2012年7月7日土曜日

Fiasco 大失敗

渡米する前まで、月島の高層マンションに夫婦で住んでいました。旧東京タワーやレインボーブリッジがリビングルームから一望出来たので、東京湾大華火大会の日には、友達をたくさん集めてパーティーを開きました。

12年前、アメリカに来て最初に迎えた独立記念日、日が暮れてから妊婦の妻と近くの公園に出かけました。数カ所で打ち上げられる花火が鑑賞出来ると言うので期待していたら、ポンポンと乾いた音をたてながら、打ち上げ花火が15分ほど散発的に夜空を染めた後、静寂が訪れます。え?これでオシマイ?

そう、独立記念日ほどのビッグな祝日といえども、アメリカの花火は実に控え目。隅田川の花火大会と比べると、その規模は百分の一くらいでしょうか。ま、十年以上も住んでいるうちに、こんなものかな、と馴れて来ましたが。

さて、こないだの水曜日はその独立記念日。午前中は家族で近くのシネコンに出かけ、息子は Snow White and Huntsman を、妻と私は The Amazing Spider-Man を観ました。夕方5時を回ってからダウンタウンへ車を走らせ、職場の駐車場に停めて港まで歩きました。花火の開始予定時刻は9時ですが、早くも何万という観覧客が場所取りを始めています。あいにくの薄曇りで海風も冷たく、そのまま待っている気力は無かったので、とりあえず街に戻ってバーガーラウンジで晩飯。開始十分前に港へ戻りました。

9時を回った直後。突然目の前の海上から、閃光が太い束を作って天高く噴き上がります。そして爆音の連続。おお~っ!と思わず声が漏れます。偶然にもベストポジションに立ってたぞ!おびただしい数の花火が間を空けずにこれでもかと連発。今年は奮発したな~。出だしでこんなに飛ばしちゃって大丈夫か?と心配になりました。そして15秒後。音も光も途絶え、夜の闇が再び静まり返りました。港に詰めかけた何十万人という観客から、興奮のため息とやんやの歓声が飛びます。

ところが、それから5分待っても10分待っても、続きが始まりません。
「もう帰らない?」
と私。もう4時間もぶらついていたので、疲れて来たのです。帰ろっか、と妻子もあっさり同意し、家路につきます。

翌朝のニュースで、花火はあの後、結局再開しなかったということを知りました。コンピュータ制御に狂いが生じた、というのが原因らしい。15秒間で、用意していた花火を一つ残らず打ち上げてしまったのだと。そうだろうと思ったよ!あの勢いで20分もやってたら、きっと観客が興奮のあまり失神してたぞ。

さて、各紙の見出しを飾っていたのが、Fiasco (フィアスコ、と発音)という単語。

Company investigating San Diego fireworks fiasco
サンディエゴ花火大会のフィアスコを調査中

辞書を引くと、フィアスコは「大失敗」と訳されています。なんとなく滑稽さを滲ませる語感だけど、一体どんなニュアンスがあるんだろう?と疑問に思い、久しぶりに弁護士の同僚ラリーを訪ねました。

「特に滑稽さは無いと思うな。ひどい失敗のことを言うんだよ。」
とラリー。
「コンプリートフェイリャー (Complete Failure) とはどう違うんです?」
と私。完全な失敗、という意味ならこの熟語で用は足りるはずです。
「フィアスコという言葉には、結果だけでなく、プロセスのひどさを非難するような意味合いも含まれてると思うよ。プロジェクトで言えば、スケジュールは遅れる、予算を大幅に超過する、人は辞める、成果品のクオリティはひどい、てな具合に、終結に至る前の状況も全てひっくるめての大失敗を指すんだ。」
「ううむ、思い当たるプロジェクトがいくつかありますね。」
「そうだろうね。」
ラリーが笑います。

何十万人の観客を集めておいて15秒でショーを終わらせちゃった、というのは確かにひどい失敗かもしれないけど、この国であそこまで密度の濃い花火を観られた私は、すごく得した気分だったのでした。

同僚のマリアはあの晩、友達の家のパーティーに行ってたそうです。花火がスタートした、というので慌てて椅子をバルコニーに並べ始め、さあ鑑賞するぞ、と皆で腰を下ろした途端に終了したのだと。
「椅子に座って見上げたら、すごい量の煙が広がってたの。花火自体はほとんど見逃したわ。それから皆一列に座って、バカみたいにずっと空を見詰めてたのよ。」

この気の毒なマリアには、私がiPhone で撮ったビデオを見せてあげました。
video

11 件のコメント:

  1. ニュースになってます
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120706-00000075-it_nlab-inet

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  2. こういう記事も日本語で紹介されるんですね。情報有難うございます。いつか息子に日本の花火大会を見せてやりたいです。ぶったまげるだろうなあ。

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  3. いや、このブログを読む限り、最大の幸運に出くわしたと思うのがスジでしょう。正常に打ち上げられたとしてもものの数十分、墨田はおろか、鎌倉、江の島の足元にも及ばない。しかしながら、わずか15秒での固め打ち。ある意味こんな贅沢はないと解釈できます。むしろそのほうが幸せでしょう。
    花火といえば、香港在住のころ、マンションの目の前でやってくれた花火にはたいそう感激いたしました。

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  4. 日本は花火の季節だね。まだ自粛ムードなのかな?浴衣に下駄で観賞したいなあ。

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  5. これは花火というよりも、もはやちょっとした爆発ですね。
    それにしてもこのブログを読んでいてまさか「月島」という地名が出てくるとは思いませんでした。こちら「銀座一丁目」です。
    急に距離が縮まった感じがして(?)、思わずコメントしてしまいました。

    あ、もちろんfiasco勉強になりました。

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  6. うわっ、かっこいい!銀座一丁目って。
    月島は都会の中の田舎でした。今でもまだ露路は残っているのでしょうか?もんじゃが懐かしいです。

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  7. なんとも豪勢だね、98年の横浜港の花火の事故を思い出す。でも、こちらは死傷者がでなくて良かった。

    記事の中に十何万発もの花火・・・と書いてあるケド、世界中探しても十万発以上の花火が上がるのはPLの花火だけです。ちなみに隅田川は各会場1万発ずつ、東京湾が1万5千発なので、おそらく米国では1発の数え方が違うんでしょうね。ドカーンと広がった先のそれぞれを1発と数えるとか。それだとキミの印象と整合うるような気がします。

    隅田川の花火を特等席で見たいのだったら、7月最終週の週末に併せて帰国しておいで。日本一良く見える席を用意してあげるから(笑)

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  8. 今年の一時帰国は無くなりました。残念ながら。来年の夏休みを考えてるんだけど、特等席とっておいてくれる?

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  9. なんと!そのための釣りに見事に引っかかったか(笑)
    まあ、皆にも早くからお触れを出しておくから楽しみにしておきな。

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  10. そして、例の浴衣を忘れずに着てくるように!

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  11. ありがとう。楽しみです。実現に向けて鋭意調整しますね。

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