2013年4月3日水曜日

Big shot お偉方の条件

今日の正午、ダウンタウン・サンディエゴ支社で、全社員対象のランチつきミーティングがありました。南カリフォルニア地区のトップであるジムが、各部門のトップマネジメント4名も引き連れて支社を訪問したのです。 
 
昨年秋に行われた社員意識調査の結果を発表しがてら、新リーダーとして今後の方針を伝え、職場環境の改善策について意見交換をする、というのが目的。彼がトップに就任してから半年が経過しているので、ちょうど良い頃合かもしれません。

会議終了後しばらくして、同僚ステヴと話す機会がありました。
“A lot of big shots have been visiting our office these days.”
「最近、ビッグショット(お偉方)が大勢このオフィスに来てるねえ。」

と私。つい先週も北米西部のトップが来たので、これで二週間、大物訪問が続いたわけです。ここで私はふと気になり、ステヴに尋ねました。
「そうだ、ビッグショットって言葉、よく使うけど、どういう人を指すわけ?」

不意打ちの質問に、ぐっと詰まるステヴ。
「たとえばレイなんかはどう?彼はビッグショット?」

レイは、この支社で決裁権を持つ二人の社員のうちの一人。充分大物です。
「いや、レイは違うね。」

と首を振るステヴ。
“Then, how would you define big shots?”
「じゃ、ビッグショットの定義を教えてくれる?」
と詰め寄る私。二秒ほど考えた後、ステヴがこう答えました。

“If they know who I am, they are not big shots.”
「俺が誰だか知ってるような人間は、ビッグショットじゃないね。」
な~るほど。本社ビルの上層階にオフィスを構え、我々現場の人間のことなど知らないようなレベルの人ね。

毎度の事ながら、ステヴのこうした「気の利いた切り返し」には唸らされます。こんな風に、冗談めかして英語のセリフを吐けたらいいなあ。

我田引水?

数週間前のこと、南カリフォルニア地区のトップからこんなメールが届きました。
“Congratulations! You have been selected as a member of the Simplify Committee.”
「おめでとう!あなたは簡素化委員会の一員として選ばれました。」
なんなんだこの詐欺師まがいの売り口上は?

中身を良く読んでみると、どうやらこの委員会、北米西部担当副社長の掛け声で設置されたものらしい。PM達が効率的に仕事が出来るよう、煩雑で冗長な書類手続きなどを大幅にカットしようじゃないか、というのが趣旨。カリフォルニアだけでなく、コロラド、アリゾナ、ハワイなどの支社に在籍する支社長からPMレベルまで20ほどが選出されました。

しかし一体全体、どうして私が委員に選ばれたのでしょうか。ま、理由はどうあれ、頼まれたからには張り切って行きますよ~!と鼻息を荒くする私。委員のほとんどは面識の無い人たちですが、オレンジ支社の熟練PM、スティーブも選ばれていました。彼はさっそく、支社内の中堅以上のPM達にメールを送りつけます。

「こういう委員会がスタートするんだ。もしも改善案があったらどんどん言って欲しい。委員会に上げるから。」
暫くして、ボスのリックからメールが届きます。

「シンスケ、スティーブの要請に応えてひとつ提案を書いたんだが、彼に送る前にちょっと読んでみてくれないか?」
スクロールしてみると、こんなことが書かれていました。

「業務のシステム化が進んだ結果、サポート人員が大幅に削減され、今やPMが何もかも自分でやらなければならない状況にある。これでは本来業務に集中出来ない。特に財務分析は難解な上に時間を取られる。ここはシンスケのプロジェクト・コントロール・グループを拡大し、広くPM達のサポートをすることが得策である。」
おお、これは有り難い!部下を少しずつ増やしてチームを広げ、ゆくゆくはカリフォルニアのみならず北米西部も傘下におさめようという私の「壮大な企み」を(半ば冗談ですが)、我が愛する上司はこの機会に後押ししてくれようというのです。

「有難うございます。いや、これは願っても無いことです。」
そう私が恐縮すると、彼がふと思いついたように尋ねます。

「そうだ、この提案、スティーブじゃなくてシンスケから委員会に上げてもらおうか?」
この時反射的に浮かんだセリフが、これ。

「それはいくらなんでも我田引水ですよ。」
ただ単に自分のチームを拡大したいからそんな提案してるんでしょ、と突っ込まれてもおかしくない内容です。そう答えたかったのですが、この「我田引水」というコンセプトを英語でどう表現したらいいのか分かりません。暫く口ごもっていたら、リックがやっと察してくれました。

