2015年10月9日金曜日

Catch 22 キャッチ22

水曜のランチタイムに参加したトレーニングで、インストラクターの何気ない発言に、耳がピクッと反応しました。

“That’s a Catch 22.”
「それはキャッチ22(トゥエニィトゥ)だな。」

これ、会議などで半年に一回くらいは耳にする準頻出イディオムです。なのにこれまで、ちゃんと意味を理解せずに過ごして来ました。今回も残念ながら、どんな文脈で使われたのか不明なまま話が先へ進んでしまったので、後で若い同僚ジェイソンに解説をお願いしました。

「ずっと前に一回読んだだけだからうろ覚えなんだけど、確かジョセフ・ヘラーという人の書いた小説のタイトルが語源だよ。」

とジェイソン。著者名を記憶しているとは大したもんだ、と感心する私。

「確かこんな話だったと思う。大戦中、アメリカ空軍の兵士が何とかして隊から脱出したいと企んでる。頭が狂っていれば除隊出来るんだけど、狂っている人は自分の精神状態を正確に認識出来ないはずだから、自己申告は信用されない。狂ってないと言えば除隊出来ないし、狂っていると言っても除隊出来ない。どっちに転んでも望みは無い。この小説が売れてから、似たような状況に陥った時にキャッチ22という言葉が使われるようになったんだ。」

「なるほど、有難う。でもさ、何かぴんと来ないんだよね。今の世の中、そんな事態に陥ることなんてあるかなあ?」

「この会社には山ほどあるでしょ。」

「え?そうなの?じゃ、何か例を教えてよ。」

5秒ほど考えるジェイソン。勢いで山ほどあると言ってはみたものの、きっと何も浮かばないんじゃないか、と高を括っていたら、こんな答えが返って来ました。

「うちのグループ、ここ数年縮小傾向だろ。チームが小さいために、大きなプロジェクトが獲得できなくなってる。だから新規採用したいと上層部に相談したら、まずは新しいプロジェクトを獲って仕事が増えてからじゃないと人は雇えないって言うんだ。」

おお、それは確かにリアルな実例だ。

「他には?」

と、更にジェイソンを追い込む私。

「仕事量を増やすために新規プロジェクトを獲得せよ、と上層部に言われて顧客のところへ営業に行くだろ。当然、プロジェクトにかけられる時間が削られる。すると次の週、君の稼働率は先週落ち込んだぞ、もっとプロジェクトに時間をかけろ、とお叱りが飛んで来る。仕方なくプロジェクトばかりに時間を使っていたら、営業が出来なくて仕事量が先細りになる。」

すごいなジェイソン。よくもそんなにポンポン例が出せるもんだ

キャッチ22というのはつまり、二者択一のどちらを選んでも望む結果が得られないような状況を指す表現なのですね。日本語に無理やり訳すとすれば、「無限ループ」てなところでしょうか(ループは日本語じゃないけど)。

“That’s a Catch 22.”
「それは無限ループだな。」

「でもさ、それって抜け出す方法あるんじゃないの?」

と私。驚いた様子のジェイソン。不審な目で、私の顔をまじまじと見つめます。

“You can donate your own time!”
「サービス残業すればいいじゃん!」

軽いジョークのつもりだったのですが、ジェイソンは笑わず、顔をこわばらせてしまいました。所詮あんたも管理側の人間だな、という憮然とした表情。

この場合、「冗談だよ」と言い訳すれば、無粋で嫌味なおっさんとして見られるし、取り消さなければ取り消さないで、やっぱり嫌な野郎です。

キャッチ22、成立しました。


2 件のコメント:

  1. 日本語を充てるとしたら「退けば地獄、進めど地獄」なんじゃないかと思ったが、Yahoo辞書で引いても出てこないみたいだね。一般的にはよく使う表現のような気がするんだけど。

    これと語呂が似ているのは「踊るアホウに見るアホウ」カナ(笑)

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  2. おお~!いいのあったねえ。古来からある正式な言い回しかどうかはともかく、このイディオムにはドンピシャでしょう。ありがと!

    Catch 22の和訳は、「退けば地獄進めど地獄」に決定!

    踊るあほうに見るあほう。
    よってらっしゃい見てらっしゃい!

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