2019年5月12日日曜日

Boomer ブーマー


今週から、七人目の部下ブリトニーがチームに加わりました。去年大学を卒業したばかりなので最年少ですが、ちょうど空席だった私の左隣で働くことになりました。キャンディーのように光沢のある金髪、うっすらとそばかすの残るベビーフェイス。採用面接で真剣にこちらの話を聞くその瞳には、高い知性がうかがえました。初日は緊張でガチガチになっているかもしれないので、まずはなるべく柔らかい物腰で接してみようと週末から考えていました。

そして月曜の朝。総務のデビーによる社員心得セッションを終え、廊下を案内されて来た彼女。立ち上がって「おはよう。ようこそ!」と笑顔で遠くから呼びかける私。するとブリトニー、声の出所を探り当てようとさまよった視線が私の目にロックオンした瞬間、さっと頬を染めて懐かしそうな笑みを浮かべ、右のてのひらを顔の横で小さくひらひら振りながら近づいて来たのです。まるで待ち合わせにちょっぴり遅れて現れた、付き合い始めのガールフレンド。日本の職場ではまずあり得ない新入社員の天真爛漫な登場スタイルに、思い切り意表を突かれた私でした。

このブリトニーもその一週間先にスタートとしたジゼルも、自分の娘と言って良い年齢。男所帯で育ち、おまけに子供は男子一人という私には正直、彼女達をどう扱って良いのかよく分かりません。とりあえずちょくちょく声をかけてみて、その反応を見ながら接し方を調整して行くしかないだろうという結論に達しました。

それにしても、このうっすらとした苦手意識はどこから来てるのか。異性だからということであれば、うちの職場には女性が大勢います。なのに全然抵抗なく接している。じゃあ何なのか。よくよく考えると、これは世代のギャップが大きく影響しているような気がして来たのです。17歳の息子は最近とみに、冗談交じりにではありますが、

「もうBoomer (ブーマー)はこれだから…。」

と親をからかうようになりました。

彼によれば、ブーマーというのは「ベビーブーマー」の略で、昔ながらのやり方に固執し若者の言動の良し悪しを決めつけて説教を垂れるタイプの世代を総称する、からかい表現だとのこと(ピッタリした日本語が見つからないけど、「オヤジくさい」くらいのニュアンスでしょう)。

「え?本当にそんな風に映ってんの?」

人間は個人レベルで見ればそれぞれ極めてユニークな存在であり、世代で一括りにするなんて馬鹿げているし有害ですらある、というのが古くからの私の持論。実の息子にブーマー呼ばわりされる覚えはないぞ、と若干憤慨する私に、

「ジョークだよ。パパがそういう人じゃないのは知ってるよ。ムキにならないでよ。」

と笑う息子でしたが、全く身に覚えが無いわけでもないのは確か。

「これ、インスタで流行ってるミーム。」

などと見せられるネットの差別的ジョークを笑える確率がじわじわと減って来ていて、

「それ面白いか?どっちかっていうと不快なんだけど。」

と眉をひそめると、

「ほら、やっぱブーマーじゃん。」

とあざけるように笑う息子。う~ん、やっぱりこれってオヤジ的感性なのかなあ…。

さて、その息子。金曜の晩はGrad Nite(グラッドナイト)に出かけて来ました。高校最終学年が大型バスをチャーターしてディズニーランドへ行く、という学校行事。よくよく聞いてみたら、南カリフォルニアの高校はほとんどこれに参加していて、ディズニーランドは五月と六月の週末を全てこの行事のため、夕方から午前三時ごろまで貸し切りにしているとのこと。

そんな企画やって大丈夫なのか?と私。「深夜に各地の高校からやって来た大勢の若者たちが同じ場所で集まって騒ぐ」なんて、もうトラブルのイメージしかありません。私が高校生の頃は、京都に全国からやって来た修学旅行生たちが「目が合った」だけで集団乱闘、なんて頻繁に聞く話でしたから。

「問題は、バスの中なのよ!」

この話を職場で持ち出した時、筆頭部下のシャノンが声をひそめました。彼女の娘さんの学年で、マリファナを持ち込んでつかまった生徒がいたとのこと。

「それは完全にアウトでしょ。」

法に触れるような行為はおふざけの範囲を完全に超えている。その境目も分からないほどの愚か者は厳しく罰せられて然るべきだ、と私。シャノンがその時の状況を詳しく解説します。

「ディズニーランドの駐車場に麻薬犬を連れた警察官たちが待ち構えてて、生徒たちが降りる前に一斉検問よ。それでその子、卒業目前で退学処分。もちろん、入学予定だった大学にも行けなくなっちゃったんだって。」

