最近、若い同僚トリナに付きっ切りでプロジェクト・コントロールの特訓をしています。EAC (Estimate at
Completion)、つまり最終予測のコストを求める方法を伝授しようとしているのですが、これが意外な難航。彼女はもともと生物学系の専攻で、数字はあまり得意じゃないみたいなのです。
「例えばさ、今日までにかかったコストが千ドルだったとするでしょ、で、プロジェクトの終了までにいくらかかるか、という話なんだよ。」
「それは当然、まだ使ってない予算の額でしょ。」
「いやいや、そう単純な話じゃないんだよ。」
手を変え品を変え説明を繰り返すのですが、生半可な理解のまま「分かったわ」と先へ進んでしまうので、ミスを繰り返してフラストレーションを溜め、自滅していくトリナ。昨日は彼女の大ボスであるテリーから、
「トリナが財務系の仕事に時間を取られすぎて、本来の仕事が出来ずにいるの。何とかならない?」
と言われました。彼女をトレーニングしようというのはチームの総意で決めたことなのですが、すんなり行かないので皆困っているのですね。
「正直、故意に突き放してる部分はあるんです。少し時間はかかっても、自分でガリガリ計算してミスに気づいたりしないとコンセプトが学べないので。」
と私。
「分かるけど、時間のかかり方が度を越してるのよね。」
テリーがため息をついてこう言いました。
“She still seems to have a hard time getting her head around
it.”
要するに「まだ理解しきれていないみたいだ」という発言なのですが、この “Get
ones head around” (頭で包む)というのは面白い表現だと思います。似た表現でよく聞くのが、
“I can’t get my arms around it.”
腕で包む、つまり抱きかかえることが出来ない、というのは、対象を完全に把握することが出来ない、という意味ですね。これなら直感的に理解できるのですが、
“I can’t get my head around it.”
はどうか。頭がふにゅ~っとスライム化して箱みたいなものをゆっくりと包んでいく動画を想像してみたのですが、そんなキモチワルイことを言ってるとは思えない。
さっそく同僚ステヴをつかまえて、解説をお願いしました。
「この場合のhead は、脳 (brain) を指してるんだよ。脳で包みきれない、つまり対象が脳より大きいってことなんだな。」
な~るほど。それなら分かる。
「じゃあ、get my arms around との違いは何?」
「ほとんど同じだけど、can’t get my arms around は情報の量が多すぎて手に負えない、という意味合いが強いね。対して、can’t
get my head around は、情報の内容が複雑過ぎて理解出来ない、というニュアンスかな。」
「そうか、よく分かった。有難う。」
そうして立ち去りかけてから、ふと気になって尋ねました。
「でもさ、プロのコンサルタントとして、そんなセリフは安易に吐きたくないよね。まるで自分の能力の無さをさらけ出してるみたいじゃない?」
確かにそうだね、と一旦同意してからちょっと考え、ステヴは妥協策を提案してくれました。それがこれ。
“I can’t get my head around it right now.”「今はちょっと理解仕切れないよ。」
Right now (今すぐ)を付け足すことで、「これからしっかり分析して中身を理解しちゃうよん」という含みを持たせるのですね。勉強になりました!
"get my head around it" について検索してたどり着きました。今年からNYに住んでいます。
返信削除こちらに来て、日本で英語を勉強していては聞いたことも見たこともなかった表現が日常会話でたくさん使われていて今までの英語と私の関係はなんだったのか・・・と疑う毎日です(笑)
今日からブログ拝見します。よろしくお願いします。
私もブログやっていますが、人々が見てためになる記事を書きたいと思いました…
更新楽しみにしています。
ちなみに、
返信削除イギリス人の友人に日本語を教えていたときに、彼が
「I'm just trying to get my head around it...」と言っていて初めて知りました。
彼は一生懸命理解しようとしていたんですね。
嬉しいコメント有難うございます!似た体験をされているのですね。多忙のためなかなか更新出来ないのですが、読んで下さる方がいると知って励みになりました。週2回更新くらいのペースに持って行きたいと思います。またお越し下さい!
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