2014年2月16日日曜日

今年のバレンタイン

金曜日はバレンタインデー。アメリカでは、男性が女性にプレゼントする日です。そんな日に、なぜか息子の通う学校は休校。妻は午後一番で日本語教師の仕事が入っていたので、私が息子をランチに連れて行き、夕方までオフィスで宿題をさせることになりました。

「炉端や おとん」で昼食を取った後、職場に戻る道中でプレゼントを買おうと考えていた私は、助手席の息子に尋ねました。

「ママ、何が欲しいかな。花束もいいけど、今日はどこでもバカみたいに値段釣り上げてるからなあ。それより、美味しいケーキでも買っていこうか?」

すると12歳の息子は、

「それよりワインがいいよ。おいしいワイン買ってあげてよ。」

と提案します。う~ん、ワインかぁ。確かに妻はワインが大好き。でもスーパー下戸の私には、良いワインを選ぶ能力が欠如しています。

「ワインなんてどこで売ってる?この近くにお店あるかなあ。」

「それは知らないよ。」

ま、息子が知ってるわけがないか。

「じゃ、ターゲット(大型ショッピングセンター)に行ってみよう。あそこならワインもあるんじゃないかな?」

ところが到着してみると、4段くらいの棚に30本ほどのワインが寂しげに佇んでるだけ。当然ながら、クオリティを判断する手がかりは値段のみ。う~ん、どれを選んで良いか、全然分からん!そこでふと思いついて、ワイン商の友人マイケルに電話してみました。

「ちょっとヘルプ頼める?今ターゲットでワイン選ぼうとしてるんだけど、ここにあるソノマなんとかって奴、美味しいかどうか教えてくれない?」

「ダメダメ!ターゲットでワインなんか買っちゃ駄目だよ。それより僕に、いい考えがある。」

彼が言うには、私の妻が以前から惚れ込んでる高級ワインにPaul Hobbsというのがあって、いつか入手出来る時があったら一本お願い、と頼まれていたというのです。

「ちょうど昨日、到着したんだよ。我が家用にやや余分に買ってあるから、こっちまで取りに来てくれるんだったら一本格安で譲るよ。」

おお、なんというタイミング!それは是非!と電話を切り、息子に「このことはママに内緒だよ。」と口止めします。夕方、妻が私の職場に現れて息子を連れて帰るのを見送ると、すかさず車を飛ばしてマイケルと公園で落ち合いました。むきだしのワイン一本と現金とを交換しながら、

「なんだか麻薬の密売現場みたいだね。」

と二人で笑います。

ワインを買い物袋に入れて帰宅し、夕食の支度をしている妻のところへ持っていきます。そして、

「はい、飲み物買って来たよ。」

とさり気無く渡しました。有難う!と喜びつつ、

「実は話、聞いちゃったんだ。」

と妻。

「え?ママに喋っちゃったの?」

と息子の方を振り向くと、彼の顔がみるみる歪んで行き、そのうち大粒の涙をこぼしてしゃくり上げ始めました。

「ごめんなさい。話しちゃったの。だって、さっきママに、バレンタインのプレゼントに何が欲しいか聞いたら、ケーキがいいって言ったの。折角パパがケーキにしようって思ってたのに、僕のせいでワインになっちゃったから、それで悪いと思って、つい話しちゃったの。」

ケーキよりも高級ワインの方がはるかに嬉しいのだ、と夫婦で説明し、なんとか泣き止ませます。もったいなくて飲めない、誕生日まで取っておくと言い、妻はワインを食器棚の上に飾りました。


夕食後、三人でアパートのプールへ行きました。プールサイドの隅にある大きな暖炉に点火し、炎を背にして座って、しばらく夜空を鑑賞しました。素晴らしい満月でした。

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