私の仕事は財務部門とオペレーション部門との繋ぎ役みたいなところがあり、それぞれがなかなか単独で出来ない任務を課せられることがほとんどです。なかでも、
「締め切りは2時間後。このレポートを作って両部門の幹部三人から決裁を貰わないと今季の実績に大きな穴を開けてしまうことになる!」
などというピンチに起用されることが多く、先日もそんな大役を無事切り抜けました。早速アーバイン支社のリサからメールが届き、感謝の言葉が連ねられています。最初の一言が、これ。
“Thanks Shinsuke for saving the day again!”
「シンスケ、またしても Save the day してくれて有難う!」
ん?なんだそれ?
似たフレーズに、 “Make my day” というのがあります。映画「ダーティ・ハリー」で主人公のキャラハン刑事が、凶悪犯に対してこう凄むのです。
“Go ahead, make my day.”
「良い一日にする」とか「喜ばせる」、というのが元の意味ですが、この作品では、
「動いてみな、(貴様を撃ち殺すのに格好の言い訳が出来て)気分の良い一日になるから。」
って感じで使われて一躍有名になりました。
もうひとつ、これに似たフレーズに “Save the date” というのがあります。例えば半年先に大きなパーティを予定してる場合、
“Details will follow. Save the date!”
「詳しいことは追って連絡するけど、取り合えずその日は空けといてね。」
などと書きます。これは納得です。しかし、 “Save the day” となると話は別。
The day (その日)を Save (救う)?
なんとなく分かるような気がするのですが、どうもすっきりしない。今日の午後、英語の達人テリースのオフィスを訪ねました。
「そうね、確かに不思議な言い回しね。本当のところは私にも分からないけど、すんでのところでひどい一日になりそうだったところを、あなたが良い一日に変えてくれた、そういう意味だと思うわよ。」
なるほどね。それなら分かる。
“Thanks Shinsuke for saving the day again!”
「シンスケ、またしても窮地を救ってくれて有難う!」
キャラハン刑事はクールに “Make my day”と笑った後、“Save the day” したわけですね。
2011年12月20日火曜日
2011年12月15日木曜日
Death by a thousand cuts じわじわと破滅に向かう
今朝はどかっと仕事を片付けようと勇んで6時に出勤したのですが、経済通の同僚アーニーにつかまってしまいました。
「今日のニュースを見たか?Census Data (国勢調査のデータ)が発表されて、アメリカ人の二人に一人が低所得層か貧困層だっていうんだ。信じられるか?二人に一人だぞ。」
朝一番でショックを与えてすまん、と謝りながら、さらに続けます。
「この先、どんな事態が待ってると思う?端的に言って、ヨーロッパの二の舞だろうな。ここまで貧困化が進んだら、政府が救済に乗り出さないわけにはいかない。生活保護漬けの人間が増える。そして一旦それが普通になると、もうそのサービスを切れなくなる。どんどん公的保護に依存する人間が増えて、景気は停滞を続けるんだ。」
「う~ん、こうなったら新たなニューディール政策を打ち出すしか無いね。」
と私。
「うん、本気で思い切ったことをやらないと、この国には先が無いよ。」
彼の案は、職にあぶれてる人をカンザス州あたりに集めて、巨大な太陽電池プラントか何かを作ってガンガン働いてもらう。そしてOPECに中指立てられるくらいのエネルギーを生み出して外国に売り込む、というもの。
「でも、そんなことはまず出来ないだろうな。今のアメリカじゃ、ニューディールは不可能だよ。」
と、あくまでも悲観的なアーニー。政策に関する情報がネットやメディアを通じて一瞬にして広まる今の時代、政府が思い切った手を打てなくなった、と彼は言います。
「それに、何か対策を講じた結果、ちょっとだけ状況が改善するけど暫くすると元通り、ってのを繰り返すだろ。これが良くないんだよ。失業率が25%くらいになるまで放っておいて、強力なリーダーシップを持つ大統領に登場してもらい、究極の選択を国民に迫った上で断行する、ってな具合に運ばないとどうにもならない。今はさ、失業率が6%から9%に上がると中途半端な景気対策を打つ、で7%くらいまで下がる、で、三ヶ月もするとまた9%まで上がるって具合だろ。何もしないよりずっとたちが悪いよ。」
そこで彼が苦々しげに吐き捨てたのが、このフレーズ。
“That’s death by a thousand cuts.”
文字通り訳せば、「千の切り傷による死」ですね。つまり、ひとつひとつの傷は致命的じゃないけど、千箇所も切られればそのうち死ぬ、ということ。私の訳はこれ。
“That’s death by a thousand cuts.”
「じわじわと破滅に向かってるんだよ。」
もともとは清の時代まで中国で採用されていた処刑法「凌遅刑(りょうちけい)」から来ている言い回しだそうです。グーグルしたら、恐ろしい写真がざくざく出て来ました。朝からちょっと気分が悪くなりました。
「今日のニュースを見たか?Census Data (国勢調査のデータ)が発表されて、アメリカ人の二人に一人が低所得層か貧困層だっていうんだ。信じられるか?二人に一人だぞ。」
朝一番でショックを与えてすまん、と謝りながら、さらに続けます。
「この先、どんな事態が待ってると思う?端的に言って、ヨーロッパの二の舞だろうな。ここまで貧困化が進んだら、政府が救済に乗り出さないわけにはいかない。生活保護漬けの人間が増える。そして一旦それが普通になると、もうそのサービスを切れなくなる。どんどん公的保護に依存する人間が増えて、景気は停滞を続けるんだ。」
「う~ん、こうなったら新たなニューディール政策を打ち出すしか無いね。」
と私。
「うん、本気で思い切ったことをやらないと、この国には先が無いよ。」
彼の案は、職にあぶれてる人をカンザス州あたりに集めて、巨大な太陽電池プラントか何かを作ってガンガン働いてもらう。そしてOPECに中指立てられるくらいのエネルギーを生み出して外国に売り込む、というもの。
「でも、そんなことはまず出来ないだろうな。今のアメリカじゃ、ニューディールは不可能だよ。」
と、あくまでも悲観的なアーニー。政策に関する情報がネットやメディアを通じて一瞬にして広まる今の時代、政府が思い切った手を打てなくなった、と彼は言います。
「それに、何か対策を講じた結果、ちょっとだけ状況が改善するけど暫くすると元通り、ってのを繰り返すだろ。これが良くないんだよ。失業率が25%くらいになるまで放っておいて、強力なリーダーシップを持つ大統領に登場してもらい、究極の選択を国民に迫った上で断行する、ってな具合に運ばないとどうにもならない。今はさ、失業率が6%から9%に上がると中途半端な景気対策を打つ、で7%くらいまで下がる、で、三ヶ月もするとまた9%まで上がるって具合だろ。何もしないよりずっとたちが悪いよ。」
そこで彼が苦々しげに吐き捨てたのが、このフレーズ。
“That’s death by a thousand cuts.”
