2012年11月17日土曜日

シアワセな生き方

ここのところ、同僚達のイライラが高まっています。十月の組織改変以降、毎月出さなければならないレポートの数が倍増していて、ただでさえ人手が無いのにこれ以上やることを増やしてどうするんだ?俺達を殺す気か?という悲鳴があちこちから聞こえて来ます。私自身、今年は役割が増えて部下も出来、責任がぐっと重くなりました。普通ならここで給料上げてよ、と訴えたいところですが、景気が悪く会社の業績もイマイチなので、賃上げはあまり期待出来ません。これじゃあ実質的に報酬低下じゃないか、と不満が溜まっているのも事実。

そんな時、食堂で若い同僚レイと久しぶりに会いました。
「一ヶ月休みを取って、フィリピンにある嫁さんの実家に行ってたんだ。」

育児休暇と有給休暇をくっつけての長期滞在。一歳になったばかりの息子さんを親戚に披露する、というのが主目的。フィリピンで6年間働いた経験のあるレイは、奥さんの家族以外にも沢山知り合いがいて、大勢と旧交を温めて来たそうです。
「鉄道敷地内で暮らしてる人たちはまだいるの?」

と私。だいぶ以前、マニラを訪ねた際に見た光景がショックだったのです。線路のすぐ脇に廃材で建てた家に住み、近くの電柱から違法に電線を引き込んで暮らしている人たちが何百人もいました。
「うん、相変わらす大勢いるよ。何も変わらないね。今後何十年も、ずっとあんな感じが続くと思うな。」

彼の説明によると、植民地時代の遺産とでもいうべき階級主義が払拭されない限り、あの国は変わらないだろう、とのこと。
「貧乏な家庭に生まれたが最後、まともな教育を受けらず仕事もない、で一生貧乏なままだね。一方、途轍もない金持ちも大勢いるんだよ。嫁さんの親戚にさえ、全く働かず豪邸に住んで、海外旅行ばかりしてる人もいるくらいだからね。そういう特権階級から貧民階級に富を移動するなんて、一大事業だよ。政権が代わったところで望みは薄いね。」

「アメリカの貧富の差とは、程度が違い過ぎるね。少なくともこの国では、這い上がるチャンスは与えられてるもんね。ううむ、問題の根が深くて解決策が思いつかないな。なんか憂鬱になって来たよ。」
レイが笑って私の肩を叩き、

「でもね、ここが大事なところなんだけど。」
と言いました。

「そんな貧しい人たちも、一人ひとり会ってみると、皆すごく幸せそうに暮らしてるんだよ。」
頭をぶん殴られたような衝撃が走りました。

「這い上がるチャンスが無い分、無理もしないでしょ。あくせくせずに、毎日をシアワセに暮らせるってわけだ。フィリピンへ行く度、このことに驚かされるよ。」
とレイ。そうか。頑張って這い上がろうとすればストレスが溜まるもんな。「無理しない」ことが大事なのね。

シアワセって、そういうことだったのか…。

2 件のコメント:

  1. 難しいお題ですね。

    返信削除
  2. ハイ、難しいです。ちょっと哲学的になっちゃいました。

    返信削除