語体系を指すようです。立ち上がってスティーブンにそのことを伝えると、
「それは知らなかったな。ひとつ勉強になったよ。」

スティーブンにしてこれだから、150人以上いる支社の連中全員、こんな雲を掴むような単語を、きっと語源も知らずにそのまま記憶しているのでしょう。そのことが私には不思議でなりません。

2011年6月29日水曜日

Kudos! 拍手!

今日のランチタイムに、ダウンタウン・サンディエゴのオフィスで月例ミーティングがありました。南カリフォルニアを統括するエリックがロサンゼルスから、彼のボスでアメリカ西海岸を所掌するジャッキーがサンフランシスコからやって来て、組織の現状などについて話しました。正式には部外者の私ですが、彼らの部門のプロジェクトを担当しているため、特別に招かれた次第。

会議の終盤、エリックがニッコリ笑って50人ほど集まった出席者の顔を見渡します。

“To whom should we give kudos this month?”
「今月は誰にクドウズを授けたらいい?」

テリーが手を挙げ、我々のプロジェクトに画期的な技術導入がなされたというエピソードを紹介します。そして、チームの技術部門メンバーを褒め称えました。続いて調達部門のメリーが手を挙げ、

“Can I give kudos to myself?”
「自分で自分にクドウズをあげていい?」

と笑いを誘いました。彼女は現場用レンタル・トラックの契約先を再度洗い直し、底値でしかも良質なサービスを提供する会社と契約を結び直し、大幅なコスト削減を実現した、と鼻息を荒くします。皆笑顔で拍手を送りました。

どうやらこのKudos コーナーは、定例会議を締めくくる際のお約束みたいです。どんな小さなことでも良い行いを認めて称賛する。士気を高めるのに効果的な手段だなあ、と感心しました。

さて、このKudos ですが、以前からよく耳にしている単語。「称賛」とか「賛辞」という意味ですが、今回のような状況では「拍手」と訳すのがしっくり来ると思います。本日あらためて調べた結果、実はこの単語、Kudo の複数形ではない、ということを学びました。エスまで含めて単数名詞だったのですね。今日までずっと、私の好きな野球選手、工藤公康氏の姿を思い浮かべながら、

Kudo to Mr. Kudoh!
「工藤さんに拍手!」

と憶えていたのですが、これは間違いでした。正しくは、

Kudos to Mr. Kudoh!

です。ちなみに、今年48歳の工藤選手は今月、メジャー挑戦へ向けて本格トレーニングを開始したそうです。すげ~っ!

2011年6月28日火曜日

Can’t comprehend 想像がつかない

最近知り合った同僚のローレルは、2年間のPeace Corps (「ピースコー」と発音)勤務を終えて今月会社復帰したばかり。Peace Corps というのは、第二次大戦後に始まった団体で、発展途上国に若いアメリカ人ボランティアを数多く派遣しています(日本の青年海外協力隊みたいなものですね)。彼女は南米エクアドルの田舎町で2年暮らし、自然資源の保全活動に従事してきました。当地では果物の種類が豊富で、それがみなイヤになるくらい安い。健康で栄養のあるものをたくさん食べられたそうです。しかしもちろん、一般消費財は必要最小限しか手に入りません。究極のシンプルライフを送ったとのこと。
「アメリカで暮らしてみると、いかにチョイスが豊富かにあらためて気付かされるわ。」
帰国して暫くは物質社会に馴染めず、一度などは冷めたお茶を温めるのに電子レンジを使えば良いということに思い至るまで数分かかった、と言います。
「あ、そうだ!チンすればいいんじゃん!って思わず叫んじゃったわよ。」

エクアドルは、長い海岸線を持つ一方でアンデス山脈を抱く、標高差の大きな国で、樹種や生物種の数では世界有数だそうです。住まいの軒先に吊るしたハンモックに寝そべって本を読んでいると、裏庭ともいうべき距離にあるジャングルで、無数のサルや鳥が飛び回るのが見えたそうです。
「夕日がとてもゴージャスだったわ。」
現地で知り合い仲良くなった女性に、南カリフォルニアの砂漠地帯の話をしたそうなのですが、砂と岩で覆われた土地が延々と続く光景をいくら描写しても、全く飲み込めなかったそうです。この時ローレルが使った表現が、

“She didn’t seem to be able to comprehend it.”

