2010年8月25日水曜日

Wordsmith  言葉の達人

火曜の朝サクラメント支社に到着し、今回のプレゼンをコーディネートしているデニスと初めて対面しました。ラテン系をイメージしていたのですが、バリバリのアジア系。外見はほぼ中国人ですが、目ヂカラが半端じゃなく、若い頃の仲代達也を彷彿とさせます。まだ三十代だと思うのですが、全身から自信がみなぎっていて、あの若さでディレクターのポジションにいるのも頷けます。

少し遅れて到着したプレゼンリーダーのエリックは、35年の経歴を持つ大ベテラン。エリックが8分、私が12分話す段取りです。三人でスライドを一枚一枚めくりながら、合わせ稽古をしました。もともとデニスがまとめたスライドだということもあるのですが、どうも調子がつかめません。不本意ながら箇条書きを棒読みするしかなかったのですが、それでもしどろもどろ。デニスがニコリともせず、

“What’s the take-home message here?”
ここで一番重要なポイントは何?

“You lost me. It didn’t transition well.”
意味が分からなかった。流れが悪いな。

などと、容赦なく注文をつけてきます。

“I won’t buy that. You sounded like, trust me because you can trust me.”
今のは受け入れられないな。「私は信頼出来る人間です。だから信頼して下さい。」って感じに聞こえたよ。

とダメ出しされた時には、さすがにちょっと凹みました。そんな私の心の内を知ってか知らずか、彼はすかさず提案を畳み掛けます。

“We shouldn’t paint a rosy picture. We should say, there were bumps in the road.”
先行き明るいなんて思わせちゃ駄目だ。正直に、色々大変なこともあったと言うべきだ。

ここに至って、「売り込み型」プレゼンには自分の持ち合わせている語彙じゃ、全くもって不十分なんだということを悟りました。デニスはいとも簡単に、状況に即した表現を次々と繰り出して来ます。まるで倉庫一杯に工具が納められていて、必要に応じて最適な一品を棚から取り出すように。私はプラスとマイナスドライバー一本ずつしか持ってないってのに!

久しぶりに、嫌な汗をじっとりかきながら合わせ稽古を終えました。デニスは私の出来の悪さに落胆したようで、顔をこわばらせていました。この後、彼とエリックが別のミーティングのため2時間ほど席を外したので、その間にスライドに書かれた内容を、すっかり自分の言葉に書き変えてしまいました。彼らが戻って来たので再び通し稽古をしたところ、
「随分良くなったね。」
との評価。

この後、残りのメンバーのケヴィン、キース、フィル(彼らは各業務分野の重鎮で、プレゼンではQ&A対応)が登場し、一緒に夕方までリハーサルを続けました。デニスの出す細かく的確な指摘は、このベテラン陣をも唸らせていました。
「デニス、君が来て全部まとめてプレゼンしてくれたらいいのに。」
と皆で笑いました。彼はコーディネートだけやって、プレゼンには参加しないのです。あとでフィルが、
「彼は大したWordsmith だな。」
と感心していました。

Wordsmith の「スミス」は、Blacksmith(鍛冶屋)、Silversmith(銀細工師)などで使われるように、「職人」という意味。Wordsmithは差し詰め、「言葉を操る職人」とか「言葉の達人」ってところでしょう。

そして今朝、クライアントに対するプレゼンを無事終了しました。昨夜はホテルの部屋で遅くまで何度も練習したので、自信を持って喋ることができました。今回はつくづく、「売り込み型」プレゼンの大変さを味わいました。帰りの飛行機で爆睡したことは言うまでもありません。帰宅して体重を量ったら、2キロほど痩せてました。

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