先日、ロングビーチ支社のマークと数カ月ぶりに電話で話しました。彼とはもう15年近い付き合いですが、私が転属して以来、何年も顔を合わせていません。彼の担当プロジェクトの財務状況を月に一回チェックして、ただレポートをメールするだけの関係が続いています。
「随分長いこと喋ってないけど、どうしてた?」
この手の会話の端緒というのは、適当に調子を合わせて先へ進むための予定調和的なやりとりがお約束。しかしこの時、彼が意外なほどしっかり間を取ってからこうしみじみ答えたのです。
“I don’t know but I feel like
everything has started losing its luster.”
「分かんないけど、なんだか何もかもがラスターを失い始めたような気がするんだよな。」
え?ラスター?なんだそれ?あまりにもシンプルな発音なのに、これまで一度も聞いた記憶の無い単語です。
「あ、ラスター、知らない?」
彼の説明によると、Lusterというのは「反射、光沢、輝き」を意味する言葉。つまり、彼が言いたかったのはこういうことですね。
“I don’t know but I feel like
everything has started losing its luster.”
「分かんないけど、なんだか何もかもが輝きを失い始めたような気がするんだよな。」
ドキリとしました。
マークと私は同年代。一人息子もほぼ同い年だし、会社の中での位置づけも大して変わりありません。そんな旧友が、ここ数カ月間というもの私が心に抱いていたもやもやを、これ以上ない的確さで表現してくれたのです。
専門分野ではそれなりに経験を積み、ベテランの域に突入した。知識は増え、仕事のスピードも早くなり、効率よくどんどん毎日が進んで行く。時にはあまりに仕事が楽しくてドーパミンが大量分泌され、危険な程ハイな状態で長時間労働を続けてしまう。そんな暮らしを送るうち、日々の様々な出来事がまるで快速列車の車窓を猛スピードで飛び去って行く沿線の家々のように、濁った灰色のノイズと化していることに気付き始めたのです。
何かに不満があるわけじゃない。ただ脳のレセプターが劣化して来ていて、かつては興奮を覚えた対象にも大して反応出来なくなっているのだ。こんな傾向を看過していたらヤバいぞ。今の内にニューロンの活性化に励まなければ!そう激しく自分を戒めるのでした。
さて、マークとの会話の数時間後、コロラドにいる18歳の息子から私と妻に宛ててテキストが入ります。
「後で電話していい?」
さては何か事件か?と心配した妻が、大事な話だったら私が帰宅する8時以降にして、と返事。すると、
「お喋りだよ!今週はよく泳ぎよく遊んだから長い話がしたかったんだ。8時頃電話するね。」
と明るい返事が届きました。その晩、夫婦で遅い夕食を食べている最中に、息子から電話が入ります。
水泳部の厳しい特訓に耐えていること、飛び込みを改善してタイムをぐんと縮め、コーチから褒められたこと、チームメートがいい奴ばかりで毎日めちゃくちゃ楽しいこと。そして先週のフロリダ合宿の話。みなでシャワーを浴びている時、息子が壁を「どん、どん、どどどん」と叩いたのを合図に、全員が「しゃー、わー、みーてぃん!しゃー、わー、みーてぃん!」と声を揃えて歌い出したこと。中休みの週末には、チーム全員でキーウェストの浜辺に繰り出したこと(一月だというのに海で泳げるくらい温暖だそうです)。通りすがりのおばさんに集合写真の撮影を頼んだら、「あんたたち大学生?じゃあ皆一緒に言って。Beer(ビール)!」と全員を笑わせてからパチリ。「もう一枚撮るわね。More Beer(もっとビール)!」抜けるような青空の下、Tシャツ短パン姿の逞しい男子大学生たちがゲラゲラ笑いながら肩を組んだり両手を上げたりしている写真が、テキストで送られて来ます。
「ウォーカーがさあ、トファーの海パンにクラゲを突っ込んだの。そしたらタマを刺されて大騒ぎになって、その日はずっとベッドで横になってなきゃいけなかったんだよ。そしたらその写真をウォーカーがこっそり撮ってインスタに載せてさあ。もう大ウケ!」
妻と一緒に笑いながら、じわっと感動していた私。
いいなあ若者たち、キラキラ輝いてんな!
キミは若いころにこんな話をして父上を喜ばせてあげたことがあったかい?
