“Congratulations. Happy retirement!”
「引退おめでとうございます。」
「有難う、シンスケ!」「引退おめでとうございます。」
そういう短い挨拶を交わした後、同僚シャノンと出会います。最近暫く会っていなかったので、ちょっと話そうよ、と彼女を座らせました。
「あのさ、さっきレベッカと話す機会があってお祝いを言ったんだけど、Congratulationがどうしていつも複数形なのか、前々から不思議に思ってたんだ。理由教えてくれる?」「ええ~っ?そんなの考えたことなかった。いっつも複数形だもの。」
しばらく黙った後、彼女がこう説明しました。
「もしも単数形だったら寂しいじゃない。お祝いって浴びせる(Shower)ものでしょ。」
後で何人かに同じ質問をしたのですが、みなシャノンと同意見でした。
「あ、そうだ、ところでさ、これはまだ正式発表じゃないんだけど…。」
近況を伝えようと私が話し始めたところ、急にうろたえるシャノン。
「え?やだ。何?やめてよ…。」
「5月に入ったらちゃんと皆に言おうと思ってるんだけど…。」
「やだ!なんなの?聞きたくないかも…。」
これって、転職しようとしている会社員が仲の良い同僚に耳打ちするような切り出し方なのですね。彼女の過剰なリアクションを半ば面白がって、ゆっくりと間を持たせてから最新ニュースを伝えました。
実は数週間前、オレンジ支社環境部門のトップであるクリスピンから、組織変更の計画を告げられたのです。
「シンスケには僕の直属になってもらおうと思うんだ。君のやっていることは、組織全体の業績を左右するだろ。だったらリックの下にいるよりも、僕に直接報告が来るようにした方がいい。今ティルソの下にいる財務系の社員を君の下に動かして、プロジェクト・コントロールのメンバーとして使えるようにトレーニングしてもらいたい。」
後でよく聞いたら、財務系に限らずサポート系の社員5人を私の直属に加える計画だそうで、いきなり大所帯の長になるみたい。クリスピンからこれを聞いたリックが電話をかけて来て、
「良かったな。僕達がずっと話し合ってきた構想がいよいよ実現するってことじゃないか!」
と興奮気味。
「もちろん君みたいな部下を失うのは寂しいけどね。」
そんなわけで、オレンジ支社に出張する回数がこれから増える見込み。
話を聞き終えたシャノンは祝福の笑みを浮かべ、
「コングラチュレイションズ!」と小さく叫びました。
最後の「ズ」に気持ちを込めて。
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