2019年3月16日土曜日

If the shoe fits, wear it. 思い当たる節があるなら素直に認めよう。


金曜の午後、久しぶりに同僚ジョナサンの席へ行って英語の質問をしてみました。

「あのさ、Muddy the waters(水を濁らせる)って表現あるでしょ。あれ、どういう意味?」

先日のウェブ・トレーニングで安全講習があったのですが、参加者のひとりからテキストで寄せられた質問を読み上げた後、講師のデヴォンが慎重に言葉を選びながら答えを返し、それから

“I guess I’m muddying the waters.”
「水を濁らせちゃってるみたいだね。」

と付け加えたのです。

「それは彼が、長々と丁寧に説明し過ぎたためにかえってこんがらがらせちゃったかも、と言いたかったんじゃないかな。正確を期すため聞かれてない情報まで盛り込んだりしてるうちに、どんどん全体像が拡大しちゃうことってあるだろ。当初の質問が思い出せなくなるほどに。」

Muddyというのは濁らせる、という意味。これは分かります。でも、Watersが複数形なのはどうしてだ?これに引っかかって先に進めなかった私(後で調べたら、「複雑だったり危険だったりする難しい状況」を表現する時、象徴的に使われる単語とのことでした)。つまりデヴォンが言いたかったのは、こういうことですね。

“I guess I’m muddying the waters.”
「余計混乱させちゃったかもね。」

更にジョナサンに質問。

Square peg in a round holeって表現があるでしょ。あれさ、どうもしっくり来ないんだよね。何か用例を教えてくれる?」

これは、四角い杭(Square Peg)を丸い穴(round hole)に入れようとする、つまり無理を通そうとする行為のことですね。

「どこで聞いたの?」

とジョナサン。いや、これはしょっちゅうあちこちで聞くよ、と私。

「会社の立派なPMツールは俺のちっぽけなプロジェクトを管理するには不向きなんだ、あれは建設工事みたいにスケールのでかいプロジェクトに合わせて作られたアプリだからな、って不満を言う人達の口からよく飛び出すね。」

「うん、まさにその通り。そもそも合わせることに無理がある二つの対象を何とか組み合わせようとしてる時に使うんだよ。」

「でもさ、何だかこのイディオム、素直に使えないんだよ。だって納得行かないじゃん。」

穴の口径が杭断面の対角線より長ければ問題無く納まるでしょ。もちろん緩くはなるけどさ、と私。

「分かる。俺もそれ、ずっと思ってた。非常に良い疑問だ。そんなフレーズ憶えなくてもいいよ。大体イディオムなんか、使わないに越したこと無いんだ。」

とジョナサン。

「またまたそんなこと言う。僕はね、イディオムを上手に使って彩り良く会話を組み立てたいんだよ。君だって結構、効果的にイディオム使ってる方じゃない。すごい話上手だし。」

「だけど下手にイディオムを持ち出せば、聞く人が首を傾げるようなことになりかねないだろ、今の例みたいに。俺はとにかくイディオム反対派だね。」

「あ、それで思い出した。」

先週、北米西部のトップ・エグゼクティブP氏がサンディエゴ支社にやって来てPMの心構えについてスピーチした際、こんなことを言ったのです。

“If the shoe fits, wear it.”
「靴がしっくり来るなら履きなさい。」

はあ?何だって?

後で調べたところ、これは「自分に対する指摘や批判に少しでも思い当たるところがあるのなら、素直に受け入れなさい。」という意味であることが分かりました。

「シンデレラのお話あるだろ。お姉さんたちは足がデカすぎて、落とし物の靴を履けないってくだり。サイズが合うってことはあなたの靴なんでしょ、認めなさいよ、ってな感じかな。」

「う~ん、でもさ、優秀なPMとはどういう人物か、みたいな文脈でいきなりあんなイディオム出されたら、面喰うよ。」

「それが狙いなんだよ、きっと。俺、P氏のミーティングには出なかったけど、おおかたカッコいい顔でキメ台詞的にこのフレーズを使ったんだろ。」

「そうそう、よく分かったね。とてもじゃないけど、それどういう意味っすかぁ?なんて質問できる雰囲気じゃなかったよ。」

“That’s his Get Out of Jail Free Card.”
「それが彼の刑務所脱出万能カードなんだよ。」

とジョナサン。え?何それ?と私。

「モノポリーってすごろくゲーム知ってるだろ。何かで捕まって刑務所送りになっても、それさえ出せば免除してもらえるっていう切り札があるんだ。P氏も鋭い質問を浴びて詰まったりしないよう、時々曖昧なイディオムぶち込んで聴衆がポカンとしている間に先へ進む、そういう戦法なんだよ、きっと。」

「え~?そうなのかな。だとしたらそれはそれでスゴイね。」

「ま、何度も言うけど、イディオムの多用は禁物だよ。何かを正確に伝えたかったら、きちんと的確なワードを使って平易に喋るべし。」

「本当にいつもご教授有難う。君と話す度に、たくさん学ばせてもらってるよ。」

そうお礼を言って立ち去ろうとする私に、いやいやとんでもない、と少し照れた顔でジョナサンがこう答えました。

“I may turn the tables next time.”
「次回は逆の立場になるかもしれないし。」

そして慌てて、

「あ、今のは意味分かるよね。テーブルを回転させる(turn the tables)、ということから、今度は俺が教わる立場になるかもしれないって言いたかったんだよ。」

と言い訳しました。それからちょっと顔を赤らめ、

「イディオムで締めくくっちゃってゴメン。」


5 件のコメント:

  1. イディオムには日本のことわざ的な面もあるし、ピタッと決まると楽しいですよね。

    返信削除
    返信
    1. アメリカで生まれ育った人ばかりではない職場環境ではイディオムの多用を控えたいという気持ちも分かるのですが、やはりどんぴしゃの場面で使えたら気分がいいだろうな、と思う私です。

      削除
  2. ブルース・ロックの大御所ポール・ロジャースのアルバムに”Muddy Water's Blues”ってのがあるので、なんかそれを連想してしまった。ポール・ロジャースは、フリー→バッドカンパニーを経てソロになった後、一時クイーンと組んでた人ね。

    返信削除
    返信
    1. 渋いの知ってるんだねえ。歌詞をチェックしてみたけど、イディオムではなくストレートに濁った水っていう意味で歌ってる模様。そんな歌売れる?

      削除
    2. wikiによると、昔~しのブルースギタリストでMuddy Watersというアーティストがいたらしくて、その人をリスペクトしているとか。。。さすがに、そちらの方は聴いたことないなー

      削除