このComprehend (コンプリヘンド)ですが、Understand と共に「理解する」という意味で使われています。昨日までその違いがよく分からずにいたのですが、ローレルのこの発言をきっかけに、今回ちゃんと調べてみました。そしてやっと「理解できた」気がしました。

Understandは、その情報を理解する。
Comprehend は、情報の根本にある意味も含めて全体的に理解する。

ジャングル育ちのその女性には、「南カリフォルニアに砂と岩ばかりの土地がある」という情報を言葉として理解出来ても、「何故そんな土地が存在し得るのか」が理解出来ないわけです。Understand 出来てもComprehend は出来ないのです。

そんなわけで、私の和訳はこれ。

“She didn’t seem to be able to comprehend it.”
「彼女には想像がつかなかったみたいよ。」

2011年6月25日土曜日

Anal 潔癖症

今日の午後、プロジェクト・チームのミーティングがありました。皆でクライアントに提出する月次レポートの最終チェックをしていた時、リーダーのテリーが、
「ここのタイトルは Issue のままでいいかしら?」
と疑問を呈しました。対外PMのジムがこれに応え、
「一項目目は確かに issue だけど、二項目目は issue と呼べるかどうか怪しいよね。」
と深く考え込みます。セシリアが、
「Contingecy/Issues と呼んだらどうかしら。」
と提案。あまりに繊細な言葉の選び方に、こりゃとても割って入れないな、と感じ始めていた時、テリーがくるりとこちらを向いて尋ねました。
「あなたの周りの人は、こんな細かいことにこだわらないんじゃない?」
私の周囲は無骨なエンジニアが多いため、確かにここまで細かくない。
「ええ、割と大雑把ですよ。皆さんの方が、ずっと洗練(sophisticated)されてますね。」
「洗練されてる?それは過分な褒め言葉だわね。」
とセシリア。
「正確に言えば、どうでもいいことにこだわるタイプの人間ばかりってことよね。」
と自虐的な笑みを浮かべました。テリーもジムもこれに同調し、ふふふと笑いました。三人がしきりに使ったのが、この表現。

“We are just anal.”

字義通りに解釈すると、「私達って肛門的。」 Anal(「エイノォ」と聞こえます)は、Anus (肛門)の形容詞形なのです。どうでもいいような細部にこだわる人を形容する際によく使われるのですが、なんで肛門?と、あらためて疑問が湧きました。超忙しかったのですが、この好奇心には勝てず、ネットで調査すること15分。そこで分かったのは、もともとこれが心理学界の巨人、フロイトの学説から来ているということ。

フロイトは、人間の成長発達段階をいくつかに分けているのですが、呼吸や授乳に際して口や唇で覚える快感を通し、外界と繋がる「口唇期」に始まり、トイレ・トレーニングを通して自律性を習得する「肛門期」へと発達すると説きました。そしてこの「肛門期」に発達を妨げるような要因があると、成長してから「細かいことに異常ににこだわる」人間(これを「anal retentive」と呼びます)になるのだ、とフロイトは唱えたのだそうです。

そんなわけで、「私たちってアナルなのよ」が「私たちって、細かいことにこだわる人間なのよ」、つまり「潔癖症なの」という意味で使われるようになったのだと。かなりの飛躍だよなあ。日本で「俺ってアナルな人なんだ。」「わたしもアナルよ。」などと口走ったら、要らぬ誤解を招くと思います。

2011年6月23日木曜日

Back to back ひっきりなしに

月曜の朝一番、ダウンタウンのオフィスで打ち合わせをしていたところ、同僚セシリアがこんなことを言いました。

“I have back-to-back meetings this afternoon.”
「今日の午後は会議がバック・トゥ・バックで入ってるの。」

このフレーズ、前にも何度か聞いたなあ。…で、打ち合わせ終了後に辞書を引いてみたところ、「背中合わせの」と「連続した」という二つの意味が出ていました。一瞬納得しかけたのですが、ここであれっ?と疑問が湧きます。「背中合わせ」というビジュアルイメージが、「連続した」イメージとうまく噛み合わないのです。電車ごっこみたいに数人が前を向いて数珠繋ぎになっている姿だと、素直に受け入れられるんだけど…。

