金曜のランチタイム。ちょうど同僚ディックとポーラが両隣で昼食をとっていたので、英語の質問を投げかけてみました。
「あのさ、You drive me
nuts!っていうフレーズあるでしょ。これってどうして複数形なの?」
ここ数週間、オレンジ郡のプロジェクトを巡る社員間のバトルに巻き込まれています。ベテラン・エンジニアのカールは、長年技術屋一本でやって来た初老の偏屈オヤジ。去年の春に晴れてPM職についたものの、社内ルールがややこし過ぎて仕事にならん、と悪態をつき続けています。我が社でPMとして認定されるには、特定技術分野の実績だけでは不十分で、財務分野の基礎知識と高い事務能力が要求されます。そんな中カールは、
「PMはクライアントを満足させることに集中すべきであり、社内の事務は他の人がやるべきだ。」
という独自の仕事論を貫き通そうとしています。特に請求書の作成プロセスには不満たらたらで、
「メールで指示するのではなく、オンラインのシステムを使って下さい。」
と再三言われているのに、構わずこまごました変更要請をメールで送りつけるのです。しかも一旦「最終稿」となった後でも、やっぱりここを修正してくれ、と言ってくる。あからさまなルール違反を何十回も食らわされているシカゴのジャッキーは、私が最も信頼しているビラー(請求書作成のプロ)。一度も会ったことは無いのですが、特別目をかけていることは彼女も分かっていて、他の人に言えない不平不満があると私にすかさずテキストメッセージを送って来るのです。金曜日の午前中も、彼女を侮辱するような一斉メールをお偉方を含めた複数の社員に送信したカールに、ジャッキーがブチ切れたのですね。
「請求書の下書きに対するコメントを何度催促しても返事せず、締め切りギリギリになって大幅な変更をメールで要求して来る彼を、その度に許して融通を利かせて来た。なのに己の非をちらりとも顧みず、名指しで私を批難するなんてどういうつもりよ!」
そういう流れの中で飛び出した一言が、
“He drives me nuts!”
「彼は私をナッツにするわ!」
なのです。さすがにアメリカ暮らしも長いので、nuts(ナッツ)が「クレイジー」という意味であることは知っていました。「相手をクレイジーにドライブする」、つまり怒らせる、ということなので、私の訳はこれ。
“He drives me nuts!”
「あいつホントあったま来る!」
でもあらためて考えてみると、何故これが単数形のnutではなく複数形のnutsになるのかが、どうしても理解出来ないのです。
「言われてみれば、そもそもnutがどうしてクレイジーという意味なのかも知らないわ、私。」
と右側からポーラ。ジャッキーのテキストに返信した後ネットでひとしきり調査したものの、確たる語源が見つけられなかった私は、勝手な自説を披露します。
「僕の解釈ではさ、頭蓋骨の内側に脳みそじゃなくてナッツが詰まっている人をイメージして、クレイジーな状態を表現してるんじゃないかって思うんだよね。」
「あら、それはかなり納得の行く説明ね。」
「まあそれは置いといて、Drive someone
nuts(相手をイラつかせる)というフレーズでは複数形が使われてるわけでしょ。ここは単数形であるべきなんじゃないの?なんで複数にする必要があるの?」
ディックの方へ向き直ると、はっとするほど決まり悪そうな笑顔で黙り込んでいます。そしてようやく口を開くと、
「初めてだと思うけど、完全に降参だよ。」
と顔を赤らめました。彼はこれまで、私のどんな質問にでも必ず納得の行く回答を提供し続けて来たのです。
「もっともらしい説明が何ひとつ浮かんで来ないな。まるで幾何学のテストで、直角三角形の一角が90度であることを証明せよって言われているような気分だよ。そうだからそうなんだとしか言いようが無い。」
ふ~ん、これってそれほどの難問だったのか。恐るべし、ナッツ…。
「しょっちゅう耳にするフレーズだけに、気になるんだよね。複数形の名詞を単数であるべき文脈で使うなんて、僕のような英語学習者にとってチャレンジング過ぎるでしょ。」
右側を見ると、ポーラが宙を見上げたまま考え込んでいます。左のディックも、微かな笑みを浮かべて押し黙ったまま。折角ランチタイムを楽しんでいた二人の同僚たちを黙らせてしまったことを後悔し始めた私は、やや慌ててふざけ気味にこう言いました。
“That drives me nuts!”
「ほんと、あったま来るよネ!」
この中途半端なボケは当然ながらスルーされ、気まずい沈黙だけが残りました。
もしかして、異常に細かい英語の質問を同僚達に浴びせ続けている私は、知らぬ間に彼等をDriving them nutsしているのかもしれない、とちょっぴり不安になったのでした。
仕事中に法令とかを読む作業が続くと、だんだんイライラしてきてついつい柿の種とかを頬張ってしまうときがあるのだが、その時のピーナッツが大変心地よかったりするんだよね。だから、ついついナッツ類に手が伸びてしまうような状況を指しているのかなぁ・・・なんて思いました。
返信削除それはそうと、この画像はちょっとマシぃんじゃあないの・・・・(*^^*)ポッ
この画像に何か?ナッツの食べ過ぎで頭に血が行き過ぎたのかもよ。
削除いやぁ、学生時代に見た「ヘリウッド」という超C級映画に出てくる縦割れの唇を主追い出してしまってねぇ。。。
削除https://www.youtube.com/watch?v=dI4htVRHKOw
http://hangyaku.fuma-kotaro.com/hellywood.html
う~ん、薄っすらと記憶してるけど…。渋谷の交差点を大勢の女子高生がほふく前進していく様子はシュールだねえ。
削除語源を調べてみたら、こんなサイトがありました。1612年英国ランカシャーであった魔女裁判からか?なんておもしろい:https://english.stackexchange.com/questions/23963/how-did-the-phrase-are-you-nuts-come-about
返信削除なんと魔女裁判まで登場ですか!もしもこれが本当の語源だとしても、なんだかスッキリしませんね。これ!という回答に出会うまで、私は自説を押して行く所存です。
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