2011年2月24日木曜日

Fly under the radar 目立たないように行動する

今月から、ボスのリックが毎週火曜に彼の配下全員を集め、定例会議をすることになりました。今週の会議では、同僚アンの取り組んでいるプロジェクトが業界のアワード対象になるのではないか、という話題になりました。
「珍しい技術を使ってるんだから、これはいけるよ。応募に向けて動いてるか?」
と問いかけるリックに対し、アンが答えます。
「技術導入の成果がまだはっきり出ていないから、ちょっと早いと思うの。」
リックが理解を示し、こう言いました。

“OK, keep it on your radar.”

「レーダー上に捉えておけ。」か?これに似た表現を、かつて同僚マークから聞いたことがあります。彼はレポート義務の生じないような小さなプロジェクトばかり担当している者を非難し、

“They are flying under the radar.”

とコメントしたのです。この時私は “under the radar” と “on the radar” の区別がつかず、彼の発言の真意を理解出来ませんでした。レーダーの上にいるか下にいるかで、どう違うのか。今日、きちんと調べました。

On the radarは「レーダー上に姿が映っている」
Under the radarは「レーダーをかいくぐっている」

そういえば、戦闘機が超低空飛行によってレーダー網をかいくぐるって話をよく聞きますね。それで納得です。

そんなわけで、今回のリックの発言は、

“OK, keep it on your radar.”
「よし、忘れないよう気にしておいてくれよ。」

という意味。一方マークが言ったのは、

“They are flying under the radar.”
「あいつら、目立たないように上手いことやってるんだよ。」

ということですね。

2011年2月23日水曜日

Under the weather 体調が悪い

昨日の朝、同僚のPM、ララのレポート作成を手伝いました。彼女はつい二週間前に手術を受けたそうで、先週末に復帰したとのこと。こういう場合、ストレートに病名を尋ねるわけにはいかないので、
「もうすっかり良くなったの?」
とだけ聞きました。彼女の返答がこれ。

“I’m still under the weather.”

直訳すると「まだ天気の下にいるの。」ですが、意味は「まだ本調子じゃないの。」です。これまで何度も耳にして来た表現なんですが、この時初めて疑問が湧きました。なんで Weather なの?と。

さっそくネットで調べたところ、本流とされている語源は次のようなもの。
「船乗りが荒天のために気分が悪くなった時、船室に入って休むように言われた。船室は風雨の影響を受けないため、under the weather に避難したわけである。」
ふ~ん、そうなのか。でもなんだかちょっと腑に落ちないなあ。船室で休んでれば、そのうち具合が良くなるわけでしょ。
「彼はどうした?」
と聞いて
「まだ船室にいるんだ。」
と言われたら、具合が良いのか悪いのか判断に迷うと思うんだけど…。さぼってるだけかもしれないし。

こんな説を唱える人もいます。
“The phrase under the weather originally had nothing to do with weather. the correct phrase is under the wether. It refers to the fact that female sheep resist the efforts of the castrated male sheep to mount them. When the female is so ill that she cannot resist the wether's attentions, she is literaly under the wether.”
「このフレーズ、もともと天気とは関係ありません。正解はWether (去勢されたオスの羊)。体調の悪いメス羊は、Wether にのしかかられても抵抗できない。だから具合が悪いことを Under the wether と言うんです。」

うっそつけ~!

2011年2月21日月曜日

Piggyback 抱き合わせる

先日の電話会議で、大ボスのクリスがこんな発言をしました。

“You could piggyback his letter.”

PMのエリックに対して、〇〇が既にクライアント宛の手紙を書いているから、それをピギーバックするといいよ、と忠告したのは分かったのですが、このキーワードが分からなければ、クリスの発言全体を理解出来ません。「小ブタの背中」じゃ意味が通らないし…。

さっそくネットで調べたところ、語源不明とされながら、そもそも「背負って運ぶ」という意味であることを知りました。もともとは16世紀に使われていた、“pick pack” とか “pick back” とか “pick-a-pack” が始まりらしく、18世紀になって「ピック」が「ピッグ」にすり替わっちゃったのだそうです。ブタとは何の関係もなかったのだ!

