2013年9月1日日曜日

Contingency コンティンジェンシー

月曜日の夕方、ダウンタウン・サンディエゴ支社のトレイシーからメールが来ました。

「水曜日のスタッフ・ミーティングで5分くらい枠を空けるから、財務関連のトピックで何かプレゼンしてくれない?」

スタッフ・ミーティングとは、月に一度社員が全員集合して情報交換を図る会議です。こんな突然のリクエストでも、快く引き受ける私。というのも、話したい内容が既に頭にあったのです。

それは、Contingency(コンティンジェンシー)。

コンティンジェンシーを辞書で引くと、「不測の事態」とか「不確実性」などという訳が出て来ます。プロジェクトマネジメントの世界ではKnown unknowns(予測しうる不測の事態)をコンティンジェンシーとし、そのために積んでおく予算をContingency Reserveと呼びます。プロジェクト予算の話をする際は、この積立金自体を「コンティンジェンシー」と呼ぶのが一般的。英治郎には「偶発損失積立金」という、一口では飲み込みにくい漢語和訳が出ていますが、私が無理やり意訳するとすれば、これ。

かもしれない予算」

事故防止のために「かもしれない運転」を推奨する人がいますが、プロジェクトの予算を作成する際にもやはり、「重要な現場作業のタイミングで大雨が降るかもしれない」とか「主要メンバーが突然解雇されるかもしれない」などという不測の事態を組み込んでおくべきなのですね。特にその事態が起こった場合にかかるコストをクライアントに請求出来ない、つまり我々自身で賄わなければならない場合、これをプロジェクトの予算に予め含めておかないと大変です。不測の損失が続けばPMの組織内での信用は落ちるし、財務部門を含めた上層部からの質問攻めや資料要求に忙殺され、本来業務に集中出来なくなるのです。成果品のクオリティも落ち、スケジュールは遅れ、じわじわと泥沼に…。

「そんな地獄を見ないためには、きっちりコンティンジェンシー(かもしれない予算)を積んでおきましょう。」

プレゼンを締めくくると、皆が大きく拍手してくれました。

ミーティングを終え、席に戻って間もなく、同僚のPMシェインがやって来ます。

「プレゼン有難う。勉強になったよ。質問していいかな?」

彼の口からは、折角積んでおいたコンティンジェンシーを財務部のシェリーに削除させられたことがある、という聞き捨てならぬ実話が飛び出しました。プロジェクトの内容をよく知らない人間が、PMに向かってコンティンジェンシーを減らせと指示するのは明らかに越権行為です。もしそれが本当なら、シェリーと事を構えなければなりません。

「ちょっと待って。もう少し詳しく話してくれる?」

いきなり結論に飛びつく前に事態の詳細を知っておこうと、深掘りを開始。そうしてシェインから話を聞くうちに、じわじわと真相が明らかになって来ました。

「整理すると、こういうことだね。クライアントがコンティンジェンシーとして積んでいた予算を、プロジェクトの収入として見込んでいた。それをシェリーが予算から削れと言ってきた、と。」

「そうそう、そうなんだよ。」

「シェイン、それは僕の言ってるコンティンジェンシーとは別モノだよ。」

「え?なんで?」

クライアント側のコンティンジェンシーは「彼らにとっての」不測の事態。それが発生すれば我が社に業務が発生し、業務量に見合った金額が支払われるでしょう。しかし発生しなければ何も支払われない。それを当初から我が社の収入として見込んでおくのは、いわゆる「とらぬ狸」な発想なのです。まだ見込むのは早いから予算から削っておけ、というのは財務部として当然の判断。

「じゃ、シンスケの言ってたコンティンジェンシーはどういうこと?」

「我が社のコンティンジェンシーはクライアントの支払いと関係ないんだよ。我々のコンティンジェンシーは我々の支出であるのに対し、クライアント側のコンティンジェンシーは我々にとって収入なんだ。僕は支出の話をしてたんだよ。」

「そうか、な~るほど。やっと分かったよ。有難う!」

この後、先日支社長に就任したテリーがやってきて、私のプレゼンを誤解してる人がいるようだ、と指摘してくれました。

「クライアントのコンティンジェンシーとうちのコンティンジェンシーをごっちゃにしてる人が多いのよ。次にプレゼンする時には、その点を解きほぐしてから説明した方がいいと思うわ。」