さて、昨日と今日はオレンジ支社で仕事。久しぶりに会った同僚スティーヴンに、この疑問をぶつけてみました。
「背中合わせということは、お互い反対向いてるわけでしょ。連続している、というスムーズな状況は連想できないんだよね。」
「う~ん、それは違うな。誰かと背中合わせに立ったところを想像してみてよ。お互いの距離がすごく近いでしょ。だから、続いてるという点よりもむしろ、何かと何かが近接している、という意味合いに繋がってるんだよ。 Back-to-back meetings は、会議がひとつ終わったら間髪入れず次のが始まる、という状況を指してるんだ。」

おおっ、明快な解答!これですっきりしました。何でも聞いてみるもんだなぁ。
てなわけで、私の和訳はこれ。

“I have back-to-back meetings this afternoon.”
「今日の午後は会議がひっきりなしに入ってるの。」

2011年6月21日火曜日

Weirdo イカレた奴

先月から別部門に属するプロジェクトのPMに就任したため、週二回のペースでダウンタウンのオフィスに詰めています。まだ人の名前が覚えられず、一日に一人ずつの割合で頭に入れています。

先週のこと。午後のミーティングへと急ぐ途中、通路に面したキュービクルから人間の足が二本突き出ているのを見て、思わず立ちすくみました。男性が頭をデスクの下に突っ込み、カーペットの上に突っ伏した格好で、ピクリとも動かないのです。鼓動が速くなります。急いで近くの女性社員をつかまえ、
「大変だよ。男の人がキュービクルの中で倒れてる。」
と伝えました。すると彼女は全く動じる様子もなく、
「あ、彼ね。大丈夫よ。」
と冷静に答えます。なんでそんなに落ち着き払ってるんだ?ちっとイラついて、
「でもね、全然動かないんだよ。もしかしたら心臓麻痺かも。」
とせかす私。
「わかった。見て来るね。」
やれやれ、と一安心して待っていたら、彼女が戻ってきて言いました。
「大丈夫よ。デスクの下で、映画観てたわ。」
「え?映画?」

その時、ミーティングを始めようと準備していた同僚セシリアが我々の会話を聞きつけ、
「何?誰のこと?」
と尋ねます。そして、倒れていた男性が誰であるかを知るやいなや、聞いて損した、という表情で、
「気にしないで。彼、ウィアード(weird)なの。」
と詰まらなそうに呟きました。そのまま何の追加説明もなく、会議がスタートします。当然、私の頭は「?」で一杯。暫くは打ち合わせに身が入りませんでした。デスクの下で映画?スマートフォンで観てたのかな。どうして仕事中に?それにどうして腹ばいだったんだろ?私の疑問には遂に解答が与えられることなく、一日が終わったのでした。

さて、このウィアード(weird)ですが、私はずっと「ヘンな」という訳で理解していました。Strange とほぼ同列ながら、やや悪意が混じったニュアンスで。ところがこの週末、妻と映画を観ていた際、この変異形が現れたのです。

映画 Mother and Child (邦題「愛する人」)の中盤で、その単語が出てきます。

“Hey! Hey! The word is ‘thanks’, you weirdo!”
「おい、ちょっと待てよ!ここは「有難う」だろうが、このウィアドゥ!」

親切にしてくれた男性にひどく無礼な振舞いを見せた主人公の女性に対し、彼が怒って詰め寄るシーンです。weird のお尻に o をつけ、weirdo という名詞にしているのですが、ここは「ヘンな人」と訳すと弱すぎます。妻に意味を尋ねられ、自分がきちんと説明出来ないことに気付きました。

さっそく今日の朝、同僚マリアに質問します。
「weirdo はweird な人って意味よ。かなりはっきりと悪意が見えるわね。もちろん冗談ぽく使うことも出来るけど。ただ単に変人という意味で使うのはやめた方がいいわ。悪意の臭いを消したければ、クワーキー(quirky)の方がいいわね。」

さっそく私はweirdo の日本語訳、特に今回の英語のセリフの和訳を考え始めました。すぐに頭に浮かんだのは、
「このいかれポンチ!」
でしたが、ネットで調べたら「軽薄で間抜けな男性」のことだとのこと。ええっ?そうだったのかぁ。ずっと誤解してたぜ~。

そんなわけで、とりあえず映画のセリフはこう訳しておくことにしました。

“You weirdo!”
「このイカれ女!」

2011年6月18日土曜日

Duh! ダァ!