文字通り訳せば、「千の切り傷による死」ですね。つまり、ひとつひとつの傷は致命的じゃないけど、千箇所も切られればそのうち死ぬ、ということ。私の訳はこれ。
“That’s death by a thousand cuts.”
「じわじわと破滅に向かってるんだよ。」
もともとは清の時代まで中国で採用されていた処刑法「凌遅刑(りょうちけい)」から来ている言い回しだそうです。グーグルしたら、恐ろしい写真がざくざく出て来ました。朝からちょっと気分が悪くなりました。
2011年12月14日水曜日
SNAFU おなじみのドタバタ
二週間ほど前、旅費の精算の承認をボスのリックにお願いしたのですが、待てども待てどもなしのつぶて。そのうち時間切れになったようで、決裁は彼のボスのクリスへ自動的に転送されていたことが分かりました。
クリスからリックへのメールがこれ。
“Aren’t you signing Shinsuke’s expense reports?”
「シンスケの旅費精算書には君がサインするんじゃなかったのか?」
それに対するリックの返信に、手が止まりました。
“Yes, it was a SNAFU.”
「そうなんだ。SNAFUだよ。」
SNAFU?なんじゃそりゃ。彼が更に続けます。
“They came to me last week and I opened them on my Blackberry and then failed to follow up when I got to my computer.”
「先週受け取ってブラックベリーで一旦開いたんだけど、コンピュータで処理しようと思ってるうちに忘れちゃったんだよ。」
う~ん、この手がかりだけじゃ、SNAFU が何だかちっとも分からん。さっそく同僚マリアに質問。まず、なんて発音するの?
「スナフー(ふーの部分を強調)よ。しっちゃかめっちゃかな状態で何かをしくじった時に使うの。」
「あのさ、さっきネットで調べたら、これは “Situation Normal All Fucked Up” の略だって出てたんだ。最後の三つは分かるけど、シチュエーション・ノーマルが何のことか分からないんだ。教えてくれる?」
「え?そうだったの?分かんない。全然意味通じないわよねえ。」
そんなわけで、物知りのディックに聞いてみました。
「All fucked up は分かるよね。何もかも滅茶苦茶になってるって意味。シチュエーション・ノーマルは、いつもと変わらないってことだね。つまり、別に意外でも何でもなく、いつもの通り、しっちゃかめっちゃかになってる状況を指してるわけ。もともと軍隊で使われてたフレーズだよ。」
なるほどね。私の和訳です。
“Yes, it was a SNAFU.”
「そうなんだ。おなじみのドタバタだよ。」
どうでしょう?
クリスからリックへのメールがこれ。
“Aren’t you signing Shinsuke’s expense reports?”
「シンスケの旅費精算書には君がサインするんじゃなかったのか?」
それに対するリックの返信に、手が止まりました。
“Yes, it was a SNAFU.”
「そうなんだ。SNAFUだよ。」
SNAFU?なんじゃそりゃ。彼が更に続けます。
“They came to me last week and I opened them on my Blackberry and then failed to follow up when I got to my computer.”
「先週受け取ってブラックベリーで一旦開いたんだけど、コンピュータで処理しようと思ってるうちに忘れちゃったんだよ。」
う~ん、この手がかりだけじゃ、SNAFU が何だかちっとも分からん。さっそく同僚マリアに質問。まず、なんて発音するの?
「スナフー(ふーの部分を強調)よ。しっちゃかめっちゃかな状態で何かをしくじった時に使うの。」
「あのさ、さっきネットで調べたら、これは “Situation Normal All Fucked Up” の略だって出てたんだ。最後の三つは分かるけど、シチュエーション・ノーマルが何のことか分からないんだ。教えてくれる?」
「え?そうだったの?分かんない。全然意味通じないわよねえ。」
そんなわけで、物知りのディックに聞いてみました。
「All fucked up は分かるよね。何もかも滅茶苦茶になってるって意味。シチュエーション・ノーマルは、いつもと変わらないってことだね。つまり、別に意外でも何でもなく、いつもの通り、しっちゃかめっちゃかになってる状況を指してるわけ。もともと軍隊で使われてたフレーズだよ。」
なるほどね。私の和訳です。
“Yes, it was a SNAFU.”
「そうなんだ。おなじみのドタバタだよ。」
どうでしょう?