返信削除何を言っても喜んでくれない人だったからね。会話にならないんだよ。うちの息子は逆に警戒感がなさすぎるな。
削除考えてみると、30年の時を経たとき
返信削除我々の青春時代と息子君世代の青春時代はそんなに変わっていないかもしれない。。。。
我々の青春時代と親世代の青春時代は大きく違っている、まるで別の国の出来事ではないかと。。。。。
戦争ってのが大きいんだろうね。その時代に生まれていた方が幸せだったんじゃないかって人もたまーにいるケド
戦争体験世代は、緊張感のレベルが我々と比較にならないんだよね。昨日の晩一緒に食事した友達は、冷戦時代の東ドイツ出身。政府が常に人民の監視や盗聴をしていたため、家族間の会話にさえも細心の注意が求められたのだと。たった一回の失言で投獄、という現実と子供の頃から向き合っていた彼。瞬間湯沸かし器のオヤジに怯えていた僕とは簡単に意気投合したんだけど、二人の意見が一致したのは、今の時代の豊かさや自由は、かえって若者の生き方を難しくしている、という点。何でも気軽に発言して良し、マリファナも合法、という環境で若者が生活を律して行くためには、相当強固な自制心が求められる。それって酷だよね、と。
削除なるほど、自由であるがゆえに難しいってことはあるかもね。オイラはどちらかというと規律にしばられていないと、グズグズになってしまう口なので分からなくはないなぁ。。。。
返信削除冷戦下の東ドイツ、まんま「1984年」の世界だったんだねぇ。。。ビッグ・ブラザーは見ている!
ちなみに、ハリウッド製作のお気楽映画「ガッチャ!」の中でも、そこそこリアルには描かれているのだけど、件の彼がみたらどんな感想を持つのかなぁ。。。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AC%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%A3-DVD-%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%89%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%BA/dp/B0007IO1AA
映画自体はそこそこ面白いので、おススメです。
なかなかのB級ぶりだねえ。こんな作品は知らなかったよ。彼の幼少時代のお話はかなりシリアスなので、ハリウッド流のジョークを持ち出すのはさすがに気が引けるんだよね。
削除子育ての件に関して、日経ビジネスに興味深い記事が出てたヨ。
返信削除https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00128/00041/?P=1
金子家の考え方に近い?
そだね。生き抜く力をつけさせることに注力したな。健全な自己肯定感ってのが肝だと思う。媚びない、怯まない、落ち込まない。うちの息子はちょっと度を超してるけど、神経過敏なよりは安心かな。こないだ水泳部の公式戦でうっかり自由形の出番をミスったらしいんだけど、落ち込むどころか直後にドーナツ食ってたとかで、先輩達が仰天してたらしい。
削除息子君なかなか頼もしいね。精神的にタフな人間が最後は勝つような気がするヨ、社会では。
返信削除話は変わり、クイーンfeat A.ランバートが現在来日中。
で、こんな企画があってベストアルバムが出てるのだが。。。
https://www.udiscovermusic.jp/news/queen-greatest-hits-in-japan-album-release
なかなかに選曲がシブかったりする(笑
BSの番組の杏のコメントが影響したりしたのカナ
ふ~んそうなの。でもね、僕の中ではもうとっくの昔にクィーンは終わってるんだよね。出来ればフレディーのためにも、彼の死と同時に活動を完全凍結して欲しかった。あのボーカルを代われるのはジョージ・マイケルくらいだし、その彼も既に鬼籍に入ってしまったし。う~む。
返信削除そういえば、こんな番組あるの知ってた?
返信削除https://www.youtube.com/channel/UC_Xjaqv4EUY26oO1peIHArQ
ほぼ全部観てます
削除キミの好きな芸人2人の番組だからとは思っていたが、さすがだね。
返信削除ちなみに、昨日放送のワイドナショーは久々に大当たりで面白かったヨ。あの番組は呼ばれたゲストでテンションがだいぶ変わるが、武田鉄矢が出てるときは当たりが多いような気がするね。
最近会社のPCのスクリーンセイバーを「わたせせいぞう」のイラストにしているのだが、この絵を見てたらキミの結婚式を思い出したヨ。
返信削除https://www.hieakasaka.net/wataseseizou/
あの頃はラスターがたっぷりとあったのかね。
倦怠期のカップルの話を唄ったルパート・ホルムズの「Escape」は40年前の歌だが、そちらの人たちは良く知っているのカナ?
https://www.youtube.com/watch?v=_WkR2Tv4dq4&feature=emb_logo
英語が不得手なオイラでもなんとなく判るような易しい歌詞だね。英語圏の人が聴くと、さだまさしの「雨宿り」的な感じなのかね。
ラスターたっぷりのイラストだねえ。独特の世界観に拍手。ルパートホルムズとはまた渋いね。カーリーヘアのおじさんだとは知らなかったよ。
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