一昨日、凄腕PMのキャスリンから、こんなメールが届きました。
「外部業者からの請求書が、何故かシステムにはじかれちゃったの。予算の組み立て方に問題があったのかもしれないんだけど、どうしても原因が突き止められないのよ。助けてくれる?」

さっそく添付ファイルを開きます。請求書にはスタンプが押してあり、社内の誰かが処理しようとした形跡が見受けられます。なんでこれがシステムから拒絶されているのか?…じ~っと10秒ほど見つめたら、謎が解けました。さっそくキャスリンに返信。

「ここに書き込まれたプロジェクト番号の下4桁を見て。正しくは8021なのに、8201って記入されてるでしょ。誰かが書き間違えたんだね。それが原因だよ。」
もっと複雑な要因を予想していたであろう彼女にとって、こいつはとんだ拍子抜けだったことでしょう。すぐに返事が届きます。

“Thanks... duh!”
「ありがと。ダァ!」

ん?何?どういうこと?ダァ?さっそく同僚マリアの部屋を訪ねます。

「誰かに対して、あったり前じゃん、って言いたい時に使うわね。自分がとんでもないポカミスをやらかした時に使うと、あたしってバカねって意味になるわ。キャスリンの場合は明らかに後者ね。」

ふ~ん、なんだか分かったような分からんような…。

さて、昨日のお昼。元ボスのエドの誕生日が近いので、お祝いランチのため、マリアと三人でエドお気に入りのメキシコ料理店「On the Border」へ行きました。ラスベガス在住の同僚エリカとその旦那マークが、結婚式に参列するため折りよくサンディエゴに滞在中だったため、サプライズ合流を果たしました。まずは全員お気に入りの「ケイソ」を注文。これはチップスをディップするためのとろけるチーズで、激ウマなのです。

ケイソを待つ間に、再び「Duh」の話題を持ち出しました。皆口々に、マリアと同様の説明をしてくれました。自分自身に使う場合はOKだけど、誰かに対して使う時は要注意だ、と。五分ほどして、ウェイターが再び現れます。
「ケイソを注文されたんでしたよね。今すぐ持ってきます。」
早く食べたくてイライラしてたんですが、皆ニッコリ笑って「はい、お願いします」と答えます。と、その時、私の正面に座っていたエリカが、ウェイターが立ち去るのを待って、目玉をぐるっと回しながら

“Duh!”

と呟きました。
「わかった?今みたいな時に使うのよ。」
マークが続けて、
「面と向かって言うのはまずいけどな。」
「言う時の表情も重要よね。」
とマリア。そして、四人がバラバラに「ダァ」「ダァ」と言いながら、人を馬鹿にしたような呆れたような表情を作りました。
「シンスケもやってみろよ。」
とエド。

よし、この機会に一発で自分のモノにするぞ!と心に決めた私は、皆が見守る中、キモチをこめて初「ダァ!」を披露しました。すると四人が顔を見合わせながら、
「う~ん。」
と首を捻ります。
「なんだか違うんだよな。」
「そうね、微妙にね。」
「なんでかな。」
「分かんないけど違うわよね。」
とオーディションの審査員みたいなコメント。最後に、
「特訓が必要だな。」
とエドに励まされました。

いや、そこまでしてモノにしたいわけじゃないんだけど…。

2011年6月16日木曜日

I’m jazzed! 燃えて来たぜ!

おそらく30歳前後と思われる同僚カイルが、4日間のリーダーシップ・トレーニングから帰って来ました。タホ湖のほとりで泊り込み、北米全土から集まった社員とグループを組んでバンジージャンプの真似事をしたり、キャンプファイヤーを囲んで話しこんだりしたそうです。我が社にそんな行事があったなんて、初耳です。
「会社の現状が分かったし、将来のキャリア・パスについても説明してもらったし、この4日間で随分勉強したよ。絶品のコース料理まで出されて、君達は大事な人材なんだ!って何度も強調されるから、どんどん良い気分になって来ちゃった。」
そして彼は両手の拳を握りしめ、両肘をぐっと後ろに引いた後、こう言いました。

“I’m jazzed!”