“Oh, do you think it’s too self-serving?”
あ、それじゃセルフ・サービング過ぎると思う?」
なるほど、self-serving自分で自分に給仕する。固い言葉で言えば、「自己利益的」。そうそう、それが言いたかったんだよ

 帰宅してから妻にこのエピソードを伝えたところ、
「そういうシンプルな英語表現を知っていると便利ね。」

と感心します。
「いや、反対に、そういうのを知らないだけで、会話が全てストップしちゃうから怖いんだよね。まだまだ勉強が必要だなあって思ったよ。」

と私。
「ところでよく考えたら、我田引水ってフレーズ、今回の状況に百パーセントフィットしてないかもしれないって気がしてきたんだ。」

「そうかな?」
「そもそも、そんなたいそうな四字熟語なんか使わなくても、もっとカジュアルな言い方があるんじゃないかなあ。でもちっとも思い浮かばないんだよ。」

実際、ここ数年の私の日本語能力の減退は、悲しくなるほどの勢いです。使ってないもんなあ。英語学習に注力しすぎなのかもしれない…。
「ね、なんか他に言い方知らない?」

そう助けを求める私に対し、
「ソレヲワタシニキクカ?」

と、外国人みたいな口調で逃げる妻でした

2013年3月31日日曜日

あー夏休み

金曜の昼、妻と旅行代理店へ行ってきました。一時帰国のための航空券手配が目的です。約4年ぶりの帰国ですが、7月中下旬という、よりによって一番暑い時期に帰ることを決めました。蒸し暑いのが大嫌いな妻はこの計画に難色を示し続けていたのですが、息子に学校を休ませないですむため、夏休みの帰国は理に適っているということで合意に至ったのです。

「きっと楽しいよ~。」
とはしゃぐ私に対し

「だってどこに行っても死ぬほど暑いのよ。楽しみになんて出来ないわ。」
と憂鬱そうな妻

サンディエゴは一年中からっとして常に温暖。こんな土地に長く住むと、湿気が多く暑いところへ行くのがしんどくなるのですね。しかし私は、蒸し暑いのが平気な男。35度くらいまでは大丈夫です。だから妻の心配が、イマイチ理解出来ません。とにかく暑さから一旦視点を外して、美味しい日本食とか懐かしい友人との再会とか、楽しみなことだけ考えるようにしてみてよ、と励ましています。妻と一時帰国の話をする際は、暑さのことは一切口にしないよう、細心の注意を払っている私。
旅行会社のダグラスさんは、日系アメリカ人カタコトというよりはやや流暢な日本語で、明るく対応してくれました。しかし帰国日程を告げたところ、間髪を入れずこう反応します

「なんでそんなアツいトキにカエルの?」
もー、旅行会社の人がそんなこと言っちゃダメでしょ

2013年3月23日土曜日

Bring the mountain 山を動かす?

サンノゼ支社のトムは、北カリフォルニア地域の財務部門長。そんな彼から、今月の初めにメールが届きました。

「サンフランシスコ支社まで来て、うちの連中にプロジェクトマネジメント・システムのトレーニングをしてくれないか?旅費も含めて費用はこっちで持つから。」
これには興奮でちょっと身体が震えました。一年前に講師として南カリフォルニアの支社巡りをしたことがあり、皆に「お願いされればどこへでも行くよ!」と公約していた私ですが、今回はなんとサンフランシスコ。はるばるそんな遠くからお呼びがかかるなんて!

「喜んで!今月中でも対応するよ。18日の週はどうかな。」
と返信。すると、彼の部下であるオンタリオ支社のモーガンが、サンフランシスコ支社の部長たち(会ったことはありません)に宛ててメールを送りました。

「18日と19日の二日間、シンスケがトレーニングのために来てくれることになりました。PM達に召集をかけて下さい。彼はアメイジング・ティーチャーよ。」
これに対し、建築設計部長のアリスから待ったがかかります。

「いい考えだとは思うけど、タイミングが悪いわ。ここのところ色んなトレーニングが立て続けにあって、うちのPM達はアップアップなのよ。」
部下達がトレーニングにばかり時間を割いて、本業に打ち込めない現状を看過するわけにもいかないのでしょう。そりゃそうだよな…。残念だけど、この話はここで立ち消えかな、とがっかりしていた私ですが、数分後にトムがこんなメールを一斉送信しました。