2011年12月11日日曜日
We’re all revolving around it. 俺たちみんな、それ中心に生きてるよな。
5年ほど前、カナダのエドモントン支社からサンディエゴに移って来た同僚ジェフは、ウィニペグという町で育ったそうです。金曜の午後、職場で立ち話してたら、
「若い頃は店で肉を買ったことがなかった。」
という、耳を疑うような発言が飛び出しました(別に菜食主義者というわけではない)。それは一体どういうこと?と聞き直したところ、彼は毎年、野生動物の繁殖期(9月から11月頃)になると山へ出かけ、鹿やムース、バッファローなどを狩っていたそうです。ライフルか何か?と聞くと、弓矢(アーチェリー)を使ったと言います。
「昔はアルミだったんだけど、最近はカーボン製の矢でね。スピードがすごいんだよ。銃と違って音がしないこともそうだけど、アーチェリーの本当の長所は、獲物の身体にほとんど傷が残らないことなんだ。」
息絶えた動物のところへ行ってみると、急所にほんの小さな穴(puncture point)が開いていて、その周りに矢尻のブレードが残した放射状の薄い傷が認められるのみ。で、矢そのものは数メートル先の地面に突き刺さっているのだそうです。ムースやバッファローみたいに厚みのある身体を貫通してしまうなんて、すごい威力。
それからの手順はこう。現場で腹を割き、素早く内臓を搔き出してしまう。このタイミングを逃すと、肉がまずくなってしまうのだそうです。で、獲物を引きずって町に戻り、肉屋へ持っていくと廉価で綺麗に捌いてくれる。ステーキ肉をごっそり持ち帰り、自宅の冷凍庫に入るだけ貯蔵したら、残りはホームレスの施設に寄付する。
40代半ばのジェフは、今でも週末はアイスホッケーのチームに入ってプレイしているほど屈強な男で、狩猟の話は意外でも何でもないのですが、ふと気になって聞いてみました。
「あのさ、こういう質問もどうかと思うんだけどさ、動物を殺した時、良心の呵責を感じたことって無いの?可愛そうなことをしたなあ、とかさ。」
すると彼が急に表情を変え、
“It’s between you and me.”
「ここだけの話だけど、」
と声を落とし、過去に一度、倒れた鹿のそばへ行った時、突然嵐のような自責の念に襲われたことがある、と告白してくれました。そしてその場で泣き崩れた、というのです。
“What have I done? What am I, playing god?”
「俺は何てことをしてしまったんだ?何様だっていうんだ?」
そして翌年は狩りに出なかったそうです(翌年は、というところがミソですが)。
さて、なぜ繁殖期が狩猟に最適かと言うと、メスの奪い合いでオスの気が高ぶり、ガードが下がるのだそうです。バッファローのオスは硬い前頭部を、ムースは大樹のような角を激しくぶつけ合い、ライバルを退けようと連日闘う。ここに隙が出来るのですね。ジェフお得意の鹿狩り法は、まず獲物が良く通るルートを丹念に調べておき、そこを見下ろせる木の上に登って、葉陰に身を隠し辛抱強く待つ。目当てのオスが近くに来たら、予め用意しておいた二本の棒を打ち合わせて音を出す。それを聞いたオスはいきり立ち、
「喧嘩だ喧嘩だ!いい女を奪い合ってやがるな。どこだどこだ?俺も参戦するぞ!」
と駆けつけるのだそうです。そこでジェフの鋭い矢が一閃!哀れなオスは、急所を射抜かれてステーキ肉の元とあい果てるのです。
「結局、オスってのはオンナが絡むと我を忘れちゃうわけね。その習性を良く分かってる人間のオスに殺されちゃうなんて、ちょっと悲しいよね。」
と私。そんな風に考えたことは一度も無かったよ、と大笑いした後、ジェフが一言。
“We’re all revolving around it!”
「俺たちみんな、その周りをリボルブしてるんだよな!」
Revolve (リボルブ)は「(何かを中心に」回転する、旋回する、周回する」という意味。ジェフが言いたかったのは、こういうことでしょう。
「俺たちみんな、それ中心に生きてるんだよな!」
「若い頃は店で肉を買ったことがなかった。」
という、耳を疑うような発言が飛び出しました(別に菜食主義者というわけではない)。それは一体どういうこと?と聞き直したところ、彼は毎年、野生動物の繁殖期(9月から11月頃)になると山へ出かけ、鹿やムース、バッファローなどを狩っていたそうです。ライフルか何か?と聞くと、弓矢(アーチェリー)を使ったと言います。
「昔はアルミだったんだけど、最近はカーボン製の矢でね。スピードがすごいんだよ。銃と違って音がしないこともそうだけど、アーチェリーの本当の長所は、獲物の身体にほとんど傷が残らないことなんだ。」
息絶えた動物のところへ行ってみると、急所にほんの小さな穴(puncture point)が開いていて、その周りに矢尻のブレードが残した放射状の薄い傷が認められるのみ。で、矢そのものは数メートル先の地面に突き刺さっているのだそうです。ムースやバッファローみたいに厚みのある身体を貫通してしまうなんて、すごい威力。
それからの手順はこう。現場で腹を割き、素早く内臓を搔き出してしまう。このタイミングを逃すと、肉がまずくなってしまうのだそうです。で、獲物を引きずって町に戻り、肉屋へ持っていくと廉価で綺麗に捌いてくれる。ステーキ肉をごっそり持ち帰り、自宅の冷凍庫に入るだけ貯蔵したら、残りはホームレスの施設に寄付する。
40代半ばのジェフは、今でも週末はアイスホッケーのチームに入ってプレイしているほど屈強な男で、狩猟の話は意外でも何でもないのですが、ふと気になって聞いてみました。
「あのさ、こういう質問もどうかと思うんだけどさ、動物を殺した時、良心の呵責を感じたことって無いの?可愛そうなことをしたなあ、とかさ。」
すると彼が急に表情を変え、
“It’s between you and me.”
「ここだけの話だけど、」
と声を落とし、過去に一度、倒れた鹿のそばへ行った時、突然嵐のような自責の念に襲われたことがある、と告白してくれました。そしてその場で泣き崩れた、というのです。
“What have I done? What am I, playing god?”
