火曜の午前10時、定例の電話会議がありました。エリック、マイラ、リサ、ミケーラ、シャノン、そして私の6人が組織する、ミニ経営会議です。収益率の激減しているプロジェクトを週の初めに一件一件チェック。もしもデータの入力ミスなら修正しなければならないし、採算悪化の特殊な要因があるのなら、それを究明して対策を講じなければならない。この会議の具体的なアウトプットは、「誰がどのプロジェクトを担当するか」です。割り振りが決まったら、各自早急に担当PMと連絡を取り、必要な措置を講じます。
この会議時間の大半は、ワースト10プロジェクトに関する議論に費やされます。前の週に担当PMと話したメンバーがその内容を説明し、皆の質問を受ける。この際によく使われるセリフがこれ。
“It is what it is.”
「イリーズワリリーズ」と聞こえ、繰り返し口にしてると段々気持ち良くなって来ます。
字義通りに解釈すれば、It is (それは)what it is (そのもの)。「ご覧の通りだよ」って感じでしょうか。私が今まで聞いたケースでは、
「やれることは全てやった、その結果は見ての通り。これ以上どうもしようがない。」
そんな感じで使われることが多かったと思います。ここでふと、文法的に正しいのかどうか気になり始めました。ネットで色々調べたところ、文法に関する言及はこれといって見つからず、それよりむしろ、
「色々な場面に使えて便利ではあるけど、結局何が伝えたいのか分からない。」
という否定的な見解が大勢を占めている様子。
すっきりしないので、英語の達人テリースのオフィスを訪ねます。
「私の若い頃には無かった表現ね。最近の流行だと思うわよ。」
「ポジティブに使われるの?それともネガティブ?」
「そこなのよ。こういう言い方をすると、メッセージがとっても曖昧でしょ。言ってる本人でさえ、どちらの意味で表現してるか分かってないケースもあるんじゃないかしら。短期間で消えて行くフレーズだと私は見てるわね。」
ふ~ん、そうなの。
「僕は長く生き残る表現だと思うけどなあ。しょっちゅう耳にするし、第一音の響きが気持ちいいもん。」
と抵抗する私に、謎めいた笑みを浮かべながらテリースがこう呟きました。
“It is what it is.”
イリーズはリリーズ
頭の上に「?」マークを突き立てて、彼女のオフィスを後にする私でした。
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♪好きよ、好きよキャプテン。
返信削除そうですか、リリーズがこんなところで登場するなんて。
no wayしか浮かばない私には、It is what it is.といわれても、なんだかわかりませんね。
ちなみに、英語にもやっぱり「あいまいな」表現というのがあることが勉強になりました。
テリースは、「英語なんて曖昧な表現だらけの言語よ。」と常々言っています。白黒はっきりつける言語だと思い込んでいた僕には、ちょっとショックです。
返信削除ところで、これは「恋に木枯らし」のジャケ写真です。
シングル盤、持ってます。(45回転、ドーナツレコードってやつね)
返信削除あいまいだらけ・・・
ショックです。日本語が「意味が通じない言語」の代表のように言われるのが悔しいですが、そのテリースさんに、「あいまいな言語(国)の私」と題して講演してもらいたい。
日本人は、そう思い込んでるから、日本語でもハッキリ言わないといけないんだ、ということで、コミュニケーション摩擦が起こっているのも現実だよ。
ええっ???「恋に木枯らし」のシングル盤を持ってる?!それはお値打ちモノでしょ。ちなみに僕は、フルコーラスをそらで歌えます。恥ずかしいので一人のときだけに限定してますが。
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