う~む、こいつは痛い!どっちのコンティンジェンシーかを誤解する人がいる「かもしれない」という予測をし損なった、私のミスでした。

2013年8月26日月曜日

Premortem プリモータム

同僚マリアの隣の部屋に、新人女性社員のスーがやって来ました。新人とは言え、彼女は北米西部全域を管轄するリスク・マネジャー。かなりハイランクのお偉方です。先日、彼女のオフィスの前を通りがかった時に目が合ったので、ちょっと話しかけてみました。

「具体的にはどんな業務を受け持つんですか?」

「それを今勉強中なのよ。あなたはどんな仕事をしているの?」

プロジェクト・コントロールという仕事の重要性を説明した後、リスク・マネジメントの方法論についてひとしきり意見交換しました。

「ひとつだけリクエストがあるんです。今後チャンスがあったら、リスク・レジスター作成のガイドラインを作ってもらえませんか?」

と私。

「ガイドライン?どういうこと?」

「PMのほとんどは、プロジェクトのリスクを考えるのが苦手なんです。過去何度も同じようなプロジェクトを経験してきたという自負からか、俺のプロジェクトにリスクなんか無い、と真顔で言い切る人も少なくありません。リスクを洗い出すって、実は大変な想像力が要求される作業だと思うんです。そこでですね、」

私はここで、とっておきの提案をします。

“We should perform a project premortem.”
「プロジェクトのプリモータムをするべきだと思うんです。」

スーがきょとんとした顔で、

「え?何て言ったの?」

と尋ねます。

「プリモータムです。Postmortem(ポストモータム)という言葉(日本語では検死)がありますよね。このポストをプリと置き替えるんです。」

ポストというのは「事後」のこと。モータムは「死」ですから、ポストモータムは「検死(または解剖)」ですね。プロジェクトのポストモータムと言えば、終了後に失敗要因を分析することを意味します。この「ポスト」を「プリ(事前)」と取り替えると、「生前の検死」という不可解な造語になるのですね。

「初めて聞く単語だけど、どういうこと?」

とスーが説明を求めます。

「実はHarvard Business Review からの受け売りなんです。プロジェクトを始める際に、キックオフ・ミーティングを開きますよね。スコープやスケジュールの説明を終えた後、PMがチーム全員に突然こう告げるんです。残念ながらプロジェクトは大失敗に終わった。何故こんなにもひどい結果になったのかみんなに考えて欲しい、と。」

「まだプロジェクトを始める前に?」

「そうです。大失敗したという前提に立って考えるからこそ、原因をヴィヴィッドに思いつけるんですよ。まずチームメンバー全員が紙に失敗要因を書き並べ、これを次々に発表する。リスク・レジスターの骨格が、これで一気に出来上がるんです。」

「素晴らしいアイディアね。頂戴するわ。来週大きな会議があるから、議論に盛り込めるかもしれない。」

二人盛り上がって、会話を終えました。後で何人かの同僚にも同じ話をしたのですが、誰もこの単語を知りませんでした。


アメリカ人に新しい英単語を教えちゃったぜ。ちょっぴり興奮。

2013年8月24日土曜日

英語でムダ話

昨夜は同僚サラの音頭取りで、職場の仲間とその家族約20名が集まり、パドレス対カブスのナイト・ゲームを観にペトコ・スタジアムへ行きました。試合開始予定が7時過ぎだったので、まずは5時半に球場近くのパブ「Southpaw」に集まって軽食を取ろうという案内が、今週になって送られて来ました。

正直、この追加企画を知った時はあまり気乗りがしませんでした。パブにはあまり良い思い出が無いのです。ビートの利いたダンス・ミュージックが大音量でかかり、鼓膜を限界ギリギリまで振動させ続けます。立ち飲みする若者達のヒステリックな笑い声に360度「サラウンド攻撃」を受け、それだけでもうフラフラ。そんな状態での英会話は、ものすご~くシンドイのです。しかも同僚達とアフターファイヴに交わす会話って、仕事中と全然勝手が違います。俗語が飛び交いジョークの数も増え、コミュニケーションの難易度は何段階もアップするのですね。

