昨日と今日はアルバカーキ出張。本日、朝8時から4時間、クライアントの職員たちにマイクロソフト・プロジェクト2013を使ったCPMスケジューリングのトレーニングを実施しました。これまで数えきれないほどトレーニング講師を務めて来た私ですが、クライアント相手に教えるのは初体験。いつもより余計に気合が入ります。
今朝は5時起き。ホテルの部屋で内容をおさらいし、6時半にPMのロバートと待ち合わせして地下のレストランで朝食を取ります。7時半にホテルを出て、ロバートの先導でトレーニング会場まで運転。初めて行く場所で、私ひとりで辿り着けるかどうか自信がなかったので助かりました。空港で借りたレンタカーは、マツダのワンボックス・カー。色はグレー。
7時45分、トレーニング会場入り口に到着。無人のセキュリティー・ゲートでロバートが運転席から腕を伸ばし、ボタンを押してスピーカー越しに誰かと喋っています。格子状の鉄製ゲートの手前には、踏切で見るような木製遮断機があり、厳重に出入りを制限していることが見て取れます。ふとゲートの壁に目をやると、大きなボードに「一度に一台まで通行のこと」と書いてある。
鉄のゲートが開き、遮断機が上がった時、ロバートが運転席から腕を出し、おいでおいでの合図をしました。「俺の後についてこい」というサインだな、と判断しました。きっと、「後ろの車は仲間ですから」と断ってくれたんだな、と思って彼の後について入り口を通過。
その時、ガガガガガッと擦れるようなノイズ。続いて、バキッという破壊音。ルームミラーで後方を確認すると、遮断機が真っ二つに折れています。私の車が入り口を抜ける直前に遮断機が下りて来て、車の屋根と格闘した末に折れたのですね。異変に気付いたロバートが停車し、私も路肩に寄せて窓から顔を出します。
「折っちゃいましたよ。どうしましょう?」
するとロバートが平然とした様子で、微かに笑みまで浮かべ、
“You were not fast enough.”
「スピードが遅すぎたんだよ。」
と言いました。
「とにかく会場へ急ごう。」
そして建物に到着。ガラス越しに、クライアントの面々が騒然としてこちらを見つめているのが分かります。中から鍵を開けてくれたプログラム・マネジャーのナンシーが何か喋ろうとした時、でっぷり太った白人のおじさん(西部劇の保安官みたいな風貌)がシリアスな表情で私に詰め寄ります。
「グレーのマツダを運転してたのはあんたかね。」
「はい、そうです。」
「4000ドルの損害だ。名前と住所と電話番号を書いてくれ。追って請求書が届くから。」
そこへロバートが割り込みます。
「ついてこいと合図したのは私です。私の責任です。」
「そうか、じゃああんたがこっちへ来てくれ。」
ロバートが保安官に連行されている間に私は会場入りし、トレーニングのセットアップを急ぎます。大変なことになっちゃったなあ、と焦りつつも、ここは仕事に集中。その後ロバートは別の打合せに出席するために途中退出してしまったので、遮断機破損の件がどういう決着を見たのか確認することなくトレーニングを開始しました。
入念に準備した甲斐もあって、4時間のトレーニングは大好評のうちに終了。15人のベテラン・エンジニア達が口々に賛辞を述べつつ去っていきました。ナンシーに見送られ、無事にゲートを出た後、支社に戻ってロバートとランチへ行きました。
「今朝は本当に済みませんでした。一度に一台までという注意書きを見ていたにもかかわらず通過しちゃって。」
「いいよいいよ。あれは僕が悪かったんだ。」
「あのおじさん、おっかなかったですね。でもまさか、あんな遮断機が4000ドルもするなんて…。」
ロバートが笑いながら、
「そんなの嘘だよ。4000ドルもするわけないだろ。」
そしてこう続けます。
“He’s a joker.”
「彼はジョーカーなんだよ。」
え?ジョーカー?私の頭には、バットマン映画でヒース・レジャーが演じた、あの常軌を逸した悪役のイメージが浮かんで、しばし混乱しました。よく考えたら分かることだけど、冗談ばかり言ってる人のことを指してジョーカーと言っていたのですね。
“He’s a joker.”
「彼はひょうきん者なんだよ。」
ロバートはあの保安官のことを以前から良く知っていて、今朝も彼の小芝居に付き合ってあげただけだというのです。
「あんな棒、大した金額じゃないんだよ。心配ないって。」
まったく、アメリカン・ジョークか何か知らないけど、分かりにくいのは良くないと思います。混乱してる相手を放り出さないで、冗談なら冗談だよと終止符を打って欲しいんだよな。うぶな私は本気で心配してしまいました。
そういえば、トレーニング終了時も、若手PMのアンソニー(この人もジョーカー)が近寄って来てお礼を言った後、
「いやあ、本当にいいプレゼンだった。4時間もの間、誰一人居眠りしなかったもんねえ。」
と笑ったのです。う~ん、あれはジョークだったのかな?
ぜひ、トレーニングをお願いします。
返信削除ご招待有難うございます。ではスケジュール調整をいたしますので、ご希望の日時と場所をお教え下さい。
返信削除冗談です。