今日はダウンタウン・サンディエゴのオフィスで、トレーニングの講師を務めました。私が所属するオレンジ支社で先月3時間かけて教えた内容を、今回は正午から1時半まででやってくれ、というご要望。これにきっちりお答えして、ギリギリ90分のプログラムを組みました。パワーポイントのスライド180枚強。
こうしたトレーニングは、過去数年の間に数え切れないほどこなして来ているので、最近じゃほとんど緊張しません。今回も、聴衆を何度も深く頷かせるパワフルなメッセージをふんだんに盛り込んで臨み、やる前から手ごたえを感じていました。
ところが、いきなり会場のセットアップに手こずります。前の会議が長引いたため、会場入りしたのは開始10分前でした。私は別部門に所属していて、このオフィスでプレゼンするのは初めて。なんと、装置の使い方が分かりません。自分のラップトップを持ち込みたかったんだけど、この会議室では大テーブルの下に埋め込まれたコンピュータを使わないといけない。つまり、自分の手元で画面をチェック出来ないのです。スライドは巻き取り式のスクリーンではなく、前方の液晶テレビに映し出されます。大画面、と言いたいところですが、参加者が40人を超えると、これはちょっと小さすぎる。自然と、テレビに近づいて喋ることになります。しかも私は机上のスピーカーフォンを通して遠隔の聴衆にも話しかけなければいけないので、着席した姿勢でプレゼンする以外に道がない。ようやくセットアップが完了した時は、既に開始予定時刻を5分オーバーしていました。そして気がつくと、参加者は私を中心に半円を描くようにして座り、背後から私の肩越しにテレビ画面を見る格好になりました。こんな状況でプレゼンするのは生まれて初めてです。聴衆に背を向けているわけですから、彼らがどんな表情で私の話を聞いているか全く分かりません。しかも時間が押しているせいで、振り返っていちいちアイコンタクトを取る余裕も無い。
こんな心もとない状況に拍車をかけたのは、開始前に総務のベスが運んで来たクッキーの山。
「え?これだけ?ランチは無いの?」
「無いわよ。Brownbag(ブラウンバッグ)って言ってたでしょ。」
「それは聞いてるけど、普通は昼飯つきでしょ。」
「ブラウンバッグはブラウンバッグよ。」
さすがにこいつは堪えました。タダメシが出ると思ってわざわざ昼飯抜いて来たのに。空腹のまま1時半まで話し続けなきゃならんとは。トホホ…。
ブラウンバッグというのは、「弁当持ち込みの」という意味で、「ブラウンバッグ・セミナー」とか「ブラウンバッグ・トレーニング」という感じで使われる言葉です。アメリカ人の弁当はサンドイッチやハンバーガーが多いので、弁当といえば茶色い紙袋入り、というイメージなのですね。
ここでの問題は、「誰が弁当を用意するか」という点。私の所属部門では、ブラウンバッグ・トレーニングといえば会社が弁当を用意するのが常識になってます。社員が自分の昼食時間を献上して働くわけだから、昼飯くらい会社で出してくれて当然でしょ、という空気があるのですね。
それが今回のは、文字通りのブラウンバッグだったわけ。同じ会社内でも常識に大きな違いがあったのですね。そして「自分のランチタイムなんだからどう過ごそうと勝手でしょ。」という意識からか、皆気安く会議室に出たり入ったりして、最後の30分は、たくさんの人が何も言わずに立ち去っていく気配を背中で感じていました。昼休み明けに別会議が入っている人が大勢いたのかもしれないけど、単に私のプレゼンが退屈なだけかもしれない。まずい、このまま客を帰してはならん、と焦る気持ちから、段々とペースが乱れ始めました。いかん、これはいかん!
まるで売れない落語家の気分を味わった、ラスト30分でした。最近調子に乗りすぎてたな、と反省することしきり。プレゼンのイロハをおろそかにしたのが最大のミスでした。会場のセッティングを事前に調べることは、基本中の基本です。なんでそんな大事なチェック事項を飛ばしてしまったんだろう…。
それにしても、ブラウンバッグの件だけは納得行きません。「タダメシ食わせてやってんだから、そこで最後まできっちり座って話を聞け。」というやり方の方が良いと思うんだけど…。
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