う~ん、それってどうなのかな?もちろん薬物持ちこんだ奴に罪があるんだけど、わざわざおとぎの国を餌に生徒の気の緩みを誘っておいて入園寸前で御用、という学校側のやり口も性格悪過ぎる気がするぞ。だったら学校出発前に荷物検査しときゃいいじゃないか、と批判する私でした。

「俺はグラッドナイト、参加しなかったな。」

と、六十歳越えのベテラン社員、ビル。

「でも卒業間近の悪ふざけ、というのはあったよ。大勢で食料品店の裏から売れなくなった古い果物を大量に引き取って来て、いきなり教室で投げ合う、Fruit Fight(フルーツ・ファイト)という伝統のおふざけ行事。授業中、誰かの合図でいきなり全面戦争が始まるんだ。俺はリスクを取らないタイプで、それまでトラブルには一切近づかない模範生だったんだけど、熟しきったオレンジがコロコロ転がって来て俺の足元で止まった時、反射的に拾い上げてたんだな。身体が自然に動いて、今まさにそのオレンジを投げようと振りかぶった瞬間、誰かに右腕をがしっと掴まれた。振り向くと、そこにはスクール・ポリス。そのまま腕を引っ張られて校長室送りさ。厳しい顔でポリスが母親に電話するんだ。うちの子何をしでかしたんですか?とうろたえるおふくろに、その男が表情も変えずにこう言った。 “He was throwing fruit, ma’am!”(彼は果物を投げてたんですよ、奥さん!)おふくろはもちろん何のことだか全く理解出来ず、ポカ~ンだよ。その後自宅謹慎を命じられたんだけど、一週間後の卒業式前日に釈放されたから、結果オーライだったけどな。」

夕食の席でこのエピソードを紹介したところ、妻も息子も大爆笑。そんな悪ふざけならぎりぎりセーフだよね、と私。学校側の過剰反応だろ。教室掃除すりゃ済む話だもん…。

金曜の朝、隣のブリトニーにグラッドナイトの話をしたところ、

「私の学年、もう少しで企画中止になるところだったんですよ。」

前年の卒業生がやらかしたおふざけがいささか度を超していたため、わが校でグラッドナイトは金輪際実施すべきではない、いやそれは過剰反応だ、という議論がギリギリまで続いたとのこと。

「一体どんなおふざけだったの?」

と尋ねる私。するとブリトニー、クスクス笑ってこう答えたのでした。

「ディズニーランドへ向かってフリーウェイ走行中の団体バスの窓から、ひとりの生徒が並走してる車に向かって大きな紙を広げて見せたの。そこには、我々は誘拐されている、助けてくれって書いてあったのね。それでパトカーが何台もやって来てバスを止めて、高速道路は大渋滞。もう大騒ぎよ。」

う~ん。アウトかセーフかと問われれば、これはやっぱりアウトかな…。面白いけど。やっぱ警察沙汰は駄目だよね、と判定を下す私。

ちなみにブリトニーの初日の挨拶は、余裕でセーフですね。めちゃくちゃ可愛いかったので。

…これってやっぱり、オヤジ的発言でしょうか。


19 件のコメント:

  1. 若かりし日のキミを見ている限りでは、少なくとも「女性が苦手」って事はありえないよね(笑

    世代間ギャップというのはいつの時代にでもありそうだよね。上の世代から下の世代には、ウチらの頃は「新人類」って言われてたし、下の世代はウチらから「ゆとり」とか言われてて、今の若い子らはゆとり世代から「スマホ世代」と言われているのではないかな。ただ、下の世代から見ると上の世代はごっちゃに見えているのかもね、伊集院光がラジオで言ってたケド、今の20前後の子たちからしたら40代の中年も戦争経験者の爺さんもあまり区別がないんじゃないかと。。。。

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    1. 「スマホ世代」は初耳でした。うちの息子は常にスマホと一緒に行動してるので、どんぴしゃの世代だね。それにしても、伊集院氏の観察には共感出来るな。「ブーマー」も、三十代以降全員に当てはまるとか息子は言ってるし。…括りが大き過ぎるだろ!

