2017年4月30日日曜日

Round Robin ラウンドロビン

“Do we want to go round robin?”
「ラウンドロビンで行く?」

木曜日。新PMツールのユーザーサポートに関する定例電話連絡会議の中盤、フロリダのシャロンが明るく呼びかけます。いやいや、自然でいいじゃん、やめとこうよラウンドロビン…。

金曜の午後、同僚ディックと久しぶりに長い会話をしました。お互い多忙で最近はほとんど顔を合わせない二人。溜まった話題をランダムに提供するうち、会議の話になりました。

「日本の会社の会議ってどんな感じだった?」

最近社内の会議で頻繁に起こることに、「限られたメンバーが話し続けて他の出席者を沈黙させてしまう」現象があります。最終的に、一番声の大きかった人の意見が通ってしまう。

「今はどうか知らないけど、僕が若かった頃に日本で参加した会議では、ベラベラ喋る人より物静かな人の方が大きな影響力を持ってる、っていうケースが多かったよ。出席者は、誰の意見が一番重みを持っているか最初から分かっていて、散々話し合った後、みんなでその人物の顔色を見るんだな。」

これにはディックがパッと顔を輝かせ、

「そうじゃないかと思ったよ!俺が育った中西部でも同じだった。学校教育や親からの躾の根っこに、じっくり考えて大事なことだけ簡潔に言え、という価値観があったんだな。カリフォルニアが特殊なのかな?」

地域性の有無はともかく、これは過去17年間のアメリカ生活で感じて来た違和感です。発言内容のクオリティより、どれだけ沢山喋るかが重要視される。ビジネススクール時代も、臆面もなく凡庸な発言をする何人かのクラスメート達に驚嘆させられていました。大学院側からは「発言数」がクラスへの貢献度として評価され、成績に加算されるという説明を受けており、それがゲームのルールなら仕方ないか、という諦めもありました。でも、プライドってもんは無いのか?くだらんことを言う奴だと蔑まれるのも厭わずポイント稼ぎだけのために挙手し続けるのは、格闘技の試合で返し技を食らわない程度の中途半端な技を繰り出し、「常に攻めている」印象を審判に与えることで判定勝ちに持ち込むような、浅ましい行為だと思うのです。ちょっとでもプライドがあるなら、思い切って決めに行けよ!と。

そんな「侍魂」みたいなこだわりのせいで、アメリカでの会議における発言のタイミングに迷い続けて来た私。しかし数年前になって、腹を決めました。もう周りのことは気にしない。言うべきことが見つかるまで、敢えて発言はしない。状況を見て、自分のタイミングで最適な技をかける。その結果、すかし技で豪快に負けたっていいじゃないか、と。

ところが先月、ロサンゼルスに一週間出張した際、新たな会議のルールが登場したのです。それが、「ラウンドロビン」。

「じゃ、ここからはラウンドロビンで行こうか。」

と、司会のジョージが提案します。会議室には、私以外の参加者四人が全員賛同。スピーカーフォンの向こうでも、十数人の出席者が同意します。皆が一体何に賛成したのかさっぱり分からない私。しかし一人一人が順に発言していくのを聞いているうち、そうか、ラウンドロビンというのは全員が発言機会を与えられるタイプのやり方なんだな、と合点がいきます。ラウンドというのは、回る、という意味だから。でも、なんでロビン?

ミーティング終了後、さっそくネットで調べたところ、やはり思った通りでした。テーブルを囲んで全出席者が一人ずつ順番に発言するイメージ。スポーツで言えば、総当たり戦方式。語源は諸説あるようですが、有力と思われるのがこれ。

「昔船乗りが待遇改善を訴えるために署名運動をした際、誰が発起人かを悟られぬよう、環状に名前を連ねた。フランス語のrond roubanがそういうタイプの嘆願書を意味していて、これが英語に訳される時にround robinに変化した。」

ジョージやシャロンはきっと、数人の常連さんのお喋りに圧倒されて他の出席者が黙ってしまうのを防ぐため、あえてこの方式を導入したのでしょう。意図はよく分かるんだけど、せっかく自分のタイミングで発言しようと心を決めたところだった私には、やれやれな話。

「私からは特にありません。」

とその場を凌いでからコーナーに引っ込んだ後、トホホな気分になりました。


4 件のコメント:

  1. 返し技を食らわない程度の中途半端な技を繰り出し>かけ逃げ、懐かしいね「柔道部物語」。有吉はあの漫画に影響されて柔道部入ったらしいゾ。

    よくウルトラマンロビン知ってたね。マニア筋の間では有名なポンコツレスラーだよ(笑

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  2. 出典を見事に言い当てたね。その通り!
    ロビンがポンコツとは残念だね。円谷プロからボコボコにされないといいんだけど…。

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  3. ところがどっこい、円谷プロの公認レスラーなんだよね。。。まあ、プロレスが認められた訳ではなくてオタクぶりが評価されただけなんだけどね(笑

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  4. ウルトラという冠を頂きながらポンコツ…。円谷プロも、時代に合わせて軌道修正する、ということだね。

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