「本来ならおたくのPM達は、既にシステムに精通していなければならないところだ。問題なく使えている連中も何人かはいるけど、学ぼうともしない人間がいるのも事実。」
ここで、トムの次の文章に目が釘付けになります。

“This is why we are bringing the mountain to them.”
「だから我々が山を運んで来ようとしてるんじゃないか。」
え?山を運ぶ?何が山なの?この場合…。

彼の文章は、さらに辛らつさを増します。
「そもそもトレーニングなんかしなくてもいいんだよ。しかし毎期末に損失計上する状況が続いてる以上、至急対策を講じざるを得ないだろう。」

ひえ~っ。なんか険悪なムード…。この後、いくつかメールのやり取りがあり、結局サンフランシスコ出張は5月まで延期となりました。
それからずっと、私の頭にはBring the mountain というフレーズが引っかかっていました最初の解釈は、私という人間を山と見立て、「シンスケ(イコール山)をここまで引っ張って来る」と言おうとしている、というもの。でも、私が「動かざること山の如し」ってタイプじゃないことは誰の目にも明らかだし(むしろ腰が軽すぎるかも)、たとえそうだとしても、若干失礼な物言いのような気もします。この件についてはあまりの多忙続きで暫く調査が出来なかったのですが、遂に昨日解明しました。

諸説あるようですが、総合するとこれは、フランシス・ベーコンの著書からの引用が元みたいです。
If the mountain will not come to Mohammed, Mohammed will go to the mountain.
山がマホメットの元へ来ないのなら、マホメットの方から山へ行くだろう。

イスラム教創始者のマホメット(ムハンマドとかモハメッドなどという表記もある)は「私は山も動かせるのだ」と人々に信じ込ませていた。皆の前で「山よ、こちらへ来なさい」と何度も唱えたのが、何も起こらない。ここで彼はすっくと立ち上がり、恥じる素振りも見せずに、「山の方から来ないのなら、こちらから行くまでだ。」と言ったそうです。
なんじゃそりゃ?という話ですが、なんとなく言わんとしていることは分かりました。トムは、このフレーズをちょいとひねって使ったのでしょう。私の解釈は、こうです。

“This is why we are bringing the mountain to them.”
「(PM達が積極的に学ぼうとしないから)我々が山(トレーニング)を運んで来ようとしてるんじゃないか。」

そんなわけで五月初旬、サンフランシスコまで山を運んできます。

{追記です}
同僚のリチャードとエリックに聞いてみました。どうやらこのフレーズは元の意味からかなりズレていて、「不可能に近いことを成し遂げようとする」とか「難事に挑む」ことを指すそうです。

2013年3月14日木曜日

ダウ上昇のナゾ

ここのところ、ダウ平均株価 (Dow Jones industrial Average) 昇のニュースが連日メディアを賑わせています。なんだかフワフワと景気の良い雰囲気が漂う中、NPRという公共ラジオ局が、この熱狂に水を指す番組を放送しました。

「ダウなんか無意味だ。そんな数字をニュースで追いかける価値など無いし、むしろ害悪である。」
そう主張する人たちの言い分が紹介されていたのですが、これが本当に目からウロコだったので、簡単に紹介しておきます彼らの論点は以下の通り

わずか30社の株価を追いかけて何が分かる?
アメリカ全体の景気を、大企業30社の株価だけで判断出来るのか?しかもこの30社には、アップルもグーグルも、アマゾンも入ってないぞ。

インフレはどうした?
過去最高値を連日更新とか言っているが、インフレ率を考慮すれば現在の指数はまだまだ低い最高値と呼ぶには15000 以上必要

単純な足し算で良いわけが無いだろう!
株価というのは企業の価値を株数で割ったもの。同じ価値を持つ二つの会社が全く違う株数を発行した場合、株価には当然差が出る。一株100ドルと一株1ドルの会社が全く同じ価値を持つことだってあるわけだ。双方の企業価値が10%上昇したとして、一方は10ドル上がるのに対し、もう一方は10セントしか上がらない。ダウの指数は30社の株価を横並びで足し合わせて係数で割るため、上がり下がりの「効き方」が発行株数に左右される。実際、IBMとAT&Tの企業価値はほぼ同じだが、IBMの方が圧倒的に発行株数が少ないため、AT&Tと較べてダウ平均への効き方がはるかに大きくなる。
 
こうした理由から、ダウ平均に基づいて経済動向を語るのは「アマチュアのすること」だそうです。IBMがコスト削減のために大量解雇した結果、株価が上がったとする。するとダウも上昇する。失業者が増えたっていうのに景気は堅調だと喜ぶ人が増える。これが愚かと言わずして何としよう…。

な~るほどねえ。勉強になりました!