弁護士の同僚ラリーを訪ね、クリスの発言の解説をお願いしました。
「それは、他の人の書いた手紙を自分のに合体させたらどうか、という提案だと思うよ。」
なるほど、「別の手紙を背負う」、つまり「別の手紙と抱き合わせる」ということですね。ラリーがさらに説明を続けます。
「これ、一般には子供を背負った親を指して使うことが多いね。」

そこで私は、はたと考え込みます。
「ちょっと待って、ラリー。日本では、肩に乗せるのと背負うのとでは違う言葉を使うんだけど、Piggyback はどっちなの?たとえば誰かが窓の外を見ながら“He’s piggybacking his son.” と言ったとするでしょ。ラリーからはそれが見えない場合、どういう格好を想像する?」
「う~ん、それは見てみないと分かんないなあ。どっちもpiggyback だからねえ。」

ええ~っ?肩車もおんぶも同じなの???「パパ、おんぶして!」とせがまれた時と、
「パパ、肩車して!」と言われた時じゃ、身構え方が全然違うでしょ。アメリカ人パパはどうするんだろう?

2011年2月20日日曜日

Neighborhood Gem 隠れた名店

昨日、妻と一緒にフランス料理店 “La Bastide Bistro” でランチを食べました。私のかつての職場のすぐ近くにありながら、一度も訪れたことがなかったレストラン。ドアを開ける気にもならないほど陰鬱な店構えで、どう見ても寂れた二流どころなんです。数年前、どこかから評判を聞きつけた妻が、一回行ってみようよと興味を示したのですが、ずっと延ばし延ばしにしていたのです。

妻がクレープ、私が海老とスモークサーモンのリングイニを注文。フランス料理屋でパスタなんてね、と笑っていたのですが、これがもう言葉を失うほどの美味。パスタの茹で加減といい、海老のプリプリした歯ざわりといい、硬過ぎず、ソフト過ぎずのサーモンといい、非の打ち所が無い。ディルの入ったクリームソースは、魚介のエキスが深い味わいを演出していて、さすがフレンチ!途中で妻と皿を交換し、クレープも食してみたのですが、これまた絶品。二人で顔を見合わせちゃいました。いやあ、すごい穴場を発見しちゃったぜ!

「これこそ neighborhood gem だね。」

と私。このフレーズ、最近あちこちで聞くようになり、響きがカッコイイので使い始めました。Neighborhood が「近所の」で、gemが「宝石」ですから、「近所の宝石」、つまり繁華街やショッピング・モールで煌く一流人気レストランに対抗する、知る人ぞ知る隠れ家的名店のことですね。

とってもシアワセなランチタイムだったのでした。

2011年2月19日土曜日

Lenient 甘い、寛大な

先週、東海岸でスタートしたある巨大プロジェクトのレポートをオンラインでチェックしていたところ、数字の積み上げ方がいい加減なのを発見しました。このプロジェクトは今月から月次レビューを受けることになっているため、さっそく電話会議のセッティングを担当しているエリカに連絡しました。
「あら本当ね。教えてくれて有難う。」
「大事なステップをひとつ飛ばしてるから、最終予測コストの計算がちゃんと出来ていないんだ。PMに言って直してもらわなきゃ。」
「そうね。でも明日の朝一番でレビューがあるの。今から修正しても間に合わないわ。」
「PMにはせめてレビューの前に、ミスを認識してもらっておいた方がいいよ。」
「このプロジェクト、レビューを受けるのは今月が初めてなの。とりあえず今回はパスすると思うわよ。」

ここでエリカが使った表現がこれ。

“The reviewers have been lenient to beginners.”

