カラダの芯が冷えてしょうがないので、昨日は上着のチャックを顎のところまで上げて仕事してました。くしゃみをひとつしたところ、ちょうど背後を通りかかった同僚のジェシカが、
“Bless you!”
と声をかけてくれました。
アメリカでは、誰かがくしゃみをすると「ブレス・ユー」と合いの手を入れる習慣があります。先日、会議中にある同僚が激しくくしゃみを連発した際、最初はほとんど全員が一斉に「ブレス・ユー」と返していたのに、4回目くらいから誰も反応しなくなりました。このことがちょっとひっかかっていたので、同僚ステヴに質問してみました。
「くしゃみした人にブレス・ユーって言ってあげる習慣は知ってるんだけど、アレルギーなんかで連発する人にもいちいち付き合ってあげるべき?ひどい人は20回くらい平気でやっちゃうからね。合いの手入れる方もあまり続くと辛いんじゃない?」
「俺は一回でやめとくね。そんなもん付き合ってらんないよ。大体、なんでそんなことをするかの起源も曖昧だしね。」
くしゃみをすると胸に小さな扉が開いて、そこへ悪魔が侵入を試みる。周りの人が「ブレス・ユー」と唱えると扉が閉まる。くしゃみをした本人は隣人の助けによって救われる。そういう言い伝えが元だとステヴは解釈しているそうです。
「友達や家族への気遣いとして言ってあげる人は多いし、俺も言うよ。全くの他人に対して言うかどうかは判断の分かれるところだね。」
ここで彼が、突然思い出し笑いをします。
1992年の映画に「シングルズ」という恋愛映画があり、その中のエピソードにこの「ブレス・ユー」が登場するのだそうです。「完璧な彼氏」を見つけようとさんざん奮闘するヒロインが、最終的には自分がくしゃみした時「ブレス・ユー」を言ってくれた普通の男性を好きになる、というオチ。これがアメリカ女性に、「ブレス・ユーを言ってくれる男性は真のナイスガイだ」という、歪んだ常識を植え込んでしまった。
「というのが、俺の唱えてる説ね。」
とステヴ。
「じゃあさ、同僚の女性がくしゃみした時にブレス・ユーを言ってあげないと、いやな奴だと思われちゃうわけ?」
と私が尋ねると、
「まあ、残念ながらそういう危険性はあるね。」
と、うんざりしたような表情になります。
「こないだシェリル(ステヴの隣のキュービクルにいる同僚)が風邪ひいてくしゃみを十回以上連発した時、俺が何て言ったと思う?」
「え?もしかして毎回ブレス・ユーって言ってあげたの?」
と驚く私。彼は一瞬怒ったような表情になってから、こう小さく叫びました。
“Stop sneezing!”
「くしゃみ止めろよ!」
全然ナイスじゃないじゃん。
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