2013年3月9日土曜日

Come-to-Jesus meeting キリストとミーティング?

今週は、プロジェクト・デリバリー部門の北米西部を統括する副社長のチャーリーが、サンディエゴに出張していました。主だったプロジェクトをレビューするのが目的で、水曜は私がPMを務めるプロジェクトをチェックしてもらいました。

このプロジェクトは工期11年、契約額35ミリオンと巨大で、一人のPMが全てを管理するのはとても無理。そこで私が財務面を担当し、ジムが渉外担当、セシリアがチームのまとめ役、パティが文書管理担当、と手分けをしています。今日のレビューでも、この4人がチャーリーの質問にそれぞれ答えました。
チームのメンバーに対するアクションについてセシリアが説明したのに応え、チャーリーが冗談めかして “Jesus meeting” とか何とか口走りました。え?「ジーザスミーティング」?

これ、前にも何度か聞いているフレーズ。意味が分からないままずっと流してたんですが、今回は会議終了後に同僚ステヴを訪ねて解説をお願いしました。
「それは、カム・トゥ・ジーザス・ミーティングのことだね。」

「あ、そうそう。確かそんな言い方してた。」
「キリストのもとに集まって罪深い行いを改めよ、という話から来ているんだ。」

「ふ~ん。じゃ、ビジネス絡みだとどういう意味になる?」
「たとえばさ、プロジェクト・チームのメンバー達がきちんとやるべき仕事をしていないような状況が続いている場合、PMが皆を招集して仕切り直す必要があるでしょ。そういう場合に使うんだ。」

Please come to Jesus meeting. (ジーザスミーティングに来て下さい)みたいに?」
「いやいや、come-to-Jesus でひと塊。ハイフンで繋いで形容詞的に使うんだよ。」

「ええっ?」
これにはちょっと驚きました。「ジーザスミーティング」ではなく、「カム・トゥ・ジーザス」が「ミーティング」を修飾しているのだと言うのです。確かに、そうでなければジーザスの前に冠詞がつくはずだよな…。そこでちょっと考えて、例文を作ってみました。

“Jackie came down from San Francisco and we had a come-to-Jesus meeting."
「ジャッキーがサンフランシスコから飛んできて、カム・トゥ・ジーザス・ミーティングが開かれた。」
「うん、そういう使い方が正しいね。」

とステヴ。
そんなわけで、私の和訳はこれ。

“We had a come-to-Jesus meeting.”
「会議で喝を入れられたよ。」


あとで別の同僚リチャードに話したところ、彼はこのフレーズを使わないことにしてると言います。
「キリストの名を口にすると腹を立てる人がいるからね。面倒くさいんだよ。」

以前、仕事でトラブルがあった際、思わず「ジーザス・クライスト!」と叫んだのだそうです。この時そばにいた敬虔なクリスチャンの同僚に、
「彼の名をみだりに使って欲しくないな。」

とたしなめられたのだとか。ここでリチャードは間髪いれず、
「彼に救いを求めたんだよ。」

と答えたそうです。私はちょっと感心し、それは見事な返しじゃないか、とコメントしたのですが、
「とにかく、宗教色のあるフレーズは使わない方が安全だよ。」

と忠告顔。

日本で「仏の顔も三度まで」と発言したとしても、気を悪くするお坊さんはいないと思うんだけど…。

2013年3月2日土曜日

I’m gonna nail her! 彼女をネイルしてやる!

今週はオレンジ支社の品質管理 (Quality Management) 監査週間だったので、月曜から木曜までずっと詰めていました。去年から品質管理部門の長を兼務している私にとっては、業績評価のかかった最初の大きな関門です。Auditors(監査員たち)は全米のあちこちからやって来てオレンジに滞在し、何十人ものPM達を尋問します。たとえ一人でも品質管理の手続きをサボっていて吊るし上げられたら、支社全体に落第点がついてしまいます。それは何としても防ぎたい。

そこで、ここ数週間は監査のリハーサルを実施して来ました。私は三人の女性社員で構成する品質管理チームを率いているのですが、彼女達に数名ずつPMを担当してもらい、それぞれ30分くらいかけてリハをする、というローラー作戦。これが功を奏し、今回監査を終えたPM達から、
「ほぼ全部の質問に答えられた。リハーサルしておいて良かったよ。」