ん?リーニエント?この単語、聞いたことは何度もあるんだけど、きちんと意味を調べたことはありませんでした。さっそくオンラインでチェックすると、「甘い、寛大な」とあります。「寛大な」はジェネラスじゃなかったの?と思ってこれを調べると、確かに「generous 寛大な」とあります。同僚リチャードのオフィスを訪ね、このふたつの違いは何?と質問。

「リーニエントは、普通なら厳しく対処してもおかしくないところを大目に見るってことだよ。たとえば、裁判官が情状酌量で犯人の刑期を軽くした場合、リーニエントを使うんだ。一方、成功した人が慈善事業に巨額の寄付をした場合、ジェネラスを使うね。」

なるほど。同じ「寛大」でも、その対象がどんな状況にあるかで違うのね。エリカの言ったのは、こういうことでしょう。

“The reviewers have been lenient to beginners.”
「レビュー担当者たちって、初心者には甘いのよ。」

Keep squeaking! キーキー叫び続けろ!

先日の電話会議で切れ者PMのキャスリンが、クライアントとの関係についてこう述べました。彼らとは非常に良い関係を続けているけど、会議の席では、過去にあったある事件を必ず蒸し返し、我々がした余分な仕事への報酬が支払われていないことに注意を向けさせている、と。

ここで進行役のボブが合いの手を入れます。

“The squeaking wheel gets the grease.”

これは非常に良く耳にするイディオムです。

「よく軋む車輪は油をさしてもらえる。」

つまり、キーキー叫んでたらそのうち面倒見てもらえるもんだ、ということですね。ボブのコメントに飛びついた大ボスのチャックが、こうキメました。

“Keep squeaking!”
「キーキー叫び続けろよ。」

そんなわけでキャスリンは、クライアントとの会議のたびにキーキー言う約束をさせられたのでした。

2011年2月17日木曜日

War story 苦い経験談

今朝は、電話会議による月次プロジェクト・レビューがありました。担当プロジェクトが間もなく終了する旨説明したPMのエリックに対し、西海岸を所掌する大ボスのチャックが、こう質問しました。
「下請けをクビにする話はどうなったんだ?」
「来週決着をつけます。問題なく処理できると思います。」
そうエリックが答えると、財務のトムが口を挟みます。
「前にもこの話はしたと思うけど、慎重に動いた方がいいぞ。」

ここでチャックが満を持して、「下請けを軽く見たためにとんだしっぺ返しを食った」昔話を披露しました。身の毛もよだつ恐怖体験談に皆が静まり返った後、進行役のボブが、
「俺にも似たような経験があるぞ。」
と、すかさずとっておきのエピソードを紹介しました。この時の会話で、チャックとボブの両方が使ったフレーズがこれ。

“Let me share my war story.”

直訳すると、
「俺の戦争体験を聞かせてやろう。」
ですが、ここで使われている War Story とは、「苦い経験談」のこと。要するに、似た状況で自分はイタい失敗をしたから、同じ過ちをエリックに繰り返させないために、教訓を伝えてあげたのですね。

これまで、「教訓」という意味の英語表現としては“Lessons Learned” しか知りませんでした。シンプルながらインパクトの強いバリエーションを有難う!

2011年2月16日水曜日

I’ll take you up on it. 申し出をお受けします。

昨日、東海岸の熟練PMスーザンがプロジェクト予算の積み上げで悩んでいたので、経理のパトリシアがメールでこう言いました。
「シンスケがこういうの得意だから、彼にやってもらうといいわ。」

そこで返ってきたスーザンのメールがこれ。

“OK. I’d like to take you up on it.”

