エミリオ・エステベス監督、マーチン・シーン主演の映画「The Way」を図書館で借りました。自分のオヤジと一緒に映画を作る、しかも親子役で共演するというのはなんとも仲の良い話だなあ、と感心していたら、ふと「何故親子で苗字が違うのか?しかも弟のチャーリー・シーンは父親と同姓なのに?」という疑問が湧いてきました。
さっそくググってみたところ、「親の七光りは嫌だったので、父の芸名を受け継ぐのは避けて本名のエステベスを名乗ることに決めた」のだと。
なるほど、マーチン・シーンってそもそも芸名だったのね。とすると、弟の方はそんなこだわりも無く襲名しちゃったわけか…。ちゃっかりしてんな、ちゃっかりチャーリー…。
さて、毎週金曜日の午前中は、私のオフィスに同僚のマイクとキャロリンがやって来て一時間ほど会議します。マイクがPMを務める高速道路設計プロジェクトの財務状況を私が解説し、彼らが宿題を持ち帰ってチームメンバーに適切な指示をする、というもの。二人とも声が並み外れて大きく、ドアが開いていると廊下伝いに他の社員の部屋にまで話が届いてしまいます。先日も、同僚リチャードがあとからやって来て、
「あの二人、なんでしょっちゅうシンスケの部屋に来てんの?」
と尋ねました。彼には、私と二人との接点が見つからなかったみたい。彼らのプロジェクトのサポートをしているのだ、と説明すると、
「え?キャロリンはマイクのプロジェクトチームの一員なの?」
と驚きました。キャロリンは去年大学を出たばかりの新入社員なのですが、マイクの実の娘なのです。マイクの奥さんのアルシーナも経理担当でプロジェクトに参加している旨を伝えたところ、二度驚くリチャード。
「やっぱりこれって、あまり一般的じゃない状況なの?皆何も言わないから、アメリカではこういうの普通なのかなって思ってたよ。」
と私が言うと、普通じゃないよ、とリチャード。
「僕もかつて親父の商売手伝ってたんだけど、異常に神経使ったよ。社長の息子だからといって特別待遇を受けてはいるわけじゃないぞ、他の社員と同じだぞっていうメッセージを出し続けてた。」
「マイクもキャロリンもアルシーナも、ごく自然に親子として振舞ってるよ。会議中もキャロリンは、マイクのことを父さん(Dad)って呼んでるし。でも正直なところ、そういう時って若干居心地悪くなるんだよね。」
「そりゃそうでしょ。プロフェッショナルな態度と言えるかどうか疑問だよ。」
「ま、でも実害は無いよ。それぞれ優秀だし、ものすごく勤勉だしね。」
「いや、だからオッケーっていう話じゃないと思うよ。だってさ、同僚達からすれば、えこひいきがあるかもって勘ぐるのが普通でしょ。ただでさえ失業率の高いこの時期、娘と奥さんに優先的に仕事を回してるんじゃないかって疑われても仕方無いよね。」
「なるほど、確かに。それは考えてもみなかったなあ。」
リチャードがこう締めくくります。
“That’s a severe form of ネプティズム.”
「それは極端なネプティズムだよ。」
ねぷてぃずむ?なにそれ?
リチャードの解説によると、綴りはNepotism (ネポティズムとは聞こえません。ネプ、です。)、そして語源はnephew
(甥)だそうです。中世のカソリック教会ではその要職に就く者が純潔を誓ったため子供がなく、代わりに兄弟の息子を跡継ぎに任命した、という話から来ているみたいです(ウィキペディアより)。日本語では「身内びいき」というところでしょうか。
二世タレントや二世議員が珍しくない今の世の中、それ自体にめくじらを立てる気はないのですが、キャロリンが「それはDad(父さん)に聞かないと分からないわ。」なんて発言をするたびに、「そこは父(My father)に聞かないと、だろ!」突っ込みたくなります。
そこは”My father”でもなく「上司に効いてみないと」じゃないのカナ?芸能の世界では実の父でも師匠って呼ばせてるよね。
返信削除ちなみに関根勉も、関根真理が芸能界に入ってきた当初はかなり厳しく接していたみたいよ、仕事場では。
確かにそうだね。「ボスに聞いてみる」とは言えるもんね。ま、優秀で勤勉な人たちなので、仕事に支障は無いんだけどね。要らぬお世話かもしれないけど、キャロリンはオフィス・ラブしにくいだろうなって時々思うんだ。
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