浮かない気持ちで少し遅れ気味に到着してみると、なんとこのパブには建物の外に小さな庭があり、デッキチェアが何脚も並べられていて、みんなここに陣取っていたのです。ラッキーなことに、騒音レベルがかなり低い(60デシベルくらいか?)。涼しげな飲み物を持ったマリアが私に気がついて手を挙げ、こっちこっち、と手招きしました。

これで一気に楽になりました。マリアと元ボスのエド、サラと彼女の友達のクリスティンと、一箇所に固まって談笑します。女性陣はみな独身。結婚相手探しネットサービスの話題で盛り上がり始めました。

「私の友達が紹介された男たちの写真がすごいのよ。その子が転送して来たんだけど。」
とマリア。

「ひとりはフーマンチューみたいなヒゲを伸ばして怖い目でこっちを睨んでるし、もうひとりはたくさんの動物のぬいぐるみに囲まれて幸せそうに笑ってるの。一体どういう思考回路が働いてそんな写真を使う気になったのか、理解に苦しむわよ。」

「私なんかさ、」

とクリスティン。

「肩から上の写真を登録してたんだけど、どうして全身写真を載せないんだって文句言ってきた男がいるのよ。将来奥さんになるかもしれないのに、両脚があるかどうか分からないのは不安だって言うのよね。嘘ばっかし。カラダが見たいだけでしょうが!」

「脚の無い嫁さんもらったら、靴代が浮いて助かるのにな。」

とエド。

「エ~ド!」

と三人の女性が一斉にたしなめます。

「そういえば、写真で思い出したんだけどさ。」

と私。

「パーソナルトレーナーにさ、誕生日の記念に写真を撮るよう薦められたんだよ。もちろん上半身ヌードでね。」

来月は私も、いよいよ50歳の誕生日を迎えます。彼女は、折角鍛えてるんだから成果を写真に残すべきだと言うのです。

「服脱いだらブルース・リーみたいになってんじゃないのか?シンスケは。」

とエド。

「そんなわけないじゃないですか。だったら迷いも無くヌード写真撮ってますよ。」

「そういえばマリアも今度誕生日よね。いつだっけ?」

とサラ。そう、マリアと私は同い年なのです。

11月よ。実は私、30歳の時にヌード写真撮らないかって誘われたことあるの。もちろん断ったけど、今思えば撮っとけば良かったな。さすがに50歳になっちゃったら撮らないもんね。」

するとエドが、

70歳になったら、50歳の時に撮っとけば良かったって後悔するぜ、きっと。」

と笑います。サラが、

「シンスケも、この際だからヌード撮っちゃえばいいんじゃないの?」

と愉快そうに笑います。

Speedo(競泳用ビキニパンツ)はいちゃったりしてさ。」

とマリア。そこで私が、

“I have to wax.”
「じゃあワックスしなきゃ。」

とふざけます。ワックスというのは、「ムダ毛の処理」という意味です。これは予想外に女性陣に大ウケ。隣でマリアがぼそっと、

“So do I.”
「あたしもやんなきゃ。」

と合いの手を入れました。


意外な盛り上がりを見せた、英語の「ムダ話」でした。

2013年8月18日日曜日

Terms of endearment 親愛の情をこめた呼び名

ランチルームで同僚のジムと話していた時、日本人は「名は体を現す」と言って、子供の名前つけにはとても真剣に取り組むよ、という話になりました。で、当然話題は「アメリカ人の名前には特別意味が無い」、というオチを迎えます。

「僕の名前はおじいさんから取ったんだよ。」

とジム。それって理解に苦しむなあ。時には父親と一緒のファースト・ネーム、なんて人もいるし。日本人で、「うちは親父が一郎だったから、僕もそれをもらって一郎になったんだ」なんて話、聞いたことがありません。「名前負け」なんて概念も無いんだろうな、きっと。

「ちょっと待てよ、そもそもどうしてジェームスをジムって呼ぶのかなあ。」

と、ジムが首を傾げます。今日までついぞこんな疑問は浮かばなかったと言わんばかりの驚きよう。ボケすぎだぜ、ジム。

「そう言えば、ジミーって呼び方もあるでしょ。ジェームスとジミーの距離は更に大きいよね。」

と私。

去年解雇されたアーニーが良く、ジムのことを「ジミー・ホー」と呼んでいたことをふと思い出しました。彼らは転職前の会社でも同僚だったそうで、その頃から同じ愛称だったのだと言います。

