2013年7月12日金曜日

Don’t get hung up on it. こだわり過ぎるなよ。

昨年の秋、上司達にうまく乗せられてオレンジ支社環境部門の品質管理担当を引き受けた私ですが、2月に内部監査を受けた辺りで、ドサクサ紛れに支社内四部門の調整役まで任されてしまいました。監査官からの指摘事項に対し、部門間調整を経て、支社としての統一回答を提出しなければならない。これが思ったより難儀なのですね。もともと複数の会社が買収されて出来た組織なので、他部門の社員はまるで別会社の人みたい。カルチャーが全然違う。フレンドリーな人もいれば、とんでもなく横柄な人もいます。こういう人たちをまとめて統一見解に辿り着くまでの道のりは、なかなかに険しいのです。

Office Improvement Plan(支社改善計画)の最終版がようやく落ち着き、いよいよ監査部門のウェブサイトにアップロードしようとした時、ふと疑問が湧きました。同じオフィスにいる品質管理のエキスパートで監査官でもある同僚クリスの部屋を訪ね、こう質問します。

「あのさ、エクセルファイルをそのままアップロードするのと、PDFにしてからアップロードするのでは、どっちがいいの?」

クリスがこう答えます。

「厳密に言えば、エクセルファイルは更新可能なドキュメント、PDFはレコード(保存のための文書)として扱われるから、PDFの方が望ましいね。ま、でもこれはあくまで内部の監査だからさ、」

そして彼がこう締めくくります。

“I wouldn't get too much hung up on it.”
「あまりハングアップされる必要はないよ。」

このHung up on という言い回し、以前からず~っと気になっていたのですが、なかなか使えずにいました。そもそもHangは、服を吊るす「ハンガー(えもんかけ)」からも分かるように、「ひっかける」という意味。過去分詞のHung で受動態を取り、そこに「Up」という高さを表す言葉を添え、さらには対象と接した状態を表す「On」を加えたもの。ううむ、これは一体どういう意味だ?

同僚リチャードの部屋を訪ねます。

「携帯電話で誰かと話してる時、電波の悪いエリアに入って突然通話が切れちゃうとするでしょ。相手がすぐにかけ直して来て、”You hung up on me!” (電話切ったわね!)と怒る場面があるよね。この場合のハングアップと、今回のハングアップとが、どうもうまく繋がらないんだよね。そもそも何でアップなわけ?」

「古いタイプの電話をイメージしてみてよ。壁に取り付けたフックに受話器をかける動作をさ。」

「え~?ハングは分かるけど、アップというのは上の方向を指すわけだよね。受話器をかける時は、手を下方向へ動かすじゃない。この場合、ハングダウンが正しいんじゃない?」

ゆっくりと、受話器をかけるマネをする私。

「いやいや、壁に設置した電話の場合、受話器をかける時は一旦上の方へ手を伸ばすでしょ。」

「あ、なるほど。いや、でも、う~ん、そうかなあ…。それはどっちにでも取れるよなあ。」

どうも釈然としません。見かねたように彼は、散乱した書類の山から内線番号一覧表を摘み上げると、てっぺんに画鋲を刺して壁に近づけつつ、

“I hang this, up, on, the wall.”
「これを、留める、壁に。」

と、アクション付きで実況解説してくれました。

「こうやって留めておかれると、この紙は自由が利かないわけだよね。人を対象にこの表現を使うと、何かが心に引っかかって先へ進めなくなってる状況を指すんだよ。」

“I’m hung up on her.”
「まだ彼女のことがふっ切れないんだ。」

“I wouldn't get too much hung up on it.”
「そこにあまりこだわる必要はないよ。」

あ~、すっきりした!これでようやく、私も先へ進めそうです。

2 件のコメント:

  1. hung upを調べていてこちらに辿りつきました。

    hangは、hang on, hang around など紛らわしい熟語が多く、紛らわしいですね。hung upも、字面と意味が上手く結びつかずもやもやとしていたところでした。

    「こうやって留めておかれると、この紙は自由が利かないわけだよね。人を対象にこの表現を使うと、何かが心に引っかかって先へ進めなくなってる状況を指すんだよ。」

    本当にすっきりしました。

    I am hung up on her.

    彼女に自分がピンかなにかで留められてしまった状態をイメージできると、意味が分かりやすくなりますね。有り難うございました。

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  2. コメント有難うございます。簡単な動詞でも、熟語になった途端につかみどころが無くなるケースって多いですよね。

    アメリカ人の誰もがきちんと答えてくれるわけではないので、こうして丁寧に解説してくれる同僚を持つ私は本当にラッキーだと思います。

    またお越しください!

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