水曜の昼過ぎ、三回目のフロリダ出張から帰って来ました。今回は月曜と火曜の二日間だけだったのですが、「シンスケがいるうちにカタをつけるぞ」ということで、両日とも12時間くらいぶっ通しで働きました。さらには、「寝る前にホテルの部屋でやっちゃってくれ」と宿題もたっぷり出され、もうフラフラ。こうなると、逆にどんどんハイになって来て、「もうホテルに戻らなくてもいいよ。このまま夜明けまで作業続けようよ。」なんていう心境になります。
火曜日には、サウスカロライナからお偉方のスティーブが飛んできて合流。会議テーブルの向かい側に座り、新規プロジェクト獲得のための議論をプロジェクト・チームと続けました。私もスケジュール作りをしながら聞くともなく聞いていたら、こんなセリフが飛び出しました。
“So I said to him, don’t drink the Kool-Aid.”
「だから俺は言ってやったんだよ。クールエイドは飲むなってね。」
思わずピクッと反応する私。クールエイド(Kool-Aid)というのは、アメリカ人なら誰でも知ってる粉末清涼飲料(水に溶かして飲む、あれですね)。1927年の登場以来、ずっと人気を保っている超ロングセラー商品です。しかしそれは分かるとしても、どうして唐突に飲み物の名前が仕事の話に割り込んで来たの?
その晩は、9時近くなって現場事務所を後にしました。スティーブと並んで駐車場に向かいながら、恐る恐る聞いてみました。
「さっき、クールエイドは飲むなってセリフが出ましたよね。あれ、どういう意味なんですか?」
するとスティーブが軽く笑い、
「ああ、そういえばそんな話をしたね。あれはさ、見たこと聞いたことをそのまま受け入れるなって意味なんだよ。ほら、ジョーンズタウンの事件があったでしょ。」
「ジョーンズタウンの事件」とは、南米ガイアナで1978年に起きたカルト教団の集団自殺のこと。「人民寺院」の教祖ジム・ジョーンズが、シアン化合物を入れた飲料水を信者たちに飲ませて900人以上を死に至らせたという陰惨な事件。この出来事から、「誰かの思想や哲学を無批判に受け入れる」ことを “Drinking the Koo-Aid” と表現するようになったのですね。実際には、この事件で使われた「飲料水」は Flavor Aid だったのですが、クールエイドの方が商品として有名だったために、すげ替えられてしまったのだとか。また、生き残った信者の証言によると、銃を突きつけられて無理やり飲まされた人も多くいたとのことで、このフレーズで事件の全貌を説明するのは適切じゃないようです。
そんなわけで、元ネタが異常に暗いのが気になるものの、今回の出張で新しいイディオムを仕入れることが出来ました。私の和訳はこれ。
“Don’t drink the Kool-Aid.”
「鵜呑みにするなよ。」
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鵜呑みにしてはいけない、というのはよくわかりましたが、せっかく老舗として根付いている、本家のcool aid社としてはたまったもんじゃ、ありませんな。それこそ、訴訟でも起きそうだけども・・・。
返信削除ちょっとググってみました。Kool-Aid の発売元であるKraft社の幹部ブリジット・マコネルに聞いてみた、というブログ記事を発見。
返信削除http://grahamkislingbury.mvourtown.com/2010/06/13/setting-the-record-straight-on-drink-the-kool-aid/
「この表現はあまりにも一般的になっていて、いまさら反論するだけ無駄だと思う。」
とのこと。
「それにほとんどの消費者は、あの事件との繋がりを知りません。」
だって。