水曜日、同僚パトリシアから助けを求めるメールが届きました。東海岸のマイクが大きなプロジェクトをスタートさせようとしているのだけど、契約形態が Lump Sum(一括請負)のはずなのに、クライアントからの書類にはTime & Material(実費精算)と間違って書かれている、このままではプロジェクトを正しくセットアップ出来ない、というのです。
「その通りだよ。こんな書類を添付したら、財務の人間が混乱するでしょ。クライアントに書き直してもらわなきゃ。」
と私が賛同すると、ちょっと安心したようで、
「マイクにそう言ってみるわね。」
と引き取りました。
しかし、ここで事態は思わぬ展開を見せます。当のクライアントは図体のでかい官僚的組織で、書類の出し直しなんか簡単に出来ないと言うのです。あちらの担当者は、
「一括請負と俺が言ってるんだからいいじゃないか。」
と渋っており、動く気配が無い。
「プロジェクトのスタート直前にヘソ曲げられちゃマズい。」
ということで、あまりぐいぐい押さないことにしよう、という空気。上層部とマイクとの、そうしたメールのやり取りを、パトリシアが私に転送して来ました。
ま、確かにそういう判断もあるかもな、と思いつつ、マイクの書いた文章にふと目が留まります。
“I just want to grease the skids with finance so that there is no confusion during project setup.”
「プロジェクトのセットアップに際して混乱が生じないよう、財務部門とスキッドにグリースしておこうと思うんだ。」
はあ?なんじゃそりゃ?この Grease the skids というのは過去に何度も聞いているフレーズ。これまでずっと調査を怠って来たので、今回ちゃんと調べました。
Skid というのはもともと、切り出した材木を製材所まで運搬するために敷かれた枕木を意味していて、動詞では「滑る」になります。そういえば、自動車事故のタイヤスリップの痕跡は、Skid Mark と呼ばれますね。Grease the skids で、(材木をスムーズに移動させるため)枕木に油を塗る、という意味になります。これが転じて、「物事がうまく運ぶようにする」、つまり「根回しする」となるわけです。
“Grease the skids with finance.”
財務部門に根回しする。
アメリカの会社にも、根回しってあるんだなあ、と変なところで感心しました。
ちなみに、スキッド・ロウ(Skid Row)というヘビメタバンドがありますが、これはSkid Road が変化した名称だそうで、その昔、林業従事者が飲んだくれる酒場が密集したエリアを指していたようです。それが今では「スラム街」という意味で使われているとか。「なんかスッキリしたバンド名だなあ」とずっと思ってたけど、実はメタルバンドにお似合いの名前だったのですね。
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