という声が聞こえて来ました。
中堅PMのレベッカは、ホリーという若手Deputy PM (副PM)に監査対応を任せていました。担当プロジェクトの監査終了後、そのレベッカが皆にこんなメールを送りました。

“Holly nailed it!”
直訳すると、「ホリーがそれ(監査)をネイルしたわよ!」となります。爪(ネイル)を綺麗にする話ではなさそうですが、どうも意味がすっきり入って来ません。さっそくまわりにいた連中に、解説を求めました。

「完璧にやっつけた、とか楽々成し遂げた、とかいう意味だよ。釘を打ち込むアクションをイメージすると分かるでしょ。」
とフィル。やっぱり釘なのね。でも日本語だと「釘を刺す」で、全く違う意味になっちゃうんだけど…。

「じゃあさ、監査を終えたホリーが、She nailed me! (彼女が私をネイルした)と言ったとしたらどう?」
「監査員にとっちめられたってことになるね。」

「なるほど。」
「英語って不思議な言語だよねえ。」

と、向かいで仕事してるクリスがコメント。そこへ、ちょうど監査を終えたばかりの熟練PMエリックが現れたので、
“Did you nail it?”

と聞いてみました。
「いや、ネイルしたとは言えないな。すっきり答えられない質問がいくつかあったよ。」

さて、昨日は金曜日。ダウンタウン・サンディエゴ支社のディックと、街で一番歴史のあるバー、「Waterfront」でランチを楽しみました。今回の監査の話をした後、彼にもネイルという言葉の意味を説明してもらいました。
「人を対象にこの言葉を使う場合、ネイルされる側は大抵、正しいことやするべきことをしていないという自覚があると思うよ。で、そこをとっつかまって懲らしめられる。例えばスピード違反で捕まった時も、The cop nailed me. って言うね。」

「昨日ちょっと調べたところによると、性的な意味にも使われるみたいなんだけど、ほんと?」
「あ、そうだね。人間を対象に使う場合は要注意だよ。」

彼の出してくれた例がこれ。
仕事を頼んであった部下の女性社員が、何度催促してもノラリクラリと言い訳しながら逃げ続ける。夜、一緒に飲みに行った同僚達に状況を話し、

“I’m gonna nail her!”
「彼女をネイルしてやる!」
と苛立ちをぶつける。たまたま他のテーブルで飲んでいた隣の部署の女性社員が、その部分だけ聞いてしまう。翌日出勤すると、人事部から呼び出されてお叱りを受ける。「あの女、ヤッてやる!」という過激発言として伝わってしまったわけ。

「女性相手には使わないことが得策だね。」
と締めくくるディック。

「なるほど。それは確かに危険だなあ。でもさ、わざと誤解を招くような言い方をして皆をニヤリとさせるという意図がある場合だったら、ドンピシャなフレーズだよね。」
「その通り。でもそんなことが笑ってすまされる時代は、もう遠い昔だよ。」

というわけで、私の和訳はこれ。
“I’m gonna nail her!”
「彼女をとっちめてやる!」

2013年2月23日土曜日

不思議の国、日本

昨日の晩、職場の同僚たちと「和ダイニングおかん」へ繰り出しました。「日本食を楽しむ夕べ」というこの企画、数年前から定期的に開いていたのですが、ここのところあまりの忙しさでお休みしていたのです。私の隣には半年前にコネティカットから異動して来たサラが座り、その向こうにエド、テーブルを挟んで私の真向かいに日系アメリカ人(83歳)のジャック、その横にマリア、リチャードと座ります。

 まずはひじきやインゲン、すき焼き風煮物などの大皿料理でスタート。ジャックとサラがベジタリアンなので、なるべく野菜中心で攻めました。魚介類は大丈夫だとサラが言うので、ホタテとサーモンのカルパッチョを注文。これが皆の大絶賛を呼びます。続いて「イイダコの唐揚」。ミニサイズのタコがそのまんま衣に包まれているのを見て、サラが固まります。
「あれ?タコ駄目だった?」

「ううん。足だけならOKなんだけど、まるまる全身っていうのはちょっと…。」
頭の部分を箸でちょん切って、マリアの皿に移すサラ。

「日本って、どのくらい面積あるの?」
藪から棒にマリアが質問します。カリフォルニア州くらいじゃないかな、と答える私。ここでマリアがiPhone を取り出し、日本や東京の人口、面積などを調べて発表し始めました。