「中国系とかベトナム系の名前に聞こえて笑えるよね。」

ちなみにジムは、バリバリの白人です。

「でも、なんでホーなの?」

と私。

「ほら、僕の苗字がHOで始まるでしょ。それでアーニーがふざけたんだよ。」

「あ、なるほどね。チャイニーズ・アメリカンのアーニーがそう呼ぶから余計面白いんだよね。」

「あいつがあまりにも多用するもんだから、そのうち僕のボスまでそう呼び始めちゃってさあ。」

と苦笑いするジム。

「で、僕も冗談めかしてこう言ったんだ。」

“I’m assuming that it’s a term of endearment.”
「それってターム・オヴ・エンデアメントと思っていいんですよね。」

ん?たーむ・おぶ・えんであめんと?これ、知ってるぞ。

シャーリー・マックレーン主演の映画に「愛と追憶の日々」というのがあり、原題がTerms of Endearmentなのです。昔から、どの部分が「愛」でどの部分が「追憶」なのかな、とずっと疑問に思っていました。

さっそく、別の同僚リチャードに質問してみました。

Endearment は愛情の表現だね。やさしい言葉だよ。これに、法律などで使われる堅い感じTerm(呼称、用語)をくっつけてるんだ。ちょっと面白い言い回しだよね。」

後で調べたところ、Dear (親愛なる)という形容詞がEndear になると「愛される」に変わり、Endearment で「愛情表現」という名詞になるのですね。ジムの発言は、こういう訳になると思うのですが、どうでしょう?

“I’m assuming that it’s a term of endearment.”
「それって親愛の情をこめた呼び名と受け取っていいんですよね。」


映画の邦題、原題とかなり違いますね。邦題の方が内容に即してる気がするけど…。

2013年8月13日火曜日

98 minutes is a waste to me. 複数形のナゾ、ふたたび

今日の午後、同僚のレベッカにこんな質問をぶつけてみました。

90 minutes is a long timeという言い方あるでしょ。これって文法的に正しいの?」

90 minutes (90) は疑いも無く複数形です。これをis という単数用Be動詞が受けることへの疑問ですね。明らかさまに動揺を見せるレベッカ。

「私はしょっちゅうそういう言い方するけど、正しいかどうか聞かれると自信ないわ。」

ちょうど部屋の前を通りかかったリタを呼び止め、会話への参加を促します。

「私は90 minutes are a long time が正しいと思うけど…。」

と、リタ。待ってました、とばかりに反論する私。

「それだと今度は a long time との整合がとれなくなるよね。」

「あ、そうか。う~ん、どっちが正しいのかしらね。」

「最初からA 90-minute time periodと言っていれば問題ないのにね。でも実際は90 minutes is っていう言い回しの方を良く使うし聞くわよね。」

結局結論は、「文法的に正しいかどうかは不明だが、日常的に使える表現」ということになりました。実はそもそもこんな疑問が生じたのも、先週同僚ステヴの発したセリフがずっと心に引っかかっていたからなのです。

ダウンタウン・サンディエゴ支社では、隔週木曜の4時に社員が集まって自由な情報交換をする会を催しています。先週の火曜日、総務のトレイシーから

「久しぶりに帰った日本がどんなだったか、皆に話してくれない?」

と頼まれ、撮りためた写真や、隅田川花火大会やら新橋駅前の雑踏などを捉えたビデオを披露したのです。旅行の序盤で名古屋から白川郷まで長距離バスに乗ったのですが、岐阜を過ぎたあたりで夥しい数のラブホテルが目に飛び込んで来ました。日本の郊外ならではの光景に興奮し、思わずシャッターを切り続けた私。その時撮った写真の一枚に、

Hotel Water Gate  1002480円」

と書いてある野点看板があり、私が

100分で25ドルだそうです。」

と解説したところ、総務のシンディが

「え~?分刻みの料金制なの?」

と無邪気に驚き、皆がドッと湧きます。その時、周りに聞こえるか聞こえないかのボリュームで、ステヴがぽつりとこう呟いたのです。

“98 minutes is a waste to me.”
98分間は無駄だな、俺には。」

2013年8月9日金曜日

She’s a tough cookie. 固いクッキー?

