2011年9月30日金曜日

You bet!

熟練PMのダグは、私がお礼を言う度に、十中八九こう答えます。

“You bet!”

この返事をする人は、ダグに限りません。これまでたくさんの人から聞いて来ました。辞書には「どういたしまして」という意味が出てるんだけど、bet は「賭ける」という意味だから、全然納得行きません。さっそく同僚リチャードの部屋を訪ね、この疑問をぶつけてみました。

「確かにわけの分かんない表現だね。こういうのって、どこかで誰かが思いつきで使い始めて、それを他の人が気に入って真似して、そうこうするうちに世間で通用するようになった、大方そんなとこじゃないかな。」
「僕が思うに、 “You can bet on me.!(俺に賭けてもいいぜ)が “You bet!” に縮まったんじゃないかな。つまり、何でもどんどん頼んでくれよ、俺はきっちり片付けるぜ。そういう意味で使われたんじゃないかな。俺にまかせろ!って感じで。」
と私。
「ああ、それは信憑性あるね。」
リチャードは感心したように頷いて、曖昧な同意を示しました。

先日オレンジ支社へ行った時、物知りの同僚グレンにも同じ質問をしたのですが、やっぱり彼も、何でそういう返事が許されているのか明確な説明が出来ないようでした。
「本来なら You’re welcome と言うべきところで、どうしてこんな表現が出てくるのか、僕には分からないんだよね。」
とつぶやいた私の一言がヒントになったみたいで、彼がこう言いました。
「他に同じ考えの人がいるかどうかは知らないけど、僕は何かやりたくないことを頼まれてしてあげた場合、 You’re welcome とは言いたくないんだよね。だってちっともウェルカムじゃないから。嘘はつきたくないでしょ。そんな時は大抵、You bet って吐き捨てるように言ってるな。」
おお、そういう使い方があったか。でもそうなると、「まかせろ!」は強すぎるな…。

リチャードにこの話をすると、彼はこれに同意も反論もせず、ただ頷いていました。
「あのさ、これってもしかしてクールな表現?それともアンクール?」
と話題を少しずらしたところ、
「ある意味クールだね。だって男っぽい表現だから。俺って男だぜ!(I’m one of those guys!)っていう気張った感じが伝わって来るもん。」
思わず吹き出してしまいました。それって全然クールじゃないじゃん!

2011年9月26日月曜日

「軍手」って英語で何?

週末、Cuyamaca Rancho State Park という州立公園へキャンプに行きました。9歳の息子は焚き火にハマり、大はしゃぎ。公然と何かを燃やすって、現代社会じゃ許されない行為だもんなあ。そりゃ楽しいわ。満天の星空の下、火の周りに座って話をする、という一点だけ取っても、キャンプに行く価値は充分あるな、と実感しました。

土曜の午後、日本人の三家族(大人6名子供6名)で出かけたのですが、我が家だけ素人集団。何を持っていけば良いのかすら見当が付かなかったので、リストを作ってもらいました。テントは貸してくれるし、薪などの大きな買出しもやってもらえるということで、結局うちが用意することになったのは次の数点。

我が家用の寝袋
缶切
軍手
ペットボトル水
サラダ

さっそく出発日の午前中、REI というアウトドア専門店へ出かけて寝袋を三つ購入。このお店、どの店員も「アウトドアが好きでたまらない」という表情で接客してくれるせいで、とても気持ちよくショッピングが出来ます。今回も、私一人に対してクレイグという名の店員が一時間以上もアテンドしてくれて、嫌な顔ひとつせずに十種類以上の寝袋を出したり引っ込めたり。とてもアメリカのお店とは思えない上質なサービスでした。

さて、100%満足の行く寝袋を調達した後、軍手のことを思い出しました。で、クレイグに手袋を探していると告げると、
「それならこっちだよ。」
と案内してくれたのですが、そこにはバイク乗りの好きそうな革手袋がずらり。
「違う違う。ほら、使ったら捨てるような奴。」
「え?使い捨ての手袋?」
当惑するクレイグ。きっとビニール手袋のこと想像してるな。う~ん、弱ったぞ。軍手って英語で何て言うんだ?実はこの店に来る前に、ウォルマートで散々探した挙句、店員に何て聞けば良いか分からなかったので、諦めたのでした。
「革じゃなくてさ、ほら、大工仕事とか畑仕事とかする際に使う奴だよ。」
暫く宙を見つめていたクレイグが、はっとして言いました。