「え?東京ってニューヨークよりも人口が多いの?」
と驚嘆する一同。ニューヨークより人が多い都市があるなんて、アメリカ人にはイメージしにくいのかもしれません。ここで私がお国自慢を披露します。

「そんな大混雑の東京だけど、ラッシュアワーの地下鉄は、三分とか五分おきにほぼ遅れなく到着するんだよ。しかも全車すし詰めでね。」
感心の声がテーブル上を飛び交います。ジャックが身を乗り出し、数年前に日本を旅行した際の出来事を話してくれました。

「お土産を一杯入れた買い物袋をね、東京の駅のどこかで失くしちゃったんだ。翌日その駅に行って尋ねたら、駅員が奥に探しに行って、一分もしないうちにその袋を持って出てきたんだよ。あれには感動したなあ。」
ここでエドが割り込みます。

「俺なんかボストンで、ベンチの上にカメラを置いて数秒間横を向いただけでスラれたことあるよ。」
アメリカでは失くした物が返ってくることなどまずない、という常識を裏付けるような体験談を、皆が代わる代わる紹介します。

この後エドがトイレに立ち、席に戻ると皆に、
「俺が入ったら便座カバーが自動で開いたぞ!」

と驚愕の報告をします。続いてトイレに立ったマリアは用を済ませて出て来たのですが、その場に立ちすくんだまま小さな声でリチャードを呼びます。彼をトイレに招き入れて席に戻った彼女に、皆が説明を求めます。すると、
「どうやって流すのか分かんなかったのよ。」

と当惑顔。タンクの側面にハンドルがついてたろ、とエド。え?そうだったの?とマリア。
日本ではトイレが喋ったり滝の音が聞こえたり、便座の使い捨てカバーが自動でするするっと出て来たりするよ、って話をすると、皆が爆笑。信じてくれたのかどうか不明です。ここでジャックがウォシュレットの体験談を披露し、

「あれはいいぞ!」
と絶賛します。アメリカでは全く普及していないウォシュレット。大きなビジネスチャンスだと思うんだけどなあ。

「あ、トイレで思い出した。」
とエドが、サラと私にとっておきのジョークを教えてくれました。

男友達が緊急入院したというので見舞いに行くと、ベッドで呆然と天井を見つめています。何があったんだ?と聞くと、わけを話してくれました。彼が前の日に最新型のトイレに入って大きい方をしていたら、目の前に三つボタンがある。最初のボタンを押すと温水が出てきてお尻を丁寧に洗ってくれた。感心して次のボタンを押すと、暖かい風が吹いてお尻を乾かしてくれた。更に感心して次のボタンを見ると、横に「ATE」と書いてあります。エイティーイー?何だそれ?と暫く考えたのですが分かりません。まあいいや、とそのボタンを押した友人。で、その後すぐ病院に担ぎ込まれた、というのです。
「で?ATEって何なの?」

サラが尋ねると、エドはちょっと困ったような顔で、
「ゴメン。不適切な話題だった。忘れてくれ。」

と話を切り上げてしまいました。ここまで聞いといてオチが分かんないんじゃ気分が悪いじゃない!と食らいつくサラ。仕方なく、エドが彼女に耳打ちします。途端に顔を赤らめて笑い始めるサラ。
「ちょっとちょっと!それは無いんじゃない?ちゃんと教えてよ!」

と訴える私に、今度はサラが耳打ちします。
“Automatic Tampon Extractor.”
「自動タンポン引き抜き機」

5秒くらい考えてから、ようやくツボに入る私。
「やだ、シンスケが爆笑してる!」

と更に笑うサラ。それまで他の話題で盛り上がっていた向かい側の三人が、なになに?と急に興味を示します。

「やだよ。もう絶対言わない。」
と口を閉ざすエド。


デザートには、黒蜜プリンと黒胡麻プリンを注文。黒胡麻の見慣れぬ色調に、一同どよめきます。これ、よもぎ色と灰色を混ぜ合わせたような、非常に微妙な色なのですね。
「セメントみたいだな。」

こわごわ覗き込むリチャード。やめてよ!と言いながら一匙すくって口にするサラ。
「何これ?めちゃくちゃ美味しいじゃない!」

この一言を合図に、スプーンを持った手が四方から伸びました。

そんなわけで、アメリカ人の皆さんに「不思議の国、日本」をしっかり堪能して頂いた夜でした。