2013年6月2日日曜日

Red herring 赤いニシンの謎

先日、プロポーザル・チームの電話会議がありました。私は積算とスケジュール作成を担当することになっているのですが、あまりの忙しさにRFP(リクエスト・フォー・プロポーザル)を熟読する間もなく臨みました。カマリヨ支社からチーム・リーダーのハリーが、オレンジ支社からPMのマーカスが、東海岸からラリーが参加。まずは、入札予定の複数社からの質問に対するクライアントの公式回答を、皆で読みます。

会議の後半、ある回答にさしかかった時、皆が一瞬沈黙しました。
「う~ん。これは一体どういう意味かな?」

「この回答、なんだか妙だよね。質問にまともに答えていない気がするぞ。」
電話の向こうで首を傾げるハリー。ちょっと間を空けてマーカスが、悟ったような口調でこう言いました。

“It seems to be a red herring.”
「レッド・ヘリングだと思うな。」
へ?レッド・ヘリング?赤い鰊(にしん)?なになに?

この表現、以前も会議中に何度か耳にしたのですが、意味を調べずにここまで来てしまいました。会議終了後、さっそくネットで調べたところ、そもそもの語源は曖昧みたいです。ニシンの燻製か何かの臭いを使って、獲物を追う猟犬を惑わす、という説明が最もビジュアル的な信憑性があるけど、どうも確かじゃない。とにかく誰かから注意を逸らすための道具、という風に使われるらしいです。
念のため、同僚リチャードを訪ねます。
「ああ、レッド・ヘリングか。時々使われる言葉だね。」

「触れて欲しくない対象があって、そこから人の注意を逸らせたい場合に使う物なんでしょ。」
「そうだね。意図的なディストラクションのことだよ。例えば、もっと緊急で重大な政治的課題があるにもかかわらず、大統領が銃規制みたいなことを全面的に押し出して演説している場合、彼はレッド・ヘリングを使ってるって言うんだよ。」

なるほどね。じゃ、マーカスのセリフの和訳はこんなところでしょうか。
“It seems to be a red herring.”
「目くらましだと思うな。」
別の同僚ステヴにも、念のため意見を聞きました。

「このフレーズ、よく使うの?」
「いや、僕は使ったことないな。聞いたことは何度もあるけどね。大体、アメリカ人のほとんどは由来を知らないと思うよ。」

「え?じゃ、あまり使われないの?」
「いや、そうは言えないかな。単に、一生使わないでも済むタイプの表現だってことだよ。シンスケが会話の中で使ったら、皆びっくりすると思うけどね。」

う~ん、なんだかすっきりしないなあ。・・・謎に満ちた言葉です。

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