「俺は何てことをしてしまったんだ?何様だっていうんだ?」
そして翌年は狩りに出なかったそうです(翌年は、というところがミソですが)。
さて、なぜ繁殖期が狩猟に最適かと言うと、メスの奪い合いでオスの気が高ぶり、ガードが下がるのだそうです。バッファローのオスは硬い前頭部を、ムースは大樹のような角を激しくぶつけ合い、ライバルを退けようと連日闘う。ここに隙が出来るのですね。ジェフお得意の鹿狩り法は、まず獲物が良く通るルートを丹念に調べておき、そこを見下ろせる木の上に登って、葉陰に身を隠し辛抱強く待つ。目当てのオスが近くに来たら、予め用意しておいた二本の棒を打ち合わせて音を出す。それを聞いたオスはいきり立ち、
「喧嘩だ喧嘩だ!いい女を奪い合ってやがるな。どこだどこだ?俺も参戦するぞ!」
と駆けつけるのだそうです。そこでジェフの鋭い矢が一閃!哀れなオスは、急所を射抜かれてステーキ肉の元とあい果てるのです。
「結局、オスってのはオンナが絡むと我を忘れちゃうわけね。その習性を良く分かってる人間のオスに殺されちゃうなんて、ちょっと悲しいよね。」
と私。そんな風に考えたことは一度も無かったよ、と大笑いした後、ジェフが一言。
“We’re all revolving around it!”
「俺たちみんな、その周りをリボルブしてるんだよな!」
Revolve (リボルブ)は「(何かを中心に」回転する、旋回する、周回する」という意味。ジェフが言いたかったのは、こういうことでしょう。
「俺たちみんな、それ中心に生きてるんだよな!」
2011年12月8日木曜日
A-OK 万事オッケー
今朝のウォールストリートジャーナルに、イリノイ州の前知事が懲役14年の判決を受けたという記事が載っていました。「入廷前は余裕たっぷりだったのに、さすがにショックを隠しきれない面持ちで退廷した。」写真には、彼が右手でOKサインを作って記者団をかきわけて進む様子が。
記事の見出しに “A-OK” という言葉が使われていたのを見て、おやっと思いました。これ、「エイ・オーケイ」と発音するのですが、この “A” はそもそも何だっけ?
映画「マルホランド・ドライブ」でナオミ・ワッツ演ずるベティが、友達になったばかりのリタに、
“Everything is A-Okay.”
と言って励ます場面があります。どうしてわざわざAを付けるのか分からなかったので、以前同僚エリカに聞いたところ、
「Aクラス、つまり最高にオーケーだってことじゃないかしら?」
と答えてくれたのですが、真偽のほどを確認するには至りませんでした。
で、今回あらためて調査してびっくり。私はずっと、親指と人差し指でマルを作るジェスチャーが「OK」だと思っていたのですが、実はこれこそが「A-OK」だったのですね。もともとは、NASAの広報官だったジョン・パワーズが、フリーダム・セブン号の打ち上げが計画通りに進んでいた時、「万事順調」という意味で使って流行らせたのが始まりのようです。これに関して作家トム・ウルフは、小説「ライト・スタッフ」の中で、「NASAの技術者が無線交信のテスト中、Aの音の方がOよりも通りが良いことに気付いてA-OKと言うようになった。これをパワーズが頂いたのだ。」と書いているそうです(ここ全部、ウィキペディアから)。
じゃ、そもそもOKって何なんだ?調べてみたら、こっちの語源は34種類も説があることを知り、直ちに追求を断念しました。
記事の見出しに “A-OK” という言葉が使われていたのを見て、おやっと思いました。これ、「エイ・オーケイ」と発音するのですが、この “A” はそもそも何だっけ?
映画「マルホランド・ドライブ」でナオミ・ワッツ演ずるベティが、友達になったばかりのリタに、
“Everything is A-Okay.”
と言って励ます場面があります。どうしてわざわざAを付けるのか分からなかったので、以前同僚エリカに聞いたところ、
「Aクラス、つまり最高にオーケーだってことじゃないかしら?」
と答えてくれたのですが、真偽のほどを確認するには至りませんでした。
で、今回あらためて調査してびっくり。私はずっと、親指と人差し指でマルを作るジェスチャーが「OK」だと思っていたのですが、実はこれこそが「A-OK」だったのですね。もともとは、NASAの広報官だったジョン・パワーズが、フリーダム・セブン号の打ち上げが計画通りに進んでいた時、「万事順調」という意味で使って流行らせたのが始まりのようです。これに関して作家トム・ウルフは、小説「ライト・スタッフ」の中で、「NASAの技術者が無線交信のテスト中、Aの音の方がOよりも通りが良いことに気付いてA-OKと言うようになった。これをパワーズが頂いたのだ。」と書いているそうです(ここ全部、ウィキペディアから)。
じゃ、そもそもOKって何なんだ?調べてみたら、こっちの語源は34種類も説があることを知り、直ちに追求を断念しました。
2011年12月7日水曜日
That’s our ethos! それがうちの社風なのよ!
昨日、ダウンタウン・サンディエゴ支社の食堂でシャノンと一緒に弁当を食べていたら、環境部門のトップ、テリーがやって来ました。
「我らが誇るプロジェクト・コントロール・チームと、同席させてもらえたら光栄なんだけど?」
ランチを楽しみつつ、ひとしきり三人で仕事の話をしたのですが、そのうち最終コスト予測レポートの話題になりました。私が一言。
「これまで色々な部門のプロジェクトに関わって来ましたけど、ここの部門は本当にきっちりレポート出させてますよ。他の部門じゃ、過去一年も提出していないPMなんかざらにいますからね。」
するとテリーがきっぱりした口調で、
「うちはね、他がどうあれ、やるべきことは完璧にやるの。」
そしてこう続けました。
“That’s our ethos!”
「それが私たちのイーソスなのよ!」
イーソスだって?思わずシャノンと顔を見合わせる私。彼女も目を丸くしています。相変わらずすごいなあ…。テリーと話すたび、その圧倒的な語彙力に驚嘆させられます。
「分かってるわよ。メモ取るんでしょ。」
と顔を赤らめるテリー。
「ハイもちろん。いただきましたよ。」
と、ジェスチャーで左の掌に右手でメモする私。テリーはシャノンの方を向くと、
「もうシンスケったら、いつも私の使う言葉を面白がってメモするのよ。」
そう困り顔で訴えながらも、まんざらでもない様子。
「でもイーソスなんて単語、普通は思いもつかないよね。」
と私。
「私もそう思う。」
と、感心するシャノン。
実のところ、この時点ではイーソスが何なのか、よく分かっていませんでした。席に戻ってあらためて調べたところ、「倫理観」とか「気風」とか「精神」という意味でした。日本語では「エトス」とか「エートス」と発音されているようですが、ウィキペディアによれば「習慣・特性などを意味する古代ギリシャ語」。道徳を表すethics の語源だそうで、社会学者のマックス・ウェーバーは、「生活態度、心的態度、倫理的態度という三つの性向を併せ持つ」と説いたとのこと。
テリーを頂点のひとつとするこの組織は、今の会社に買収されるまで、環境・建築・デザイン分野の大学生たちが “dream job” と呼んで憧れる、宝石のような優良企業でした。今でこそ「巨大企業の一部門」に成り下がっているけど、社員ひとりひとりは、今でもそんなプライドを胸に秘めて仕事しています。テリーの発言は、そういう気持ちの発露と受け止めるべきでしょう。
“That’s our ethos!”
