2011年5月16日月曜日

Tease out (精査して情報を)導き出す

先週末、いよいよ巨大プロジェクトが社内で正式に承認され、私の名前がPM欄に載りました。業務内容は、今まで一度も経験したことのない分野。私は全くの門外漢です。クライアントに対しては技術屋のトップであるジムがPMということになっており、プロジェクトマネジメントのエキスパートとして徴用された私は前面に出ることなく、静かに予算やスケジュールを管理して行きます。当面の課題は、WBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー)の構築と予算の作成。

先週はダウンタウンのオフィスに何度も出かけ、ジムの補佐役として技術屋のナンバー2を務めているセシリアと一緒に、WBS作成と予算の配分に取り組みました。入札に当たって積算を担当した彼女がいなければ、このタスクは遂行出来ません。バリバリと仕事を進めていた彼女ですが、水曜の夕方ごろ、段々と表情が曇ってきました。
「おかしいわ。こんなに利益率が低いはずないんだけど…。」

予算を積み立ててみると、コストが予想外に高くなってしまったのです。
「そういうことはあると思うよ。だって、入札時の積算方法と全然違うアプローチで組み立ててるんだから。」
「ううん。そうだとしても、何かがおかしい気がするの。こんなはずないって思うのよ。今晩、よく考えてみるわ。」

翌朝、セシリアからメールが届きました。ついに問題の原因を突き止めたというのです。
「分かったわ。入札の時は下請け会社の労務時間を、うちの労務時間と混ぜてたのよ。今回は下請け分を総額で積んでるから、重複してる訳よね。もう一度オリジナルの見積もりまで戻って、仕分けし直さないといけないわ。」

なるほど、そういうことなら理解出来ます。しかしその日の夕方に彼女から届いたメールは、こんな表現から始まっていました。

“I wasn’t able to tease out hours for subs.”
「下請け会社の労務時間を tease out 出来なかったわ。」

ティーズアウト?なんだそれ?Tease は「からかう」という訳で記憶していたので(たとえば「ティーザー広告」というのは肝心なところは見せず、視聴者の好奇心をそそるタイプの広告)、さっぱり意味が通じません。さっそく調べたところ、tease にはそもそも「ウールから繊維をより分ける」という意味があるそうで、トゲのついた植物でこの動作を行うことが転じて「からかう」となったとのこと。な~るほど。「繊維がびっしりと絡み合っている状態を解きほぐして目的の繊維を選り分ける」ということですね。今回のケースでは、下請けの労務時間が我々元請けの労務時間の中に組み込まれていたのを、よく調べて下請け分だけ抽出する、つまり精査して情報を導き出す、という意味で使われたのです。なかなかカッコいいフレーズではありませんか。今後どんどん使って行きたいと思います。

ところで、今回tease をグーグル・ジャパンで検索したら、真っ先に

「手汗」

が出てきました。何でそんなことが起きたのかに気付くのに、3秒くらいかかりました。

2 件のコメント:

  1. 前々から気になっていたのだが、「下請け」っていう表現は日本語の場合には多少見下したイメージが含まれてしまうのではないだろうか? 
    日本の建設業界では大分前から「専門工事業者」とか「協力業者」という名称を用いるようにされています。

    例えば
    自分の会社でもやっている仕事の一部を手が回りきらないので簡単な部分を一部委託してやらせる→これはいかにも下請けっぽい。
    自分の会社はどこに何をやらせるのかの采配と全体管理だけを行う、施工は各会社に任せる→英語でのsubを直訳してしまうと下請けなのか、でも日本語のニュアンスとはやや違うかと・・・・

    返信削除
  2. 日本にそういう動きがあるとは知らなかった。情報有難う。確かに「下」という一文字が、上下関係を示唆していてネガティブだよね。英語の Subcontractor は日本の辞書で見ると「下請け」になってるけど、歴史的にこの言葉が圧倒的に流通して来たことの表れなんだろうね。アメリカでは、僕の知る範囲では、 Sub を「見下している」雰囲気は無いね。自分たちの出来ない業務を担当してもらう専門業者として捉えてる。その意味からすると、「専門協力業者」くらいがいいかな。でも長すぎておさまりが悪い。もうちょっと考えます。

    返信削除