え?ジャズって動詞なの?驚いて聞きなおそうとしたけど、その恍惚とした表情を見て思いとどまりました。5分後、同僚ディックの席へ行って説明を求めます。
「エキサイトしてるってことだよ。さんざんポジティブな言葉を浴びせられて、燃えちゃったんだろ。」
「これってクールな表現?」
「う~ん、どうかなぁ。80年代とか90年代にはクールだったかもしれないな。アンクールとまではいかないけど、特別クールってわけでもないと思うよ。俺が使うとしたら、メーンをつけ加えるね。」

“I’m jazzed, man!”
「燃えて来たぜ、メーン!」

後で語源を調べたら、1912年に西海岸で始まった俗語だろうとのこと。そもそも音楽とは何の関係もなかったそうです。「エネルギー」とか「活力」とかを意味していた「jasm」という俗語が元、という説が有力みたい。1915年になり、初めて音楽の一ジャンルを指す言葉として使われた、とか。そうか、その頃のジャズって元気な音楽だったんだな。私はこのところスロー・ジャズばかり聴いているので、あまりぴんと来ません。

と、ここで突然思い出しました。18歳の春。第一希望の大学に入学し、興奮に胸を躍らせながら満開の桜に彩られたキャンパスをそぞろ歩きました。その時、ウォークマン(カセットテープの)でサザンを聴いていたのですが、繰り返しかけていたのが「JAZZMAN」でした。そのせいで、今でもこの曲を聴くと、瞬時に「よしやるぞ!」と燃えちゃいます。

これで、 “jazzed” の意味がすっきり頭に入りました。

2011年6月14日火曜日

Elvis has left the building. ショーは終わったよ。

今朝、ノースカロライナのPMマークからメールが届き、その最後の一文に、「?」となりました。

As Elvis would say, “The English language has left the building.”

我が社が独自に開発したPMソフトウェアは、インターフェイス・デザインが昔のMS-DOSを髣髴とさせる稚拙さで、特にボタンに付けられたラベルがユーザーを混乱させ続けています。レポート画面で最も重要なボタンは「提出(Submit)」であるべきなのに、何故か “Update All” と書いてあるため、これまで何十人ものユーザーから苦情を受けて来ました。「提出ボタンが見つからない!」と。

今回マークも同じ疑問をぶつけて来たので、丁寧に回答を書いて送ったのです。そこで彼は、開発チームは英語も出来ないのか?という皮肉をこめてこのメールを書いて寄越したのだと思うのですが、なんでそこでエルビスが出てくるのか、首を捻りました。

弁護士の同僚ラリーに聞いたところ、
「その人、元のフレーズを随分思い切っていじったね。」
と、クスクス笑いました。
「もともとは、エルビス・プレスリーのコンサートに来た人があまりにも興奮してアンコールを連呼したために、とうとうMCが出てきて、エルビスは帰りました(Elvis has left the building.)、とアナウンスしなければならなかった、そういう実話から来てるんだよ。僕もその再放送、聴いたことがある。今では、ショーは終わった、とか、もう手遅れだ、という意味で使われてるよ。」
「ふ~ん。でもそうすると、マークのメールの意味がよく分からないな。」
「うん、それは限界ギリギリのヒネリだと思うよ。彼は、正しい英語が使われなくなってしまった、という意味で使ったんじゃないかな。」

なるほどね。その後同僚のリチャードを訪ねたところ、
「締め切りに間に合わせて成果品を提出した直後に、誰かがやって来てあそこをちょっと直してくれ、と頼んでくることがあるでしょ。そういう時に使うね。Elvis has left the building. って。The show is over. とか That ship has already sailed. とかと同じだよ。」

勉強になりました!

2011年6月12日日曜日

バーガー・ラウンジ最高!


