ここのところダウンタウンのオフィスに詰めることが増えていて、自分のオフィスを留守にすることが多かったのですが、今週久しぶりに戻ったところ、その前の週に突然解雇を言い渡された上下水道部門のマットが来ていました。彼は営業畑の重鎮だったのですが、数十億もするプロジェクトを獲得した直後にクビになったのです。おまけに、彼に引導を渡した南カリフォルニア部門の長であるブライアンも、そのわずか数時間後に解雇されました。
会社の上層部で何かとんでもない事が起きているのは間違いなく、我々下っ端たちはただ呆然とするばかり。一時は20人ほどの大所帯だった上下水道部門も、今やグレッグ、リチャード、それにジャックの三人だけ。まさに存亡の危機です。
「皆でマットと昼飯に行くんだけど、一緒にどう?」とリチャード。ちょうど緊急の仕事が入っていたので遠慮したのですが、その日の夕方、グレッグと話すチャンスがありました。
「僕には理解できないよ。彼はクライアントに通じるConduit
(導管、つまり動脈)だったんだぜ。その動脈を切って、この先どれだけ生きられるっていうんだ?」
とグレッグ。「アーニーが言ってたよ。会社のトップはウォールストリートと対峙するだけのガッツが無い。株価が落ちればパニックになって、ただ今を生き延びるためになりふり構わず大量解雇という愚挙に出るってね。」
と私。
「給料が高い人を沢山切れば、そりゃ一時的には収支が持ち直すけど、その先どうするんだよ?その人たちがしてた仕事は誰が代れるっていうんだ?高給取るにはそれなりの理由があるんだぜ。」
二人でため息をつくことしきり。
「それで、マットはどんな様子だった?」と私。
「彼はいつも通り、ポジティブな態度だったね。あれほどの男だから、引く手あまただよ。それは間違いない。でも…。」
そう言って、グレッグが次に発したのがこのセリフ。
“He’s still scratching his head.”
「彼はまだ頭を掻いてるよ。」
これは面白い表現だと思いました。日本語で「頭を掻く」と言えば、照れた態度を意味します。「マットがレイオフされて照れている。」まあ有り得ない状況ではないけど、やっぱりなんかおかしい。英語の「頭を掻く」は、「困惑する」という意味です。今回の場合、マットは「なんで俺なわけ?しかもこのタイミングで?」と面食らっているのです。
“He’s still scratching his head.”
「彼はまだ理解に苦しんでるよ。」
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