「それがうちの社風なのよ!」
「我らが誇るプロジェクト・コントロール・チームと、同席させてもらえたら光栄なんだけど?」
ランチを楽しみつつ、ひとしきり三人で仕事の話をしたのですが、そのうち最終コスト予測レポートの話題になりました。私が一言。
「これまで色々な部門のプロジェクトに関わって来ましたけど、ここの部門は本当にきっちりレポート出させてますよ。他の部門じゃ、過去一年も提出していないPMなんかざらにいますからね。」
するとテリーがきっぱりした口調で、
「うちはね、他がどうあれ、やるべきことは完璧にやるの。」
そしてこう続けました。
“That’s our ethos!”
「それが私たちのイーソスなのよ!」
イーソスだって?思わずシャノンと顔を見合わせる私。彼女も目を丸くしています。相変わらずすごいなあ…。テリーと話すたび、その圧倒的な語彙力に驚嘆させられます。
「分かってるわよ。メモ取るんでしょ。」
と顔を赤らめるテリー。
「ハイもちろん。いただきましたよ。」
と、ジェスチャーで左の掌に右手でメモする私。テリーはシャノンの方を向くと、
「もうシンスケったら、いつも私の使う言葉を面白がってメモするのよ。」
そう困り顔で訴えながらも、まんざらでもない様子。
「でもイーソスなんて単語、普通は思いもつかないよね。」
と私。
「私もそう思う。」
と、感心するシャノン。
実のところ、この時点ではイーソスが何なのか、よく分かっていませんでした。席に戻ってあらためて調べたところ、「倫理観」とか「気風」とか「精神」という意味でした。日本語では「エトス」とか「エートス」と発音されているようですが、ウィキペディアによれば「習慣・特性などを意味する古代ギリシャ語」。道徳を表すethics の語源だそうで、社会学者のマックス・ウェーバーは、「生活態度、心的態度、倫理的態度という三つの性向を併せ持つ」と説いたとのこと。
テリーを頂点のひとつとするこの組織は、今の会社に買収されるまで、環境・建築・デザイン分野の大学生たちが “dream job” と呼んで憧れる、宝石のような優良企業でした。今でこそ「巨大企業の一部門」に成り下がっているけど、社員ひとりひとりは、今でもそんなプライドを胸に秘めて仕事しています。テリーの発言は、そういう気持ちの発露と受け止めるべきでしょう。
“That’s our ethos!”
「それがうちの社風なのよ!」
2011年12月4日日曜日
Moot point 無意味な議論
火曜日の電話会議で、ジュリーがこんな発言をしました。
“Well, that’s a moot point.”
「じゃあそれはムート・ポイントね。」
ムート・ポイント…。議論の最中によく聞くフレーズです。文脈からは、「あまり重要ではない」という意味に受け取れます。全体の雰囲気が、「その話をしてもしょうがないよね」という流れになっていたのは確かですが、いまいち意味がつかめない。さっそく、ネットで英辞郎をチェックします。
「未解決の問題、問題点、論点、論争点、議論の余地がある点」
え?これは意外。まるでしっかりスポットライトが当たっているテーマみたいな扱いじゃないか。思ってたのと完全に逆だ…。午後遅く、同僚リチャードを訪ねて質問してみました。
「話す価値の無いような話題のことだね。」
と、やはり真逆の解説。木曜日にアーバイン支社で会ったリサとマックスにもそれぞれ聞いてみましたが、やはりリチャードと同じ説明をしてくれました。
「辞書には正反対の訳が載ってたんだけど…。」
と言うと、みな戸惑いの表情を見せます。
「いや、そんなポジティブな意味で使った例は聞いたことがないな。」
金曜日にオレンジ支社へ出張した際、言葉博士の(と私が勝手に呼んでいる)トムを発見したので、彼のキュービクルへ行ってダメ押しの質問をしました。トムは椅子をくるりと回転させて振り返り、あごひげをこすりながら張りのある声で解説します。
「議論の余地がある(debatable)というのは正しい訳だと思うな。でもそれは、議論の余地はあるがしてもしょうがない、というネガティブな意味なんだよ。」
そして通路を隔てて隣のキュービクルでコンピュータに向かっていた若い社員に、
「はいデイヴィッド君、例を挙げて下さい。」
と呼びかけます。大喜利じゃないんだからそんな唐突に振られても、と気の毒に思ってたら、当のデイヴィッドはさっきから我々の話を聞いていたのか、こちらを向いてさらりと答えました。
「僕は不治の病で余命半年と宣告されました。でも一方で、明日で世界が終わり、全人類が滅亡するということも知っています。この場合、僕の病気の話はムート・ポイントです。」
「Good job! (よくできました)。」
と、まるで学校の先生みたいなトム。
あとでネットを調べてみたら、これは誤解を経て意味が変容してしまった言い回しだということが分かりました。Moot はそもそもMeet (会う)と同じ語源から来ていて、「あらためて集まって議論しなければいけない話題」つまり「未解決の問題」というのがそもそもの意味だったそうです。法科の学生が訓練のために架空のケースを作って議論する際、これをmoot point と呼んだことから、「議論のための議論」つまり「結論に実務的な価値の無い議論」、「無意味な議論」という意味で使われるようになってしまったのだと。
なるほど。「情けは人のためならず」とか「やぶさかでない」などと同様、辞書に出ている訳と違う意味で使われているフレーズだったのですね。
“Well, that’s a moot point.”