最近、ダウンタウン・サンディエゴのオフィスに頻繁に行くようになってます。大抵は弁当を持っていくのですが、これまで三回ほど近所のハンバーガー屋へ足を運びました。このお店(Burger Lounge)は並みのバーガー・ショップと一線を画していて、都会的で洗練された佇まいです。なんとバーガーひとつが8ドル。現在の為替レートでこそ650円程度ですが、1ドル120円時代だったら約千円!しかもアメリカのお店にしては珍しく、小ぶりなのです。
三週間ほど前に初めて入ったのですが、値段表を見て一瞬足が止まりました。午後の打ち合わせに間に合うよう急いで昼食を取らなければならなかったし、近所には普通のレストランしかなかったので、やむを得ずそのまま注文。しかし一口かじってみて衝撃を受けました。トンデモナクウマイ!トマトもレタスもビックリするほど新鮮で、特にレタスを噛んだ時のザクッとした歯ごたえがたまりません。そして主役のハンバーグ。味付けは塩だけだと思うのですが、この肉が形容しがたいほど美味。「今まで食べて来たハンバーガーは一体何だったんだ?」と、机を拳で叩きたくなるほど。

「草を食べさせている牛だけを使っています。」

と壁に書いてある。え?それだけ?それだけでこんなに肉が美味くなるの?う~ん、思い出したらまた食べたくなってきました。

2011年6月9日木曜日

Something’s gotta give 何もかも完璧という訳にはいかない

昨日の朝、ロス郊外に住む大ボスのエリックからメールが入りました。
「明日の昼、サンディエゴでミーティングがあるんだ。折角だから、朝一番でダウンタウンのオフィスに寄って、君のプロジェクト・チームのメンバーに会いたいんだけど。」

さっそく、プロジェクト・ディレクターのテリーと対外PMのジムにメールを打ち、都合がつくがどうか尋ねます。ジムはあいにく終日現場に出ているそうで、テリーは朝一番でミーティングがあるという返事。
「私のミーティング会場はあなたのオフィスのそばだから、終わったらそっちに駆けつけるわよ。」
とテリー。

そういうメールのやり取りの後、ダウンタウンのオフィスでセシリアと打ち合わせをしていたところ、テリーが部屋に入ってきました。
「私、エリックと会うの初めてなの。彼、どんな人なの?」
そこで私が、彼の描写を始めます。
「スポーツマンでね。マラソンとかトライアスロンとかやってるんだよ。頭が良くて男前で、部下に優しくて、誰からも好かれてて…。」
「私、そういう人大嫌い。」
と、笑いながらテリーが突っ込みます。
「わたしもイヤ。」
とセシリア。
「明日はアキレス腱を探し当ててみせるわ。」
とテリーがダメ押しします。

えっ?どうして?あんなグレートな人なのに…。私の中では究極の「ナイスガイ」なんだけど…。そういえば妻に昔、いかにエリックが完璧な上司かというエピソードをいくつか披露したことがあるのですが、その時も、
「いやだね~!」
という予想外の反応が返ってきたことを思い出しました。「女性はナイスガイが嫌い」という説、案外当たってるのかも…。

さて、そして今日の朝、約束の時間の二分前。長身のエリックが颯爽と現れます。昨夜はダウンタウンのマリオットホテルに泊まったそうで、
「チェックアウト前にひと泳ぎして来たよ。あそこにはコースロープまで付いた、大きな室内プールがあるんだ。」
と、またしてもカッコいいセリフ。

5分遅れで到着したテリーと三人、今回のプロジェクトについて話し合い、それからビジネス一般に関する情報交換をして、一時間後に握手で解散しました。その後、同僚マリアを訪ね、昨日のテリーとセシリアの反応について意見を聞いてみました。
「私も、そんな完璧な人はいないと思う。奥さんに聞いてみたら分かるわよ。仕事で完璧な人って、大抵家庭に問題抱えてたりするもんよ。」
と、またしてもややネガティブな反応。これにはちょっと驚きました。マリアの義弟も、ものすごく人当たりが良く、誰からも愛されているそうなのですが、妹はいつもプリプリしてるというのです。
「結局、外でいい顔してる分、本来なら家族に向けられるはずのエネルギーが無くなって行くのよね。」
そうして、こんなセリフでコメントを締めくくります。

“Something’s gotta give.”

おお、このフレーズ、知ってるぞ!短縮形をほぐすと、こうなります。

“Something has got to give.”

Has got to はmust と同じなので、

“Something must give.”