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  2. またまた話は変わるが、NHKの日曜の深夜にやっている「夜ドラ」という枠があるのだが、先日から始まった「腐女子、うっかりゲイに告る」ってドラマがなかなか斬新で面白い。予告編映像が上がっているので見てみてチョ、挿入歌の使い方がちょっとワクワクするゾ
    https://www.youtube.com/watch?v=0gz6QEHRcqA

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    1. リンクを間違えていた。こちらを見てみて
      https://www.youtube.com/watch?time_continue=41&v=kdXZiqKp9h0

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    2. なるほど。懐かしのラバーボーイをここで使うとは心憎いね。

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  3. このドラマ相当各所で話題(問題)となっているようで、ネット上のあちこちでコメントを見るね。NHKは著作権にうるさそうだから、youtube等で観るのはなかなか大変かも。
    ちなみに現在4話まで放送されてて、毎回テーマ曲が違う
     第1話 懐かしのラバーボーイ
     第2話 I Want it ALL
     第3話 Show Must Go ON
     第4話 March of the Black Qeen
    ちょっと見てみたくなった?

    https://mogsroom.xyz/%E8%85%90%E5%A5%B3%E5%AD%90%E3%80%81%E3%81%86%E3%81%A3%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%81%AB%E5%91%8A%E3%82%8B%E7%AC%AC%EF%BC%91%E8%A9%B1%E3%81%AE%E3%81%82%E3%82%89%E3%81%99%E3%81%98%E3%81%A8qu/

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    1. こんなにがっつり重ねて来るとは。なかなか斬新。最終話にボヘミアンをぶつけてくるのだけは避けて欲しいね。

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  4. じゃあ、何がイイと思う? オイラは「39」かなぁ・・・歌詞の内容知らんケド(笑 結構とんがったドラマなので、さすがにベタなボヘミアンラプソティは使わないと思うケド、紆余曲折あった後に、これからも頑張って生きてくぞ~って展開で
    「ドント・ストップ・ミー・ナウ」あたりで収まるかと・・・

    話は変わって、今朝「めざましテレビ」を見てたら衝撃的なニュースが!
    http://blog.livedoor.jp/ninji/archives/53363383.html
    信者としてはどう思うかね。

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    1. 後半はこんな感じを勝手に予想してるんだが。
      Liar
      Save Me
      It's Late
      My Melancholy Blues
      Spread Your Wings
      最後はてもやもやを吹っ切る感じでどうでしょう?

      それにしても、僕の目標としてる人がそんなことを…。さすがに示談交渉でふざけちゃ駄目でしょ。

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  5. さすが、マニアックにクイーンを聴いてきた人の選曲はシブいねぇ!

    高田純二の件、オイラ的には事故を起こしておいてあんなに冷静なのはさすが!と感心したヨ。しかもTV画面で視聴者が見ている高田純二と全くブレていない所もすごいね~って感じ(笑 文春砲を喰らって芸能生命を危うくする人が多い中で、今回の件はあんまりダメージないんじゃないかと感じてしまうのだがね。

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    1. 流行語大賞を狙えるかもね。「二十万でナッシング。」

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  6. 結局、この前の日曜日に放映された第五回はボヘミアンラプソティだった。。。なんかちょっと残念だね。

    話は変わって、フリートウッドマックが最近また活動しているみたいだね。スティーヴィー・ニックス、あの声質なのにいまだに現役ってのはスゴいねぇ。。。
     https://www.barks.jp/news/?id=100
     https://www.youtube.com/watch?v=amkbhqRo3d0&feature=youtu.be0160455
     https://www.youtube.com/watch?v=WG5y9KslhPw

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    1. リンジー・バッキンガムは心臓の手術をしたそうだね。頑張ってるなあ。我々も負けてられんな!

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  7. 平成の終わりとともにスマホデビューしたオイラはAppleMusicn3か月無料期間をちょくちょく聞いているのだが、「噂」のボーナストラックにはスタジオ版の別テイクとかLIveバージョンとか入っていてなかなか面白いゾ

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  8. 何年経っても色褪せないサウンド。まさに名盤だよね。そうか、そんなボーナストラックが…。聴いてみたい。

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  9. 自分にとってのマスター・ピースって人それぞれだね。ちなみにオイラが10枚アルバム選べと言われたら・・・
     噂       <フリートウッドマック>
     アウト・オブ・ザ・ブルー   <ELO>
     幻想飛行          <ボストン>
     クイーンⅡ         <クイーン>
     危機             <イエス>
     レッド      <キング・クリムゾン>
     聖なる館    <レッド・ツェッペリン>
     グランブルー・サウンドトラック <エリック・セラ>
     フランプトン・カムズ・アライブ <ピーター・フランプトン>
     炎 ~あなたがここにいてほしい~ <ピンク・フロイド>

    あたりカナ~

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    1. 最初の五つは賛成。あとの五つはちゃんと聴いたことないなあ。チャンスを見つけて聴いてみます。

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  10. う~~、コイツを忘れてた

     the 9th WAVE   <松田聖子>

    いや、ホントに良くできたコンセプト・アルバムなんだわ(笑

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    1. う~む。マニアだねえ。ブーマーど真ん中、という気もするが…。

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