「じゃあそれはムート・ポイントね。」
ムート・ポイント…。議論の最中によく聞くフレーズです。文脈からは、「あまり重要ではない」という意味に受け取れます。全体の雰囲気が、「その話をしてもしょうがないよね」という流れになっていたのは確かですが、いまいち意味がつかめない。さっそく、ネットで英辞郎をチェックします。
「未解決の問題、問題点、論点、論争点、議論の余地がある点」
え?これは意外。まるでしっかりスポットライトが当たっているテーマみたいな扱いじゃないか。思ってたのと完全に逆だ…。午後遅く、同僚リチャードを訪ねて質問してみました。
「話す価値の無いような話題のことだね。」
と、やはり真逆の解説。木曜日にアーバイン支社で会ったリサとマックスにもそれぞれ聞いてみましたが、やはりリチャードと同じ説明をしてくれました。
「辞書には正反対の訳が載ってたんだけど…。」
と言うと、みな戸惑いの表情を見せます。
「いや、そんなポジティブな意味で使った例は聞いたことがないな。」
金曜日にオレンジ支社へ出張した際、言葉博士の(と私が勝手に呼んでいる)トムを発見したので、彼のキュービクルへ行ってダメ押しの質問をしました。トムは椅子をくるりと回転させて振り返り、あごひげをこすりながら張りのある声で解説します。
「議論の余地がある(debatable)というのは正しい訳だと思うな。でもそれは、議論の余地はあるがしてもしょうがない、というネガティブな意味なんだよ。」
そして通路を隔てて隣のキュービクルでコンピュータに向かっていた若い社員に、
「はいデイヴィッド君、例を挙げて下さい。」
と呼びかけます。大喜利じゃないんだからそんな唐突に振られても、と気の毒に思ってたら、当のデイヴィッドはさっきから我々の話を聞いていたのか、こちらを向いてさらりと答えました。
「僕は不治の病で余命半年と宣告されました。でも一方で、明日で世界が終わり、全人類が滅亡するということも知っています。この場合、僕の病気の話はムート・ポイントです。」
「Good job! (よくできました)。」
と、まるで学校の先生みたいなトム。
あとでネットを調べてみたら、これは誤解を経て意味が変容してしまった言い回しだということが分かりました。Moot はそもそもMeet (会う)と同じ語源から来ていて、「あらためて集まって議論しなければいけない話題」つまり「未解決の問題」というのがそもそもの意味だったそうです。法科の学生が訓練のために架空のケースを作って議論する際、これをmoot point と呼んだことから、「議論のための議論」つまり「結論に実務的な価値の無い議論」、「無意味な議論」という意味で使われるようになってしまったのだと。
なるほど。「情けは人のためならず」とか「やぶさかでない」などと同様、辞書に出ている訳と違う意味で使われているフレーズだったのですね。
2011年11月29日火曜日
Out of whack 具合が悪い
昨日の朝、経済通の同僚アーニーからメールが届きました。Seekingalpha.com という投資通が読むサイトの記事リンクが貼ってあります。タイトルは、
Japan’s Unsustainable Debt Burden: Playing With Fire
持続不能な日本の負債:危険な火遊び(拙訳ですが)
この記事は、「日本の経済は国民の貯蓄高が下支えしている」という通説を全くの幻想であるとし、このまま手をこまねいていると債務はコントロール不能な状態に突入しかねないと指摘しています。アーニーが、これにコメントを付け加えます。
Japan’s problems are high debt taken on during last 10 years to stimulate their stagnant, deflationary economy and their aging population (the ratio of retired to productive citizens is getting out of whack).
前半はともかく、この最後のカッコ内が引っかかりました。Out of whack (アウト・オブ・ワック)というフレーズは今まで何度も聞いてますが、一度もきちんと意味を確認したことが無かったのです。「既に引退した人の数と就業人口との比がOut of whack になりつつある」とアーニーは言っているのですが、それってどういうこと?
さっそくwhack の意味を調べたところ、「強く叩くこと、またその音(ぴしゃり)」と訳されています(ちなみに、もぐら叩きゲームは “Whack-A-Mole” と呼ぶそうです)。じゃ、Out of whack は?と続けて調査すると、「調子が狂って、具合が悪くて」となっています。
The copy machine is out of whack.
コピー機が故障してる。
My back is out of whack.
背中の調子が悪い。
なんでだ?「ワック(ぴしゃりと強打)」にアウト・オブを加えても、そんな意味にはならないでしょ。
で、いつものように同僚たちに聞いてみます。まずシャノン。
「知らないわ。なんでかしら。」
次に物知りのディック。
「分かんないな。クレイジーな英語表現のひとつだね。全く意味の繋がりが見えないよな。」
最後にステヴ。
「ただそう言うんだよ。意味?さあね。」
気持ち悪いので、仕事中に調査続行。10分後、ようやく語源を探し当てました。
Whack はもともと、物を叩く時に出る音から来た擬音語であろう、とのこと。18世紀に、盗賊どもが犯罪で得た報酬の分け前をwhack と呼んだことから、「Agreement(合意)」という意味でも使われるようになります。その後、 “In fine whack” という、合意にある、つまり「良い状態」を指すフレーズが生まれます。で、Out of whack が逆の意味で使われ始めた、とのこと。
ふ~ん、なるほどねえ。随分な紆余曲折を経ていたのね。アーニーのメールの最後の文章は、こうなると思います。
“The ratio of retired to productive citizens is getting out of whack.”
