2011年7月11日月曜日

He’s a piece of work. 彼って大変な人物なのよ。

明日はアーバイン支社でミーティング。現在私が片足を突っ込んでいる部門の南カリフォルニア・エリアで、プロジェクト・マネジメント・トレーニングをスタートしようという試みがあり、その骨格作りに私が借り出されることになったのです。トレーニングでカバーすべき内容をリスト化してミーティングの出席者に予め送る約束をしていた私は、今朝になって(泥縄ですが)案を練り始めました。しかし10分ほどして、はたと手が止まります。そもそも会社で統一したトレーニング資料が、既に存在しているかもしれないじゃないか!

ラスベガスにいるエリカがその辺の事情に明るいと思われたので、さっそく電話してみました。
「全社とはいかないけど、北米(アメリカとカナダ)統一版の作成が進行中だと聞いてるわよ。」
我が社は一昨年まで激しい吸収合併を繰り返して来て、現在では5万人近く社員がいるので、何に付け全社統一版の資料を作るには時間がかかるのです。

「カナダでは既に完成されたトレーニング資料があると聞いてるし、オーストラリアには誰もが傑作と認める資料が出来てるんですって。」
「お、そりゃいいね。是非見たいな。」
「ところがね、そう簡単にはいかないのよ。」

エリカはここで、北米統一版の作成を進めている人物の名を教えてくれました。そして、たった一言で彼の人となりを評したのです。

“He’s a piece of work.”

え?ピース・オブ・ワーク???

「すごいパワーゲームなの。激しいエゴのぶつかり合いが展開されててね、北米の人間がオーストラリアの資料を取り寄せようとしているなんて耳にしたら、彼が黙っちゃいないと思うわ。とってもバカバカしい話なんだけど。」
「ちょっと待って。ピース・オブ・ワークってどういう意味?傑作(masterpiece)とかじゃないよね。」
エリカは笑って、
「難しい人っていう意味で言ったのよ。物凄く頭が良くて、相手の言うことをまずばっさりと否定してから自分の正しさを延々と主張するタイプなのよね。」
「へえ。そういう人ってうちの会社にいるんだ。」
「そうなのよ。彼にメールを送る時は、表現に細心の注意を払ってね。まずは下手に出ておくのが得策よ。」

う~む。やっかいなことになったな。その人に黙って独自のトレーニング・プログラムを構築したら、後でやいのやいの言われるだろうし、事前に相談したら潰されかねない。これは慎重に事を運ばないと…。

夕方、同僚ディックにpiece of work の意味を尋ねてみました。
「ま、簡単に言えば嫌なヤロー(asshole)のことだよ。」
「ふうん。でもさ、辞書を引いたらポジティブな意味も載ってたよ。立派な人だって。」
「99パーセントはネガティブだね。いや待てよ。そうとも言い切れないな。確かに良い意味にもなるからね。表情や声のトーンによるよ。わざとどちらにも取れる言い方をして相手の判断に委ねるっていう、極めて技巧的なフレーズなんだよな。」
そして壁を一枚隔てて座っている若い同僚マットに聞こえるように、

“Matt is a piece of work.”

と笑いながら言いました。「なんだと!?」と即座に反応して勢い良く立ち上がるマット。彼はディックと私の会話をさっきからずっと聞いていたようで、愉快そうにこう言いました。
「今みたいに、友達をからかう時にも使えるフレーズなんだよ。」

なるほどね。日本語にすると、「彼は大変な人物なんだよ。」かな。こういうのを使いこなせるようになれば、英語学習者としてもワンランク・アップという感じがします。

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