昨日の晩は、友人宅で感謝祭のディナーを愉しみました。家主のマイクさんは法廷弁護士で、仕事柄、言葉の使い方に人一倍敏感です。彼は「物語のパワー」というものに特に魅せられていて、人類学、脳神経学などを独学しながら、なぜシンプルなストーリーが聞く人の感情を揺さぶり、彼らの行動を変えるのかを研究し続けているのだそうです。毎週月曜の晩はあるクラブに通っていて、そこには多様なバックグラウンドの老若男女が集い、知的なゲームで脳を鍛えているのだとか。お題を与えられたらそれに関連する話を間髪入れずに作り出す大喜利みたいなのとか、「その言葉はBike と韻を踏んでいます。さて何でしょう。」と誰かが言うと他の参加者が次々とステージに出てこれと思う答えをジェスチャーだけで示し、皆がそれを当てる、とか。
「じゃ、ひとつやってみよう。」
とマイクさんが教えてくれたのが、Three-Headed Oracle (三つ首の賢人)というゲーム。三人が並んで座り、誰かの質問に答えるのですが、一回に口に出来るのは一人一単語まで。隣の人の発した単語に他の単語を続け、次の人がまた他の単語をくっつけ、意味が通る文章を協力して構築しつつ、聴衆を笑わせるような「ひねり」も入れる。たとえば「明日の天気はどうですか?」と聞かれたら、
「明日」
「お日様」
「は」
「東の」
「海岸」
「から」
「のぼる」
「ことは」
「ないでしょう」
みたいに。誰かが突然とんでもない方向に話題をぶれさせると、隣の人は動揺します。しかしそこを巧妙に修復すると、笑いが起こるのですね。これ、やってみると異常に難しいのです。マイクさんは、
「考えすぎて硬くなっちゃ駄目。リラックスすればするほど良いアイディアが浮かぶよ。」
と言うのですが、英語学習者にとっては最上級レベルの試練だと思います。
さて、話の流れから、Oxymoron (オクシモロン)について語ることになりました(「アクシマラン」と聞こえます)。これは日本語で矛盾語法とか撞着語法とか呼ばれていて、相反する二つの単語を組み合わせて作られた言葉を指します。詩的な文章などに多く使われる、洗練された言葉遊びです。古代ギリシャ起源のラテン語が語源だそうで、oxy は「鋭い」、moron は「鈍い」という意味。
たとえばさ、と私がいくつか例を挙げました。
Sweet pain (甘い痛み)
Slim fat (スリムな脂肪)
すると、すかさずマイクさんが事も無げに続々と例を繰り出しました。そのスピードに感心していたところ、最後にこんなのを付け足し、奥さんの顔を見て悪戯っぽく笑いました。
True love (真の愛)
これは断じてOxymoron じゃありません。彼一流の「ひねり」なのですね。脱帽です。
2011年11月25日金曜日
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矛盾。結局盾と矛、あの話の結末はどうなるんだっけ?
返信削除Sweet Pain by KISS!
True loveようは、Trueじゃないloveが氾濫してるわけね。
言葉遊びといえば、回文。
だんしがしんだ、は真実になってしまいました。合掌。
談志の戒名は「立川雲黒斎家元勝手居士」(たてかわうんこくさいいえもとかってこじ)。やるねえ。うんこくさいだって。
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