火曜の夕方、出張先のオレンジ支社で帰り支度をしていたら、元ボスのリックに呼び止められました。

「5分ほどいいかな?いや、10分。待てよ、やっぱり15分!」

「いやいや、何分でも大丈夫ですよ。」

笑いながらリックの後について、彼のオフィスへ向かいます。

「スティーブとマーリーンが辞めるの、聞いてるよね。」

そっとドアを閉めてから尋ねるリック。

「ええ、聞きましたよ。キツいですね。」

「うん、優秀な社員が揃って辞めるのは損失だ。それで、僕も含めて複数のPMが、彼らのプロジェクトを引き継ごうと調整中なんだ。」

会社が大きくなるにつれ、PMに対する要求がどんどん理不尽になって行く現状は、誰もが認識しているところ。マネジメント層が一向に対策を講じないため、嫌気のさした社員が櫛の歯が欠けるように去って行きます。

「その一環で今日の午後、ヴァネッサと話したんだ。彼女がどれくらい仕事を引き受けられるか聞こうと思ってね。そしたら彼女、突然泣き始めたんだ。怒るでもなく、ただはらはらと涙を流して。長時間のサービス残業続きなのに、その成果が全く評価されていないっていうんだよ。」

「あのヴァネッサが、ですか?」

彼女は若くて元気な女性社員。常にあっけらかんとした印象で、涙なんて全く想像がつきません。

「だろ?本当に、あっけにとられたよ。」

そしてリックがこう続けます。

“She’s a tough cookie!”

え?タフ・クッキー?

直訳すると、「彼女は固いクッキーだ!」ですが、それじゃ意味が通りません。すかさず説明を求める私に、

「え?あ、意味?う~ん、そうだなあ、強い人ってことだよ。」

とリック。

「タフは分かりますけど、なんでクッキーなんですか?」

「それはちょっと分かんないなあ。あとでグーグルしてみないとね。」

追究はここで打ち切りとなり、彼は私の率いるプロジェクトコントロール・チームの再拡大を提案しました。

「これは差し迫った問題だし、ヴァネッサに限った話じゃないのは明らかだ。今じゃ大勢のPMが、限界ぎりぎりで働いてる。このまま手をこまねいていれば、更に人が去って行くのは目に見えてるだろ。今こそ君のチームを更に増員して、南カリフォルニアの全PMをサポート出来るくらいの態勢を敷くべきだと思うんだ。この提案を上層部に上げてみたいんだけど、どう思う?」

「そりゃもう、喜んで!是非やりましょう。」

大いに興奮する私。リックとのミーティング後、さっそく上司のクリスピンの部屋へ行って提案を伝えます。すると彼も、すんなり同意。カマリヨ支社、ロングビーチ支社、オンタリオ支社の社員も私のチームに加えたらどうか、という案がまとまりました。実現すれば、更に5人ほど部下が増えます。

さて翌日、ダウンタウン・サンディエゴ支社で同僚ステヴに会ったので、「タフ・クッキー」の意味を尋ねてみました。

「例えばさ、マイクはタフ・クッキーだって言える?」

マイクというのは、身長190センチくらいあるステヴの上司です。

「いや、言わないね。肉体的な強さの話をしてるわけじゃないんだ。意外に強靭な精神の持ち主を指す表現なんだよ。マイクみたいに、精神面の強さについては疑問の余地がない場合にも使わないね。」

とステヴ。

「昨日オンライン辞書を調べた時は、対象が男性でも使えそうな印象を受けたんだけど。それはどう?」

「一般的には、女性を指す場合にだけだと思うよ。ほら、クッキーって大抵、見た目が華奢だったり柔らかそうだったりするでしょ。それを噛んでみたら意外と固かった、そうやすやすとは折れない、というところから来てると思うな。」

なるほど、納得です。私の和訳はこれ。

“She’s a tough cookie!”
「あの気丈なコが、だよ!」


どうでしょう?

