日本で働いていた頃、2年に一度くらいのペースで人事異動がありました。当時は「せっかく油がノッて来たのにもう転勤?」と不満たらたらだったのですが、外資系経営コンサルティング・ファームに勤める友人から、
「僕達なんか、同じポジションに平気で10年いたりするんだよ。環境を変えたきゃ転職しかない。それを考えたら、強制的な定期異動の慣習も悪くないんじゃない?」
と冷静にコメントされ、なるほどね、と思いました。渡米してアメリカのコンサルティング・ファームに勤め始めてから、そのことを日々実感しています。自分から動くかクビにされない限り、ず~っと同じ仕事。
さてこの数週間に、私の周辺で大規模な人事異動(?)がありました。突然解雇を言い渡された人たち、そして会社のやり方に嫌気がさして自ら去っていった人たち。ロサンゼルスのエリックとマイラ、そしてダウンタウン・サンディエゴ支社のミケーラが後者です。二年前、エリックが指揮する南カリフォルニア地区のプロジェクト・パフォーマンス・チームに部門の壁を超えて参加した私。数ヶ月前にチームの番頭役だったリサが突然辞職した後、何とか6人で頑張ってきたのですが、これで創設メンバー7人中4人を失いました。ミケーラの部下だったシャノンとヴィヴィアンが、深刻な顔で不安を訴えます。一夜にして上司を失い、何の後ろ盾も無くなったのですから当然でしょう。
南カリフォルニアの三支社を統括していたエリックが去った結果、ダウンタウン・サンディエゴの実力者テリーが支社長に就任。その直後、彼女がこんな提案をして来ました。
「シャノンとヴィヴィアンはあなたの部下になるのがいいと思うんだけど。」
私もこれには大賛成。
「でも、人事が何て言いますかね。別部門の人間を上司にするなんて話、ありなんですか?」
「大丈夫よ。だって二人ともプロジェクト・コントロールの仕事をしてるのよ。専門家であるあなたの下で働くのが、一番筋が通ってるじゃない。」
それはそうなんだけど、簡単じゃないから今まで実現しなかったんじゃないの?
さっそく翌日、人事のコリーンに電話で問い合わせてみました。
「それは無理よ。だって、会計システムが部門別になってるんだから。」
と、にべもない回答。やっぱりダメじゃん。すぐにテリーにメール。すると、
「大丈夫。手を打つから。」
と、何故か自信たっぷりの彼女。
その一週間後、シャノンとヴィヴィアンの名前がイントラネット上で私の部下になっているのを発見し、驚嘆する私。すぐさまテリーにメールでニュースを伝えたところ、
“Common sense does prevail.”
という返信。なんでも、人事の上層部を説得したというのです。さすがに彼女くらいになると、話を持ち込める相手の層が厚いのですね。シャノンとヴィヴィアンが、
“I’m so happy!”(嬉しい!)
とそれぞれメールをくれました。
二ヶ月前に部下が6人に増えたところだったので、これで8人目。去年の10月まで一匹狼だった私が、一気に大所帯を抱える身分になりました。
さて、テリーの使ったPrevail(プリヴェイル)ですが、よく聞く割には使いづらい単語のひとつです。「普及する、行き渡る」という意味で記憶していたのですが、今回の文章には今ひとつフィットしません。
「常識が行き渡る」
じゃおかしいもんなあ。
あらためてMerriam Webster のオンライン辞書で調べたところ、同義語として挙げられていたのが conquer, win, triumph と、どれも勝利を意味する単語。
え~っ?そうだったのかあ!
強調のためのdoes を間に挟んだテリーのセリフは、こんな風に訳せるのではないでしょうか。
“Common sense does prevail.”
「結局は常識が勝利するのよね。」
0 件のコメント:
コメントを投稿