2014年4月10日木曜日

マンツーマン指導

来週はコロラド州へ出張です。月火にフォートコリンズ支社、水木にデンバー支社でプロジェクトマネジメント・プログラムのトレーニングをして来る予定。フォートコリンズの総務担当者ロビンに「どういう段取りで進めましょうか?」とメールで尋ねられたので、

「まずは講義形式で一時間半話をし、その後マンツーマンでPM達に指導をする、という感じで行こうと思ってます。」

と答えました。その際私は、 こういう英語を書いたのです。

“I’m planning to have a 1.5-hour class-room training before opening up for one-to-one sessions.”

そう、one-to-one(ワンツーワン)です。

日本語で頻繁に用いられる「man-to-man(マンツーマン)」というフレーズが、バスケットボールなどのディフェンス方式を指す用語であり、今回のケースでは使えないことは分かっていました。さすがにアメリカ生活も14年。そういう初歩的ミスは犯さないぜ、とやや「ドヤ顔」の私。

しかし、私の書いたものを転送する形でロビンがPM達に一斉送信したメールを一読し、何か違和感を覚えます。もう一度よく読み返してみたところ、私の書いた “one-to-one” “one-on-one” に置き換えられていたのです。あれあれ?ワンツーワンはダメだったの?やや焦って、同僚リチャードの部屋を訪ねる私。

「う~ん、どっちも文法的には正しいんじゃない?」

とリチャード。

「僕はone-on-one しか使わないけどね。」

「おいおい、ちょっと待ってよ。One-to-one は正しいけど使わないってこと?それはなんで?どういう状況でなら使えるの?」

と食いつく私。

「いやいや、どういう状況で使っても大丈夫だと思うよ。間違いじゃないんだから。ただ僕は、one-to-one って言われたら、スロープの勾配が一対一の角度(つまり45度)って話だと思っちゃうけどね。」

と、土木設計のエキスパートらしい意見。いよいよ納得がいかない私は、さっそく職場内をあちこち聞いて回りました。みな一様に、根拠は不確かながら「one-on-one (ワノーワン)」を推します。もしかしたら、アメリカ英語に限った話かも?と疑念が生じた私は、カナダ出身の同僚ジェフを訪ねます。彼は日系アメリカ人のグレンと大部屋を分け合って使っているので、相方の仕事の邪魔にならないよう、少し声を抑えつつ質問。

「カナダではどうなの?one-to-oneって使う?」

「う~ん、地域によって違うのかもね。俺はone-on-one としか言わないな。」

「やっぱりそうなのか。じゃあさ、アイスホッケーやってる時、相手の選手と一対一でパックの奪い合いをする場面では、どっちのフレーズ使う?」

中年ながらも、毎週末アイスホッケー・チームでプレイしているジェフ。

one-on-one だね。」

「やっぱりそうか。じゃ、どういう時にone-to-one を使うの?」

「どういう時でも使えばいいんじゃないかな。俺は使わないけど。」

これは参りました。誰も違いを教えてくれないくせにone-to-oneにはダメ出しをする!欲求不満が頂点に達したその時、ジェフのオフィスメートであるグレンが、コンピュータ画面を見つめながら棒読みを始めました。

One-to-oneは、transfer communication (つまり伝達)の場合に使う。例えばemail で誰にもcc を入れない場合、それはone-to-one correspondence (一対一の通信)である。グーグルにはそう書いてあるね。」

な~るほど!不定詞 to が方向性を表現していることを考えれば、これは納得です。誰かから誰かへ情報が伝送される場合に、one-to-oneを使うんだ。ようやく半ばすっきりして、同僚リチャードを再訪します。私の解説を聞き終わった彼が、きちんとまとめてくれました。

one-to-one tutoring (個別指導)と書いていれば完全に正しかったってことだね。そうすれば、シンスケがPMTutor (指導)する、という風に方向性が明確になるでしょ。Meeting とかsession だとそれが無いから、one-on-oneの方が適してるんだね。」

ようやく完全に腑に落ちました。


こんな風に、ネイティブスピーカーでも余程突っ込んで聞かないと、説明出来ないことってあるんですね。

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