先週金曜日の晩、中一の息子が土曜日に通う日本語補習校の理事長から電話がかかってきました。さては愚息がまた何かトラブルを起こしたか、と謝罪の態勢を整えたところ、「実は折り入ってお願いがあります」、とのこと。
「中三の数学教師の採用が遅れているんです。良い先生が見つかるまで、新学期から三回ほど教えてくれませんか?」
え?何故それを私に?
狭い日本人社会なので、「理系」で「教えるのが好き」な社会人というフィルターにかけると、候補が限られてくるのでしょう。ま、日ごろから地域社会に貢献したいとは思っているので、これは快く引き受けることにしました。で、大急ぎで準備。昨日が初日でした。
中学三年生というのは大人でも子供でもない、微妙な年齢層。普段接する機会が無いので、これは新鮮でした。意外に素直そうな子ばかりで感動したのですが、授業態度に関しては「こんなんでいいの?」というレベル。中に一人、典型的な「お調子者」がいて、絶え間なく茶々を入れたり立ち歩いたりする。彼はクラスに活気を与えている反面、授業の流れを妨げてもいるのです。一介のボランティア教師が生徒指導にどれほど責任を持つべきなのか不明なので、とりあえず、
「おい、一番前に座れ。」
と座席移動を促しました。
“Oh, I’m in trouble!”
と英語でおどけながら席を移る少年。
思い起こせば、どのクラスにもこういう奴、必ずと言っていいほどいたよなあ。あと数年もすれば、ウソみたいに真面目な青年に成長してたりして。
話は変わって一昨日(金曜)の朝。隣のオフィスのストゥーと元ボスのエドが廊下で暫く世間話をしていたと思ったら、私の部屋にどやどやと入って来ました。デスクを挟んで来客用の椅子を二脚、やや向かい合わせ気味に並べてあるのですが、ここに二人がためらいもなく腰を下ろします。まるで、金曜の午前中などにシンスケが忙しいわけなんかないと決めつけているかのように。
ストゥーが、「せがれが去年、大学を出て働き始めたんだ」と楽しげに語ります。何でも彼は、別会社に就職してサンディエゴの大規模プロジェクト・チームに入り、プロジェクト・コントロールの仕事をしているというのです。
「奴は、プリマベーラでスケジュールもやってるんだ。」
「それはいいですね。プリマベーラが使える人は今、引っ張りだこですから。」
と私。
「だろ。これはニッチな分野だから、うまくすれば奴も、将来あんたたちに雇ってもらえる可能性だってある。」
と、笑うストゥー。次に彼の口から出たフレーズに、思考が止まります。
“I said to him, keep your nose clean!”
文字通り解釈すれば、
「鼻をきれいにしておけ、と言ってやったんだ。」
え?鼻を綺麗にする?なんでここでそういうセリフが出るの?
その時は調べる余裕がなかったので、夕方、残業していた同僚レベッカに尋ねました。
「Stay out of trouble (トラブルを起こすな)って意味だと思うわよ。文脈にもよるけど。」
とレベッカ。
「でもさ、それと鼻とどう関係あるの?鼻をかんでおけってこと?ほら、鼻水たらしてるガキにそう指導することあるでしょ。」
「う~ん、そうかなあ。おかしなことに鼻を突っ込むな(日本語では「首を突っ込むな」)という意味で使ってると思うんだけど。」
後で調べたところ、両方の説が語源として伝わっているとのこと。つまりストゥーが言いたかったのは、将来に備えてちゃんとしておけ、おかしなトラブルを起こしちゃいかんぞ、ということですね。私の和訳はこれ。
“I said to him, keep your nose clean!”
「お行儀よくしておけよ、と言ってやったんだ。」
昨日の晩、息子と一緒にシャワーを浴びていた時、ふとこのことを思い出し、
「そうだ、Keep your nose clean. ってイディオム、知ってる?」
と尋ねてみました。
「知らな~い。」
と即答してくるりと振り返った彼が、シャワーを頭から浴びながら右手の人差指を深々と鼻の穴につっこみ、ホジホジしながらこう言いました。
「こういうこと?」(ほおゆうほと?と聞こえましたが。)
おお、そう来たか。なかなか機転の利いた切り返しじゃないか。ちょっと感心したぞ。
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