2011年5月5日木曜日

A two-pronged approach 二方向からのアプローチ

別部門からの引き抜きの話を、直属の上司リックから大ボスのエリックに伝えてもらいました。彼の最初の反応は、
「シンスケにとってまたと無いチャンスなのは分かっている。でもうちの部門に籍を置いたままでも出来るだろう。」
でした。しかし、大規模プロジェクトを担当すれば今の業務の継続が難しくなるのはエリックにも分かっていて、数ヶ月先の移籍を前向きに検討するような雰囲気に変わりました。

水曜日にはアーバイン支社を訪ね、別部門のトップ二人(エリックとリサ)とミーティング。両部門の親分がどっちもエリックなのでややこしいのですが、二人は2時間かけて熱心に私を口説きました。
「今回のプロジェクトはうちの部門でも過去最大の仕事なんだけど、それ以外にも君の力を必要としている中規模のプロジェクトが四本くらいあるんだよ。どうしても来て欲しいんだ。」

夕方オレンジ支社に戻り、ボスのリック、そして大ボスエリックと三人でミーティングです。
「さあ、 Life after Shinsuke (シンスケが去った後の処し方)を話し合おうじゃないか。」
とリック。エリックは、
「とにかく急いで後任を探すことが先決だろう。」
と言います。するとリックが、
「複数の後任を育てつつPM達をトレーニングする、という二方向からのアプローチを考えているんですが。」
と返しました。この時彼が使った表現が、

“I’m thinking of a two-pronged approach.”

です。Prong(プロング)というのは、フォークや鹿の角のように枝分かれした先っぽを指し、数字の後に過去分詞のpronged をつけると、「〇本に枝分かれした」という意味になるのです。さっそく、私がこの実行計画を作成することになりました。

さて本日、ロングビーチ支社まで足を伸ばしました。エリックのボスであるジョエルのプロジェクト・レポート作成を手伝うためです。1時の待ち合わせだったのですが、前の予定が押していたらしく、私の顔を見るや否や、
「シンスケ、一緒にランチ行こう。昼飯食いそこねちゃったんだ。食べながら話そうじゃないか。」
と誘われました。近くのピザ屋まで歩く道々、プリマベーラを活用した人材管理の構想をぶちあげて、私にその中心人物になって欲しいとまくしたてました。どうやら引き抜きの話は伝わっていないのだということを、この時さとりました。さてどうするか。ここは単刀直入に話すしかない、と腹を決めます。ピザを三切れ食べた後、思い切って切り出しました。
「ジョエル、私の近況について話しておかなければなりません。別部門から、巨大プロジェクトのPMになって欲しいという話が来たのですが…。」
「ああ、そのことなら聞いてるよ。すごいチャンスじゃないか。頑張ってくれ。」
「有難うございます。でもそれはまだ話の前半部分にしか過ぎないんです。」
「残り半分は何だ。聞こうじゃないか。」
「はい、実は部門間異動の話も来ているんです。」
「なんだと?」
ジョエルの顔色が一気に曇ります。
「このPMの仕事を受けた後、彼らの部署へ異動してくれ、とも言われているんです。」
「とんでもない。そんなことはさせんぞ。うちはまだまだ君が必要なんだ!」
そしてやにわにブラックベリーを取り出すと、二つの親指で慌しくメールを打ち始めました。
「(別部門の)エリックの奴に、びしっと言ってやらないとな。」

帰宅して妻に、
「何だか知らないけど、気がついたらあちこちからラブコールがかかっていてね。モテモテなんだよ。まるでNFLの人気クォーターバックにでもなったみたいな気分。」
と浮かれて報告したところ、
「ハイそこまで。あまり調子に乗らない方がいいよ。」
とたしなめられました。

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