2013年4月3日水曜日

我田引水?

数週間前のこと、南カリフォルニア地区のトップからこんなメールが届きました。
“Congratulations! You have been selected as a member of the Simplify Committee.”
「おめでとう!あなたは簡素化委員会の一員として選ばれました。」
なんなんだこの詐欺師まがいの売り口上は?

中身を良く読んでみると、どうやらこの委員会、北米西部担当副社長の掛け声で設置されたものらしい。PM達が効率的に仕事が出来るよう、煩雑で冗長な書類手続きなどを大幅にカットしようじゃないか、というのが趣旨。カリフォルニアだけでなく、コロラド、アリゾナ、ハワイなどの支社に在籍する支社長からPMレベルまで20ほどが選出されました。

しかし一体全体、どうして私が委員に選ばれたのでしょうか。ま、理由はどうあれ、頼まれたからには張り切って行きますよ~!と鼻息を荒くする私。委員のほとんどは面識の無い人たちですが、オレンジ支社の熟練PM、スティーブも選ばれていました。彼はさっそく、支社内の中堅以上のPM達にメールを送りつけます。

「こういう委員会がスタートするんだ。もしも改善案があったらどんどん言って欲しい。委員会に上げるから。」
暫くして、ボスのリックからメールが届きます。

「シンスケ、スティーブの要請に応えてひとつ提案を書いたんだが、彼に送る前にちょっと読んでみてくれないか?」
スクロールしてみると、こんなことが書かれていました。

「業務のシステム化が進んだ結果、サポート人員が大幅に削減され、今やPMが何もかも自分でやらなければならない状況にある。これでは本来業務に集中出来ない。特に財務分析は難解な上に時間を取られる。ここはシンスケのプロジェクト・コントロール・グループを拡大し、広くPM達のサポートをすることが得策である。」
おお、これは有り難い!部下を少しずつ増やしてチームを広げ、ゆくゆくはカリフォルニアのみならず北米西部も傘下におさめようという私の「壮大な企み」を(半ば冗談ですが)、我が愛する上司はこの機会に後押ししてくれようというのです。

「有難うございます。いや、これは願っても無いことです。」
そう私が恐縮すると、彼がふと思いついたように尋ねます。

「そうだ、この提案、スティーブじゃなくてシンスケから委員会に上げてもらおうか?」
この時反射的に浮かんだセリフが、これ。

「それはいくらなんでも我田引水ですよ。」
ただ単に自分のチームを拡大したいからそんな提案してるんでしょ、と突っ込まれてもおかしくない内容です。そう答えたかったのですが、この「我田引水」というコンセプトを英語でどう表現したらいいのか分かりません。暫く口ごもっていたら、リックがやっと察してくれました。

“Oh, do you think it’s too self-serving?”
あ、それじゃセルフ・サービング過ぎると思う?」
なるほど、self-serving自分で自分に給仕する。固い言葉で言えば、「自己利益的」。そうそう、それが言いたかったんだよ

 帰宅してから妻にこのエピソードを伝えたところ、
「そういうシンプルな英語表現を知っていると便利ね。」

と感心します。
「いや、反対に、そういうのを知らないだけで、会話が全てストップしちゃうから怖いんだよね。まだまだ勉強が必要だなあって思ったよ。」

と私。
「ところでよく考えたら、我田引水ってフレーズ、今回の状況に百パーセントフィットしてないかもしれないって気がしてきたんだ。」

「そうかな?」
「そもそも、そんなたいそうな四字熟語なんか使わなくても、もっとカジュアルな言い方があるんじゃないかなあ。でもちっとも思い浮かばないんだよ。」

実際、ここ数年の私の日本語能力の減退は、悲しくなるほどの勢いです。使ってないもんなあ。英語学習に注力しすぎなのかもしれない…。
「ね、なんか他に言い方知らない?」

そう助けを求める私に対し、
「ソレヲワタシニキクカ?」

と、外国人みたいな口調で逃げる妻でした

2 件のコメント:

  1. 「手前味噌」とか「自画自賛」の方が合っている気がするね。
    我田引水っていうと、それによって迷惑を被る人が誰かいるような印象があるよね。

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  2. 手前味噌が一番フィットしてるかな。別に自讃はしてないから。

    「それは手前味噌過ぎますよ!」

    だね。

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