2013年8月2日金曜日

Running joke 未だにウケてるジョーク

昨日は久しぶりにダウンタウン・サンディエゴ支社へ。総務の受付カウンターでトレイシーとシンディに会った途端、

「日本はどうだった?」

と尋ねられました。

「いやあ、素晴らしかったよ。行くところ行くところ、いい人ばかりでさ。それに食べ物がもう、うまいのなんのって…。」

「今まさに、それを聞こうと思ってたところよ!」

とトレイシー。

「やっぱりこの辺で食べる日本食とは違うんでしょ。」

「そりゃもう、ぜ~ぜん別物!」

ほんとに、日本滞在中は美味しいものを沢山食べました。刺身はもちろん、焼き魚、焼鳥、とんかつ、コンビニのおにぎりに至るまで超ウマカッタ!特に友人一家と一緒に行った金沢の料亭「銭屋」では、竜宮城で浦島太郎が受けたもてなしを想像させるほどの超絶豪華ディナーを頂きました。しめに出てきた「新生姜入り炊き込みごはん」には、夫婦で絶句。大将に、

「どんなに頑張っても、自分じゃ絶対こんなうまい料理作れませんよ。」

とレベルの低いコメントを吐いたところ、

「そりゃ家庭料理と較べちゃいけませんよ。だって私ら、今夜のために朝5時から仕込みしてるんですから。」

そりゃそうだ。彼によると、腕の良い主婦が作る料理をレクサスだとすると、彼らの料理はF-1カーなのだと。しみじみ納得しつつ、絶品炊き込みご飯を頬張る私。

そんな素敵な思い出に、突然シンディの高音が割り込んで来ました。

「そうだ、こんなRunning Joke があるのよ!」

Running joke? 走るジョークって何だ?

いぶかる私に構わず、シンディが続けます。

「こないだトレイシーが一斉メールを出したの。ランチ・ミーティングでとった出前のチャイニーズ・フードの残り物が給湯室のテーブルにあるわよ、皆さんどうぞって。そしたらリンドンがね、」

さも可笑しそうに笑うシンディ。リンドンというのは、中国出身の真面目な風采の男。サイボーグ009に出てくる006にどことなく似ている。ふと気がつくと、彼がいつの間にか私の横に立っていたのでびっくり。シンディはきっと、彼が我々の会話に加わったのでこの話を持ち出したのでしょう。

「リンドンがこう言ったのよ。“It’s just food to me.” (俺にとっては普通の食べ物だけど。)

ここでトレイシーも大笑い。

「そりゃそうよね。中国人に中華料理どうぞって言ってもねえ!」

つられて私も、あっはっはと笑います。

え?これって面白いか?

横でリンドンがクスリとも笑わず、

「何が面白いのかな。」

と呟きます。

後で調べたら、Running というのは「続いている」という意味なので、Running Joke は「未だにウケてる冗談」ということだと分かりました。


なぜ自分が笑ってしまったのか、未だに分からないジョークです。

2013年7月30日火曜日

美しい国、ニッポン

昨夜おそく、二週間の夏休みを終えてサンディエゴに戻りました。四年ぶりの一時帰国だったためか、日米の違いが前回より一層強く心に残りました。特に印象的だったのは、接客態度の違い。

自宅にコンタクトレンズを忘れて来た息子の眼鏡を作ろうと大船のZoff を訪れた際、まだ小学生の息子に対して、まるでいっぱしの大人を扱うみたいに敬語を使う店員さんを見て驚愕する私。旅行日程が進むにつれ、それはこの店に限ったことじゃないと気づき、更にびっくり。あれ?昔からこうだったっけ?

銀座の東急ハンズで旅行用携帯歯磨きケース(800円くらい)を購入した際、女性店員が商品の入った袋を両手で恭しく差し出し、

「お気をつけてお持ち帰りください。」

と言うのを聞いた時は、ひええ~っ!とのけぞりそうになりました。ここは宮中か?

渡米してからこっち、粗暴な接客態度の店員に慣れていた私。旅行中、どこへ行っても礼儀正しい人ばかりで、うわあ、日本人ってちゃんとしてるなあ、と感心しました。

二週間の滞在を終え、ロサンゼルスの空港に到着。自家用車を預けていたQuikPark という業者に電話をかけて送迎者を回してもらい、停留所まで荷物を引きずって行ったところ、3秒も待たずにシャトルバスが到着。勢い良く飛び出して来た運転手が、

「ヘ~イ!パーフェクト・タイミングだっただろ~!」

と満面の笑顔で我々のバッグをてきぱきと積み込み始めました。作業の間中も休むことなく盛んにジョークを飛ばしていて、まるで映画「ビバリーヒルズ・コップ」のエディ・マーフィーみたい。妻と顔を見合わせ、