「既に引退した人の数と就業人口とのバランスが崩れつつある。」
毎度のことだけど、この言葉をしょっちゅう使っているアメリカ人たちが誰ひとりとしてまともに説明出来なかった事実の方が、語源そのものよりも面白かったです。
Japan’s Unsustainable Debt Burden: Playing With Fire
持続不能な日本の負債:危険な火遊び(拙訳ですが)
この記事は、「日本の経済は国民の貯蓄高が下支えしている」という通説を全くの幻想であるとし、このまま手をこまねいていると債務はコントロール不能な状態に突入しかねないと指摘しています。アーニーが、これにコメントを付け加えます。
Japan’s problems are high debt taken on during last 10 years to stimulate their stagnant, deflationary economy and their aging population (the ratio of retired to productive citizens is getting out of whack).
前半はともかく、この最後のカッコ内が引っかかりました。Out of whack (アウト・オブ・ワック)というフレーズは今まで何度も聞いてますが、一度もきちんと意味を確認したことが無かったのです。「既に引退した人の数と就業人口との比がOut of whack になりつつある」とアーニーは言っているのですが、それってどういうこと?
さっそくwhack の意味を調べたところ、「強く叩くこと、またその音(ぴしゃり)」と訳されています(ちなみに、もぐら叩きゲームは “Whack-A-Mole” と呼ぶそうです)。じゃ、Out of whack は?と続けて調査すると、「調子が狂って、具合が悪くて」となっています。
The copy machine is out of whack.
コピー機が故障してる。
My back is out of whack.
背中の調子が悪い。
なんでだ?「ワック(ぴしゃりと強打)」にアウト・オブを加えても、そんな意味にはならないでしょ。
で、いつものように同僚たちに聞いてみます。まずシャノン。
「知らないわ。なんでかしら。」
次に物知りのディック。
「分かんないな。クレイジーな英語表現のひとつだね。全く意味の繋がりが見えないよな。」
最後にステヴ。
「ただそう言うんだよ。意味?さあね。」
気持ち悪いので、仕事中に調査続行。10分後、ようやく語源を探し当てました。
Whack はもともと、物を叩く時に出る音から来た擬音語であろう、とのこと。18世紀に、盗賊どもが犯罪で得た報酬の分け前をwhack と呼んだことから、「Agreement(合意)」という意味でも使われるようになります。その後、 “In fine whack” という、合意にある、つまり「良い状態」を指すフレーズが生まれます。で、Out of whack が逆の意味で使われ始めた、とのこと。
ふ~ん、なるほどねえ。随分な紆余曲折を経ていたのね。アーニーのメールの最後の文章は、こうなると思います。
“The ratio of retired to productive citizens is getting out of whack.”
「既に引退した人の数と就業人口とのバランスが崩れつつある。」
毎度のことだけど、この言葉をしょっちゅう使っているアメリカ人たちが誰ひとりとしてまともに説明出来なかった事実の方が、語源そのものよりも面白かったです。
2011年11月27日日曜日
Plan for the worst, hope for the best 最悪に備え最善を望む
ここ最近、朝6時に出社して夕方6時前に会社を出る、というサイクルを繰り返しています。他の社員が現れて色々やり取りが始まる前に大量の仕事をやっつける。これは非常に効率が良い。それに、まだ月が出ている静寂の時間帯にガラガラのハイウェイを走るのは、何とも気分がいいのです。先日の早朝、いつものようにバリバリ仕事を片付けていたところ、三つ隣のキュービクルで働く若い同僚のティファニーが、電話で会話を始めました。彼女も超朝方社員で、大抵二人同じ時間帯に出社するのですが、お互い勢いに乗って働いているため、これまでほとんど会話したことがありませんでした。仕切り壁をいくつか隔てているものの、彼女の口調が徐々に激して行くのが気になり始め、耳をそばだてていたところ、受話器を置くと同時にこう吐き捨てたのです。
“God damn it!”
「ガッデム!」
女性がこういう荒っぽい言葉を使う場面には滅多に出くわさないので、軽く驚くとともにちょっと笑ってしまいました。その数秒後、私の背後を通りかかったティファニーが申し訳なさそうな顔で、
「ごめんなさい。聞こえてた?」
私は好奇心に抗えず、一体何があったのか尋ねてみました。すると、現場に出ているオジサン社員にタイムシートの修正方法を丁寧に教えてあげたのに、その指示に従わずにまた同じミスをした、というのです。
ティファニーは考古学チームの一員で、しばしば発掘調査に出かけます。今回は現場に出ずに調査を仕切っているのですが、彼女は何をやるにも周到に準備して、きっちり仕事を片付けないと気がすまない、とのこと。だからケアレスミスを重ねる人は苦手なのだそうです。
「現場に行く時には、必ず余分な水と毛布、GPS装置、ナイフ、救急セット、その他色々持っていくわ。そのでかいバックパックには一体何が入ってるんだ?ってよくからかわれるけど、まさかのための手は完璧に打っておきたいの。チームで現場に行く際は、なるべくプロバイダーの違う携帯電話を皆で持っていくとかね。私のが圏外になっても他のメンバーの電話が通じるかもしれないでしょ。」
彼女の父さんは Navy SEALs(ネイビーシールズ、海軍特殊部隊)出身、お母さんは看護婦さんで、幼い頃から危機管理については徹底的に叩き込まれて来たそうです。家族でリスクマネジメントについて常に話し合い、何をするにも緻密に調査し、周到に計画を立て、きっちり遂行する。学生時代は大学近くのアパートは借りなかった、と言います。
「キャンパス周辺には必ず、若い女性を狙う変質者が住んでるの。そんなとこに若い女子学生が一人暮らしするなんて、バンビが狩猟地帯(Hunting Ground)に飛び込むみたいなものよ。」
いつからか、人相や仕草で他人の性格や心理が読めるようになったそうで、更には現在、働きながらForensic Science (犯罪科学)の修士号も取得中なのだと言います。
「何か質問されて、答える前にちょっと考えるでしょ。そこで右を向くか左を向くかで、その人が嘘をついているかどうかも大体分かるのよ。」
これについては同居中の彼氏が、たびたび不満を漏らすそうです。今こんなこと考えてるでしょ、などと突っ込まれ、「そりゃフェアじゃないよ!」と。
「じゃあ彼、浮気なんか出来ないね。」
と私が言うと、
「絶対不可能ね。」
と自信たっぷりに笑うティファニー。
畜生、もうちょっと気の利いたコメントが出ないもんかな、と己の凡庸さを呪い、急いでこう付け加えました。
「君は、リスクマネジメントの専門家としてプロジェクト・チームに必ず加えたい人材だよ。」
彼女はちょっと嬉しそうな顔をして、お父さんの座右の銘を紹介してくれました。
“He’s always said to me, plan for the worst, hope for the best.”
