「私がいない間、この仕事頼める?」
という類の依頼を大量に背負い込むことになりました。調子良くどんどん引き受けている内に、いつしかここ数年で一番の忙しさに。どこかで「いや、もう出来ないよ」と言うべきなんだけど、断るのが苦手なんだよなあ。自分のクローンをひとり作ったとしても、到底終わらない量を抱える破目になってしまいました。
金曜日の昼、ロングビーチ支社のアリーシャからボイスメッセージが入ったのに気づいたのですが、あまりの忙しさに、これは絶対後回しにしようとを決めたところ、追い討ちをかけるようにEメールが届きます。「至急ヘルプをお願い!」う~ん、読もうかな、どうしようかな、読んじゃったら返信したくなっちゃうしな。迷った挙句、一応中身に目を通し、後で答えよう、と決めました。
「契約額16ミリオンのプロジェクトを正式にセットアップする前に、レビューがあったの。マネジメントの面々から、利益率の設定がおかしいんじゃないかってさんざん叩かれちゃったのよ。」
ふ~ん、そうなの。ま、来週あたりなんとか時間を作って分析してあげようと思いつつ、次の文章に目をやりました。
“The group had asked to involve you on a project this size
if we had questions.”「Group (マネジメントの面々)が、これほどのスケールのプロジェクトに関する質問には、あなたを巻き込めって言うの。」
ううむ。自尊心を激しくくすぐる文句じゃないの。これはとても断れないなあ。仕方なく他の仕事を押しのけ、午後一杯かけてアリーシャのために分析を仕上げました。
週が明け、今度は大ボスのクリスからメールが入ります。
「北米地区の期末決算の締めが迫っている。」
うう、そう来たか。でもたとえ相手がクリスでも、何も出来ませんよ、こっちのスケジュールはもうパンパンなんだから…。
ところがメールを読み進むうち、これはどうやら私がボトルネックになっている話らしいことが分かってきました。あるプロジェクトの予算に関する決裁が滞っており、それを突破するため財務のトップであるアンドリューを私が説得する段取りになっていたのですが、次々と雪崩れ込む仕事に押しつぶされ、この件も後回しになっていたのです。
“This is getting a lot of attention at very high levels.”「この件が、かなり上の方の目を惹き始めているんだ。」
あらら、プレッシャーがかかるじゃない。クリスは更に、こう続けます。
“Would you please prioritize this?”「プライオリティーを上げて頂けないかな?」
クリスのこの洗練されたメールの構成に、私はすっかり感心してしまいました。
1.まず全体の状況をざっと説明し、2.次に依頼事項がどの程度重要なのかを伝える。
3.そして最後に、「プライオリティを上げて欲しい」と依頼する。
彼ほどのお偉いさんだったら「大至急やってくれ」と一言発すれば事は足りるのに、わざわざ時間をかけてここまで丁寧な依頼文を書くなんて。しかもプライオリティに言及するというのは、君が沢山仕事を抱えていることは充分認識しているよ、というサインなのです。ここにリスペクトを感じます。これはもう絶対断れないでしょ。
さっそく、クリスのメールを転送する形で財務のアンドリューに「話したいんだけど、時間はありませんか?」と投げかけたところ、5分もしないうちに返信が届きます。
「たった今、承認した。」
え?まだ説得を開始してもいないのに?これには拍子抜けしました。あ、そうか、クリスのメールを読んだら、嫌でも緊急性は伝わるよね。
時間をかけて依頼文の構成を練ることで困難な案件がスピーディに解決するという、鮮やかな達人技を目撃した日でした。
すいませんが、
返信削除今回は、写真の意味がわかりません。(^_^;)
自著のタイトルに「達人」を好んで使用されている中谷彰宏氏です。わかりにくくてすみません。
返信削除よく、「できる人に仕事は(情報は)集まる」というけども、その典型のようですね。頼もしい限りです。
返信削除一方、仕事の優先順位は本当に難しいもので、何を先にやるか、もさることながら、「どれをやらないか」という判断も求められます。いずれにしても困ったもんです・・・・。
「どれをやらないか」という判断が一番難しい。新年の課題にします。
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