ということですね。しかし、ここまで解きほぐしてもやっぱり理解出来ない。この場合、 give が何を意味しているのか分からなければ解読出来ないのです。「サムシングがギヴしなきゃならない。」はぁ?なんのこっちゃ…。

折角のキメ台詞の後なので、マリアに解説をお願いするのは止めにして、その足で弁護士の同僚ラリーを訪ねました。
「そういうタイトルの映画(邦題「恋愛適齢期」)、あったでしょ。ジャック・ニコルソン主演で。」
「ああ、そうだね。内容はよく覚えてないなあ。」
「熟年カップルの話だったと思うんだけど…。」
「あの映画に限って言えば、二人の男女が一緒に過ごす時、お互いどこかで妥協しなきゃいけないって話だと思うよ。両者が好きなようにしていては、衝突が避けられないからね。」
「そうか、でもギヴの意味がいまひとつ分かんないんだけど。」
するとラリーが携帯電話のソフトケースをつまみあげ、ゆっくりと二つの指で押しつぶしました。
「圧力をかけると、物がたわんだりへこんだりするでしょ。それがギヴなんだ。もちろん何かを誰かにあげる、という意味もあるけど、このフレーズの場合は前者だね。」

な~るほど。そんな意味があったのね。でも、ちょっと待てよ。
「お互いどこかで妥協しなきゃならない、という意味だと、マリアのコメントが理解出来ないんだけど。」
「そうだね。今回のケースだと、職場でも家庭でも、人間が全てにおいて完璧でいられるはずはない、どこかにしわ寄せが来るはずだ。そういう意味になると思うよ。」

すっきりしました。これは非常にかっこいい言い回しなので、ちょくちょく使って行きたいと思います。

2011年6月8日水曜日

Down to the wire 大詰め

観葉植物の水遣りに来ている外部業者のメアリーと、久しぶりに顔を合わせました。

“How are you doing?”

と声をかけたところ、彼女が大きくひとつ息を吸ってからこう答えました。

“It’s coming down to the wire!”
「ワイヤーのところまで来てるわ!」

はぁ?何を言われたのか一瞬分からず、残響を手繰り寄せて頭の中で再現してみました。でもやっぱり分からない。メアリーは言葉を切らず、来月デルマーで開催されるフェアに出品する鉱物の話を始めました。彼女とご主人は鉱石採掘が趣味で、あちこちで掘り出した石をイベントで展示したりコンテストに出品したりしています。その締め切りがもうすぐなのよ、と言うのです。う~ん、それでもやっぱり分からん。なんなんだ?「ダウン・トゥ・ザ・ワイヤー」って?

同僚マリアに尋ねたところ、
「時間切れ間近ってことよ。スポーツ番組でよく聞くんだけど、接戦のまま間もなく試合終了のホイッスルが鳴る、っていう場面で使われるわね。」
「へえ、そうなんだ。でも何でワイヤーなの?」
「そんなの知らないわ。」
といつものマリア節。しょうがないので、自分で調べました。

語源はどうやら、昔の競馬らしいです。今みたいに高速度カメラでゴールシーンを撮影するなんてことは出来なかったので、係官が着順を見定めやすいよう、ゴールラインの上方にワイヤーを張っていたそうです。数頭が最終コーナーを回り、もつれるようにゴール目前まで迫ってきている状況を指しているのが、今回のフレーズ。メアリーは出展作品の用意で大わらわ。それでも容赦なく締め切りが迫って来ている。果たして、優勝しそうな展示品をそれまでに用意できるのか?ま、そんな感じでしょう。

“It’s coming down to the wire!”
「大詰めを迎えてるの!」

ところで、今回あらためて不思議に思ったんだけど、マリアってイディオムの語源に全く興味が無いみたいなんです。調べるそぶりも見せず、「わかんないわ」で済ませちゃう。自分が逆の立場だったら(日本で働いていて、外国人社員にことわざの解説を頼まれたりしたら)、きっと焦って調べると思うんだけどなあ。

2011年6月7日火曜日

Heads-up お知らせ

今日はダウンタウンのオフィスでお仕事。経理担当のジョスリンにメールを打って、労務用のタスクに間違って誰かがコピー代などをチャージしないよう財務システムにルール付けをしてもらうよう依頼しました。5分後に彼女から返信。