「父はいつも私に言うの。最悪に備え、最善を望めって。」
おお、これはなかなか良いフレーズだぞ、とその場で書き留めました。後になって、日本語で同じような慣用句はあるかな、と探したのですが、「人事を尽くして天命を待つ」も「備えあれば憂いなし」も、意味は近いけど微妙に違います。万全の準備をしたら後は静かに結果を受け止めよ、という無欲に近い境地を表現していて、「最善を望め」とするアメリカと較べると、いかにも日本的だな、と思うのでした。
帰宅して、妻にティファニーの話をしたところ、「仕草から心理が読める」というくだりですかさず、
「あら、じゃあ彼氏、浮気出来ないわね。」
と突っ込んで来ました。
夫婦で思考回路がまったく同じ。とほほです。
2011年11月25日金曜日
Oxymoron 矛盾語法
昨日の晩は、友人宅で感謝祭のディナーを愉しみました。家主のマイクさんは法廷弁護士で、仕事柄、言葉の使い方に人一倍敏感です。彼は「物語のパワー」というものに特に魅せられていて、人類学、脳神経学などを独学しながら、なぜシンプルなストーリーが聞く人の感情を揺さぶり、彼らの行動を変えるのかを研究し続けているのだそうです。毎週月曜の晩はあるクラブに通っていて、そこには多様なバックグラウンドの老若男女が集い、知的なゲームで脳を鍛えているのだとか。お題を与えられたらそれに関連する話を間髪入れずに作り出す大喜利みたいなのとか、「その言葉はBike と韻を踏んでいます。さて何でしょう。」と誰かが言うと他の参加者が次々とステージに出てこれと思う答えをジェスチャーだけで示し、皆がそれを当てる、とか。
「じゃ、ひとつやってみよう。」
とマイクさんが教えてくれたのが、Three-Headed Oracle (三つ首の賢人)というゲーム。三人が並んで座り、誰かの質問に答えるのですが、一回に口に出来るのは一人一単語まで。隣の人の発した単語に他の単語を続け、次の人がまた他の単語をくっつけ、意味が通る文章を協力して構築しつつ、聴衆を笑わせるような「ひねり」も入れる。たとえば「明日の天気はどうですか?」と聞かれたら、
「明日」
「お日様」
「は」
「東の」
「海岸」
「から」
「のぼる」
「ことは」
「ないでしょう」
みたいに。誰かが突然とんでもない方向に話題をぶれさせると、隣の人は動揺します。しかしそこを巧妙に修復すると、笑いが起こるのですね。これ、やってみると異常に難しいのです。マイクさんは、
「考えすぎて硬くなっちゃ駄目。リラックスすればするほど良いアイディアが浮かぶよ。」
と言うのですが、英語学習者にとっては最上級レベルの試練だと思います。
さて、話の流れから、Oxymoron (オクシモロン)について語ることになりました(「アクシマラン」と聞こえます)。これは日本語で矛盾語法とか撞着語法とか呼ばれていて、相反する二つの単語を組み合わせて作られた言葉を指します。詩的な文章などに多く使われる、洗練された言葉遊びです。古代ギリシャ起源のラテン語が語源だそうで、oxy は「鋭い」、moron は「鈍い」という意味。
たとえばさ、と私がいくつか例を挙げました。
Sweet pain (甘い痛み)
Slim fat (スリムな脂肪)
すると、すかさずマイクさんが事も無げに続々と例を繰り出しました。そのスピードに感心していたところ、最後にこんなのを付け足し、奥さんの顔を見て悪戯っぽく笑いました。
True love (真の愛)
これは断じてOxymoron じゃありません。彼一流の「ひねり」なのですね。脱帽です。
「じゃ、ひとつやってみよう。」
とマイクさんが教えてくれたのが、Three-Headed Oracle (三つ首の賢人)というゲーム。三人が並んで座り、誰かの質問に答えるのですが、一回に口に出来るのは一人一単語まで。隣の人の発した単語に他の単語を続け、次の人がまた他の単語をくっつけ、意味が通る文章を協力して構築しつつ、聴衆を笑わせるような「ひねり」も入れる。たとえば「明日の天気はどうですか?」と聞かれたら、
「明日」
「お日様」
「は」
「東の」
「海岸」
「から」
「のぼる」
「ことは」
「ないでしょう」
みたいに。誰かが突然とんでもない方向に話題をぶれさせると、隣の人は動揺します。しかしそこを巧妙に修復すると、笑いが起こるのですね。これ、やってみると異常に難しいのです。マイクさんは、
「考えすぎて硬くなっちゃ駄目。リラックスすればするほど良いアイディアが浮かぶよ。」
と言うのですが、英語学習者にとっては最上級レベルの試練だと思います。
さて、話の流れから、Oxymoron (オクシモロン)について語ることになりました(「アクシマラン」と聞こえます)。これは日本語で矛盾語法とか撞着語法とか呼ばれていて、相反する二つの単語を組み合わせて作られた言葉を指します。詩的な文章などに多く使われる、洗練された言葉遊びです。古代ギリシャ起源のラテン語が語源だそうで、oxy は「鋭い」、moron は「鈍い」という意味。
たとえばさ、と私がいくつか例を挙げました。
Sweet pain (甘い痛み)
Slim fat (スリムな脂肪)
すると、すかさずマイクさんが事も無げに続々と例を繰り出しました。そのスピードに感心していたところ、最後にこんなのを付け足し、奥さんの顔を見て悪戯っぽく笑いました。
True love (真の愛)
これは断じてOxymoron じゃありません。彼一流の「ひねり」なのですね。脱帽です。
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