“I got it. You meant workers gloves!”
「分かった。ワーカーズ・グローブのことでしょ!」

労働者用(ワーカーズ)手袋?そのまんまじゃん。ちょっと拍子抜けでした。

2011年9月21日水曜日

Work like a charm 魔法みたいにうまく行く

現場事務所にいるクリスから、今朝メールが届きました。コンピュータにインストールしてあるプロジェクトマネジメント・プログラムを使おうとしているのに、エラーメッセージが立て続けに出て仕事にならない、助けてくれ、という内容。

エラーの種類から考えられる解決策をいくつか提案したんだけど、
「全然直らないよ。どうしよう?」
と途方に暮れるクリス。仕方ないので、
「今デスクトップ上にあるアイコンをゴミ箱に入れた後、ここのリンクへ飛んでもう一度ソフトをダウンロードしてみて。」
と、抜本的解決案を提示しました。

数分後、彼から来たメールがこれ。

“Worked like a charm. Thanks so much!”
「チャームのようにワークしたよ。どうもありがと!」

え?どゆこと?

ワークする、が「うまく行く」という意味なのは分かるんだけど、「チャームのように」が理解出来ない。チャームって「魅力」じゃなかったっけ?

あらためて調べてみたところ、チャームには「魔力」とか「おまじない」という意味があることが分かりました。動詞として使うと「魔法をかける」「魅了する」となるのですね。つまり、クリスが言ったのは、こういうことです。

“(It) Worked like a charm. Thanks so much!”
「魔法(をかけた)みたいにうまく行ったよ。どうもありがと!」

ちなみに、短い自己紹介などで良く使われる「チャーム・ポイント」は、完全なる和製英語だったのですね。確かにアメリカじゃ聞かないよな、この言葉。日本人の造語能力って驚くべきレベルの高さだな、と感心しました。そういえば、(英語表記があるかどうかは怪しいけど)ライオンの大ヒット商品「チャーミーグリーン」のネーミングセンスに至っては、舌を巻くばかり。Charmy なんて英単語は無いけど、なんとなく魅力的な雰囲気、出てるもんな。

拍手!

2011年9月18日日曜日

Loose cannon 危険人物

コンサルティング・ファームの仕事のひとつに、クライアントのオフィスに派遣社員を出す、というものがあります。役所のような組織では、一旦雇った人を簡単には解雇出来ないため、一時的な需要の振れに対応しにくいのです。そこで、要らなくなったらさっさと人を切り捨てられる、このシステムが重宝されるというわけ。

先月後半、あるクライアントの現場事務所にパティという女性社員を送り出しました。ところがその契約条項に対し、我が社の上層部から物言いがつきます。
「契約書を良く読んでみろ。うちの社員の行動に起因する損害賠償に関して、彼らがものすごく理不尽な要求を出来ることになってるぞ。」
部門長であるテリーの反論がこれ。
「このクライアントの契約書は、それがスタンダードなの。大規模プロジェクトにも、今回のような小さな仕事についても、一様に適用されてるのよ。おかしいのは分かってる。これまで幾度と無く条項の修正をお願いしたんだけど、がんとして受け付けないのよね。」
確かに、あそこまで巨大な組織だと、
「気に入らないなら他の会社を探すまでだ。はい、ご苦労さん。」
とそっぽを向かれる可能性が充分あります。
「でも、これまで一度も面倒が起こった試しは無いのよ。極めて良好な関係を続けてるから。」

上層部の指示がこれ。
「それなら、パティに細かい日誌をつけさせろ。クライアントからどんな指示をいつ受けたかを記録し、定期的に彼らのサインをもらえ。それを具体的にどう実行するか、プランを作って提出せよ。」
そこでテリーと私は、プランの作成に取り掛かります。私のキュービクルで立ち話していた時、テリーがこう言いました。
「実は私、こうなって良かったと思ってるの。最近分かったんだけど、パティの直属の上司になる男というのが、やっかいなのよ。今年の初めに引退するはずだったのに、まだいるのよね。」
そして放ったのが次の一言。

“He’s a real loose cannon.”
「彼ってひどくユルい大砲なのよ。」

思わず「え?今、何て言ったの?」と聞き返す私。

テリーの説明によると、どうやらその男は予測不能の言動で有名らしく、クライアント内部でも問題視されているというのです。そういう人物の指示を日々受けて仕事してたら、何か重大事件があった時に、パティが責めを負う破目に陥る恐れがある。だから彼の指示をいちいち書き取っておくという習慣は、彼女のためにもなる、というのです。

私の頭は、「ルースキャノン」という言葉で一杯になっていました。大砲がゆるいというのはどういう状況なの?砲身の内径と砲弾の直径が違い過ぎて、弾道が計算通りにならないってこと?だとしたら、ただ単に、「仕事の精度が悪い」という話になっちゃうよな…。