“I will give you a heads up once this is complete.”
「終わったらヘッズアップを送るからね。」

この「ヘッズアップ」ですが、これまで恐らく百回以上聞いています。実際、自分でも生半可な理解のまま使ったことのあるフレーズなのですが、あらためて考えると何故「ヘッズ」という複数形に単数を示す冠詞の “a” が使われてるのか疑問が湧いて来ました。で、同僚シェインのオフィスを訪ねます。彼には日系人の奥さんがいて、彼女の旧姓が私と同じだということが判明して以来、急速に仲良くなったのです。

「テキサス出身の僕に文法の質問なんかしちゃ駄目だよ。」
と笑いながら、きちんと説明を始めるシェイン。
「そもそもたくさん人がいるところに向かって、顔を上げろ、これから何か始まるぞ、と注意を促すことから来てると思うよ。だから Head Up じゃなくて Heads Up と複数になんだな。それがひとかたまりで名詞として扱われてるから、I will give you a heads up. という言い方が出来るんだよ。」
「Warning (警告)って感じ?」
「そういう場合もあるけど、全くネガティブな含みはなく、単に何かをお知らせするという場合によく使われるね。」

これで納得です。ところで先週、このシェインがセシリアに呼ばれて彼女のオフィスで会議をしたのですが、開始直前に私が割り込んでセシリアに色々質問し始めました。シェインは我々のやり取りが終わるのを辛抱強く待っていたのですが、15分くらい経ったころ、たまりかねたように席を立って去りかけました。ここでセシリアが、間延びした声で一言叫びます。

“Shane, come back!”

明らかに、映画「シェーン」のラストシーンを意識したセリフです。こんなに使い古されたフレーズ、今でもまだ使う人がいるんだ、というのが驚きでした。

2011年6月2日木曜日

WTF なんじゃこりゃ?!

オレンジ支社の休憩室で弁当を食べてた時、誰かが置いて行ったニューズウィーク誌を読んでいたら、こんな記事が目に留まりました。

“When Maria Shriver married Arnold Schwarzenegger in 1986, it was a real live WTF moment.”
「1986年にマリア・シュライバーがアーノルド・シュワルツェネッガーと結婚したが、それはまさにWTFの瞬間だった。」

WTFという略語を最初に見たのは、今から3年ほど前。プロジェクトの収支についてのメールを、ファイナンス部門のトップに送った時のことです。私としては、意見を求めるつもりで書いた純粋な質問メールだったのですが、これが思ってもみなかった事態に発展したため、今でも鮮明に覚えています。
「もしもこのペースで進むと、最終的に〇十万ドルの損になってしまう計算ですが、現時点でそういう仮説を立てて良いものかどうか、教えてもらえますか?」

タイミングは年度末。ファイナンス部門は数字の積み上げの真っ最中です。そのピリピリした雰囲気を察するべきだったのですが、この頃はまだウブでした。何も知らず、破壊的な質問を投げこんじゃったわけです。

彼からの返信を無邪気に待っていたところ、大ボスのエリックからメールが飛び込んで来ました。
「シンスケ、こんなメールをいきなりファイナンスに送るのは言語道断だ。どうして先に部内を通さなかったんだ?」
かなりの剣幕です。エリックの文章の下に、ファイナンス部門のトップからのメールがあります。私の質問の上に、たった一言付け加えて。

WTF?

私にはこの略語の意味が全く分からず、当時聞く相手もいなかったので、ただぼんやりと嫌な気分でその日の午後を過ごしました。ところが夕方になって帰り支度をしていた時、出し抜けに暗号が解けたのです。

WTF = What the f**k

つまり、

“What the f**k is this?”
「なんじゃこりゃ?」

という、極端に激しい感情のこもった疑問文の略なのです。ジーパン刑事、松田優作殉職シーンの、あの叫びと一緒ですね。

今日の午後、同僚シェリルに、この言葉をビジネスシーンで使うことがどの程度不適切なのかを尋ねてみました。
「絶対、絶対使っちゃ駄目よ。そんなの会社のメールに書くなんて命取りだからね。」
と少しうろたえながらの回答。3年前の事件を話すと、信じられないという面持ちで、
「それはプロフェッショナルにあるまじき話ね。」
あれほどの役職にある人物が、そんな言葉を社内メールの文面に残すなんて、信じ難い失態だと言うのです。
「ものすごく取り乱してたってことよね、それは。」
彼の怒りの激しさを、3年の時を経て実感し、あらてめてちょっとビビリました。