テイク・ユー・アップ・オン???ひとつひとつは何てこと無い単語なのに、合体すると全く意味不明。こういうのに出くわすたびに、英語上級者への道のりの険しさにため息が出てしまうのですね。

で、いつものように同僚ラリーに質問。すると、
「オファー(申し出)を受けます、っていう意味だよ。」

え~?どうして?何でそうなるの?一生懸命動作を視覚化しようと試みる私。

“Take you up”
「あなたをつかまえて持ち上げて」
“On it”
「その(申し出の)上に置く」

う~ん、もう一息で関連付けられそうなんだけど、今ひとつピンと来ない。今朝同僚リチャードをつかまえて尋ねたところ、
「そんなの分解してもダメだよ。ますます分からなくなるじゃない。フレーズを丸ごと憶えなきゃ。」
と忠告されました。そういうの、苦手なんだよな。
「良く使う表現なの?」
「うん、すごく良く使うよ。」
とリチャード。

というわけで、構造的なアプローチを捨てて、そのまんま憶えることにしました。悔しいです!

2011年2月15日火曜日

First and foremost 一番にして最重要の

今日のWall Street Journal。エジプト関連の記事に、こんな文章がありました。

He recently pledged the Brotherhood would “continue to raise the banner of jihad” against the Jews, which he called the group’s “first and formost enemies.”

エジプトのイスラム同胞団がユダヤ人を「最大の敵」と呼んでいる、という話なのですが、気になったのはこの、

“First and foremost”

というイディオム。これ、実に頻繁に聞く表現なんです。たとえば、

First and foremost, I want to say thank you.

みたいに。さっそく調べたところ、first もforemost もほぼ同じ(真っ先に、とか第一に、とかいう)意味。これは良く言うredundant (冗長)な言い回し(「頭痛が痛い」とか「危険が危ない」とか)ではないか、と不審に思い、弁護士の同僚ラリーに質問しました。

「そう言われてみれば確かにそうだねえ。我々ネイティブは平気で使ってるけど、文法的に正しいとは言えないよね。」
と笑い、こう付け足しました。
「要は、似た単語を畳み掛けることによって、そこにこめられた意味を強調してるんだよね。一番の敵、じゃ言い足りない。一番にして最重要の敵、と表現することによってどんなに憎らしいかを相手に伝えようとしているんだ。」

そういうの日本語にもあると思うよ、と言おうとしたけど、咄嗟に良い例が浮かびません。ああ、こういう時、さらっと気の利いた発言がしたいんだよなあ!

2011年2月14日月曜日

Pick your battles. 譲れるところは譲れ。

今日はバレンタイン・デー。日本では女子が男子にチョコをあげるならわしになってますが、アメリカじゃ逆です。しかもチョコというのはギフト品目のひとつに過ぎず、二人でロマンチックなディナーに出かける、というオプションが一般的みたいです。そんなわけで、今日は早めに退社する人がちらほら。ちなみに私は、会社帰りに赤いバラの花束を調達して妻にプレゼントしました。アメリカに来た当初は、
「おかしいよ。女子が男子にあげる日でしょうが!」
と文句を垂れていたのですが、さすがにもうそういう抵抗は止めました。家に花があるというのは良いもんですし。

さて、花束を買いに職場を出ようとした時のこと。インド出身の同僚ウデイから電話が入り、ちょっとしたヘルプを頼まれました。彼は新しいプロジェクトをスタートさせようとしているのですが、プロジェクト・マネジメント・プログラムの上でどうやってWBS(ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャー)を設定するかで四苦八苦しています。先週作ったWBSが経理のクリスティンから却下され、作り直しを要求されました。
「あんな細かい階層構造だと経理の人間が処置に困る、って言うんだ。僕としてはあれが一番クリアで間違いないと思うんだけど…。」
そこで私がこう答えます。
「何が正しいかはもちろん大事だけど、他の部門の人に気持ちよく協力してもらえるよう体制を整えるのも重要だよ。特に経理部門に嫌がられるのはダメージが大きいね。」
そして咄嗟に口をついて出たのが、次のフレーズ。

“Well, pick your battles.”

