2013年3月2日土曜日

I’m gonna nail her! 彼女をネイルしてやる!

今週はオレンジ支社の品質管理 (Quality Management) 監査週間だったので、月曜から木曜までずっと詰めていました。去年から品質管理部門の長を兼務している私にとっては、業績評価のかかった最初の大きな関門です。Auditors(監査員たち)は全米のあちこちからやって来てオレンジに滞在し、何十人ものPM達を尋問します。たとえ一人でも品質管理の手続きをサボっていて吊るし上げられたら、支社全体に落第点がついてしまいます。それは何としても防ぎたい。

そこで、ここ数週間は監査のリハーサルを実施して来ました。私は三人の女性社員で構成する品質管理チームを率いているのですが、彼女達に数名ずつPMを担当してもらい、それぞれ30分くらいかけてリハをする、というローラー作戦。これが功を奏し、今回監査を終えたPM達から、
「ほぼ全部の質問に答えられた。リハーサルしておいて良かったよ。」

という声が聞こえて来ました。
中堅PMのレベッカは、ホリーという若手Deputy PM (副PM)に監査対応を任せていました。担当プロジェクトの監査終了後、そのレベッカが皆にこんなメールを送りました。

“Holly nailed it!”
直訳すると、「ホリーがそれ(監査)をネイルしたわよ!」となります。爪(ネイル)を綺麗にする話ではなさそうですが、どうも意味がすっきり入って来ません。さっそくまわりにいた連中に、解説を求めました。

「完璧にやっつけた、とか楽々成し遂げた、とかいう意味だよ。釘を打ち込むアクションをイメージすると分かるでしょ。」
とフィル。やっぱり釘なのね。でも日本語だと「釘を刺す」で、全く違う意味になっちゃうんだけど…。

「じゃあさ、監査を終えたホリーが、She nailed me! (彼女が私をネイルした)と言ったとしたらどう?」
「監査員にとっちめられたってことになるね。」

「なるほど。」
「英語って不思議な言語だよねえ。」

と、向かいで仕事してるクリスがコメント。そこへ、ちょうど監査を終えたばかりの熟練PMエリックが現れたので、
“Did you nail it?”

と聞いてみました。
「いや、ネイルしたとは言えないな。すっきり答えられない質問がいくつかあったよ。」

さて、昨日は金曜日。ダウンタウン・サンディエゴ支社のディックと、街で一番歴史のあるバー、「Waterfront」でランチを楽しみました。今回の監査の話をした後、彼にもネイルという言葉の意味を説明してもらいました。
「人を対象にこの言葉を使う場合、ネイルされる側は大抵、正しいことやするべきことをしていないという自覚があると思うよ。で、そこをとっつかまって懲らしめられる。例えばスピード違反で捕まった時も、The cop nailed me. って言うね。」

「昨日ちょっと調べたところによると、性的な意味にも使われるみたいなんだけど、ほんと?」
「あ、そうだね。人間を対象に使う場合は要注意だよ。」

彼の出してくれた例がこれ。
仕事を頼んであった部下の女性社員が、何度催促してもノラリクラリと言い訳しながら逃げ続ける。夜、一緒に飲みに行った同僚達に状況を話し、

“I’m gonna nail her!”
「彼女をネイルしてやる!」
と苛立ちをぶつける。たまたま他のテーブルで飲んでいた隣の部署の女性社員が、その部分だけ聞いてしまう。翌日出勤すると、人事部から呼び出されてお叱りを受ける。「あの女、ヤッてやる!」という過激発言として伝わってしまったわけ。

「女性相手には使わないことが得策だね。」
と締めくくるディック。

「なるほど。それは確かに危険だなあ。でもさ、わざと誤解を招くような言い方をして皆をニヤリとさせるという意図がある場合だったら、ドンピシャなフレーズだよね。」
「その通り。でもそんなことが笑ってすまされる時代は、もう遠い昔だよ。」

というわけで、私の和訳はこれ。
“I’m gonna nail her!”
「彼女をとっちめてやる!」

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