フロリダのプロジェクト・チームは、11月の工期満了に向け、毎日パワー全開。PMのルーと仕事していると、その緊張感がビンビン伝わって来ます。先日も、一時間の予定だった電話会議が二時間に延び、別のミーティングの開始時刻が迫って来たので、
「ルー、悪いけどあと5分で切らないといけないんだ。」と断りを入れたところ、彼が
「何でだ?何があるっていうんだよ?」
と不愉快そうに唸ります。
「いや、他のミーティングに行かないといけないんだよ。」
途端に彼の声が裏返り、
“Meeting? What meeting? Is
that more important than this project?”
「ミーティングだと?何の会議だよ?このプロジェクトより大事なものがあるっていうのか?」
と叫びました。これにはさすがにカチンと来ました。モウスデニイチジカンヨケイニツカッテルンダヨ!
ま、ぐっと堪えましたけどね。
その翌日、オレンジ支社でボスのリックに会った際、この件を「それはそうと」みたいな軽いノリで話しました。笑うかと思ったら意外にも真面目な表情で、彼がこう反応したのです。
「僕たちコンサルタントはさ、相手が社内の人であれ社外の人であれ、それぞれのクライアントに対して、彼のプロジェクトが自分にとって世界で一番重要なんだっていう態度を取り続けなきゃいけないと思うんだよね。」
ドキンとしました。
そうです。社内とは言え、サービスを提供して報酬を得ている以上、ルーは私のクライアントなのです。
「でもリック、他のミーティングにも出ないといけないのは本当だし、今回の場合、なんて言えば良かったんですかね?」と私。
「初めから、自分は何時から何時まで available (空いてる)とだけ伝えておいて、その前後に何があるかは言わなければ良いんだよ。クライアントに教える必要は無いし、知ったところで誰も嬉しくは思わないだろ。」
う~む。さすがリック。この人と話すと、いつも勉強になります。人間として器が違うなあ、とも思わされます。
今日の午後も、彼との打ち合わせがありました。私がここ数年温めて来た、「プロジェクト・コントロールのチームを作って会社のPM力を強化する」という企画について相談に乗ってもらうのが趣旨。今日の議題は、「まずはオレンジ支社でプロジェクト・コントロールのスペシャリストを雇い、私の部下として鍛える」という第一ステップを、どうやって大ボスのエリックに承認してもらうか、というもの。新規採用案は過去に何度も浮上しては消えています。趣旨には大抵賛同してもらえるものの、あちこちの支社でガンガン首切りしている昨今、実行に移すのは難しいのですね。私からすれば、そんなところでケチって組織のPM力低下を許すことこそ愚かな行為。なんでそんなことが分からないのかな?とイラつくことしきり。
「まずはエリックの立場に立って、彼の抱える問題を分析してみようじゃないか。」
というリックの言葉に、ハッとしました。「僕もそうなんだけど、良い提案があるのになかなか実行出来ない場合、ついイライラが募るんだよね。すると自然に、自分の不満を相手に伝えようという気持ちが働いてしまう。クリス(リックのボス)にもこないだ言われたんだけど、自分の上司もクライアントの一人として扱うことが大事なんだ。誰もまさかクライアントに不満をぶつけたりはしないよね。クライアントの問題を解決するのに自分がどう役立てるか、という点に考えを集中出来れば、自然と説得力のある提案が導けると思うんだ。」
30分の議論の末、本当にびっくりするほど建設的な提案が生まれました。
「リック、あなたと話すといつも目を開かされる思いがしますよ。私は一人で考えていると、どんどん自分の案に溺れて行っちゃう傾向があるんですよね。底なし沼からぐいっと引っ張り上げてもらった気分ですよ。本当に有難う。」とお礼を言うと、彼が「どういたしまして」と微笑んだ後、優しい声でこう付け足しました。
“Takes two to tango.”
このフレーズ、(It) takes two to tango というのは、「二人が協力してこそタンゴが踊れる」、つまり「僕だけの力じゃなく、君と二人で取り組むからこそ出来るんだ」という意味ですね。
か~っこいい~!シビレました。
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