さきほど、二週間ぶりのアルバカーキ出張から戻りました。前回はCPMスケジューリングの基礎からマイクロソフト・プロジェクトの使い方までをクライアントにプレゼンしたのですが、今回は実践編。コンピュータ・ルームで実際にスケジューリングをしてみる、という内容です。シンプルなスケジュール作りの演習から始め、後半は、建設業者が提出してくるスケジュールをどうチェックするのか、という課題に取り組んでもらいました。
業者側の立場に立てば、自分達の不利になるようなスケジュールを提出したくはない。遅れが出ている場合に何とか誤魔化したくなるのが心情です。そういう心理を代弁する形で、私が予め「ごまかし」や「責任のなすりつけ」を埋め込んでおきました。これまで学んだテクニックを駆使して、その「目くらまし」を発見せよ、というのがお題。
そのひとつが、Notes というメモ機能を使ったもの。これはソフトウェアの奥深くにひっそりと用意されていて、印刷されたスケジュールをざっと眺めただけでは見つけられないのです。これを業者側が悪用するケースもあり、たとえば、「このタスクの遅れはクライアントの要請に起因するものであり、遅延に伴う費用は全額クライアントが支払うことで了解済み。」などとNotes に書かれたスケジュールを一旦承認してしまえば、裁判になった時に不利になるのですね。
「もちろん普段から良い関係を築いていれば、そんな不意打ちを食らう心配はないのですが。」
と私が断りを入れると、ずっと熱心に聞いていた初老の男性が手を上げました。
「そのNotes に返信を書いて突き返す、という手もあるよね。」
そして笑いながら、こう言ったのです。
“It’ll be a cold day in hell!”
他の出席者から笑いが漏れます。私もつられて笑ったのですが、よくよく考えると意味が分かりません。直訳すると、「それは地獄の寒い日になるね。」
え?地獄の寒い日?どーゆーこと?
さすがにクライアントに尋ねるわけにもいかないので、支社に戻ってから総務のシャロンに質問。
「まず起こり得ないことを指すのよ。だって地獄に寒い日なんて無いでしょ。」
とシャロン。
「え?なんで?地獄はいつも暑いの?」
私がこれまでイメージしていた地獄は、ものすごく寒かったり極端に暑かったり、激しい拷問があったりと複数のコースが用意されている、いわばスーパー銭湯。酷暑一本に絞られた場所だとは思いもしませんでした。
「そうよ。ほとんどのアメリカ人はそう思ってるんじゃないかしら。」
そういえば、「地獄の業火に焼かれる」とかいう表現もあるなあ。
「ヨーロッパでもそうなんじゃない?昔の宗教画に描かれた地獄は、大抵炎に包まれてると思うわよ。」
なるほどね。きっとキリスト教ではそう教えてるんだろうな。
そんなわけで、私の和訳はこんな感じ。
“It’ll be a cold day in hell!”
「そんなことはあり得ないね!」
ここでふと気になって、中国出身の社員、ハンのキュービクルを訪ねました。
「突然だけど、中国では地獄の温度ってどうなの?」
「え?何の話?」
藪から棒な質問にうろたえるハン。
「中国じゃ、地獄は暑いの?それとも寒いの?」
「そんなの分かんないよ。」
「アメリカ人のイメージする地獄は暑いんだって。君はどう思う?」
ハンはしばらく考えてから、こう答えました。
“I don’t know. I’ve never been there.”
「知らない。行ったことないから。」
そりゃそ~だ!
毎年一回は行ってる気がする。
返信削除温度は?
返信削除初めてコメントします。いつも楽しく読ませていただいております!When hell freezes over とかWhen the pigs flyとか、あり得ないことを表現して、「絶対にない!」っていうフレーズにするのことが多いですよね。最初にWhen the pigs flyを聞いたときシリアスな状況だったのに、まるまる太った豚が飛んでいる様子を想像して、つい笑ってしまい喧嘩を台無しにしてしまいました(笑)
返信削除Juliaさん
返信削除コメント有難うございます。「豚が飛ぶ」なんて、ビジュアル的な滑稽さが最高ですねえ。宮崎駿さんは、この表現を知ってて「紅の豚」を作ったのかなあ、とふと思いました。