これまで二度ほど、「陪審員を務めに裁判所へ出頭せよ」という召集令状を受け取ったことがあります。これはアメリカ人なら誰でも果たさなければならない義務で、簡単には逃れられません。アメリカ市民権を持たない私にまで令状が届くのは、単に当局が(本当の)アメリカ人がどこに住んでいるかを把握しておらず(住民票の制度が無いので)、自動車免許証の登録記録をもとに発送しているからだそうです。
さて、昨日は熟練PMのエリックが、陪審員のお務めを果たして一週間ぶりに職場へ復帰してきました。初めて会った11人の他人とチームを組み、議論を尽くして殺人未遂犯に対する刑を決定するのです。エリックは、検察側と弁護側の論証をすべて細かくメモし、陪審員室での議論をリードしたそうです。中には早く帰りたがって不平を言う人もいたそうで、彼はこうたしなめたとか。
「気持ちは分かるけど、人ひとりの運命が我々の手に委ねられているんだよ。この裁判が終わってからずっと後になって、あの時もう少し真剣に考えたら良かった、なんて後悔するのだけは御免だ。そうじゃないかい?」
弁護士は30代前半と見られる女性で、この人の弁舌にエリックは感服したそうです。
「筋立てがクリアで、話に一切無駄が無い。極めて冷静だけど、冷血なわけでもない。すごくバランスがいいんだ。あと10年もすれば、スター弁護士になるんじゃないかな。」
ここでエリックが使ったフレーズがこれ。
“She was right on the money.”
ライト・オン・ザ・マネーというのは、前にも一度聞いたことがあります。PMP試験に合格したジェフという同僚に、
「僕のトレーニング資料は役に立った?」
と尋ねたところ、彼がこう答えたのです。
“Your training materials were right on the money.”
別の同僚にこのフレーズの意味を聞いたところ、right on the money というのは「ドンピシャリ」ということだと教えられました。つまり、私の作ったトレーニング資料が、受験にバッチリ役立った、ということですね。
今回のエリックの表現が引っかかったのは、「ドンピシャ」という解釈だと意味が通らないからです。「彼女はドンピシャだった。」って変だよなあ…。
というわけで、調べました。どうやらこのイディオムは、アーチェリーから来ているようです。的の中心にコインを使っていたのが始まりだそうで、 “right on the money” は中心に矢が的中する、つまり「正確に的を射る」ことを意味しているのです。エリックは、女性弁護士の論証に少しのブレもなかったことに感心し、それをこのフレーズを使って表現したのですね。
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