直訳すると「戦いを選べ。」ですが、その真意は、
「得るものの少ない戦いにエネルギーを使うな。譲れるところは譲れ。」
ということです。この表現、今から8年前、当時の同僚デイヴから聞いて以来、使う機会を探して続けていたのですが、ようやくそのチャンスが巡って来ました!興奮のあまり、二回続けて言っちゃいました。はずかし~。

デイヴの発言というのは、あるパーティの席でのこと。同僚ケヴィンが今度結婚するという話を漏れ聞いた彼が、我々の席にやってきてこう言ったのです。
「結婚暦25年の俺から、アドバイス代わりに教訓をひとつ。長年夫婦仲を保ってきた俺の秘訣はこれだ。」
そして飛び出したのが、

“Pick your battles.”

これから結婚しようという若者に対して、なんと味気ない言葉を贈るんだろう、と苦笑してはいたものの、このフレーズの奥できらめく「真実」に、ちょっと感動していた私でした。

これは夫婦だけじゃなく、人間関係一般に適用できる教訓だと思います。

2011年2月11日金曜日

Dog eat dog 食うか食われるか

最近、アメリカの景気が上昇気運にあるようなニュースをよく目にするのですが、自分の周囲を見る限りではそんな気配ゼロです。クライアントから発注されるプロジェクトの数が激減しているため、社員の稼働率は低下の一途。うちの支社に勤務する人の多くは、既に週30時間勤務体制に切り替わっていて、深刻なサバイバル・モードです。中間管理職は上層部からの強烈なプレッシャーを受け、子分どもに稼働率を上げろと闇雲にわめき立てますが、頑張りたくても肝心のプロジェクトが無いんだからどうしようもない。

同僚マリアと話した時、彼女がこう言いました。
「吸収合併を繰り返した結果、管理職が増えすぎたと私は思うのよね。ここ最近、全く同じ資料要求を複数の管理職から受けるケースが続いてるの。あの層のダブつきを無くさないといけないのは明らかでしょ。問題は、誰が切られるかよ。生き残りをかけて、皆必死になってるんだと思うわ。」

この時彼女が使ったフレーズがこれ。

“They are living in a dog-eat-dog world.”

「犬が犬を食べる世界」…か。う~ん、キモチワルイ…。後でちょいと調べたところ、これは「生き馬の目を抜く」とか「弱肉強食の」とかいった意味らしいのですが、どうしてこんな恐ろしい表現を使うんだろう?

で、再び調査。結局、これもやっぱり「語源不明」のパターンで、諸説紛々のようです。その中で、私の目を惹いた説がこれ。

「B.C. 43年、ローマの学者Marcus Tarentius Varro が人間性を評して、犬でさえ同じ犬を食わない、と言った。彼の言いたかったのは、人間はお互いに殺し合いをしている、動物より悪い、という話。16世紀までには、この表現が苛烈な競争を意味するようになった。」

なんか、とんでもなく眉唾っぽい書きっぷりだけど、趣旨には賛同できるので、これをひとまず採用しておこうと思います。

2011年2月10日木曜日

Suck it up! ぐっとこらえろ!

一昨日、私のオフィスの前を通りかかった後期高齢者の同僚ジャック(なんと82歳!)と話していた時、大昔(1950年代)に上司と大喧嘩して会社を辞めた話を聞きました。その後自分でビジネスを起こし、総勢30名くらいの社員を抱える組織に育てあげたとか。
「若い時は負けん気が強かったからね。誰が相手でもすぐに食ってかかったもんだよ。でもね、自分で会社を持ってみると、そう簡単に癇癪を起こすわけにいかないんだな。社員の生活がかかってるからね。無能なクライアントにどんな横暴なこと言われても、ぐっと我慢だ。」

この時ジャックの使ったフレーズが、

“Suck it up!” (「サッキラップ」と聞こえます。)

これ、実に頻繁に耳にする表現なんです。日本語の「ぐっと飲み込む」に相当する意味であることは、文脈から何となく察しがつくのですが、「Suck (吸い)Up (上げる)」とは物理的な上下関係が正反対であるため、ずっと腑に落ちないでいました。で、今晩ちょっと調べてみました。

