2011年12月15日木曜日

Death by a thousand cuts じわじわと破滅に向かう

今朝はどかっと仕事を片付けようと勇んで6時に出勤したのですが、経済通の同僚アーニーにつかまってしまいました。
「今日のニュースを見たか?Census Data (国勢調査のデータ)が発表されて、アメリカ人の二人に一人が低所得層か貧困層だっていうんだ。信じられるか?二人に一人だぞ。」

朝一番でショックを与えてすまん、と謝りながら、さらに続けます。
「この先、どんな事態が待ってると思う?端的に言って、ヨーロッパの二の舞だろうな。ここまで貧困化が進んだら、政府が救済に乗り出さないわけにはいかない。生活保護漬けの人間が増える。そして一旦それが普通になると、もうそのサービスを切れなくなる。どんどん公的保護に依存する人間が増えて、景気は停滞を続けるんだ。」
「う~ん、こうなったら新たなニューディール政策を打ち出すしか無いね。」
と私。
「うん、本気で思い切ったことをやらないと、この国には先が無いよ。」
彼の案は、職にあぶれてる人をカンザス州あたりに集めて、巨大な太陽電池プラントか何かを作ってガンガン働いてもらう。そしてOPECに中指立てられるくらいのエネルギーを生み出して外国に売り込む、というもの。
「でも、そんなことはまず出来ないだろうな。今のアメリカじゃ、ニューディールは不可能だよ。」
と、あくまでも悲観的なアーニー。政策に関する情報がネットやメディアを通じて一瞬にして広まる今の時代、政府が思い切った手を打てなくなった、と彼は言います。
「それに、何か対策を講じた結果、ちょっとだけ状況が改善するけど暫くすると元通り、ってのを繰り返すだろ。これが良くないんだよ。失業率が25%くらいになるまで放っておいて、強力なリーダーシップを持つ大統領に登場してもらい、究極の選択を国民に迫った上で断行する、ってな具合に運ばないとどうにもならない。今はさ、失業率が6%から9%に上がると中途半端な景気対策を打つ、で7%くらいまで下がる、で、三ヶ月もするとまた9%まで上がるって具合だろ。何もしないよりずっとたちが悪いよ。」

そこで彼が苦々しげに吐き捨てたのが、このフレーズ。

“That’s death by a thousand cuts.”

文字通り訳せば、「千の切り傷による死」ですね。つまり、ひとつひとつの傷は致命的じゃないけど、千箇所も切られればそのうち死ぬ、ということ。私の訳はこれ。

“That’s death by a thousand cuts.”
「じわじわと破滅に向かってるんだよ。」

もともとは清の時代まで中国で採用されていた処刑法「凌遅刑(りょうちけい)」から来ている言い回しだそうです。グーグルしたら、恐ろしい写真がざくざく出て来ました。朝からちょっと気分が悪くなりました。

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