2012年10月18日木曜日

Treat her like gold 彼女を心から大切にする

同僚マリアの友達に、ダニエラというブラジル出身のべっぴんさんがいます。彼女の旦那、リッチーはジャーナリスト。彼と結婚する直前までダニエラは、ドイツ人の色男と4年付き合っていたとか。この彼、常に完璧なお洒落をしていて、立ち居振る舞いに全く隙が無い。「俺ってイイ男だろ」光線を発し続け、傍目からはダニエラと似合いのカップルだったそうです。

「あたしははなっから苦手だったけどね。」
とマリア。
「ダニエラと一緒に飲みに行ってる時でさえ、彼女がちょっと席を外した隙に片っ端から女を口説いてんのよ。もちろんダニエラのことは、ああ、あれはただの友達だよ、なんてうそぶいてね。」

そんな時現れたリッチーは、ハンサムとは程遠く、小太りで挙動不審なおっさん。しかし話し方には人柄の良さが滲み出ていたのだと。ダニエラに一目惚れした彼は、必死になって彼女に近づこうとします。浮気性の彼氏にほとほと愛想を尽かしていた彼女。いつ別れるか、ということばかり考えていたのでタイミング的にはバッチリだったけど、当時の彼女はリッチーのぱっとしない外見が気に入らず、どうしても踏み切れなかったのだそうです。
そんな時ダニエラは、サンフランシスコの女友達から結婚式に招待されます。たまたま当地の友達を訪ねる予定だったリッチーは、僕も一緒に行くよ、と申し出ます。機内でスピーチの練習をしていた彼女に、もし良かったら手伝うよ、とリッチー。ダニエラにとって英語は外国語。お祝いの席でのスピーチですから、文法の間違いなどあったら嫌だなあ、と不安だったのです。じゃあお願い出来る?と原稿を渡したところ、たちまち全部書き直してくれた彼。さすがジャーナリスト、速いわね、どうも有難う、と受け取って練習を再開したダニエラ。

そして結婚式当日。ダニエラのスピーチの順番がやって来ます。リッチーの書いた原稿を手に立ち上がり、淡々と読み始めたところ、会場がしんと静まり返り、やがてあちこちからすすり泣きが始まったのだそうです。え?なに?どういうこと?と慌てつつ、最後まで読み終わった途端、猛烈な拍手に包まれたのだと。出席者が口々に、素晴らしいスピーチだった、感動した、と声をかけてくれるので、「あたしが書いたんじゃないんだけど…。」と内心言い訳しながら、リッチーのスゴさに初めて気がついたダニエラ。
それから間もなく、二人はめでたくゴールイン。ドイツ人の色男とは、「ゴキブリ野郎」と罵ってから別れたのだそうです。

「いい話じゃないか。そんなドラマみたいなことって、本当にあるんだね。」
と私。

「それで終わりじゃないのよ。こないだね、リッチーの連載記事に目をとめたハリウッドの大物が、映画化しないかって持ちかけて来たんですって。実現すれば、リッチーとダニエラはレッドカーペットを歩くことになるかもしれないわ。」
「おお、それはすごい!」

「ドイツ人の元彼は、ダニエラと付き合ってる間に浮気してた女を孕ませちゃって、修羅場になってるそうよ。赤ん坊には気の毒だけど、いい気味だわ。」
「そうか、その男と結婚してたら全く違う人生になってたんだね。」

「天国と地獄ほどね。」
ところで、マリアがリッチーの描写をした際、

“He treats her like gold.”

と言いました。「彼女をゴールドのように扱う」というのは一体どういう意味だ?と気になったので、あとで同僚リチャードに尋ねてみました。
「ゴールドは貴重品だからね。人間に喩える時は、誰かを心から大切にするっていう意味になるね。」

「それって女性に対する待遇のことを言うんでしょ。男女の立場が逆だったらどういう言い方になる?」
She treats him like a king. (彼女は彼を王様のように扱う)だね。」

なるほど、王様ね。分かる分かる。でもそういう関係を続けると、男は結局浮気に走るんじゃないかな。なんでだろ?ゴールドも王様も、相手を大事にするという点では一緒なのに。
これ、とっても不思議です。

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