で、さっそく語源を調べてみました。

Loose Cannon:これは、かつて木製の軍艦が使われていた頃、その甲板に据え付けられていた大砲の話だそうです。砲台がきちんと固定されていない、あるいは壊れて緩くなった状態だと、発射の反動で甲板上を滑って暴れ、大勢の死傷者を出した。これが後に、「予測不能な言動をする危険人物」という意味に転じたのだそうです。

なるほど。思い当たる人が、他に一人います。

2011年9月17日土曜日

Burn the candle at both ends 無理して体力を消耗する

ここ一週間以上、どうも体調が優れません。微弱な風邪が、喉と鼻腔にとりついて離れないのです。日常生活に支障はないんだけど、なんだかドヨ~ンと身体の芯が重い。

今週は水曜にニューポートビーチ、木曜にサンフランシスコ支社でトレーニングの講師をしてきました。こういう仕事は初めての人と知り合うチャンスなので大好きなんだけど、ふと意外な落とし穴に気付きました。それは、風邪に感染しやすいということ。

大抵、トレーニングはドアを閉めた会議室内で行われます。激しく鼻をかんだり咳き込んだりする人が一人でもいると、ヤバいのです。今回も、そんな参加者がサンフランシスコで一人。こんな環境に3時間も4時間も身を置けば、まず間違いなく終了後にダルくなる。ただの疲れだ、きっと気のせいだ、と自分に言い聞かせても、そのうち本当にじわじわ喉が痛くなって来る。

秋の訪れとともに、具合の悪そうな人が周りに増え始めました。先日オレンジ支社で同僚トムに会った時も、彼の声は見事にしわがれていて、目も赤くなっていました。
「う~ん。調子悪い。俺に近寄らない方がいいぞ。」
「ありゃりゃ。健康優良児の見本みたいな男が、体調崩すこともあるんだね。」
「ここんとこ滅茶苦茶忙しいんだ。早朝出勤した上さらに夜遅くまで残業する生活が続いていてね。」

ここでトムの使った表現が、これ。

“I’ve been burning the candle at both ends.”
「ろうそくを両側から燃やしてるんだ。」

え?何て言ったの?

気だるそうなトムに、申し訳なく思いながらも解説をお願いしたところ、「無理をして体力を消耗する」状況を指すイディオムだとのこと。早く起きて遅く寝るという行動を、ろうそくの両端に火を灯す行為に見立てて説明しているんだと彼に言われ、なるほどね、と一度は納得したんだけど、よくよく考えるとどうも腑に落ちない。

で、後で調べてみたところ、どうやら語源は次のようなことらしいということが分かりました。

「夫婦がそれぞれ思い思いに家計を浪費する姿を、かつて高価な日用品であったろうそくを両端から燃やす行為に置き換えた。それが後に、仕事や遊びのしすぎで体力を消耗する人間の姿を表すイディオムとして使われるようになった。」

金曜にダウンタウン・サンディエゴのオフィスで久しぶりにジムに会ったところ、いかにも病み上がりといった様子で、
「もうだいぶ回復したけど、僕に近づかない方がいいよ。今週はミシガンに飛んだりして、本当に忙しかったんだ。おかげで風邪がなかなか治らない。」
と力なく笑いました。さっそくここで、覚えたてのイディオムを試し撃ち。

“I guess you have been burning the candle at both ends.”
「無理して体力を消耗してるんじゃないの?」

するとジムが深く頷き、
「ああ、その通りだよ。節制しなきゃ。」
としきりに反省していました。

よっしゃ!新しいイディオムがひとつ、自分のモノになりました。

2011年9月9日金曜日

Bird dog とりいぬ?

火曜日の正午、アーバイン支社で打ち合わせがありました。時間通りに会議室に到着すると、座っていたのはリサだけ。
「エリックもミケーラも、突然来られなくなっちゃったのよ。今、電話会議をセットするわね。」
会議のテーマは、今月末にスタートするPMトレーニングの内容を詰めること。作業分担は次の通り。

People Management エリック
Risk Management サラ
Marketing マイク
Product Delivery 私
Finance ミケーラ

「マイクは今、超多忙だぞ。きちんと期限通りにスライドを仕上げてもらうのは至難の業だな。」
と、電話の向こうでエリックが困り顔。この時、彼がこう言いました。

“Who’s going to be the bird dog for him?”
「誰が彼のバードドッグをする?」

え?バードドッグ??とりいぬ?…うなぎ犬なら知ってるんだけど…。

この言葉が頭にずっとひっかかって、残りの議論にあまり集中出来なかった私。電話を切るや否や、リサに質問をぶつけました。
「う~ん。そうね。確かに不思議な言葉よね。」
なんだか自信なさそう。
「鳥みたいに空高く飛んで、犬みたいに追いかける、とか…。」
意外なことに、意味を知らないみたい。恥をかかせても悪いので、追究するのを止めました。

