2010年5月24日月曜日

リチャードを探せ!

サンディエゴで仕事を始めてまだ二週間も経たぬ頃、ボスのマイクがあわただしく私のところへやって来て、
「俺は今からミーティングに行くんだが、大至急NM社のリチャードに電話して、明日ここで会えないかどうか聞いてみてくれ。」
と頼んで来ました。NM社というのは初耳です。
「リチャード・誰ですか?」
「ロバーツだ。頼むぞ。」

名刺くらい置いていってくれればいいのに、と思いながらまずネットでNM社を探す。見つけた代表番号に電話して、フル・ネームを尋ねます。しかしそんな人はいない、との答え。南カリフォルニア中のオフィスを探してもらいましたが、見つからない。サンフランシスコにもひとつ支社があります。と受付嬢が言うので、一応調べてもらったのですが、やっぱりいない。
「すみませんが、もう一度調べてもらえませんか?」
と重ねて頼むも、リチャードなる人物は名簿に載っていないそうなのです。

さてはボスのマイクが何か勘違いをしてるんだな、とミーティングから戻って来た彼に首尾を報告したところ、
「おかしいな、ディックの奴、突然辞めたのかな。一週間前に話したばかりなのに。」
と呟きながら自分の名刺入れをごそごそ探し始めたのです。
「ちょっと待って下さい。今ディックっておっしゃいました?探してたのはリチャードじゃないんですか?」
と私。マイクは一瞬ポカンとした後、「この外国人めが」という苦笑いを浮かべ、
「ディックはリチャードのニックネームだよ。」
と説明しました。そういえばNM社の受付嬢、しつこく
「ディック・ロバーツのことですか?ディックならサンディエゴ支社におりますが。」
と念押ししてたなあ。
「いいえ、違います。探しているのはリチャードです。」
と、きっぱり否定し続けた私。

マイケルをマイクと呼んだりジョナサンをジョンと呼んだりするのはまだいいとしても、リチャードをディックに変えるのはいくらなんでも反則だろ、と恨めしく思ったのでした。それ以前の問題として、会社の名簿に正式にニックネームを載せるってのはどういう神経なんだ?と激しく違和感を抱いたものでした。

しかしその後、NM社のみならず自分の会社でも更なる反則技を多数目にするようになり、ディックなんて甘い方だということが分かりました。後年の大ボス、スキーは「〇〇〇〇スキー」という苗字からそんな愛称になったそうだし、現在の同僚スキップなんて、まるで手がかりなし。「ただそう呼ばれたいから」つけたニックネームだそうで、さらにややこしいことに、Eメールのアドレスは正式名をもとに設定されているため、メールの送信先が見つからなくて捜索に長時間を費やしたことがありました。社員名簿にはニックネームで登録され、Eメールアドレスと財務データベース上の名前は本名が使われているのです。みんなよく混乱しないよなあ。

そういえば、入社早々提出を促された書類は、氏名・生年月日などのすぐ横に愛称を書くようになっていて、ここはひとつ笑えるニックネーム(サムライとかショーグンとか)を記入してみようかなと暫く迷ったのですが、やめといて良かった~。

2 件のコメント:

  1. DickがRichardだったとは初めて知りました。勉強になります。
    そういえば初級編ですが、RobertとBobが同一人物と知ってびっくりしたことがありました。
    かくいう私は最近はYazで通しております。そういうミュージシャンがかつていたそうですし。しかし調べてみると、Yazというピルが最近発売されているらしく、どうしようか考え中です。

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  2. そんな憶えやすいニックネームは貴重だと思います。「YAZといいます。ええ、ピルと同じ名前です。私を正しく服用すれば、副作用なく的確に諸症状を抑えます。よろしく。」とか何とか自己紹介できますから。いいなあ。

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