「こういうのもいいね。」

とクスクス笑いました。


さて、今回の旅行のハイライト、隅田川花火大会。友人宅の屋上から鑑賞しました。開始30分で豪雨がやって来て後半は中止になりましたが、いいものを見せてもらいました。

美しくも儚い花火の記憶。

暫くはノスタルジーに浸れそうです。

2013年7月15日月曜日

難波っ子のタマシイ

いよいよ明日、二週間の夏休みを過ごすため、家族で日本に向かいます。職場を去る際同僚ステヴに、日本から買って来て欲しいものがあるかどうか尋ねてみました。彼は若い頃、大阪の高槻市に短期留学した経験があります。彼のボケに先回りして、

「お好み焼きはダメだよ。持って帰れないからね。」

と釘を刺す私。

「オー、オコノミヤキ!いいなあ~。」

私のセリフが彼の思い出の扉を開けたみたいで、暫く遠くを見るような目になりました。それから急に我に返って、

「東京のオコノミヤキはダメだよね。」

と評論家みたいな顔で首を振ります。

「え?どうして?そんなことないと思うけど…。」

と、突然のダメ出しにうろたえる私。

“Okonomiyaki in Tokyo is just wrong.”
「東京のオコノミヤキは、とにかく間違ってるんだよ。」

おお、こんなところで大阪人のプライド・トーク炸裂!数ヶ月住んだだけで、そこまで難波っ子になれるのか?


彼には結局、阪神タイガースの帽子を注文されました。どうしよう。大阪、今回行かないんだけど…。

2013年7月14日日曜日

There is more than one way to skin a cat. 方法は色々ある。

先日、オレンジ支社のアレクシスが相談を持ちかけて来ました。彼女のプロジェクトには建設現場の生物環境変化を追跡調査する業務が含まれていて、モニター要員が現場に出かけて生物の生育状況などを記録する必要があります。この分野、テクノロジーの導入が比較的スローで、ずっと紙に手書きという原始的形態を取っていました。この際、彼らにタブレットコンピュータを携帯させて現地で素早くデータをインプットしてもらい、これをデジタルのままデータベースにシンクさせる方法に切り替えたい、というのです。

「エクセルで様式を作ってもらえないかしら?ドロップダウン・メニューを組み込んで。」

「いいけど、他の方法も探ってみたらどうかな?」

「うん、でもあまりプロセスを複雑にしたくないのよのね。」

さっそく、元ボスでIT通のエドに当たってみました。

「エクセルでも可能だと思うけど、アクセスの方がいいんじゃないかな。なんなら俺がシステム一式作ってやってもいいよ。でも、市販のソフトも検討してみた方がいいぞ。」

実は私がPMをしている大規模プロジェクトでもタブレットを導入しているので、マネジメント・チームのセシリアにその詳細をヒアリングしてみました。結果、各メーカーのタブレット端末に対応していて、しかも使い勝手の良いソフトであることが判明。この情報をエドに送ったところ、翌朝彼が私のオフィスに立ち寄ってくれました。

「俺ならこっちのソフトを使うね。使用実績のあるソフトを使う方が、一から起こすよりもずっと効率的だからな。」

という意見。検討に時間を割いてくれて有難う、と丁寧にお礼を述べたところ、お安い御用だ、と微笑んだ後、こんなセリフを残して立ち去りました。

“There’s more than one way to skin a cat.”
「猫の皮を剥ぐ方法はひとつじゃないからな。」

ええっ?何の話?と疑問の呻きを漏らす私。これには答えず、遠ざかりながら笑うエドの声が廊下に響きます。

15分後、同僚ジムが私の部屋に現れます。彼のプロジェクトの健康診断をするためのミーティング。議論が一息ついた時、さっきのフレーズについて質問しました。

「ああ、そうだね、確かにそういうイディオム、あるね。」

語源は全然分からない、とのこと。

「とんでもなく残虐な言い回しだよね。特に猫好きな人が聞いたら気分壊すよね。あ、そうだ、ジム、猫は好き?」

と私が尋ねた直後、彼がくしゃみを連発。暫く鼻をもぐもぐさせた後、

「ごめん。俺、猫アレルギーなんだ。」


ですって。うそだろ…。