ここ最近、フロリダのプロジェクトにすっかり忙殺されています。手がけているスケジュールの完成が延び延びになっていて、今度の日曜にまた出張(三度目)することになりました。本来なら二度目の出張でけりをつけるはずだったのですが、プロジェクト・チームの主要メンバーが皆忙しすぎて、せっかく私が現地に飛んでも打ち合わせる時間がなかなか取れないんです。工事の現場というのは次々と不測の事態が発生するのが常で、私の滞在中、PMのルーもCMのマイクも、どたばたと出入りを繰り返していました。
一昨日、その二人と電話会議をしたのですが、
“How are you?”
とまず挨拶を投げかけた私に対し、ルーが忌々しげな声でゆっくりと、
“F**k!”
「ファ~ック!」
と吐き捨て、ちょっと間を置いてから。
“That’s all I can say.”
「俺に言えるのはそれだけだ。」
と付け足しました。一拍置いてマイクが、
“Good.”
「いいね。」
と落ち着いた声で合いの手を入れます。…ナンナンダこの会話?
現地に飛んでみて分かったのは、まさに「事件は現場で起きている」のであって、みんな毎日恐ろしいほどのプレッシャーに堪えて働いているということ。更には、既に殺人的な忙しさだというのに、毎週お偉方のスティーブがやって来て、進行中のプロジェクトに絡めた新たな仕事をどうやって獲得するかというテーマで連日打ち合わせを繰り返していました。スティーブがズバズバと内角を抉るような鋭い質問や指摘をルーに投げ続けていたところ、ただでさえ熱くなりやすい彼の顔が、みるみる上気して行きました。ルーがいきり立って反論し始めたのに気付き、スティーブがニコニコ笑いながらこう言いました。
“Don’t get me wrong. I’m just playing devil’s advocate.”
「誤解しないでくれよ。俺は悪魔の擁護者を演じているだけなんだから。」
この、devil’s advocate というのは、しょっちゅう会話に登場するフレーズです。advocate(アドボケイト)は「弁護者、擁護者」という意味。「悪魔のサイドにつく」というのは、「反対の立場に立つ」ということ。論理の欠陥を指摘することで相手に補強するチャンスを与え、結果的により強固な議論を完成させるのに貢献することになる、そういう話ですね。意訳すると、こういうことでしょうか。
“I’m just playing devil’s advocate.”
「俺は敢えていちゃもんつけてるだけなんだよ。」
己の信ずるところを、臆することなく人前で主張する練習を幼い頃から積み重ねるアメリカ人ですから、公然と反論されるのなんて慣れっこだと思ってました。でもやっぱり人間なので、感情的になることもあるのですね。「俺は味方として反論してんだよ」と相手に伝え、建設的な雰囲気を醸し出すのに便利なイディオムだと思いました。
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