どうやら確たる語源は存在しないようなんですが、信じてもいいかな、と思えるのがこれ
「第二次大戦時のパイロットが使っていた表現。酸素マスクの中に吐いてしまった場合、早くゲロを吸い上げないと吸入口が詰まって窒息死してしまう、ということから、好ましくない二者択一があった場合、ぐっと堪えて被害の小さい方を選べ、という意味に転じた。」

飲み込むのは飲み込むのね。ただ、初めに吸い上げないといけないけど。

2011年2月9日水曜日

I owe you one. ひとつ借りが出来たね。

今日の午後、PMのクリスからメールが来ました。
「昨日は残業させてすまん。おかげでクライアントにすごく喜んでもらえたよ。」
そして次の一言。

“I owe you one.”
「ひとつ借りが出来たね。」

前から気になってたんだけど、この “one” は一体何なんだ?

"I owe you a lunch."

で、「君にはランチ一回ごちそうしなきゃ。」となるのですが、"one" じゃ何のことか分からない。日本語で違和感なく使ってる「ひとつ」が、もしかして英語でも使われてるのかな?
「そこをひとつ宜しく。」
とか
「ひとつ頼まれてくれないか。」
など。で、さっそく同僚スティーヴンに質問しました。

「あ、それはね、a favor (お願いごと、親切な行為)のことだよ。」
と、至極シンプルな回答。つまり、
「今回お願いごとをひとつ聞いて貰ったから、次はこちらがひとつ返す番だね。」
というわけ。

そりゃそっか。日本語の「ひとつよろしく」みたいな曖昧なニュアンスの英語なんて、ちょっと想像出来ないもんな。

2011年2月8日火曜日

Nice guys finish last ナイスガイは…。

今日の午後、コンストラクション・マネジャーのクリスが私のオフィスにやって来ました。彼の担当工事のスケジュールの遅れの原因を追究すべく、Time Impact Analysis に二人で取り組むためです。これは、スケジューラーの仕事としては難度の高い種目で、結構苦労しました。途中で元ボスのエドが様子を見に来た際、クリスが建設会社やクライアントの仕事のいい加減さを呪って、ひとしきり毒づきました。
「穴だらけのスケジュールを作って提出してくる建設会社もひどいけど、よく確かめもせず受け取るクライアントもクライアントだよ。」
するとエドが、こうコメントしました。
「我々コンサルタントは、話がこじれにこじれてから、何とかしてくれ!って押し付けられる役回りなんだよな。」
ここでクリスが一言。

“Nice guys finish last.”

ナニナニ?なんて言ったの?と聞き返す私。クリスのザクッとした説明によると、「正直ものは馬鹿を見る」みたいな意味らしいのですが、帰宅して調べたところ、そもそもは1939年にレオ・ドローチャーというブルックリン・ドジャースの監督が相手チームを評して、

“Take a look at them. Thay’re all nice guys, but they’ll finish last. Nice guys. Finish last.”
「あいつらを見ろ。ナイスガイ揃いだろ。でも奴らは最下位で終わるだろうな。ナイスガイってのはどん尻で終わるもんなんだよ。」

と言ったのが元らしいです。後に、アメリカの生物学者ギャレット・ハーディンがリチャード・ドーキンス著「利己的な遺伝子」のコンセプトを説明した時にこの表現を用いたそうで(ドーキンスはその曲解に対して反論しているらしい)、
「ナイスガイは、実は女にモテない。」
が彼の主旨だったそうです。

小泉今日子の「渚のはいから人魚」に、
「お~と~こ~の~こ~って、少し悪いほ~うがい~い~わ~。」
という歌詞があるけど、これは巷で言われてる「女は悪い男にヨワい」という仮説に基づいて作られてますね。個人的には、「一見不良っぽいのに優しい男」が一番モテると思うんだけど…。いい奴って大抵、出足が遅い上に押しも弱いから、ダメだよね。

というわけで、私の和訳はこれ。

“Nice guys finish last.”
「ナイスガイはババつかむ。」

2011年2月7日月曜日

Get blood from a stone 不可能な試みをする

先日同僚パトリシアが、PMのマイクにメールでこんな質問をしました。

“What are the chances of getting that confirmation from your finance people?”
「そちらの財務担当者にその確認をしてもらえる確率はどのくらいある?」

するとマイクが、私もccに入れてこう返信して来ました。

“Getting blood from a stone would be easier.”

