NPRという公共ラジオ局に、This American Life という番組があります。先日、No Coincident, No Story 「偶然の一致が無ければ物語ではない」というテーマの放送があり、これが妙にツボにはまってしまい、録音されたものをかれこれ10回以上繰り返し聴いています。
結婚しようと思っている彼女とその両親を実家に招いたら、飾ってあった亡き父の写真を見た彼女のお母さんが、「この人、名前何て言うの?」後から分かったのは、自分の父と彼女のお母さんは昔恋人同士で、結婚しかけたけど親に反対され、別れざるを得なかった、という事実。
デートに向かう途中、お店でお金を払おうと財布を開いたら、取り出した一ドル札にこれから会う女性の名前が書かれていた。あまりの偶然に興奮した男は、額縁を買ってこのお札を飾り、デート相手にプレゼント。ギョッとする彼女。その後、めでたくゴールインした二人。何年か経ち、彼女が告白。スーパーでレジ打ちの仕事をしていた若い頃、なかなか良縁に恵まれずイライラしていた。「お札に自分の名前を書いてみよう。将来これを手に現れた男が私の結婚相手になる。」と心に決めて実行したのだと。まさか実現するとは思いもしなかったので、彼がお札を額縁に入れて持ってきた時は動転のあまり声が出なかった。
ま、こんな実話がざくざく出て来るんですね。一番気に入ったのが、この話。
ライアンという男性が、ロサンゼルスの大学生だった頃の話。ある日キャンパスを歩いていたら、学生が何人か談笑している。話に参加してみると、そのうちの一人がこんなエピソードを語ります。
「シャワーを浴び始めて5分か10分した頃、チャリーンと音がした。見下ろすと、足元にコインがある。一体どこからお金が降って来たのか分からないんだ。」
周りの男たちがこれを聞いて、「一ドル札でも食ったのか?」「ケツがおつりを払ったんだろ。」とからかいます。笑って立ち去るライアン。その翌日、シャワーを浴びていたら、チャリーンと音がします。見下ろすと、床には25セント硬貨。咄嗟に、「あいつら、はめやがったな」、と思ったライアン。昨日の話は作り話で、自分に対するイタズラの前ふりだったに違いない、と踏んだのですね。でも一体どうやって仕込んだんだ?さっそく大学で、昨日の男をつかまえて尋ねます。笑い始めると思いきや、
“He was sincerely mystified.”
「正真正銘、不思議そうな顔をしてたんだ。」
結局、謎は解明出来ないまま帰宅。それから一か月ほど経ったある日、シャワー中にまたしても、チャリーン、チャリーン!今度は合計35セントも小銭が降ってきた!
これは実によく出来た話で、あまりにも意外なオチに大爆笑。しかし、番組はここで終わりません。同じ経験を持つ人がどれだけいるのか調べるため、スタッフが全米の大学を訪ね歩くのです。どこへ行っても「そんな話、聞いたこともない」という反応でしたが、ペンシルバニア大で、一人の女子大生が「同じ経験を頻繁にしている」と名乗り出ます。しかも、ついさっきルームメートから、「どうしてシャワールームの床に小銭が落ちてるの?」というテキストが送られて来た、というのです。学生仲間が大笑いする中、恥ずかしそうに体験談を語る女子大生。
さて、この「小銭」ですが、英語ではChange(チェンジ)。
"There was change between my feet."
「足元に小銭が落ちてた。」
という例で分かるように、これ、不可算名詞なんですね。たった一枚だろうが十枚あろうが、数えられない。冠詞のaもつかなければ、changes と複数形にもならない。う~む。な~んかこれ、のみこめないんですよね。これだけ長く英語学習を続けていても、やっぱり苦手なコンセプト。大抵の場合、名詞を単数か複数か明確に区別しようとしている言語なのに、どうして不可算名詞なんてものがあるんだろ?
地元のショッピングセンターの前に、時々ホームレスのおじさんが立っていて、通行人を呼び止め、
“You have change?” (チェンジある?)
と顔を覗き込んで来ます。
これを聞くたびに、おじさんに小銭を恵んであげるかどうか悩むのではなく、「あ、不可算名詞だ。」と思ってしまいます。
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