そして今日、オレンジ支社で物知りのトムと会ったので、彼に尋ねてみました。
「ああ、それは猟犬のことだよ。猟師が鳥を撃ったら、猛然と駆けて行って獲物をくわえて戻ってくる犬。つまり、誰かをしつこく追い回して仕事の成果をゲットして来る奴のことだね。ネガティブにもポジティブにも使われるよ。」

な~んだ、そうか。「上半身が鳥」という犬を勝手に想像してた。エリックの発言を思い切り意訳すると、こういうことでしょう。

“Who’s going to be the bird dog for him?”
「誰が彼の担当編集者になる?」

2011年9月5日月曜日

Brockton Villa

明日から4日間、六つの支社を巡るロード・トリップに行って来ます。ニューポートビーチ、アーバイン、ベイカーズフィールド、ヴェンチュラ、カマリロ、そしてオレンジ。そのうち三支社ではプロジェクト・マネジメントのトレーニング講師を務めます。長距離ドライブはイヤじゃないんだけど、こうした出張で悩むのは食事。最近は年のせいか、どうも和食回帰の傾向が強くなっていて、パンケーキとかソーセージとかいうアメリカ~ンな食事が続くと、とっても辛いんです。じわじわと体調が悪化するんだよなあ。特にお通じが…。

さきほどネットでざっと調べたところ、ベイカーズフィールドにもヴェンチュラにも、和食のお店ってあまりなさそうなんです。いや、そこまで贅沢を言わないから、やや健康的な食事が出来るお店があればいいんだけど、そういうの探すの、至難の業なんだよな…。

日本で地方出張をしてた頃は、何を食べるかがとっても楽しみでした。その土地土地に、必ずといって良い程、名店がある。福岡で食べたイカ刺しやふぐ、島根で食べたカニ、高知は四万十川で食べた岩海苔。ああ、思い出すだけでよだれが…。なんという素晴らしい国だろう!日本!チャチャチャ!

その点サンディエゴという街は、小さな名店がいくつかあります。様々な人種が混じり合って暮らしていることも、多様性の促進に繋がっているのかもしれません。和食以外で私がお奨めするお店のひとつが、Brockton Villa 。ここのフレンチトーストは名物で、フランスパンをオレンジジュースに浸して作るらしい。景色もグッド。こんなお店、出張先で発見出来るといいんだけど…。

それじゃ、行って来ます。

Articulate はっきり言葉で表現する

今年の6月、ドラマ「北の国から」全シリーズ(テレビドラマ時代も含めたもの)DVDセットを「大人買い」しました。なんと合計25枚!

夏休みに妻子が里帰りしている間、目に涙しながらチョコチョコ観続けていたのですが、最後の二枚を前にぴたりと止まってしまいました。まるでフルマラソンのゴール前5キロで、余力を残しながらリタイアしようかどうか迷っているような状態。

どうやら、倉本ワールドに食あたりしたというか、もうお腹一杯、という感覚なのですね。登場人物が、現代社会の許容範囲を遥かに超える「長い間」を置きながら、俯いて滑舌悪くボソボソ喋る。やたら昔の映像を引っ張り出して涙腺を攻撃する。「自然の厳しさ」と「貧乏暮らし」とがタッグを組んで、これでもかと攻めて来る。

幸運にも「毎日がパラダイス」なお気楽タウンに身を置いている立場で、こんなことを言うのは心苦しいのだけど、「そこまで暮らしが大変なら、どうしてその土地に固執するのか」が、私には理解出来ない。だって黒板五郎も純も雪子おばさんも、吹雪で死にかけてるんですよ!

吹雪と言えば、妻の実家があるミシガンを訪ねると、義父母やその隣人達は、長く寒い冬の大変さを指摘しながらも、土地に対する溢れんばかりの愛を語るのです。なんでぇ?逆に、カリフォルニアなんかに住んでて大丈夫か、頭がバカになりゃしないか、と心配する人までいる始末。寒い地方の出身者って、どうもカリフォルニアを見下す傾向があるみたいなんです。