これには面食らいました。「石から血を絞り取るよりも難しい」なんて!さっそく語源を調べたところ、「初めからそこに存在しない物を取り出そうとする」行為から、「無理なことを試みる」意味になったようです。つまりマイクは、「絶対無理!」って言いたかったのですね。なんだかキザな言い回しで、さりげなく使える自信が私にはありません。ネイティブじゃない人間が、どこまでこういったイディオムを使うべきなのか、使ってもおかしくないのか、そのへんの塩梅がまだよく分からないんですよね。

2011年2月4日金曜日

Break in 使って柔らかくする

昨日の午後、ベッド界の世界王者 Tempur-Pedic (日本ではテンピュールと言うみたいですが、英語ではテンパーピーディックと発音します)のマットレスを購入しました。たかがベッドにこんな大枚をはたく奴がいるのか?と最初は笑っていたのですが、一度寝てみてその凄さを実感。何年間も欲しい物リストに入れてはいたものの、その法外な値段ゆえ、ずっと迷っていました。先日妻が、風水師に家の中をチェックしてもらった際、
「寝室は一番居心地の良い場所でなければなりません」
というアドバイスを頂いたこともあり、遂に心を決めました。

妻とThai House でランチした後、マットレス専門店の Sleep Train へGo! 何と、その日の内に無料配達してくれるというじゃありませんか!

売り子のお姉さんが、丁寧に使用上の注意を説明してくれました。
「ここに展示してあるマットレスは、何度も使われているためすっかり柔らかくなっていますが、ご購入されて最初の一ヶ月くらいは固く感じられると思います。まずはご使用前に、ベッドの上をゆっくり歩いて下さい。何度も踏みしめているうちに、馴染んで来ますから。」

この時彼女が盛んに使ったフレーズが、

“You’ll need to break it in.”

です。「ブレーク」して「イン」する?う~ん、何となく分かったような分からないような…。さっそく家に帰って調べてみると、Break In には「押し入る、乱入する」の他、いくつか意味があることが分かりました。そのひとつがこれ。

Loosen or soften with use
使って柔らかくする

固いジーンズを揉んだりして柔らかくする時も、この「ブレークイン」を使うそうです。

それにしても、ブレークもインも凡庸な単語なのに、コンビを組むやいなや異彩を放つなんて…。こういう奴らに出会うたび、自分の英語はまだまだだなあ、と自戒させられます。

2011年2月3日木曜日

Beat a dead horse 済んだ話を蒸し返す

昨日の電話会議で、プロジェクトの財務状況に話が及んだ時、大ボスのエリックが我々のプロジェクトの業績についてこう弁護しました。
「ここ数ヶ月の数字だけ見ると確かに厳しい状況だけど、去年はうちの部門に大きな利益をもたらしてくれたし、トータルで見ても大黒字なんだ。あまり責めちゃ、プロジェクト・チームのメンバーが気の毒だよ。」
すると財務部門のトップであるトムが、クールな口調でこう切り返しました。

“I already said thank you for that last year. But it’s new year now.”
「そのことではもう去年お礼を言ったよ。でももう年が明けたんだよ。」

それに対してエリックが、苦々しげにこう呻きます。

“Well, then we don’t need to beat a dead horse.”

