南カリフォルニアのトレーニング・ツアーは無事終了しました。最後に訪問したサンタマリア支社には知り合いが一人もおらず、若干心細かったのですが、終了と同時に拍手が鳴り響き、
「今度はいつ来るの?」
と嬉しいリアクション。
「四半期に一回くらいを考えてるんだけど。」
と答えると、
「ええ~、二ヶ月に一回くらい来れないの?」
とこれまたスゴイ食いつきよう。
トレーニングは、私が一番燃える仕事。皆が知りたがっているポイントをチラツかせておきながら、すぐには答えを与えず、じっくりじらしながらクライマックスまで持っていく。また、即役立つテクニックを織り交ぜることで、「早く使ってみたくてたまらない」気持ちにさせる。そんな風にスライドを作るので、本番前の一ヶ月は猛烈な産みの苦しみを味わいます。しかし、こうしてお客さんに喜ばれているのを実感するたびに、どんどん病みつきになっていくのです。
さて、この日のトレーニングにはコロラドのデンバー支社に所属するステイシーも、ウェブを使って参加していました。翌日の朝、彼女がこんなメールをくれました。
Good morning rockstar.Your presentation kicked butt!
お早うロックスターさん。あなたのプレゼンはお尻をキックしたわね!
ん?なんだ?お尻をどうしたって?
さっそく同僚ステヴに質問です。
「その言い回しは珍しいね。本当は彼女、kicked ass って言いたかったんだと思うよ。」
「ふ~ん、そうなの。ass も buttもお尻のことだよね。プレゼンがお尻を蹴る、か。全然意味分かんないな。」
と私。
「尻を蹴るってことは、相手をやっつける、ってことなんだ。だから、シンスケのプレゼンは強烈だった、って褒めてるんだよ。」
とステヴ。う~む、ますますワカラナイ。
「僕のプレゼンが、一体どの尻を蹴るってわけ?僕自身は誰の尻も蹴ってないよ。」
「そうだね、尻の所有者を特定せよと言われれば、この場合はプレゼンの題材だね。」
ここで、途中から聞いていた同僚シャノンが参入します。
「難しい題材をやっつけて、分かりやすいプレゼンに仕上げたってことよ。それが転じて、あなたのプレゼンはすごかった、となるわけ。」
なるほどね。英辞郎は kick assを、「ガツンと来る」「強い」「迫力満点だ」「半端じゃない」などと訳してます。その昔、「夢で逢えたら」という深夜番組で、ダウンタウンの浜ちゃんが野沢直子のお尻を思い切り蹴ってたのを思い出しました。蹴られた野沢直子はたっぷり笑いをとった後、「おいしい。」とつぶやいて、更にどっとウケてたっけ。
「ところで、ステイシーはどうして Kick butt って書いたのかな。」
と私。
「Ass じゃいくらなんでも砕け過ぎてて、会社のメールに使うには抵抗があったんだろうね。おばあちゃんの前で使ったら叱られる種類の言葉だもん。」
とステヴ。
そうか、本当は「ケツ(ass)に蹴りを入れた」と言いたいところを、気を遣って「お尻(butt)を蹴った」と若干丁寧な表現に替えたわけか。
あとで同僚リチャードに確認したところ、
「いや、そんな風に言い換えたところで、どっちみち会社で使うには適切じゃない表現だよ。」
とのこと。ケツであろうとお尻であろうと、NGワードであることには変わりはないのですね。
「そんなこと書くなんて、その人よっぽど興奮してたんだと思うよ。」
とリチャード。
なるほど、ステイシーのメールは、ものすごい褒め言葉で埋められていたんだなあ、とあらためて嬉しくなりました。
2012年7月4日水曜日
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