ロサンゼルスの巨大プロジェクトが来月からスタートしようとしているのですが、マネジメント・チームからの要請で、プロジェクト・コントロールのサポートをすることになりました。中核メンバーのシェリルが昨日私のところへやって来て、大きなため息をつきました。
「こんなこと、シンスケに知らせてどうなることじゃないんだけど、一応耳に入れておくわね。」
彼女の言うには、あらゆる部署の上層部から「うちの誰々を使ってくれ」とプレッシャーがかかっているのだと。
「まるで池に投げ込まれた餌に群がる魚みたいなのよ。毎日毎日、本当にしつこいの。ほとんど脅迫よ。プロジェクトコントロールのポジションは、特に売り込みが多いわ。」「え、そうなの?だったら譲ってもいいよ。ここんとこ忙しいんだ。」
「それは駄目よ。このプロジェクトには最高の人材を使うぞってジャックに言われてるんだもの。」
折りしも来月は年度末(我が社の会計年度は10月スタート)。Utilization (稼働率)を出来るだけ上げるよう強烈な圧力が最上層部からかかっていて、皆自分の労働時間をチャージするためのプロジェクト探しに躍起になっているのです。
「現時点で仕事にあぶれてるような人をチームの一員として簡単に受け入れるわけにはいかないでしょ。シンスケのことは複数の人から絶賛つきの推薦があったの。文句無しの採用よ。」
とシェリル。そして彼女がこう続けました。
“Cream always rises to the top.”
直訳すれば、「クリームは必ず表面に浮かんで来る。」・・・なんだそれ?
後で調べたところ、ミルクのクリーム成分は時間が経つと浮き上がるということから、「優秀な人は自ずと頭角を現して来る。」という意味だそうです。うわっ、すごい褒め言葉じゃん。なるほど、クリームというのは「最高の」という意味に使われているのですね。賞味期限切れのミルクをコーヒーに注ぐと表面にぼそぼそとクリーム状の物体が浮いてくるけど、そういうネガティブな意味合いは無いようです。
ここでふと、”Cream of the crop” というフレーズを思い出しました。意味はBest of the best、「精鋭中の精鋭」ですが、私はこのcrop (クロップ)に引っかかります。Crop (農作物)のクリームって一体何なんだ?色々調べたけどどうしても分からないので、こういう質問に大抵明解な解説をしてくれる、同僚エリックを訪ねました。
「う~ん、分からないなあ。ネットで調べてみよう。」
早々に降参するエリック。仕事中なのに随分検索に時間をかけてくれたのですが、結局語源は分からずじまい。
「よく考えてみたら、全く意味不明な言い回しだよね。農作物からクリームなんか出ないもんなあ。」
と全面降伏の態。
「さすがの “Cream of the Crop” エリックでも分からないのかあ。」
とからかうような口調で私が言うと、
「Not this time(今回だけはな)。」
とわざと悔しそうな表情を作ってみせる、ノリのいいエリックでした。
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