この “Beat a dead horse” というイディオムですが、過去何度も耳にしながらずっとピンと来ずにいました。「死んでる馬を打ちのめす」なんてヒドい行為だし許せないとは思うけど、大体その行動の意図がワカラナイ。今回ちゃんと調べてみて、私の誤解は “Beat” という言葉の紛らわしさのせいだったということが判明しました。

このイディオム、そもそもは “Flog a Dead Horse” というフレーズだったようで、それがいつの間にかFlog(鞭打つ)からBeat(打つ)に転じたようなのです。Flog って単語をあまり耳にしない時代がやって来て、誰かがより通じやすい Beat に変えちゃったのかもしれません。「死んだ馬を鞭打つ」なら話が簡単。「動けない物を動かそうとする」、つまり「やっても意味の無い試みをする」ということですね。

エリックが言いたかったのは、こういうことだと思います。

“Well, then we don’t need to beat a dead horse.”
「じゃ、この話を蒸し返す必要は無いようだね。」

2011年2月2日水曜日

Elephant in the Room 触れてはいけない話題

同僚マリアに薦められ、映画「Exit through the Gift Shop」という映画を観ました。これは誰にも顔を知られていないストリート・アーティスト(というか落書きアーティスト)である Bansky (バンスキー)という人物の活動を追いかけたドキュメンタリー。世の中に蔓延る不正や欺瞞を、極めて直接的な手法で指摘し続ける彼の所業は、時に痛快ではあるものの、思わず目を覆いたくなるほど過激です。例えば、グワンタナモの収容所で裁判も経ずに人々を拘留し拷問にかけている米政府を糾弾するように、オレンジ色の囚人服を纏った等身大の風船人形をディズニーランドの真ん中に放置して逃げたり…(これにはドキドキしたなぁ)。

さて、映画の一場面で、壁紙と同じ模様に全身をデコレートされた象が登場します。これは彼一流の皮肉らしく、

Elephant in the Room

と銘打たれてあちこちのメディアで紹介されています。で、このイディオムですが、「部屋の中に象がいるのに、誰もあえてこれを指摘しない」状態を意味しています。つまり、動かしがたい事実を、大勢の人が見て見ぬふりをしているという、極めて居心地悪い状況のことですね。バンスキーはこのエキシビションによって、自分がやっていることの意義を人々に問いかけたのだと思います。

映画の感想を話しにマリアの部屋を訪ねた時、彼女がこう言いました。

“I have a huge elephant in the room right now.”
「今ね、巨大な象が部屋にいるのよ。」

コンドミニアムの隣人で、長年友達付き合いして来た夫婦がいるのですが、三日前に奥さんが出て行ってしまったというのです。近所の人は皆この事実を知っているのですが、当の旦那が全然そのことを口にしません。廊下で会ってもただ世間話をするだけ。彼女の方からこの話題を切り出すわけにはいかないので、どうにもこうにも居心地が悪いのだと。う~ん、それは大きな象だねえ。

Acts of God 天災

昨日の午後、あるプロジェクトの契約書を読んでいた時、

Force Majeure
不可抗力

という条項に目が留まりました。これはフォース・マジャー(ほとんど「マジュール」と聞こえる)というフランス語由来の言葉です。Majeure は Superior、 つまり上位の、という意味で、Force Majeure は「上位の力」、「当事者にはどうすることも出来ないこと」。条項の中身は、
「火事、洪水、(中略)、acts of God により仕事が遅れた場合、その間の責任は問われない。」
といったもので、私はこの、

Acts of God

に引っかかります。契約書に「神のみわざ」なんてちょっと変じゃない?日本の契約書には絶対書かれないフレーズだよなあ。

さっそく弁護士の同僚ラリーを訪ね、質問します。
「Force Majeure というのは、我々の力の及ばない原因で遅れが生じた時に責任を免れるための、大事な条項なんだ。以前話した Time is of the essence に対抗する形で、契約書に挿入するのが僕の仕事。Time is of the essence だけだと、何でもかんでも我々の責任にされちゃうからね。Acts of God は、既に中世のイギリスで法文中に使われていた言葉で、当事者のコントロールの及ぶ範囲を超えた出来事の一切合財をカバーしてくれる、便利なフレーズなんだな。この場合の神というのは、特にキリストを指したものじゃなくて、人間と対比される存在を意味してるんだ。」

これですっきりしました。Acts of God とは、日本語の「天災」ですね。