2015年9月5日土曜日

日本人あるある

先日の夕方、二つ上のフロアで働いている同僚マリアがやって来ました。

「最近うちの階に全然顔出さないじゃない。」

と、のっけから詰り口調。

「そっちこそ、ちっとも降りて来ないじゃん!」

とすかさず応戦すると、

「何で来たかっていうとね、日本食を食べる会をそろそろまた企画してよって言いたかったの。」

と、子供がおねだりするような目で笑います。

「あ、その話か。」

前のオフィスにいた頃は、仲間と連れ立って時々地元の日本食レストランでディナーを楽しんだものです。これが意外と人気のイベントで、皆の超乗り気な反応に毎度驚かされていました。同僚たちに会う度に、次の会はいつ?とせかされるほど。

「分かった。じゃ、9月の終わりくらいに企画しよっか。」

「やったぁ!インビテーション送ってよ!」

私が招待状を送るまでその場を去らないぞ、という圧を感じたので、「日本食ディナーを楽しむ会」と銘打ち、会場未定のまま仲間たちへ一斉メールを送信。すると、間髪入れずに「参加します」という返事が届き始めました。これを見届けてから、マリアが満足げに去って行きました。

翌日、若手PMのサラと打合せを始めた際のこと。彼女が目を輝かせ、

「シンスケからの招待メールを開けた時は、ものすごく興奮しちゃったわよ!」

と顔を上気させたので、

「それは良かったね!」

と答えつつ、何か腑に落ちない感じを味わっていました。みんなどうしてそこまで喜ぶのかな?そんなに日本食が好きならレストランを探して自分で足を運べばいいわけだし、ただ同僚達とわいわい集まるのが楽しいというのなら、こないだ地ビールの店に皆で繰り出した時だって同じくらい盛り上がってても良かったはずだし。ほんと、不思議。そもそも、一般のアメリカ人が日本や日本人に対してどういうイメージを抱いているのか、いまいちつかめないのです。

数年前、一時帰国から戻ったばかりの私が同僚達を集めて30分ほど土産話をプレゼンしたところ、のめり込むように聞いていた同僚のスーが、

「へえ、中国ってそういう感じだったんだ!」

と思いっきり国名を間違えてコメントして来たのに言葉を失ったこともありました(周りの誰もスーに突っ込まなかったこともショックでした)。アメリカ人にとって、アジアは十把一絡げなんだなあ、と実感した次第。

そんな経験も手伝って、日本に対するアメリカ人の関心がどの程度のものなのか、今でも良く分からないでいるのです。そんな感じで「日本食ダイスキ」とか言われてもねえ…。

ちょっと前、日本通の同僚ダグが、厚木基地のプロジェクトに携わって暫く東京周辺に滞在していた頃の思い出を語ってくれました。ヤクザが介入しようとして揉めた事件とか、新幹線に乗る時に日本人乗客がビールを飲みながらタコの脚の切り身にかじりつくのを見てゾッとした話とか(アメリカ人の多くはタコを食べないので)。

「日本人男性が職場で奥さんに電話をかける時って、誰でも同じことを同じ声で言うよね。」

と、嬉しそうに話すダグ。

「え?そう?そんなこと無いと思うけど。みんな何て言ってた?」

この藪から棒な指摘には全く思い当たる節が無く、私は首を傾げてしまいました。するとダグは受話器を耳に当てたジェスチャーで口を小さく開き、若干鼻にかかったような声でこう言ったのです。

「むしむ~し。」

職場での私用電話だから周りに気を遣ってるんだよ、だからそういう発音になっちゃうの、と解説する私。これまで十回以上日本へ出張して来た彼にとっての「日本人あるある」が「むしむ~し」だというのは、なんともやり切れない話でした。

さて、こないだの週末は、日本人の友人宅(豪邸)でホームパーティーがありました。毎年8月最後の土曜日に開かれる宴で、今年も百人近い老若男女が集い、楽しく飲み食いしました。遠くに海を臨む巨大な裏庭の一角に立ち、日本人配偶者を持つ白人男性二人(リーとアンディ)と談笑していた際、日本人の特徴の話題になりました。日本に住んだこともある二人は、一般のアメリカ人よりも遥かに大和文化に慣れ親しんでいるはず。そんな彼らからどんな「日本人あるある」が飛び出すか、これは期待出来そうだぞ、とワクワクしていました。

「日本人ってさ、簡単にイエスを言いたくはないけど結局は同意せざるを得ない状況だと、喋る前に歯の間から思い切り息を吸い込むよね。」

と、リーが切り出します。

「はっ?」

何を言っているのかなかなか理解出来ない私。それまで口数が少なかったアンディが、これに食いつきます。

「そうそう、しょっちゅう聞くね。やりましょう、やるにはやるけどでもねえっ、て感じの気の進まない状況でね。」

そして二人同時に、ちょっと顎を上げ気味で首を傾げ、閉じた歯の間から息を吸い始めました。

え?それが日本人のイメージ?

歯を食いしばって大きく口を横に開き、スースー音を立てながら何度も息を吸い込む白人男性二人を前に、よく分からないけどこれから頑張っていかなきゃな、と思う私でした。


6 件のコメント:

  1. 全く日本人に接する機会のないアメリカ人の「日本人のイメージ」は、もしかすると千葉真一や藤岡弘みたいなサムライ系の場合が多いのかもヨ。だけど、リアルな日本人像としてあればないよね(笑)
    実際の日本人に多く接する機会のあるアメリカ人は、かなり的確に捉えているんじゃないかね。キミがいくら頑張っても、彼らにとってのそれは「ソニー・千葉」みたいに例外の部類として認識されてしまうのでは?

    そういえば、真田弘之はハリウッドで活躍中ってこちらでは紹介されるケド、実際にそちらでの知名度はどうなの?

    返信削除
  2. 今はきっと、ケン・ワタナベかコウジ・ヤクショだろうね。真田広之の話題は聞いたことないなあ。何か一本でも主役級の出演作品があるといいんだけどね。二枚目でアクションも出来るんだから、もっと活躍出来ると思うんだよね。是非頑張って欲しいなあ。

    返信削除
  3. 役所広司が国際派ってのは意外なイメージだね、どっちかと言うと純国内派俳優って感じていたケド。オイラ的には役所広司といえば「ダイワマン」なんだよね~(笑

     http://www.nicovideo.jp/watch/sm22782153
     https://www.youtube.com/watch?v=RdPSdND2mrA

    返信削除
  4. そんなCMやってたのね。知らなかった。役所氏は意外と国際派なんだよね。Babel にも出てたし。

    バビル二世役じゃないよ。

    返信削除
  5. バベルってそっちではメジャーな扱いの映画なのカナ?日本では菊池凜子がスゴい賞を受賞したってニュースはエラい話題になってたケド、実際に映画を見た人はあんましいないような気がする。

    ダイワマンのCMの黒木メイサ編、「被り物」→「濡れ場」と変換すると、有りがちなやりとりになるって所が映画界をパロってる所なんだよね。
    そう思って見てみると、被り物を外した時の黒木メイサの顔がちょっと上気しているという凝りようなんダワサ。

    返信削除
  6. バベルは一応ブラピが主演だからね。テーマが渋いのでそんなにメジャーじゃないけど。

    ダイワハウスは一体何を目指してるのかな。黒きメイサの顔、好きだけど。

    返信削除