さて先日、職場の同僚ディックと立ち話していた際、彼の実家がサウスダコタにあるという話題になりました。
「故郷に帰りたくなる時ってある?」
「ああ、あるよ。数年前、家を買うまでは、いずれはあっちに移ろうと思ってた。」
「サウスダコタって、冬寒いんでしょ。」
「そりゃ、とんでもなく寒いよ。冬だけじゃなく、気候の変動はすごく激しくて、厳しい土地だね。」
「聞いていい?ここまで快適な暮らしを捨ててまで戻りたくなる理由って、一体何なの?」

ディックがニヤリと笑って言いました。
「それはね、自然のエネルギーだよ。」
「エネルギー?」
「そう。俺はずっと、自分がどうして故郷を恋しく思うのか分からなかったんだ。それが最近、ようやくハッキリした。俺は、何日も街を機能停止させるほどの豪雪や、吹き荒れる風や、激しい雨や、でっかい雨雲や、そうした一切のものが懐かしいんだ。自然のエネルギーに触れていたいんだ。ここじゃ、一年中晴天だろ。快適過ぎて、エネルギーが感じられないんだよ。」

私はすっかり感心していました。なるほどね。それはとってもよく分かる。
「これまでモヤモヤしていた疑問が一気に晴れたよ。きっと、同じ気持ちの人って大勢いるんだろうね。」
「俺だってね、最近までずっと、はっきり言葉で表現出来なかったんだ。」
とディック。

この時彼が使った言い回しが、これ。

“It took me a long time to be able to articulate it.”

Articulate (アーティキュレイト)という動詞は、よく聞く割に、これまできちんと使えた試しがありませんでした。同じスペルで「アーティキュレト」と発音する形容詞は、

“He’s very articulate.”
「彼はとてもはきはきしてるね。」

って感じで良く使っていたのですが。今回ディックと話して、ようやく動詞としての使い方が理解出来ました。

さっそく翌日、カリフォルニア育ちの同僚リチャードと、この話をしました。
「その人、エンジニアじゃない?」
と、ロボット・ダンスみたいなジェスチャーでギクシャク行動する人の真似をするリチャード。
「いや、ディックはエンジニアじゃないよ。なんで?」
リチャードが笑って、
「それは教養ある人しか使わないような単語なんだよ。」
「へえ、そうなんだ。何か例文ある?」

彼の作ってくれた例文が、これ。

“Can you articulate our scope of work?”
「我々の仕事のスコープを明確に説明して頂けますか?」

リチャードにお礼を言って自分の部屋に戻った後、ふと彼の演じた物真似が蘇りました。エンジニアをそういう目で見てたのか、リチャード。

2011年9月2日金曜日

RSVP 出欠教えてね

5月にスタートした、私の担当プロジェクト。8月に最初のマイルストーン(中間ゴール)をクリアしたのを祝って、同僚セシリアとバーバラが、ちょっとしたパーティーを企画しました。ダウンタウンにある、ボーリング場とスポーツ・バーを合体させたカッコイイお店。ここに昨晩20人ほど集まって、飲み物を手にボーリングに興じました。

昨日の朝のこと。主催者のセシリアが、チームメンバー全員に宛てて一斉メールを流しました。
「前にお知らせした通り、今夜はボーリングでお祝いよ。忘れないでね。」
そしてこう続きます。

“If you haven’t RSVP’d, no worries… just bring yourself down to East Village Tavern and Bowl!”
「もしもまだRSVPしてなくても、気にしないで。ただイーストビレッジ・タバーン・アンド・ボウルに集合すればいいの!」

このメールを受け取った時、私はオレンジ支社にいました。たくさんの英語表現を知っているコンストラクション・マネジャーのトムを発見したので、さっそく質問。
「RSVPってさ、repondez s'il vous plait (英語でrespond if you please)っていうフランス語の略だっていうのは知ってたんだけど、これ、ビジネス・メールで使ってOKなの?」
「フランス語だったのか?知らなかった。その表現は最近じゃ頻繁に使われてるね。俺は使わないけど。パーティーの主催者が席の数や準備する飲み物の量を決めたいような場合、早めに頭数を知っておきたいだろ。俺だったらそれをそのまんまメールに書くけどさ、皆忙しいから字数を減らしたいんだよ。」
「 “RSVP Please.” って表現を良く見るんだけど、本当はおかしいよね。だってプリーズが既にRSVPの一部なんだから。」
「そんなの誰も気にしないよ。」
「 “RSVP ASAP Please.” も有り?」
「うん、有りだね。」
セシリアはRSVPの過去分詞(RSVP’d)を作ってメールに織り込んでたけど、トムはこれも有りだと言います。
「現代社会はスピード命だからな。何でもどんどん縮めちまうのさ。本当はどんな場面でもきちんとした言葉を使うべきだと、俺は思うけどね。」

うん、僕も賛成。